被告人、前へ。

そんな台詞が聞こえてきそうな校長室で、私は途方に暮れていた。

目の前には呆れと困惑が入れ混じった様子の校長観音。私の叔母だ。

あの後、教員に強引に連行された私は校長と2人っきりで向かい合っています。

沈黙が痛い。



「で、お前…万引きなんかしたのか?」


「やるわけ無いでしょう…私は潔白です」


「だろうな。そんな風に育てた覚えはないぜ」


「育てられた覚えなんて無いけど」


「うるせぇ。ったく…俺も一応ココでは校長だからな。お前にだけ甘くはできない」


「わかってます…。停学でもなんでもしてくださいよ。でも無実です」


「あぁ。とりあえず形だけでも停学処分だ。容疑が晴れるまで、な」



慈悲と慈愛に満ちた瞳は暗く、何でこんな事になったのかと悔やんでいる様だった。

私は言い切れぬ不安と不満が混ざり、また涙がこみ上げてきそうになる。



「すまねぇな、…。3日間だ。それまで何とかしてやるから、お前はゆっくり家で休め」


「ご迷惑をお掛けしてすみませんでした」



歯がゆさをかみ締め、私は校長室を後にした。

心底やりきれない気持ちが大きく、それは叔母様だって同じだろう。

見送ってくれた瞳は悲しげに細められていた。






























こんな汚名を着せられて平気なワケがない。どっぷりと沈む私の心は悲鳴を上げ、足取りが重く感じた。




































「!」


「先生…」



校長室を出ると背後から聞こえる足音。酷く焦っている様にの名前を呼んだ。
その正体はまごうことなき担任で、急いで走ってきたのか息が乱れていた。



「、お前…」


「先生も、疑う?万引きした、」


「んなワケねぇだろ!馬鹿か貴様は!!」



心の底から疑っては居ないと言う風に怒鳴る三蔵は、の肩を掴むと真剣な眼差しを向けてきた。
その瞳が訴える。信じている、と。



「お前はやってない。そうだな?」


「うん。私、やってない…万引きなんて、してない…!」



現場を押さえ込まれて校長室につれてこられて、漸く安心できた。
信じてくれる三蔵の思いが嬉しくて、途端に涙が溢れてくる。



「わかってるから…泣くな」


「ふぇっ…ひっく…ありが、とう…グスッ」



観音も三蔵も。きっと他の人だって疑っては居ない。
その証拠にホラ。


「!」

「さん!大丈夫ですか?」

「ナニよ万引きしたって?んなの何かの間違いだろ」


駆けつけてきてくれた悟空と八戒、悟浄。多分職員室で聞いて慌ててきたのだろう。
みな心配の言葉と共に集まってきた。


「みんな…心配かけてごめんな、さい」


なんでこんなに嬉しいのだろう。微塵も疑って居ない様子の全員は安心したのか微笑んだ。
その笑顔が心強くて、一層涙が溢れてきた。


「兎に角、家まで送る。お前らは事態の沈静化とフォローしろ」

「わかりました。幸いにもまだこの事はあまり知られていません」

「任せとけって。多分聞いたとしても、疑わない奴の方が多っしょ」

「、気をつけてな!俺たちは絶対の見方だからよ!」

「ありがとう、ございっます」


理不尽な容疑に怒りを抱えながら、各々自分の役割をこなす為、帰っていくを見送る。
その背中がとても、小さく思えた。あの元気な姿は何処にも無い。
どうか、一日でも早く容疑が晴れることを切に願った。




「ったく…誰よ。ちゃんに濡れ衣着せたのは」

「おそらくですが、あの場に居た生徒だと思います」

「最低だな…!になんの恨みがあるんだよ!」

「僕も疑いたくはありませんが…多分その生徒が万引きしたとします。そうすると…」

「自分の罪を擦り付けたってか?よくもまぁそんなこと、咄嗟に思いつくかな」

「捕まえようぜ!早くの潔白を証明しよう」

「そうですね。まず、理由を聞きに行きましょう」



たちを見送って、職員室に向かう途中。やりきれなさが募った3人は口ずさむ。
釈然としない。今頃職員室は大騒ぎであろう。
その証拠に職員室の扉には会議中の札がかけてあった。
中からはどよめきの声があがる。


「この学園始まって以来の事件ですよ!校長!なんとか言ってください!」


扉を開けるなり聞こえてくる怒声。その主はを連行した厳格な教員だった。
この学園の古株でもあり、厳しいと有名な人である。
他の教員はまだ理解に苦しみ、あのが、とか困惑していた。


「遅刻癖が多いが成績は優秀。生活態度は特にこれといった問題はない」


厳格な教員に反論したのは生活指導の紅孩児であった。
まぁ廊下を走っていたのは咎めるべき事なのだがの見方側らしい。


「しかし、現にこうして万引きをしたんだ!停学処分じゃ足らぬ!退学だ!!」


「待ってください、渡囲先生」


興奮気味の厳格な教員、渡囲に口を挟んだのは今しがた到着した八戒だ。
教員たちは一斉に八戒に眼を向けた。


「さんはそんな事をするような生徒ではありません。紅孩児先生も言っていた様に、聊か問題はありますが他は良い子です」

「そーそ。何かの間違いだろ」

「そうだよ!一方的に決め付けるなんて最低じゃんか!」


静まり返る室内。教員の半数以上が納得した様子で頷く。
しかし疑う渡囲先生側は小難しい表情だ。


「だが証拠は揃っている!変えようの無い事実だ!」


対立する教員たち。恐れていた事が始まってしまうのか。
だがその時。鶴の一声よろしく、今まで寡黙していた校長が口を開いた。


「は、あの鬼教師の生徒だぜ?犯罪なんて怖くて出来やしないさ」


校長は先ほどと打って変わって凄く楽しそうに笑った。
八戒達の言葉と、今のを信じている教員を見たからかもしれない。
観音の愛娘(違うけど)は信用を勝ち取っているのだ。それが嬉しい半分、自慢できる事。


「貴方はの叔母だからそんな事を言えるんだ!親族の言葉なんて当てにならん!!」

「まぁ待て。は俺の大事な子なのは認める。が、だからと言って贔屓するつもりも無い。俺は校長だからな。

「信憑性にかけます!貴方の言葉には従いかねる!」

「ふん。俺の言葉が当てにならなくても信じられなくてもいい。だが、俺はここでは校長だと言ったろう?」


不敵に笑う観音は、口元は笑っているが眼は真剣そのもの。
誰であろうと反論は許さない、と。その瞳が鋭く射抜く。


「俺の言葉は絶対だ。遠くに飛ばされたくなかったら黙れ」


アンタは何様だ。そうさ校長様さ!
聊か問題な言葉だが、それを簡単に言ってのける観音は威厳に満ち溢れ流石校長と言った所か。
後ろの教頭先生は胃の辺りをさすっているがシカトで。


「そういうことですv後は僕達に任せて皆さんは通常通り仕事を再開してください」


にこやかに宣言する八戒は、その場をねじ伏せた校長と、教員たちを見渡しこの会議をお開きにする様だ。
一応新学校だから全員が自習なんて格好がつかないことだし。さっさとの容疑を晴らしたいのである。


「お前達だけで大丈夫なんだろうな?」

「誰に向かって言ってのヨ。なんてったって俺たちは」

「問題を起こす教師」

「だぁー!言われちゃったよ!」


心強いんだか心もとないんだかわからないが、観音はこの問題教師に後を任せる事にしたのだった。


これだから、面白い。



「精々俺を楽しませてくれよな」


「…本当に娘が大事なんですか?」


「当たり前だろ。俺の何処を見てそんな事を言う」


「なんつーか…全部?」


「がかわいそうだよ…」

























学園ヒーロー

(俺たちが居れば安心だ!)
















ATOGAKI
良く考えたら学園長だよな…笑

と言うワケで、事態の沈静化を無事に達成できた3人。ですが、コノ後一体どうなるんでしょうかね!←
観音さまは聊か不安な所がありますが、頼れる3人を前にして楽しむことにしました。ホント、娘が大事なのでしょうか。
愛娘って言うのはノリです。ヒロインにしてみれば叔母ですからね。一応育ての親と言う設定もあったり。なかったり。(どっちだw)

またもや出てきました、渡囲さんです。3万打記念作品と、tirggerにも出てきましたあのトイ・ダストです。
オリキャラは基本使いまわしでいっか、と言う無責任な発想から出てきた結果がこれです。すみません。
今回は真面目な役をもらえたようです。別に悪ではないですよ。厳格…と言うか、良い真面目な性格の教師なんですぜ。
全ての言動は学園を思っての事。憎まないであげてください。良い子には優しく、悪い子には厳しくがモットーのようです。

さて、次回はヒロインと三蔵をお送りする予定でございます。後半は2人が居ない場面でしたので。では。