この花は、綺麗だと言った。

これも、あれも、綺麗だと微笑んだ。

その笑顔は、花のように愛らしかった。



「ごめん、なさい…なぐらない、でっ…」



花びらに雫が落ちるように、零れ落ちた涙。

花が泣いている。

花は、水を与えすぎると腐ってしまうのに。



「ごめんなさ、いっ…だから…なぐら、ないで」



芽生えた花は、可憐に咲き誇る。

自然に負けないように、健気に咲き誇る。

いつか摘み取られると知っていながらも、咲き誇る。

いずれ枯れてしまう運命だとしても、咲き誇り続ける。




「お、ねがいっ…」



「泣くな。誰もお前を殴らない」



「ぱぱぁ…っ…こわいよっ…たすけ、て…」



「大丈夫だ…大丈夫だと、言ってんだろうが…」



「うぅ…ぱ、ぱぁ…」



花は、摘み取られようとしていた。

本当の肉親である両親に。

毎日水を与えられ、腐りかけた花は儚く咲き続けた。

折れないように。

誰かが手を伸ばしてくれる事を切に願いながら、咲き続けた。



「ここに居るのは俺だけだ。もう誰も、お前を傷つけない。俺が傷つけさせない」



「おねが、い…ぱぱぁ…たすけて…」



「俺が、守ってやるからだから…泣くな、」



「ぱ、ぱ…」



生け花、ブーケ、花冠、贈り物。

押花、造花、花吹雪、標本。

人間のエゴによって摘み取られた花々。

そんな事、させない。させてたまるか。



自然に散るまで、俺が守ると決めた。

いつか成長して、寿命を迎えるまでは。

誰にも摘み取らせない。

邪魔させない。



「…」



俺の、花。











赤き花


                                                (この一輪の花は、俺のだ)













ATOGAKI
お花は手入れをしないと枯れてしまう。出来るだけ長く、咲いていて欲しい。それは人間の、エゴ。

虐待を受けていたと言う設定。虐待をしていた両親はもう既に他界しているが、時々悪夢を見続ける花。
そんな花を守りたい、助けてあげたいと思う義理の父、三蔵。そんな話。

お題配布元 : 構成物質 様