7月

急に暑さが加わってまいりましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか。

私は去年の4月に入学して、今月中に高校生活2度目の夏休みを迎えようとしています。

この学園は校長…実は言うと私の叔母なんですが、の『面倒だ』と言う一言によりクラス替えなんて無く、

しかも担任も変わらないと言う、入る前は楽園、またの名を桃源郷と憧れていた学園は、

入ってみればただの地獄ではないか。ってな感じの生き地獄施設だったのです。

え?いやいや。クラスは相も変わらず騒がしくとても良いクラスメート達です。

しかしですね。その心地よい賑やかなクラスを一瞬の内に御通夜みたいな空気に変えてしまえる地獄の番人、鬼教師様が…。

おっと。皆まで言わなくともお分かりでしょう。簡単に言うと、担任怖い。
















でも心の奥底に眠るこの感情は、怖いと思うドキドキ感とまた違った感情なのではないかと気付くのはもう少し後のお話。


















「起立ー。礼ー。着席ー」


朝のHRも終りクラスは1時間目直前の休み時間、もとい準備時間をいかに有効に使おうかと四苦八苦。
慌しくも賑やかに授業の仕度を始め、各々教室内を移動する。

そこにはの姿もあり、彼女は珍しく遅刻せずに来れたようであった。

毎朝毎朝担任からのモーニングコールもとい、死刑宣告の着うたで起きると言うのは実に目覚めが悪い。
そんな事態にならない様に今朝は早く起きる努力を死に物狂いで決行したのだ。

しかし電話は日課になっており、掛かってくる。


「今日はちゃんと起きれましたよ!」

「ほぅ、そうか。2度寝はしてくれるなよ」

「しませんってば!」

「貴様の場合は信憑性が皆無に近いからな。これで遅刻したら」

「しません!絶対に朝のHRの10分前には着席してますから覚悟しておいて下さいよ!」

「ふん。その言葉、忘れるなよ。10分前に着席してなかったら課題5割増しだ」


この担任は少しは褒めると言うことを知らんのか。といいたくなるような物言いには絶対に10分前に着席してやると心に誓ったのだった。
それが功を成したかなんなのか、気合を入れすぎて15分前に来てしまったのは記憶に新しい。
そして早い時間だと思っていたが教室には結構な人数が居た事に驚いた。我ながらに恥ずかしい。


そんなこんなで教卓の目の前、即ち最前列のど真ん中。は己の席にロッカーから必要な教材を持ち座りなおした。
そこの目の前にはまだ座っている担任が居る。アレ?1時間目は数学だったっけ?不審に思っていると徐に担任が口を開いた。


「今朝は早かったじゃねぇか」

「そ、そうですよー!ちゃんと時間通り前にはこれましたっ!私だってやればできる子なんです!」


「そうだな。褒めてやらんでもない」


なにかまた嫌味を言われるんじゃないかと身構えていたは拍子抜けだ。
ちょっと遠まわしな言い方だが、これは褒められてると思ってもいいのだろうか。そうであるなら嬉しい事だ。
が、これだけではないのはご存知のとおり、である。


「これが継続されれば苦労はしねぇな」

「なっ!喜んだ私が馬鹿みたいじゃないですかー!!」

「馬鹿なのは事実だ。遅刻しないで来るのは当たり前だろうが」

「…仰るとおりでございますです」

「本当に貴様と言うやつは1年の頃から遅刻しまくりで云々かんぬん…」


1時間目の授業が始まる直前まで説教されたのは言うまでも無い。


「アレ?先生授業始まりますよ?こんな所で油売ってたら遅刻しちゃいますよー?」


授業開始1分前。クラスメート達は既に着席していて、と三蔵の会話を聞いていた。ハラハラしながらね。


「貴様…時間割もまともに覚えてねぇのか…」

「へ?」

「今日の1時間目は数学だ馬鹿娘ぇ!!!」


スパーン


最悪の事態は免れる事無く、しっかり居残りを言い渡されたは涙目で1時間目に望んだのであった。








きーんこーんかーんこーん







時は過ぎ、時刻は放課後を迎えようとしていた。待ち受けるのはただ1つ。恐怖の居残りだ。
室内は哀れみの目で満ちており、とばっちりを避けようと早々にクラスメート達は逃げるように教室を出て行く。
なんて薄情な人たちなんだ、と嘆くは自分の立場で考えてみて、これは逃げるしかないよなぁ。と不本意だが納得した。

(それにしたって…まだ終わってから1分もしてないのに誰も居ないってどういうことさ?)

担任の怖さを知っているクラスメートだからこその現状である。
遠くのほうで野球部の練習する声が聞こえる。これがまた悲壮感を煽るのである。

と、そこに忘れ物を取りに来たのか教室に入ってくる人影があった。
項垂れながら耳の端で足音を聞いていたはその足音が自分の所に近づいて来る事を察し、後ろを振り返る。
そこに居たのはクラスのギャル真っ盛りの幸子だ。髪の毛は染めていないもののいくらか香水がキツイ。
気づかれない程度に眉を寄せながら幸子を見上げる。全く話したことが無いわけではない。むしろ仲が良い部類に入るクラスメートだ。
一体なんなんだろう。他の子は危険を被らないようにさっさと帰ってしまったのに。


「ねぇー?あのっさー、ちょっとお願いがあるんだよね。ってかお誘い?なんつってー!」


うん。ちょっとイラって来るけどこれが彼女なりの会話なのだ。もう慣れた。


「何さ?」

「あのねー?夏休みなんだけど、一緒に遊ばない?」


遊びの誘いらしい。こんな時に言わなくてもメールで言えば良いのではないのだろうか。
でもメールが面倒だと思っていたにしてみれば好都合なのだが、如何せん、今から野暮用が。


「いいよ。いつ?暇なときなら、ってかいつでも暇なんだけどね」

「そういうと思ったー!だって彼氏居ないじゃん?そんなの為に誘ってあげる♪」

「(…ほっとけ)心遣い痛み入るよ幸子。で、内容は?」


本心から楽しそうに笑う幸子はにとって大きなお世話この上ない内容を言ってのけた。


「合コン!そんで2泊3日のお泊りで海行こうよ!」


無理です!
なんて言えたら苦労はしない。ってか合コン…だと…?
自慢ではないが生まれてこの方十数年。合コンなんて、合コンなんて!言った事無いでっす!
お願いとはこういうことか!


「え?でも、泊まりでしょ…?親が」

「何言ってんのかなぁー?はぁー暇なんでしょ?だったら良いじゃない!
 ね?遊ぶだけ!絶対淫らなことは無しでぇ、ホント合コンっていうかただのお遊びだって!信じてよっ!」

「はぁ…でも、」

「じゃあ決定ね!時間と場所は後でメールするから!待っててねぇ〜」

「いや、だから無理だっt」

「人数足りなくて困ってたんだぁ〜」

(私はただの人数あわせかい!ってかアンタを友達だと思ってた私が馬鹿だった!)


押し切られそうな空気には必死に抵抗を試みた。しかし話はどんどん盛り上がり(幸子だけ)終いには断れそうも無い。


(ヤバイ。これ以上はヤバイ。ってか誰が暇だって言った?そうですそれは私です!)


は意を決して断りを入れようとした。が。


「だから無r」



「何をしている。うるせぇぞ」



(いえーす!ばっとたいみんぐー!この鬼教師がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)


タイミング悪く担任登場。ドアにもたれかかるように尊大な態度でのご登場だ。


「あー先生ぇ!今ちょっとと遊びの約束してたんですよー!じゃああたしはこの辺で〜さようならー」

「あ、ちょ、幸子じゃなくて幸子さぁぁぁぁあん!?」


の叫び虚しく踵を返しとっとと出て行った幸子。そして教室に残るはと担任だけである。

沈黙。幸子が居た余韻なんて跡形も無く、室内は静まり返っていた。御通夜会場は何処ですか。ココですかそうですか。


(どうしようどうしようどうしようどうしよう)


いやな汗が吹き出る。そういえばもう夏ですね暑いですねそれなのに野球部とかは元気でいいですね。

微かに聞こえてくるのは金属バットでホームラン並みの音をたてた音。それとなんかの掛け声とか、吹奏楽部の演奏だとか。
そんな事より、はただただたドアに寄りかかる担任に意識を集中させている。
幸子を追いかけて後ろを向いたままのは振り返るのがとても怖かった。
しかしこのままではいけない。いや、もうこの逃げる体勢ならばいっそこのまま逃げると言う手もあるということもない。
が、所詮キチンな。逃げる事も、ましてや担任を見ることなんて到底出来ないのであった。


「はぁ…」


痺れをきらしのだろうか。静寂を切り裂いたのは担任のため息である。
心底あきれた様子の担任はの席と向かい合わせになる教卓に座った、音が聞こえた。
も観念して担任に向き合う形になるのだ。


「すみません…」


無意識に謝る。何をそんなに脅えているのだろうか。脅えさせているのは三蔵の存在そのものなのだが。


「今朝遅刻をしなかったのは褒めてやる。100歩譲ってな」

「そこは譲らず…」

「明日も遅刻せずに来れるんだろうな?」

「努力します…」

「貴様は泊りがけで遊びに行けると思ってんのか?」

「聞いてたんですか…」

「遅刻した分の授業を夏休み中にやる事になる」

「それは喜ばしいんですがいやですね…」

「しかし貴様はムカつく事に成績は優秀」

「私の唯一自慢できる事です!」

「胸を張って言うな」

「ですよねー…」

「それで今しがた職員会議で決まったんだが」

「だから遅かったんですね(会議が無かったら幸子と約束しなかった…いや、そうでもないか)」

「次のテストで平均以上+20点で免除してやらない事も無い、とな」

「つまり…?」

「数学の平均は俺の予想だと80点。これ以上は言わなくてもわかるな?」


「満点を…取れと仰るんですね…」


「正解だ」

「できなかった場合は…?」

「夏休み全て献上して授業だ。俺が態々休みを返上してみっちり教えてやる」

「態々なんて言うなら別にしなくてもいいのに…」

「今からの放課後と休み全てからと夏休みだけと、どっちが、」

「すみませんでした夏休みだけでおねがいします」

「あたりまえだ。むしろ俺は夏休みを貴様なんぞにくれてやりたくもないがな。会議で決まった事だからしかたねぇ」

「じゃあ私が満点取ればいい話なんですね…」

「そうだ。数学のみだからありがたいと思え」

「嬉しいやら悲しいやら…」

「もちろん俺も手加減はしねぇぞ」

「十二分に承知しております…」

「分ったなら帰っていい」

「はい…ありがとうございました…」



遠くのほうでまた、ホームランの音が聞こえた、気がした。























夏季<

(波乱の幕開け)













ATOGAKI
最後の方は手抜きじゃありませんよ…!←
皆様お気付きの通り、<序>と言う事で続きます。今まではシリーズっぽいくせに時間軸バラバラで読みきりーってな感じだったんですがね。
これは旅行中に思いついたネタです。ネタは一部の事だけだったんですが妄想がかなり広がり長い話になってしまいました。
ってかさ!幸子ってレギュラー?レギュラーなの?!(どうでもいいwwww)
そ、そんな筈は到底ありませんですよ!ただの脇役、そしてトラブルメーカーです☆←
しかし今回は幸子が居ないと話が進まないので、オリジナルキャラが苦手な方はお読みにならないほうが最善かと。
気にしないぜ!って言う方はどうぞ最後までお付き合いください…!まぁ、ふーんって感じで呼んでもらえるとry
親友ポジションは『えり』です。しかしオリキャラ自体管理人自身がちょっと…って言う人なんであまり出さないようにしたいと思います。
いや、自分の作品にだよ。他のサイトサマの方はもう三蔵サマとラブラブできるから全然かまいませんぜ!って感じ?もう何言ってんだかわからんw

そんな感じで、遅刻してたから日課表覚えてないぜ!って言うのは以ての外だよーって話でした。(いつからw)
自分自身に言っているようなものです。実際に管理人はあちゃちゃーな人だったんで書きやすry

ではでは。次回もよろしくおねがいします_orz