これは、なんだ。


 この毛もくじゃらの生き物は一体なんなんだ。


 やべぇ…くしゃみが くしゅんっ!




 ・・・・・・。




早朝から俺は、盛大なくしゃみをした。低血圧にはちとキツイものがある。






















 にゃー



















「ねこたんかわいいーぱぱもほら、なでてあげてー」



 近づけるな馬鹿もん。俺は猫が、くしゅんっ。



「ぱぱぁおかぜ?たいへんだぁー、ねこたんにうつっちゃうよー」



 まて、なんで俺よりソイツの心配をするんだ。



「さーねこたん、いっしょにあさごはん食べようねー」



 オイオイオイ、!ソイツを絨毯の上に置くんじゃない、毛がつくだろうがっ。



「カレーでいいかなぁ?」



 カレーには玉葱が入ってるから駄目だ…って俺は何の心配をしているんだ。



「ミルクあたためてあげるねー」



 そうだ、そっちの方がいい。あ?俺がやんのか…?なんで猫なんかの為にやんなきゃなんねぇんだ。



「あついあついだよーぱぱぁ」



 人にやらしといて文句を言うな。と言うか猫は何にも言ってねぇ。



「ふあーふさふさしてるーきもちぃ」



 だから毛が抜けるから止めろと、コロコロは何処に置いたか…。



「ねこたんお風呂はいりましょー」



 猫は水が苦手だからやめとけ。引っかかれるぞ。



「ねこたんと一緒にねるぅ」



 …潰す気かお前は。



「いっしょにあそびましょーねこたん」



 壁とか引っ掻くなよ、――ってどこ乗ってやがる!



「ねこたんいじめちゃらめぇー!」



 …。



「ぱぱは、こわいこわいだからあっちいきましょうねー」



 くしゅんっ・・・。ちくしょう。



「ほら、これであそぼぉー」



 待て待て待て、それは俺の羽ペンだ!どっから出してきやがったんだお前は!!



「けちー」



 ケチじゃねぇっ!



「ふぇえ…ぱぱがおこったーぐすっ」



 …わかった。わかったから一々泣くのは勘弁してくれ…羽ペンでも何でも使えってんだっ。




「ねこたん、ぱぱがコレであそんでいいってー」



にゃー



「・・・・・・くしゅんっ」











ったく。なんでこんなに世話の焼けるちっちぇのが2人も…1人と1匹か。

じゃなくてだな…ん?1匹…?











「オイ、。なんでこの家に猫がいやがんだ」




 今更だが。




「さっきしんぶん取りにいったら拾ったのー」



「あぁ?」




 外に出るなと言ってあっただろうが。




「すててあったから、かわいそうなのー」



「だからって勝手に持ってくるんじゃねぇっ」



「おそと寒いのー!しんじゃいやぁ」



「そう簡単に死なねぇよ。兎に角元あった場所に戻して来い、今すぐにだ」




 子猫じゃあるまいし…本来猫は外で暮らせる生き物なんだよっ。




「ぱぱぁ…」




 ・・・・・・・・・そんな目で俺を見るな。





「俺は猫が嫌いなんだ」



「そうなのぉ?」



「…そうだ」




 …決して弱点なんかじゃねぇぞ。




「でも…おうちの前にすててあったんだよー?」



「――誰だ、捨ててった奴は!!」




 余計なことをしやがって…!と言うよりなんでこの家の前に捨てたんだ!見つけたらただじゃおかん!!




「だめ?」




 だからそんな目で…チッ。




「…貰い手が見つかるまでだぞ」



「わぁい!ねこたんかうのー!」



にゃー



「はぁ…」









こうして俺は、に押し負けくしゃみに絶えながらも渋々了承してしまった。

貰い手が見つかるまでだけどな。そこら辺は全て八戒に任せ、猫の毛玉取りに勤しむ事となる。

コロコロは便利だ。ストックでも買ってくるか…くしゅんっ。




「三蔵、貰い手が見つかりました」




近くのショッピングセンターに買出しをしに来たら、偶然にも色々頼んでおいた八戒と遭遇した。

主婦よろしくなコイツは最近流行のエコバックとやらを携え、にこやかに吉報を述べる。




「そうか。それはありがてぇな」


「本当に、いいんですか?三蔵…」


「今更何を言ってやがんだ、貴様は。良いに決まってんだろうが。」


「しかし…が悲しむのではないでしょうか」


「家では飼えないんだ。アイツだって理解できるだろ」




まだ幼いが理解力がずば抜けているは、今までもそうやって利口に俺の言うことを聞いてきた。

まぁ、わがままなんぞあまり言わないが。

今回もそうだろう、と思った俺は迷う事無くその貰い手の話を承諾したのだ。

それなのに何の問題があると言うのか、この男は。




「三蔵が言うなら仕方ありませんね…お可愛そうに」


「うるせぇ。さっさと貰い手に引き取ってもらえ」


「…わかりました」




終始あーだこーだ言って来た八戒を無視しながら、俺たちは家に向かう。

聊か早い気もしたが、俺はとっととあの猫とおさらばしてぇんだ。




「ぱぱーお帰りなさーい。あ、八戒いらっしゃーい」


「ただいま」


「お邪魔しますね、」




満面の笑みで迎えられた俺たちは一先ず家に上がり、と猫が遊ぶ様子を眺めていた。

自分の服に毛を付けやがって…誰が洗濯すると思ってんだ。




「三蔵も主婦ですねぇ」


「貴様に言われたかねぇよ」




勝手に人ん家の台所で茶を煎れた八戒は主婦…いや、あれは爺だ。

ふてぶてしくも茶を啜りながらたちに目を向ける。




「今日で、お別れですね」


「お陰で清々する」


「貴方と言う人は…デリカシーとか無いんですか?」


「生憎そんなもんは持ち合わせてねぇよ。と言うより必要性が皆無だ」




心なしか沈んだ様子の八戒はため息を吐くとやれやれといった仕草をした。

煽ってんのかコイツは。




「まぁ三蔵は猫が苦手ですし、仕方ないっちゃ仕方ないんですけどね。もしかしたら耐性がつくかも知れませんよ?」


「そんな曖昧な事言っても無駄だ」


「相も変わらず頑固ですねぇ。その石頭をほぐさないとに嫌われちゃいますよ」


「んなもん関係ねぇだろ。たとえ嫌われたとしても手放す気はねぇ」




ぐちぐちとうざってぇ。なんで今日に限ってこんなにしつこいんだ。

いい加減うっとおしくなった俺は、に貰い手の話をしようと席を立つ。

だが、今までも見てきた当たり前の光景なのに楽しそうに戯れている所を見ると、何故か気が引けた。

なんだってんだ、一体。これで漸く楽になると言うのに。まぁ1人だけでも楽にはなれんがな。




「おや、言わなくて良いのですか?」


「…うるせぇ」




笑うな、気持ちわりぃ。




「やはり三蔵も人この子でしたねぇ。今まで居た存在が居なくなるのは…寂しいんですか?」


「んなワケ…ねぇだろうが」




俺はそうでなくとも1人に手間取ってると言うのに、これ以上世話の掛かる動物なんぞ飼う気はない。

それでが悲しんでも、だ。こればっかりは許すワケにはいかねぇ。

腹を括る。知らず知らずの内に何躊躇してんだ、俺は。




「」


「なぁにぱぱ?」


「ソイツの貰い手が決まった。お別れだ」


「ふぇ…?」




泣くな。頼むから泣くんじゃねぇ。


見る見るうちに崩れでいくの表情は、見ていて胸が締め付けられた。

どうして拾ってきたのが猫なのか。何故他の動物じゃなかったんだ。

俺が悔やんでも仕方ねぇ事だとわかっていたが、悲痛に顔を歪めるを見るとそう思わずにはいられまい。




「我慢しろ…」


「ぱぱぁ…ひっく、ふぇ…やだよぉ…!」


「ソイツが貰われたとしても、会いに行けばいいじゃねぇか…」


「ねこたんとっはなれたく、ぐずっ・・・ないのー!」


「貰い手が見つかるまでと言っただろ…」





猫を抱き必死に懇願するは泣きじゃくり、離すまいとして腕に力を入れていた。

そんなに強く抱いたら潰れちまうぞ。貰い手に引き取って貰うまで抱いてていいから。

俺は暫し強引にを促す。こんな必死になるはそうそう見れないんだがな。




「あはは。いたく気に入っているんですね、その猫さんを」


「全く…やっと毛の掃除から開放されるってのに」


「まぁどっちにしろ間接的にですが飼う破目になるんですけどねv」


「……あぁ?」




意味が、わからねぇ。


だが八戒の何か裏がありそうな言葉の真意は、泣き止まぬを連れ貰い手の所に着いた時、わかった。


いや、着く前にわかったんだがな。






「おやおや、可愛らしい猫さんですねぇ。これでお留守番の時、も寂しくないでしょう?」


「うん!おじいちゃんとーねこたんといっしょに、おるすばんするのー!」





にゃー






「八戒貴様…」




「あっはははは。へ僕からのプレゼントですv」




「これじゃあ状況が変わらんだろうがっ!!」























こうして俺の実家に猫が1匹追加された。はで鳴いたカラスがなんとやら。

全く世話の焼ける…。まぁ、毛の掃除はしなくて済みそうだからよしとする。

しかしだな。仕事帰り、迎えに行く度に泣くのは勘弁してくれ…。

俺よりその猫を取ると言うのか、。

































  月草の君へ


                                                      (猫なんかに構ってねぇで俺の所へ、くしゅんっ)













ATOGAKI マンションにするか一軒家にするか本気で悩む管理人です。三蔵ぱぱはお久しぶりですね。 そして珍しくも三蔵サマ視点で書いてみました。おおぅ、難しい。笑
当初の予定ではほのぼのから道を外れ、八戒と三蔵が言い合いする展開になりそうだったんですが、思いとどまりました。あはは…。 そんなのスノーフレークじゃねぇ!!って感じに←
猫ネタ書いてみたかった!引き取られるのが早い気がしますが、貰い手が貰い手ですからね。三蔵ぱぱを欺く八戒、策士。笑

月草の君へ=心の移ろいやすい人