吹き抜ける風
降り注ぐ太陽の光
真っ白なコンクリート
隣には金髪
、絶好調です。いえいえ断じて無理なんてしてませんよ。
あれ以来足を踏み入れたことが無い屋上には、八戒先生と問題の男子生徒が。
隣の担任は心配そうに私を見てるけど大丈夫だよ。もう、アレは大丈夫。
「私が…初めて告白された屋上…」
「お前は馬鹿だからまんまと騙されたんだったな」
「それは言わないでくださ…!」
「どいつもコイツも、詰めが甘ぇんだよ」
私の頭を撫ぜる手つきは聊か乱暴だったけど、わかってる。わかってるよ。
昔の事なんて忘れた。なんてったって今は三蔵が居るからね!!
「あ、あの…先輩…」
おどおどした事件の真犯人は、1年生で後輩だった。
直接関わったことは無いけれど、彼も理由があっての事だったんだ。
ここは先輩として大目に見てあげましょう。
そう。問題はこれからだ。
やっぱり屋上は苦手だけど、隣には三蔵が居る。それで全てがどーでもよくなってしまうんだから、不思議!
フフハハ。今に見てろいじめっ子。このが成敗してすんぜようぞ!
「あれー?じゃん。何、今度は立場が逆だね?」
悪夢、再び。否、もう私はなんとも思ってないからね。
呼び出しがかかったのだろう、私たちが居る屋上に新たな人物が足を踏み入れた。
その正体は1年前、私にドッキリを仕掛けてきた、あのサッカー少年。
今はもう不良となったサッカー少年は部活をやめ、サッカー部ではなく帰宅部へと変貌を遂げていた。
彼は私と後輩を見なりニッコリ微笑んだ。その爽やかな笑みはご健在らしい。
「何?呼び出しなんて、告白でもしたいの?」
「それは無い。思い上がりお疲れ様です」
これが私の強がり。ふふふ。今に見てろこの落ちぶれサッカー少年!!
私はこの時を待っていたのだ!!ってどっちが悪役!?おかしいな!!
「じゃあ何?」
「この後輩が証言してくれました。あんた、この子虐めてるんでしょ?」
「何処に証拠が?万引き犯さん」
よくもぬけぬけと。見下したように睨む彼は白を切るようだ。
わかってるんだからね。この後輩は、イジメを受けていると正直に言ってくれた。
その勇気を無駄にしない為にも、私の復讐…ではなく、この学園の風紀を正す為にも、戦うよ!
「イジメかっこわるい。な、後輩」
「イジメかっこわるい。ね、先輩」
「からかってんの?!」
昨日の敵は今日の友。ノリがよくて助かったよ後輩。
こんな可愛くて素直な子を虐めるなんて…。知ってる?虐められた子はどんなに深い傷を負ったか。
それを見下して何が楽しいのさ。私には到底理解できない事だね。
「私ね、あの時万引き犯にでっち挙げられなければ大好物のジャムパン食べれたわけよ。
停学になって2日間も学校行けなくて見たくも無い昼ドラも見ちゃって、それはもう怖かったの。
先生たちにも友達にも迷惑かけたし、何よりジャムパンが」
「先輩、ジャムパンは俺が奢ります」
「忘れないでね」
食べ物の恨みは恐ろしいのだよ諸君。人間と言うのは食欲に1番敏感で貪欲なの。
それを邪魔されて、あろう事か三蔵との楽しみにしてたお昼休みも全部パー。
何、なんなの?私の邪魔して何が楽しいのさ!
「弱いものイジメして、お金ないの?持ってないの?お母さんにお小遣い貰ってないの?
後輩に買ってきてもらうなんてひもじくないの?プライド無いの?惨めだと思わないの?馬鹿なの?」
「んだとコラ!去年はまんまと騙されたくせに生意気なんだよ!」
「いつの話ですか。そんな大昔の事引っ張り出さないと勝てないの?
そんな弱いあんたはママの所帰って甘えてな!!」
お願いだから昔の事を穿り返さないでー!!
と、内心慌てる私はなんでこんなにペラペラと口上が並べられるのかが不思議でなりません。
そうさ。私は怒りMAXなのよ!
知ってる?!少し目線を上にずらせば三蔵と八戒先生が給水タンクの上で見てるのが見えるんだよ!
「何コイツ!強気になっちゃってさー、マジキモイんですけど!!」
「イヤ、君の方がキモイよ」
「先輩可愛いよ」
「ありがとう。今までの事は水に流してあげる」
あれ?豚も煽てりゃなんとやら。やるわね、後輩。
でも可愛いって言われて嬉しくないなんて居ないのよ!!
「なんだよ。見方が居るからって強気になっちゃってさー。調子に乗るのもいい加減にしろよ?」
わかってる。私は一人じゃ何も出来ないただの可憐な女子高生よ。(可憐?何処がだ)(煩い!)
でもみすみす虐められてる後輩を黙ってスルーなんて出来ない!
別に私の私怨が篭ってるんじゃないんだからね!あー私のジャムパン返せえええええええ!!!
「ま、弱者がより集まったって強者には勝てないんだぜ?それを思い知れよ、」
「アンタの何処が強者だって言うのさ。元モテモテサッカー部エースさん」
「今だってモテモテだ!」
「不良のあんさんにな!!」
「女だって俺の手にかかればイチコロだよ!」
「その割には最近その手の話は聞かないんだけど!」
「今は休業中なんだよ!!」
「自信過剰お疲れ様です!」
「お前だってあの一件以来告白なんてされてねぇんだろ!!」
「・・・・・・はて。彼氏は居るつもりなんだけどな…」
そういえば、告白ってされたっけ?…あれ?
「こっちを見るなこっちを」
「おや?三蔵、何も言ってさしあげてないんですか?…さんかわいそうに」
「うるせぇ」
そんなアフレコ付けれる自信あるよ。むしろこれが正解でしょ?
給水タンクの上を睨むと目をそらす三蔵。八戒先生、この状況じゃあ呑気に手を振られても振り返せませんよ。哀れんだ瞳で見ないでぇ!
兎に角、後で三蔵に問いただすとして私の呟きを拾ったサッカー少年は目を見開いた。
何さ。そんなに私に彼氏が出来たことが信じられませんか。へへっ!ざぁまみろ!!
「へ〜、に彼氏ねぇ。その男は見る目が無いって言うか、さぞかしその彼氏とやらもお前と同じでぶっさいくなんだろうな」
「アンタ…殺されるよ」
「殺せるもんなら殺してみろっつーの。今ここにつれて来いよ」
もう居るんだけどね。君の斜め上後ろに。でもそんな事言えない私は…何さ。
今の彼氏居るよっていう発言は私の妄想になっちゃうの?え?嘘ぉ!?
あー彼氏が居るなんて言わなければよかったかも。いや、そこはちゃんと居るって言わなきゃ駄目だよね。
本人を目の前にして居ないなんて私には言えません。
「とにかく!!今後一切この後輩に手を出さないで」
「じゃあには手出しOK?ボッこボコにしても文句いわねぇよな?」
「やれるもんならどうぞ。その前に、私があの鬼担任率いるクラスの生徒だということをお忘れなく」
「担任が怖くたってお前自身はこれっぽっちも怖くねぇよ」
虎の意を借る狐。なんとでもおっしゃい。彼が言う様に弱者は強者を頼らなきゃ何にも出来ないのは認めるよ。
でもね。サッカー少年は、心が弱者。私はそんなサッカー少年に負ける程、心だけは柔じゃないんだから!!
力が無くたってこのジャムパンへの執念は強大なのさ!!はーっはっはっはっは!!
あ、鬼担任って言うのは忘れてね。三蔵サマ睨まないで!八戒先生笑ってないでください!!
「そうだね。私は弱くて簡単にボコボコに出来るけど、その後が怖いよ?それもで駄目なのかな」
「後の事は後で考える。まぁ、あの担任だって無闇な事はできないっしょ?教育委員会が黙ってないし」
これだから担任のクラスになった事が無い奴って…!鬼の事なーんにもわかって無い!!
教育委員会?何それ!その存在を忘れるくらい鬼担任にとって無問題なのよ!
訴えられない事が不思議なくらい教師離れしてるんだから!!
「後悔しないでよね。泣いて詫びても許してくれないよ、担任は」
「はっ!鬼が怖くて不良やってられるかよ!!俺の母さんがPTAの会長だって事、忘れてんじゃねぇよな?」
「そうでしたか。それはそれはご苦労様です、ってそれがどうしたのよ!!」
「馬鹿かお前は!PTAの会長に話したら教師はひとたまりもねぇんだよ!!」
「だったら今まで平気だった担任はなんなんだあああああああ!!」
「お、落ち着いてくださいよ先輩…」
「そりゃ一体どーいう意味だコラ。殺すぞ」
「まぁまぁ落ち着いてください三蔵。それより今までどんな事してきたんですか?」
「別に…普通に担任の役割を真っ当してただけだ」
「(ご愁傷様です。さん)」
だから、そんな哀れんだ瞳で見ないでください八戒先生!!
「意味わかんねぇ事言ってんじゃねぇよ!…めんどくさい。お前に恐怖を味合わせてやんよ」
何が始まるんだろう。サッカー少年は手を叩き、言った。
「みんな集合ー。この女とパシリ1年は好きなだけボコボコにしちゃっていいから〜」
やっぱり、一人でのこのこ来るわけが無いですよねー!
サッカー少年は、後ろを振り返る事無く勝ち誇った顔で大げさに両手を広げる身振りをしてたか笑いだ。
私は後輩を後ろに守り、ドアから出てくるであろう人数を想像して一歩下がった。
「おーリーダー。俺らに任せとけって。ボコボコにしてやっからよ?」
「了解!後悔してもおせーって!」
(・・・・・・え?)
「思う存分やっちまえ!弱者はひざまづいてっグホァ!!!!」
もう一度繰り返します。私は大勢来るであろうサッカー少年の連れに待ち構えて後輩を庇ってました。
結構漫画とかであるシーンだけど、実際その場に立たされると怖いものです。
給水タンクの所に2人居るけどもしもの事があったら私の可愛い顔に傷かつくかも知れないじゃないですか。
だから、だから一生懸命己をふるい立たせて後輩を守ろうと覚悟していたのであります。
だけど、だけどね。
屋上へ通ずるドアから現れたのは、この学園の指定の制服を着た、2人。
たった2人だったのでありますよ諸君。しかも、一人は小柄でもう一人はかなりの長身。
そして、その2人に共通している事と言ったら…もうね。
拍子抜けにも程がある。
(覆面…タイガー?)
「おーらもういっちょ!なんだ?もうお終いかよ、リーダー」
「ホントに大人数束ねてた奴なの?ゲキ弱じゃん」
そりゃーあーた。体育教師と自称素敵なボディーを持った教師に叶う生徒なんて居ませんよ。
私は目の前で繰り広げられる覆面タイガー達のサッカー少年フルボッコを見て、唖然。
そういうことですか。一気に脱力した私は後輩と共に黙って状況が収まるまで座って待つことにしました。
「こらこら、2人とも。少々やりすぎですよ」
そういった八戒先生は給水タンクから下りてきて私達の隣に腰掛けた。
平然とした態度にもう何も言えない。先生、ばれたら終りですよ。
「ったく…なんだそのふざけた覆面は」
三蔵も下りてきてあきれた表情のまま、私の隣に立ち煙草を吹かし始めた。
このままで良いんですか、先生。
「これでも手加減してやってんのよ?三蔵サマから特別にハリセン借りてよー」
「三蔵は俺たちをぶん殴る時、こんな感じだったんだな…恐ろしや」
ねぇ、2人とも。そのハリセン私にも貸してよ。
お腹を抱えて笑った
(とてもじゃないけど高校生には見えないよ、お2人さん)
ATOGAKI
何か忘れてるような気がするんですけど、まぁいいや。←
お約束ですかね。
前の話の時のサッカー少年が黒幕だったようです。はっはっは。ヤラレ役ですかね!
ってか前に逃げたからねあのサッカー少年。その罰が当たったんでしょうね。でもちゃんと理由はあるんですよ。きっと。←
ちなみに、覆面の2人は全部ハリセンでボコってます。痛いけど安全性は抜群。だから八戒も咎めてません。笑←
では、次回で最後です。実は言うと次の後書きを書き終わった後にこの後書き書いているんですが。どーでもいい話。笑
ではではー。ここまでお疲れ様です!次でやっと終わるので最後までお付き合い願いたい!それじゃ。