「の彼氏、カッコイイねー!」





そんな話を聞いた。

廊下ですれ違った生徒が興奮気味で話していたのだ。

一瞬ギクリとしたが、どうやら違う様子。

の彼氏は教師。それは大問題なワケで、バレたら大変な事になる。

だからきっと、それはその生徒の見間違いか勘違いだったのだと推測した。



「つー事はなにか?三蔵サマではなくて、他の誰かとちゃんは歩いてたってワケ?」


「そういう事になりますね。一体誰なんでしょう…」


「三蔵が聞いたらすっげー怒り狂うかもな」



想像したら怖くなってきた俺たちは冷や汗をたらしつつ、『彼氏』の正体を暴こうと一致団結したのだ。







これが昨日の事。






「はぁ〜。今日もちゃんと三蔵サマはラブラブっと…」


手帳にメモをしながら俺は何が悲しくてカップルの尾行をしなきゃならねぇのかと嘆息。

別にちゃんが浮気してるとか疑ってるワケじゃねぇよ?

ただ、その『彼氏』っつうのが気になっちまって夜も眠れねぇ…ってのは嘘で、これが三蔵サマの耳に入ったらって気が気じゃねぇんだワ。

まぁ夜も眠れないってのはあながち嘘じゃないわな。ははは…。

と言うワケで、交代制でカップル…もとい、ちゃんを尾行させてもらってるってワケよ。


「目新しい情報はありましたか?」

「いんや。全くもってそんな素振りは見せないぜ。いつものよーにラブラブで良いこった」

「あはは…つい後ろからグサッと殺っちゃいたくなりますよねぇ」

「オイ八戒…冗談に聞こえないぜ」

「冗談?ソレこそご冗談を」

「……」


そんな殺気立って尾行してたら気付かれるって。

兎も角、今はお忍びデートの真っ最中を尾行してる俺らだけど…ここは何処よ?

























2日前



「よぉ。相変わらず可愛げねぇツラだな」

「用件を言え」

「んなに眉間にしわ寄せてたら彼女に嫌われちまうぜ?」

「・・・・・・」

「そう怒んなって」

「・・・・・・」

「わかったから。お前を呼び出したのは忠告だ。よく聞け」

「?」

「今度、新任の教師が1人来る。ソイツのお守りをしてもらおうって事だ」

「断る」

「言うと思ったぜ。しかし…これは校長命令だ。拒否権は無い」

「チッ」

「で、忠告はココからだ。その新任教師は驚くほどお前によく似てる…かもな」

「あ?」

「だから、もしかしたら…お前の彼女はコロっといっちゃうかもしれねぇぜ?」

「んなワケあるか」

「可能性ってもんをしらねぇのか?…ま、精々奪われないように監視でもなんでもしてろよ」

「ふん。貴様の思惑に乗る気はねぇが、お守りでもなんでもしてやるよ」

「しっかり職務を全うしてくれよ?玄奘三蔵」



扉が閉まる音と共に心底楽しそうに笑う校長、観音は新任教師と三蔵を思い浮かべ声をあげる。



「なーんつって。に限ってアイツと恋仲に発展するワケがねぇよ」



不可解な事を言いながら窓の外に向き直り、これから起こる事に想い馳せ――。




















そして現在。

は車を出て大きく伸びをした。長時間車で移動していたので体が開放感を求める。
三蔵もエンジンを止めて下り、の横に並んだ。


「お父さんと会うのも久し振りだー」

「ほらよ。水汲んでくるから持ってろ」

「うん。ありがとう三蔵」


目の前には墓地。辺りは自然に囲まれていて木漏れ日がゆらゆらと風と共に揺れる。
木々に囲まれた道を少し進めば目的の場所、の父親が眠るお墓があった。
日差しに遮られ、涼しい風が吹き抜けるソコは綺麗に手入れされていて真新しい花も添えられていた。


「お母さんが朝に来たって言ってたから、お父さんの実家に居るのかな?」


ここは父親の実家の近くにある墓地だ。そして今日、その父親の命日なのである。
まさか三蔵が一緒に行ってくれるなど考えもしなかったは嬉しそうにはにかんだ。


「線香貸せ。火ぃ点けて来る」


暫くするとお線香の香りが鼻腔をくすぐり、どこか懐かしい感じ。それと同時に思い出す場面。


「お葬式の時のお坊さんってば坊主頭じゃなくてロン毛だったんだよ?想像と違って吃驚しちゃったんだー」

「あぁ…あ?ロン毛?」

「そーなの!後ろでミツ編みしててーで、すっごく優しそうな人でね。三蔵とは真逆って感じ」

「・・・・・・」


これも運命なのだろうか。そのお葬式をやったお坊さんとは紛れ真無く三蔵の父、光明で。
ま、言わなくても良いか。と三蔵は黙ってる事にした。


「もしかしたらお母さんが来ちゃうかもしれないから、急がないとね」


三蔵が火を点けて来たお線香を受け取り、は歴代のご先祖様と順番にお線香を置く。
そして持ってきた花を花立てに挿し込み2人は手を合わせた。暫し沈黙が辺りを支配する。
2人は各々何を思うか、心行くまで手を合わせた。


「そろそろ、行こっか」

「もういいのか?」

「うん。十分だよ」


色々話したいことは沢山あった。でも、その話題の元は隣に居る。それだけで全部伝わると思った。
は父親のお墓を振り返る事無く、来た道を引き返す。心配は要らない。幸せだから。


「そうそう昨日ね、買い物行って来たのー」

「一人でか?」

「ううん。でね、三蔵に似合いそうなスーツがイッパイあってさ。今度私が選んであげるね!」


他愛もない会話を楽しみながら、2人は雑木林の間の道を歩く。
柄杓と桶を戻しに水場へと向かっているのである。


「それで、その一緒に行った人がすっごく三蔵に似てるからずっと三蔵を思いうけべて大変だったんだから!」

「アホかお前は………ん?」

「だからついつい選ぶのに真剣になっちゃってさー」


三蔵の脳内でフラッシュバックされた言葉。校長室に呼ばれ観音が口にしたあの、発言。



『その新任教師は驚くほどお前によく似てる…かもな』



偶然か。はたまた。
三蔵が考えていると不意にの足が止まる。そして。




「」




目の前に現れたのは一人の人物。黒髪で真っ黒のスーツを着込んだ男だった。
なれなれしくの名を呼ぶその男の正体とは、一体――。



「あ、焔にぃ!」

「昨日ぶりだな。」



目の前に現れた男、焔と呼ばれたその男は口元に笑みを浮かべの頭を撫ぜる。
その行動に嬉しそうに笑うは三蔵が見た事も無い幼い表情をしていて。
何故か、三蔵の胸の中にどす黒い感情を湧き立たせた。

この男が先ほど言っていた男?
なら、己に似ていると言う男は、コイツ?


(何処が、似てるって?)


不本意極まりない言葉に苛立ちを覚える三蔵。

(どいつもコイツも、目が腐ってんじゃねぇのか?)

第3者から見たら似てる…と言うのもあながち間違いでもなさそうだ。



「三蔵、紹介するね。この人は叔母様の遠い親戚だかなんだかの焔さん。ちっちゃい頃からお兄ちゃんみたいな存在なの」

「なんだ。コイツが彼氏か?」

「うん!玄奘三蔵って言って…まぁ彼氏です」

「ふん。見るからに悪そうな奴だな。、こんなのと付き合ってるなんて認めんぞ」


腕を組み、睨み付ける様に三蔵を見る焔は敵対心むき出しだ。
娘の交際を認めない頑固親父。それがしっくり来そうな風貌である。


「なんでー?三蔵カッコイイし、優しいよ?見た目で判断しないで!…まぁ、悪そうなのは兎も角」

「…フォローになってねぇ」


の言葉にがっくり肩を落とす三蔵は兎も角、この男は敵だと判断した。








+++




「なーるほどねぇ」

「あれが昨日生徒さんが言っていたの『彼氏』…ですか」

「みたいだな。ってか、あの男って…」

「ふふふ…これから楽しみですねぇ」

「でもちゃんってば、三蔵サマを彼氏って公言しちゃってるぜ?」

「まぁなんとかなりますって」

「ホントかよ…」


三蔵達から少し離れた場所。そこには、2人を尾行していた悟浄と八戒が。
こそこそと会話を盗み聞きする2人は謎が全て解けたといわんばかりにニヤニヤ。
これから起こるであろう事態に観音共々心底楽しそうに見守っていた。


「それにしてもよ…三蔵サマ達行っちまったぜ?」

「困りましたねぇ。随分入り組んだ行き方で来ましたから…僕達は迷子ですかね?」

「マジかよ…!?」


実は2人の存在に気がついていた三蔵の策略だったり…じゃなかったり。



「ヘタな尾行なんざしてるからそういう目にあうんだ」



三蔵サマ曰く。







+++










そして月曜日。墓参りから2日後の今日。

朝から全校集会が行われ、校長からは新任の教師が来ると発表されていた。
は何故かワクワクした様子で珍しく遅刻もせずに今、体育館に座っている。

意気揚々と登校して来たを不審に思いつつ、三蔵は教師が並ぶ体育館の端っこに立っていた。
観音からは何も聞かされていない。しかし八戒たちは何か隠している様子だった。
みんなの様子を見てただ寄らぬ不安を抱えた三蔵はいつもより数倍眉間に皺が寄っている。


「では新任の先生、挨拶をお願いします」


八戒の司会で壇上の横から現れキリリと歩く新任の教師。


「なっ…!」


三蔵はその人物を見て驚きで目を見開いた。
新任の教師は教壇のマイクの前に立ち、言った。



「天竺学園から赴任してきた焔です。よろしく」



ザワリ。生徒たちのざわめきが館内に響く。
それもそうだ。その新任の教師、焔はめっさ男前でしかも。

生徒たちは口をそろえて言うだろう。





あの鬼と、似ている!




と。




「だから、何処が似てんだよ!!」




思わず三蔵が怒鳴ったとか。なんとか。



「焔にぃーカッコイイよー!」



生徒に混じっての声が、三蔵の耳に入ったのであった。






「クックック…これだから面白いぜ。なぁ、次郎?」

「悪趣味ですぞ、菩薩」


















なんてこった


(ありえねぇ。お前らの目は節穴かっ!)








ATOGAKI
焔、登場。この人の存在を忘れちゃいけねぇぜ!!←

と、いう事でーヒロインの兄貴分、焔です。新任って、赴任してきた教師の事を言うんですよね?え?違う?!
あっははっは。うん。このサイトにはこんなハプニングも付き物です。って事で・・・ごめんなさああああい!!!!
指摘、お願い致します。ってか誰か教えて!!←←

今回は、ヒロインの彼氏と勘違いされた焔。それを突き止めるべく立ち上がった悟浄と八戒。悟空、どこいった。笑
焔はヒロインと一緒にスーツを買いに行っていて、ソレを生徒が目撃。
んでー実は新任の教師だったんだよーって話。もう説明ベタですみません。三蔵サマは終始のけ者でしたね!←
これからは登場したけど、でも気まぐれに焔さんを出そうかなーって感じです。はい。ちょっとネタにつまったとか言わないぜ。言えないんだぜ。笑
どーなるんでしょうねぇ。って事で、また次回。

え、ってかアニメの設定では三蔵と焔って似てるって言う…アレ?まぁ、いいでしょう(殴)

※続きません