停学処分を言い渡されてからやっと3日目。

私は今、正門の目の前に居る。

遠くを見れば懐かしき校舎。燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びて心なしか輝いて見えた。

やっと、やっと登校できる。その思いが私の胸を躍らせた。

人の目なんて気にしないでガッツポーズをしたくなったが、ここは。

我慢だ、我慢!心の中だけで留めておくのだ!!



「お前…正門の前で何してんだ?」


「嬉さをかみ締めています!」


「…ガッツポーズはやめておけ」


「はい」



どうやら無意識のうちに両手を天に掲げていたようだ。


それは兎も角だね、諸君。

周りには金髪の担任以外に人は見当たらない。

何が言いたいかと言うと、うん。…うん!



「寝坊しましたぁぁぁぁぁぁ!!!」



「課題8割増しな」























いや、普通に考えれば2日など短いと言うだろうけれど私にとっては2日と言うのは長い時間だったのだ。
暇で暇で仕方が無い。まぁ昨日は友達2人が来てワイワイやったけど日中の暇と来たら…ニュースしかやってないやん。
あ、昼ドラ見たよ!ドロドロしてて怖かった。全国の主婦の皆さんはこのようなものを見ていたんですね。尊敬します。




























「遅刻なんざして…楽しみにしていたんじゃなかったのか?」

「すごく楽しみにしていましたよ!!お陰で昨日眠れなかったと言いますか…」


楽しみにしていたのはわかった。お前は遠足前の小学生か。
口にでそうになった言葉を飲み込んでの担任、三蔵は代わりにため息を吐いた。

ともあれ、念願の登校日に遅刻したは授業中の教室を通り過ぎ担任と校長室までやってきた。
まずは校長に挨拶だ。停学くらっていた生徒は手続きが大変なのである。

コンコン

「失礼しまーす」

ドアを開けると校長椅子に観音、それと机の前に八戒が待ち受けていた。
担任と中に入り、2人は八戒の横に並ぶ。


「よぉ。問題児。それとその担任」

「お久しぶりです、さん」


待っていましたと言わんばかりに迎えた観音と八戒は思い思いに言葉を口にする。
それに律儀に挨拶して、本題に入ることになった。


「早速だが。お前はちゃんと容疑が晴れたわけじゃねぇ」

「僕等は本当の理由を知っています。しかし裏づけが取れていないんです。すみません」

「いやいや、私の為にありがとうございます。自分の事なのに何も出来なくて…」


申し訳なさそうに頭を下げる八戒を見て、も慌てて頭を下げる。
事の発端は自分なのに何故八戒が頭を下げる必要があるのだろうか。
きっとそれは彼の優しさなのだろう。生徒の事を自分の事のように悩む彼ならではの行動だ。
2人は互いに頭を下げていて、このままではずっとそうしている様な気がした三蔵は飽きれた様に声を掛けた。


「アホか貴様等は」


三蔵の一言で互いに顔を見合わせたと八戒は照れくさそうに笑いあうのである。
やれやれだ。


「じゃあは通常通り、授業に出てもいい。噂は既に広まっちまったがお前なら平気だろ?」

「もちろんです」

「そうか、ならよかったぜ。流石俺の愛娘だ」

「だから育てられた覚えはありませんってば」

「んな細かいことは気にするなよ。おい担任、馬鹿な奴等が居たらたっぷり説教してもいいからな」

「言われなくてもそうする」

「では、僕等は失礼しますね。さん、課題の事なんですが…」



パタンと音を立てて閉まった扉を見て、観音は人知れず慈悲と慈愛を込めた瞳を眇めた。


「いい目をしてるじゃねぇか…。まぁ金髪を選んだ事は兎も角、だがな」


俺の愛娘を手玉に取るなんて。
























授業が終わった。あとは放課後のHRを待つだけである。
久し振りに登校したはいつもの定位置、教卓の目の前の席で帰り支度をし始めた。
今日は校長室から帰ってきた後、丁度2時間目が終わるチャイムが鳴ったのでそのまま担任と教室へ入った。
かなり不安を抱きながら恐る恐る足を踏み入れる。
自分はやっていないと言うものの噂は広がりきっと生徒達の中では犯人はだと思われているに違いない。
全身から血の気が失せる様な感覚が支配し、珍しくは緊張しているようだ。
しかし、その不安は杞憂に変わる事となる。

一斉に振り返るクラスメート。そして歴史兼教育指導の紅孩児。
数十個と言う数の瞳がを捉える。怖い。素直にそう思った。
そして、運命の瞬間。1拍間を置いてどっと沸きあがる声。一気に室内が騒がしくなったのである。

『みんな…』

クラスメートが次々に声を荒げる。その言葉は全て、を心配している様子であった。
思い思いに声を掛けてくるクラスメート。その中には幸子とえりも。それと静かに見守る紅孩児。そして後ろに鬼。
は、先ほどまでの不安が跡形も無く吹っ飛んだ。




「明日は朝から集会だ。遅刻してきた奴は課題5割増しだから覚悟しておけ」

(集会嫌い…でも課題が…)


「わかったか、」

「はい…」


よくわかっていらっしゃる。は目の前の鬼を目前に意気消沈した。
HRが終わるチャイムが鳴ると次々とに声を掛けていき、部活に向かうクラスメート達。
その何気ない優しさが胸に沁みる。ほろりと涙ぐみながら律儀に一人一人に返事をしていく。
残る生徒たちもまばらになり始め、ようやくひと段落着くと今度は後ろから元気な声がかかった。


「〜!復帰おめでとー!」

「久し振りの学校はどう?拍子抜けしたでしょ?」


幸子とえりである。2人はしてやったりな顔つきでの両脇に立った。


「ホント…みんな最高だよ」

「まぁ担任はあの鬼だし?このクラスに悪者は居ないよ!」

「さ、幸子…後ろ…」


しまった、と思っても後の祭り。教卓のところ(幸子からして背後)には噂の鬼がご健在です。


「ほぅ…俺が、なんだって?」


脇でとてつもなく恐ろしい光景を視界に入れまいと、は幸子とは反対側に立つえりと非難した。


それはともかく、これから行かなくてはならない場所がある。
を犯人に仕立て上げた張本人の元に。
脅迫されてるとかそんな事は関係ない。を巻き添えにした落とし前を付けてもらわなければならないのだから。


「行くぞ。八戒が屋上で待ってるからな」

「はーい。じゃあ幸子、えり、バイバイ。また明日!」

「、ガンバ!」

「に傷一つでも付けられたら先生、倍返ししてくださいよ?」


2人の声援(?)を背に、と三蔵は屋上へと向かった。




「あーホント殴られたりしたらどうしましょう」


「俺がさせねぇよ」


















させてたまるか

(本気の目だ…!)









ATOGAKI
まだグダグダやってますが、きっと次回で終りが見えてくると思います。はい。
全6話目指してがんばりまっす!長くなると収集つかなくなりそうで怖い!ギャー!←

観音サマの意味深な言葉は一体…!気付かれてますがな。笑
次回、長くなりそうだ!はっはっは。