その日は雨がザーザー振りで窓外は灰色と水で埋め尽くされていた。

お母さんが仕事で出払っていて家にはいつもの如く寛ぐ担任と肩身が狭い思いの私。

明日からテスト。ちなみに今日は日曜日だ。

遅刻癖がどーにも抜けない私の為に態々担任が勉強を教えに訪問してくれた。

勉強を教えてくれるのはとってもありがたいけど…このスパルタはどうにかならないのだろうか。

と、私は口に出さず心の中でそっと思った。



でも、今日はなんだか雨だからと言う理由とは関係ないだろうけれど、不穏な空気が付き纏う。

心なしか私と担任はイライラしていらのだろう。それが今日の事の発端だった。



「私の初恋?それは近所の幼馴染ですよー」


「・・・」


「興味深々?」


「ソレは無い」


「なーんだ。つまんなーい」



いつもの様に、冗談を交わしながら真剣に勉強を進める。

けれど、雨に犯された空気は次第に深く、どん底に突き落としていった。



「どうせ碌でもねぇ奴だったんだろ」



普段はそんな事言わない三蔵。私にそれを軽く流せる耐性はついてなくて、ついカッとなってしまった。



「アイツはそんな、先生が思っているような人じゃないもん!」


「ならそいつと付き合えば良いだろうが」


「なっ!!」



三蔵も三蔵で、怒鳴ってしまった私に売り言葉に買い言葉。

理由はともかく、冷たい対応する三蔵に私はとうとう堪忍袋の緒が切れた。



「三蔵なんて…大っっ嫌い!!!!」



自分から話を振っといて、しかも勝手に私のアルバムとか引っ張りだしておいてとやかく言われる筋合いは無い。

私は家を飛び出しこの土砂降りの中へ向かって走りだした。





「別れてやるんだからー!!!!」





去り際にとんでもない捨て台詞を残して。




























本当はね、仲良さげに寄り添う中学の頃の写真を見て嫉妬していたんだよね。
私は後になって、冷静になった頭で気付いた。三蔵の独占欲の強さに、愛を感じたのは言うまでも無い。
なんであの時気付かなかったのか、と。後悔しても時既に遅し。



























「お、じゃん。どーした?こんな土砂降りの中…」


「…幼馴染…発見」


「なんだお前。風邪引くから俺ん家、来いよ」


「うん。おじゃまします」



雨でぐっしょりになったTシャツに身を包んだ私は例の幼馴染に偶然的な出会いをして、お言葉に甘えて久し振りの彼の家に入れてもらった。
後から考えればなんでこんな馬鹿な真似をしてしまったんだろう、と。後悔…はもういいや。考える事に疲れたよ。

久し振りの幼馴染の部屋は全然変わりなくて。ボーっとした頭でなすがままにお風呂を借りて部屋着も借りた。
前より断然大きくなった彼は男らしくて、さぞかし今の高校ではモテるんだろうなぁ、と思う。
ダボダボのTシャツは洗いたてで、私がよく知る彼のお母さんを思い出させた。元気かな、とか。


「兎に角、座れよ。レモネードでも出してやるから」

「色々ありがとう」

「何?お母さんと喧嘩でもしたんか?」

「違う。彼氏と」

「・・・ふーん」


きっとお風呂上りで火照ってしまったんだろう、私の頬は頭を麻痺させるくらい暑くて。
それプラスレモネードはちょっと気が引けた。でも態々用意してもらったのに悪いと思ってチョビチョビ猫舌な私は飲んでみた。
それにしても、熱い。こりゃあきっと舌を火傷したな。


「で?お前の彼氏ってカッコイイの?」

「見た目はめっさカッコイイ。でも中身は鬼」

「なんだそりゃ。変なの」

「あんたよりは変じゃないよ」

「んだとー?俺だって高校入ってから真面目に勉強してんだぜ?」

「どーだか。万年最下位の補習君」

「その呼び方辞めろってー。ってかお前の教え方が悪かったんじゃねーの?」


そうだ。私は、幼馴染と言う立場から先生に勉強を教えてやれと頻繁に頼まれていたんだ。
理解力に欠ける幼馴染に勉強を教えるのには骨が折れる。先生もそれを分っていて人に押し付けていた。
忌々しい。思い出しただけでも腹が立ってきた。でも、いいチャンスだと思っていたのも事実で。



「俺さ。毎回毎回真剣に教えてくれるお前が好きだったんだよなぁ」



「今更ヨイショしても遅いし」



幼馴染で初恋の人。よくつるんで遊んでと中々青春していた中学時の思い出。
今はもうなんとも思ってないけれど、彼は違っていた様で。
そんな事言われても、私は彼氏が居るんだよ。あ、でも別れるって言っちゃったんだっけ。
どうしたものか。



ドサリ。



背中に走る痛み。天上に吊るされた電気と、幼馴染の顔が写る。
なんか私…危機的状況?そんな馬鹿な。



「お前を雨の中ほっぽり出す彼氏なんかと別れてさ…俺と付き合おうよ」



どうやら彼は本気らしい。正真正銘押し倒された形になった私は仰向けのまま、ただボーっと天上を眺めていた。

 頭が、ボーっとする。



「俺に着いて来たって事はさ、OKの意味…だよな?」



そう…なの、だろうか。

私は心の奥底で、久し振りに会った初恋の彼を求めていたのだろうか。
恥ずかしそうに目が泳ぐ彼は、昔と全く変わってなくて。
頭は若干賢くなったみたいだし、成長した体つきは全然違う。変わったね。



「お前を抱きたい」



真っ直ぐに射抜く彼の瞳は、あの人とは全然違う黒。
ふにゃふにゃと歪む私の視界の中で、彼は力強く求めてきた。
別に初恋の人だし、まぁいっか。


私はどこか遠くの意識の中、そんな事を思った。


私のまだ半乾きの髪の毛に指を絡ませ、首に顔をうずめる初恋の人は興奮しているのか息が荒くて。
それだけちょっと引いた。

初めてってこんなに落ち着いてるものなのか。
なんだか自分が自分じゃないような気がして、でもどうにもならなくて。
私はただただ、進んでいく行為になすがままだ。


「好き…なんだけど」


目を見て言って。もっとちゃんと言って。さっきと全然違うじゃん。
首にうずめていた顔を少しあげて耳元から聞こえた言葉。

それは私が1番聞きたかった言葉であり大事な、大事な。




「貴方じゃない」




「え?」





幼馴染で初恋の人はやっぱ初恋の人でしかなくて。
体を許せる許せないの問題でもなくて。

私は一体、何をしているんだろう。



「痛っ―!」



「そんな事言うなよ、。俺さ…ずっと前からお前の事好きだったって言ったよな?」



首筋に感じる痛み。なんでそんな見えやすい所に付けるかな。
押さえつけられてる肩も痛いし。そんなに全体重乗せる様な勢いで、私を圧迫しさせる気なのか。
絡んできた足も動かない。唯一自由な両腕は幼馴染を押し返すだけで精一杯。

ホントにさ。私、何してんの?
喧嘩して幼馴染の所に転がり込んで、終いにはこの有様。
こんな私が今更、あの人の名前呼べる訳ないじゃないか。助けを請うなんておこがましい。
なんて最悪な女なの、私って。



「俺の方がぜってー巧いって。今の彼氏より満足させてやるよ」



 どーしよ。比べる相手が居ないんだけど。



「いや、私まだ処女だし。それに、さ…あの人の方が絶対……なんでもない」



待て待て待て。何について論議してるのさ。そんな事言ってる場合じゃないのに。
…もしかして私、気が動転してる?そんな馬鹿な。



「初めてなのに彼氏以外の男に簡単に股開いてさ…淫乱すぎ」



 そうなのか。



「これじゃーもう、彼氏と顔合わせられないね」



 そうだろうね。



「何?コーフンしてんの?ホント淫乱女。仕方ないから俺が貰ってあげるよ」



 それはそれは。
 ありがたいお言葉もったいない。



なんかもう、何も考えられなくなってきた。意識がぼーっとして顔も熱いし…どうにでもなれ。
私がここで初めてを捨てたら、あの人はどんな顔をするだろうか。
捨てられちゃうのかな。その前に私はもうあの人に顔向けできないし。
でも席が真正面なんだよねぇ…忘れてたぜ。
あはは。ホーント、アホで淫乱な馬鹿娘。しょーもないわな。これじゃ。




「ホントって可愛いし、色っぽいな…ずっとお前が欲しかったんだぜ?」




 そうなの?




「クラスでも人気でさー。俺たちって幼馴染じゃん。だから俺が1番お前に近くて優越感に浸ってた」




 アホか。




「ずっとずっと好きだった。なのに高校は違うし、正直不安だったんだ。お前彼氏出来たとか言うしさ」




 一途、だね。




「でも、やっぱりお前は俺の所に戻ってきてくれた。それだけでいい」




戻ってきた?なんか違うような気が…あーもぅ駄目だ。完全に意識が朦朧としてきた。
きっとこんな体験初めてだから緊張してるのかな。なんか愛に溺れる…みたいな。
愛と言えば。こんな時にまであの人の顔が浮かぶなんて、最低。



「もう、あの人は彼氏じゃないし」



そうなんだよね。私、別れるって言って出てきちゃったんだもん。何彼女ヅラしようとしてたんだろう。
彼氏は居なくなっちゃったケド、新たな相手はできたみたい。


 え?何言ってんの?



「………………………三、蔵」



自分で言ったくせに。
自分で終りにしたくせに。
自分で逃げ出してきたくせに。
自分で離れたくせに。

未練がましいにも程があるね。




「なんだよ、馬鹿娘」




 ?




「だ、誰だよお前!!」




 ??




「コイツの、彼氏だ」





 !




「なん…で?」






ずけずけと近づいて来る足音は仰向けになった私の頭元で止まった。
下からのアングルで見ても、良い男ね先生。
まぁ煙草吸ってるから、手が邪魔で見えないんだけどね。



「帰るぞ、馬鹿娘」



すいません先生。動けそうに無いです。
と、思いきや。一瞬にして視界が反転して危うく顔をぶつけそうになった。
目の前には真っ黒の…スーツ?ん?なんか頭に血が上ってきたんですけど。



「米俵ですか、私は」



そんなに高価なもんじゃねぇな、とか。失礼にも程がありますよ。
言われなくともわかってるもん。私は尻軽の淫乱女。なんとでも言いやがれー。



「病人襲うとは男の風上にもおけんな。ケツの青いガキが」



去り際に言い放った言葉。呆気に取られていた幼馴染はなす術も無く、ただただ座って私たちが去るのを見ているだけだった。
そんな彼に最後の挨拶。さよなら、幼馴染。そしてさよなら、私の初恋。
























「38度7分…馬鹿か貴様は」


「すいません」


所変わって、幼馴染の家から随分離れた場所に止まっている車内。
なんで体温計を常備しているのか、とか。気になったけど気にしたら負けなんだよ、私。
これまた何故あるのか分らない毛布に身を包み、チラリと先生を盗み見てみた。

見ないほうがよかったと後悔しても時既に遅し。…とーってもお怒りだ。


「もう寝てろ。明日からテストだってのに…呆れてものが言えん」


「ごめんなさい…」


さっきから謝ってばかりの私は、相当怒ってる先生に素直に従うしか他なかったのである。
熱で頭がボーっと…あ、私って熱があったんだね。なんかホッとしました。虫のいい話だけど。
そうかそうか。熱か。熱…くどいな。どんだけ嬉しいんだよ私。


「なんで、来たんですか」


うっかり。つい口に出してしまった言葉は、私の指定席である助席の椅子を倒そうとして前かがみになった先生にモロ聞こえていて。
訂正するなんて事できませんでした。この距離じゃ聞こえないでと言うほうがおかしいね。
熱で頭がおかしいんですって、言い訳は通用しますか?しません。ですよねー!

先生は中途半端な格好で静止して、いつのまに電気が消えてしまったのかこの暗闇では顔を確認する事はできなかった。



「お前にはまだ、早い」



静かに、でも確かに聞こえた声は心なしか低くて何かを抑えているようだった。
頭では冷静なはずなのに、やはりどこか感覚が麻痺していた私はその声の意味が理解できなくて。
またしても余計なことを口走ってしまったんだ。



「私だってもう高2だし、女子高生のする平均年齢はとっくに過ぎてるんですよ?それに――」



 ガンッ―!



ビクリ、と身を震わせ私は顔の横に突かれた手を辿って視線を先生に向けた。
怒るのはいつもの事なのに、今日はなんかちがくて。熱で〜なんて言い訳は微塵も通用するはずが無い。
それなら、と。私は自分が悪いのを自覚しながら言いたい事をいってしまおう、そう思った。



「それに私はまだ餓鬼だし初めても済ましてないし、先生凄そうだし、相手にされなかったら、嫌、だしっ」



分ってる。わかってた。
私のした事は未遂だとは言え許されないことだと。
どんな理由があろうと三蔵、を裏切った事には変わりないのだ。

私は何を、やってるんだろうね。



「怖くて…ひっく不安、で……ぐすっ…ごめ、なさ」



 ぐいっ



泣くな。甘ったれるな、自分。
どんなに三蔵の腕の中が、暖かくても、優しくても――。




「だから、お前にはまだ早いって言ってんだよ、」




やっぱり、声も、存在も、優しさも、人も、全然違う。
三蔵じゃなきゃ嫌。三蔵だから、好き。
どんなに喧嘩しても別れようとしても別れられなくて。
その声で、三蔵が名前を呼んでくれれば嬉しいんだよ。



「ごめんな、さいぃ…!ごめん、なさっ」


「もういい、わかったから。泣くな、」



優しく撫ぜてくれる手が全てを取り払ってくれるような気がして。顔をうずめて三蔵の胸から聞こえてくる鼓動が心地いい。
もっと近くに三蔵の存在を感じていたくて、泣き止むと同時に思いっきり抱きついてみた。この見た目と正反対に優しすぎる鬼に。



「変態」


「俺だって男だ」



あれ。確かさっきまで落ち着いてた気がするんだけど…なんか脈打つのが早くなってません?せんせぇー?
急に気恥ずかしくなってきた私は照れ隠しに言ってみたけど素直な返答が帰ってきて一層慌てることとなる。
これもあれですか。天罰かなんかですかそうですか。ホントごめんなさいとしか言いようがないよ。



「怒ってたんじゃないんですか」


「お前のそのマヌケ面見たら、どーでもよくなってきたんだよ」


「まー失礼しちゃうわー」


「病人は黙ってろ。さっさと寝ちまえ馬鹿娘」



どこまでも優しい鬼はやっぱり大人ゆえの貫禄?懐の大きさ?なんだか分らないけどこれだけは言える。




「大好き」




 ガッコン




「うゎっ!」





一応病人なんだけどな。いきなり背もたれを倒されたら目が回りますよ先生!
急に開放されたかと思えばそのまま目に見えぬ程早かったんじゃないかと言う位いつのまにか仰向けになった私。
顔の横にはまたもや三蔵の腕。足の間に割り込んでくる長い先生の足。この状況では逃れる術は無い。
一体何が起こってるんだろうか。誰か教えてください。



「今ここで、ヤるか?」


「カーなんちゃらってやつですか」


「だな」


「初めてが車の中…ってか先生寝ろと仰りませんでした?もしかしてこの為に……」



そんなおっかない顔で見下ろさないでくださいよ。ってかいきなり、何なのさ。
私は疑問詞を浮かべ、三蔵は空いてる方の手を私の頬に添えて、



「クッ…ククク…」



笑った…笑っ…た……?



「とうとう壊れちゃいましたか、先生…」


「バーカ。あまりにも緊張してるお前がおかしくてな」



正直言ってとてつもなく怖いんだけど…あぁなんでもないですごめんなさい。
これも天然記念物…ってかなんだろう。もっと凄いものだと思うんだ。
だってさ、あの鬼が声出しながら…笑ったんだよ?こわっ…凄くない?初めてですよこんな事!



「先生も声出して笑うこともあるんですね」


「人をなんだと思ってやがんだ」


「…鬼?」


「犯すぞ」


「すいませんでした」



こんな時にヤるだなんて病人のこっちにしてみれば堪ったもんじゃない。
それに。私はそんな軽い女じゃないんですからね。



「ヤられそうになっちまってた癖に」


「う…ごめん、なさい…」


「謝罪はいい。ったく…こんな所に痕付けられやがって」



どーにも明るく振舞っても一瞬で沈んじゃう私。いっその事、このまま謝罪の言葉をずっと言っていたい。
それほど申し訳なくて、後ろめたくて。本当はもうココに居ちゃ駄目だと分ってるのに、三蔵の優しさに甘えてしまう。
優しすぎるんだよ。もっともっと怒れば良いのに、なんでっ。



「痛っ〜!」


「……悪ぃ」



訂正。三蔵は完全完璧怒ってます。
表面上は優しい振る舞いをしているが内心では腸が煮えくり返っているのではないかと。
誰に対してかは定かではないけれど、でも。しいて言うなら矛先はきっと調子がいい私に対して…かな。

どんだけ魔性の女なんだ、自分。



「相手をコロコロ変える最低の女みたい」


「自分で言ってちゃ、世話ねぇな」


「うん。最低だ」



勝手に自己嫌悪。今更ながら、後悔がどっと押し寄せてきた。
私の貞操は私が勝手に捧げようと思って、未遂だったけどでもさ。
許してくれなんて、言わないよ。…言えないよ。




「ソレを全部ひっくるめて、俺はお前を選んだんだ。それを忘れるな」




なんで。なんでなんでなんでそんな事言うのさ。
優しくしないで、手を差し伸べないで。こんな薄汚い私になんか、その優しい手で触らないでよ。

縋りたく、なるじゃん。

受け止めて欲しいって、思っちゃうじゃんか。




「今回限りな。こんな事…こんな、茶番」


「三、蔵っ」


「俺が悪かった。だから、離れるんじゃねぇよこの馬鹿娘」




ホント、大好きだよ。三蔵。もう離れないから、だからっ。
そんな苦しそうな顔、しないでよ。



「私の全部は、三蔵のものだから。誰にもあげない、からっ」


「あぁ。誰にも やらねぇよ。」



苦しいほど抱きしめられ、それが全身で三蔵の心境を表しているみたいだった。
こんなに苦しいのに気付かなかった私は馬鹿だ。大馬鹿だ。
心なしか嬉しそうな三蔵に答えるように、私も思いっきり抱きつくよ。
許されたと、思って良いんだよね?



「ひゃあっ」


「舐めれば治る」


「そー言う問題じゃ、」


「あぁ?」


「なんでも無い、です…ぐすっ」



全面的に降伏宣言です。熱出てるのに…容赦が無いのは鬼らしい。
首筋に感じる痛みと共に生暖かい舌が這う感覚が襲ってくる。ねぇ、相手は病人よ?先生分ってる?
さっき自分で言ってた癖に…男の風上にも置けません!



「なんだ…最後まで、」


「あー何も耳聞こえない」


「本気で犯されたいのか」


「病人なんですけど…ってか誰の所為で熱出だと思ってるんですかっ」


「雨の中傘も差さずに飛び出していく方が悪い」


「だからって追いかけても来てくれないし、先生全然濡れてないし!本当に心配してくれたんですか?」


「・・・ふん」


「何そのどっちともつかない微妙な返事は」


「三蔵だろ」


「話をそらさないでください!」


「呼ばないと答えねぇ」


「餓鬼かあんたは!!!」


「早くしねぇと…」


「何処触ってるんですか!?変態ー変態ー!」


「なんとでも言え。俺だって男だ」


「知ってる!しかもさっきも聞いた!はーなーせーっ!」


「早くしねぇと本気で進むぞ」


「もぅ!呼びます呼びますからどいてってば!」


「・・・」


「三蔵!大好き!!」


「――っ!」


「へへっ!どーよ」


「上等…よし、ヤるぞ」


「明らかおかしい!!約束が違う、んっ…」



そうやっていつもいつも口を塞げば黙る私だと思わないでくださいよ!
私だって抵抗…できる訳ない、か。なんでこんなに手馴れてるんだ、この鬼は。
さっきの大人の余裕とか、貫禄とか帳消しにしていいかな。
ってか最初と主旨が違ってる…気にしたら負けだ、。

長ーい長いキスにもう腰砕け。まだ心の準備もままならない私はなすがままだ。
このまま進むのか、と腹を括った瞬間。
ふと、重みが無くなった。



「バーカ。冗談だよ」


「・・・寸止めで先生の方は大丈夫なんですか」


「気合でなんとかなるだろ」


「えっち」


「男なんざ大抵そんなもんだろ」


「へへへっ…」



これだから、三蔵が好き。大人だとか、そんなの関係ないんだ。
三蔵は根っからの真面目で、優しくて。
今まで貰った愛をいつか返せる日が来るだろうか。先はまだまだ長いね。



「これからどーしよ。もう夜中だし…熱出たし」


「夜間やってる病院でもあんだろ」


「でも先生に迷惑かかるし…」


「最終的には俺の家に泊まるんだから同じ事だ」


「それって…」


「安心しろ。なにもしねぇよ」


「ホントかなー」


「・・・」


「なんか言ってくださいよ」


「『なんか』」


「もー!三蔵の馬鹿ぁー!!」












土砂降りだった雨はいつの間にか止んでいて。
キラキラ光る夜空の星に金糸の髪を重ねなんだか胸が温かくなった。
これからも、色んなハプニングが起こりそうな悪寒に怖がっても仕方ないし?
今この瞬間を宝物にするべく…一先ず私は休息です。



「あぁ…クラクラする」


「騒ぐからだろ。この馬鹿娘」


















雨上がりの








(お星様に願いを込めて)










ATOGAKI
このサイトにはハプニングがつきものry
また新たなキャッチフレーズもとい言い訳の出来上がりさ。今後はもう言いません。笑

ってか…なんて調子のいいヒロインなんだ…いや、何も言うまい。
どうなんでしょうね。三蔵先生にとっては。きっとすんごく怒ってるけど、がめっさ反省しているヒロインが可愛くて可愛くて。笑
あーこんな簡単に解決していいものか、と本気で悩む管理人です。ごめんなさい。もっともっとドロドロにしたかった。
でももう管理人の気力はゼロです。駄目だ…もう無理だ。今後は暫く、落ち着いた物を書こうと思います。笑
別れる別れないと言う問題はどうなったのだろうか←

三蔵は何故幼馴染の家に来れたのか解説。
三蔵先生が引っ張り出してきたアルバム。それは卒業アルバムで、幼馴染の住所が書いてあったのだ。
それで、あ、めっさ近いやん。でも雨に濡れるの嫌だから車で行こ。思い立ったら即行動♪

そんな感じ。いいのか、それで。爆笑

と言うワケで。本当の言い訳は日記に書きます。サラバ。7/10

アドレッセンス【adolescence】=思春期