「あ、あれ!?」





鞄の中、スカートのポケット、机の中、ロッカーの中。わかってはいるけど胸ポケット。

何処にもありゃせんぜ、さん!

なんてこった!私はどうやら財布をお家に忘れてきてしまったらしい。

お母さんは朝が早かった為、お弁当も無い。

いつもの様に遅刻ギリギリ(でも間に合った事は褒めてぇ!)だったからうっかり取り忘れたのだろうか。

昨日は帰った後買い物に出かけたから違う鞄の中だきっと。

さて、どうしよう。

友達に借りるのは気が引けるし、でもお昼ご飯食べないと力が出ない。

運が悪い事に5時間目はあの鬼教師(担任でもある)数学だ。

授業中にお腹の虫がぐーぐー鳴ったら絶対からかわれるよ!

最悪だぁぁぁ!!



「どー、しよ…」



こうなったら借りるか!

幸子ぉ!…居ない!

えり!…居ないぃぃぃ!!



「なんでこんな時にー!!!!」



自分が悪いのだけれども、でも誰か居たっていいじゃない!

他のクラスメートはお金の貸し借りが出来るほど仲良くはないし。

ってかお金の貸し借りって基本駄目ですよね。そうですよねー!

いや、今は緊急事態だ。仕方ない事だと割り切ろう。

でも。肝心の借りれる相手が居ないんじゃどうしようもないよ自分。

困った。非常に困った。

残るは最後の手段。でも、後で何言われるか…。



「おや?如何したんですさん」


「八戒先生!担任は今何処にいますか!?」



神が降臨なされたようです!ぐっとたいみんぐです八戒先生!

しかし八戒先生に借りるなんて出来ない私は思わずお口が滑ってしまったのです。

やっべまずった!



「三蔵ですか?それなら数学準備室の方に居たと思いますが…」


「…ありがとうございます」



、腹を括るしかないようです。

ご丁寧に居場所を教えてくれた八戒先生に悪いし、私は空腹の我慢の限界が近かったので教室を飛び出した。

八戒先生、ごめんなさい。それと…ありがとうございます。いや、八戒先生は悪くない。























廊下を駆け抜ける私。すれ違った紅孩児先生に走るな、と怒られちゃったケド今は許して先生!
私のお腹は既に限界点を突破しているんです!生活指導室逝きかな、こりゃ。


























タッタッタ…ガラガラ!




「たのもー!!」



こういうときに限って、普段は全然近寄らない数学準備室に居る担任。
は全速力で教室から遠い数学準備しつへ駆け抜けたどり着いた。
着いた早々ノックもせず、あろう事か大声を出しながらドアを開ける。
そこには、何かを探していたのだろう、本棚の前に立っているお目当ての担任の姿が。



「なんだいきなり。うるせぇんだよこの馬鹿娘」


「ゼーハー…うぇっぷ…」


「・・・・・・」



一体なんなんだ。道場破りか貴様は…と視線で訴え、あきれつつ三蔵は少々お下品なを見据えた。
未だ入り口で呼吸を整える。それ程全力疾走してきたと言うことが窺える。
そしてとりあえず備え付けのソファーにを促すとやっとの思いでは話し始めた。


「はぁ…いきなりすみません」


「全くだ。で?何か話があって来たんだろ…道場破りじゃないなら話してみろ」


担任を目の前にすると、やっぱり気が引ける。そうでなくても、お金を借りると言うことはイケナイ事。
普通に借りれるわけでもないし、言い難いなぁ。でも空腹の方が勝っているは意を決して頼むことにした。


「それがですね…ちょいとお願いが」


ぐぅ〜



ばっとたいみんぐ…いや、これはむしろないすたいみんぐなのかもしれない。
あぁ。もう如何にでもなれ。
咄嗟にお腹を押さえ恥らう。隠してももう遅いのだが、幸か不幸か。三蔵は今ので全て理解した。



「倍返しな」


「はい…」


「嘘に決まってんだろ。貧乏学生から倍取るなんざそこまで人間腐っちゃいねぇよ」


「天のお恵みや…ありがと、」



「その代わり、課題5割増しだ」



「ですよねー!!」



と言うワケで、ありがたくも1千円ゲットした。
お金を返さないのは聊か気が引けるが、その代わりに課題増しと言う代価を支払う事となったのであった。



「俺の分も買って来い」


「それって…」


「偶には、な」


「はーい!」



は早速購買へ繰り出した。足取り軽く、この後の事を考えると浮かれずには居られない。
なんてったって滅多に無い好機。担任の言葉の裏には、『一緒にお昼ごはんを食べよう』と言う意味が篭められているのだから。
うっふふ〜と傍から見れば滑稽な程ご機嫌なは、2人分のご飯を買いに購買へと入っていった。


「何にしよっかなぁ〜」


と言っても時間が時間なのであまり残っているものは少ないが。
しかしの大好物、ジャムパンは奇跡的にも1個だけ残っていた。
それを手に取り、今度は三蔵の分を探しに違うコーナーへ。
だが、しかし。そこでは見てしまった。とある男子生徒がお菓子をポケットの中に入れるところを。

そしてこの時から、をどん底へと突き落とす事件が始ったのである。
は咄嗟に男子生徒の腕を掴み、ポケットから盗んだお菓子を取り上げた。


「駄目だよ?万引きは停学だし内心にも響くから」


「なっ…!」


「今なら先生にも黙っててあげるから、」


もう犯罪事だが気分がいいは見逃してあげようと思った。
だがそれが間違いだったのだ。折角優しくしてあげたのを傍目に、男子生徒は声を張り上げた。



「ま、万引きはアンタだろ!先生!この人万引き犯です!!」


「ちょ、えぇぇ!?」


取り上げたお菓子を持ちながら、はただ呆然とするしか出来なかった。


(何?私が、なんだって!?)


慌しくなる購買。すぐさま駆けつけた教員と購買のおばちゃんが来ると、男子生徒は虚言をツラツラと話し始めた。
それはが体験した事をそのままそっくり改竄したもので。
手を捻り上げられたは頭が真っ白になった。



「その人、その手に持ってるお菓子をポケットに…!」


「!お前何してる!!」


「違う、私じゃっ」


「嘘を吐くな!この子が目撃したんだぞ!」


「そんな…!」



の言い分を取り合ってもらえない。それが無性に悲しかった。
寛大な対応をしたのにも関わらず裏切られた気持ちと、絶望がぐちゃぐちゃと頭の中をかき乱す。
ギリリと痛みを訴える腕も、教員の怒鳴り声も、全部遠くの出来事に感じた。


――三蔵。


自然に流れてくる涙をそのままに、の脳裏には担任の姿が過ぎる。
無実なのに、疑われる悲しさ。濡れ衣を着せられた焦燥感。
人生初の汚名をは与えられることとなった。























それでも私はやってない

(誰か聞いて)















ATOGAKI
また続き物になります、教師三蔵先生(仮)シリーズ。(仮)の場所がおかしいのは今更です。笑

今回はなんと窃盗の疑い(むしろ決め付けられちゃってますけど)をかけられたヒロイン。どうするよ!←
こういう時って凄く焦りますよね。無実なのに。モチロン管理人はそんな経験したことがありませんが、今後何が起こるかわからないものです。
折角三蔵と仲良くらぶらぶーな昼食を堪能しようと思った矢先にこれです。最悪です。
どうなることやら…なんかハプニングを入れようとした結果がこうなっちゃいました。はっはっは。

さて、今後どうなるヒロイン!ちゃんと容疑は晴らされるのかヒロイン!映画をモロパクリしたタイトルと共に、次回に続く。すみませんでした。