8月1日

まだまだまだまだ真夏の真っ只中、私は海水浴に来たはずなのに何故か今日でおさらばしなければならないらしいです。

いやね、悪いのは私だよ。でもさ、お泊り合コンはまだ1拍2日残っているんだよ!?

…いえ、何も言いません。すいませんでした。

それもこれも全て過保護過ぎる先生が…!

え?往生際が悪い?…良く言われます。


「帰ったら…分っているよな?」

「へい…」


反抗期なんてこの金髪鬼畜生臭教師の目の前ではかくも無力なのでありまするよ。

あぁ。忌々しい。


「バイバイ。本当にごめんね?折角の海来たのに…」

「いいのいいの!私にとってはいい思い出になってるからさ!」

「(先生の言ったとおりだ…)そっか。また夏休み中に遊ぼうね!」

「〜もう帰っちゃうのー?あたしつまんなーい」

「えりと遊んでよ。それにまた企画して…」

「・・・」

「( 先 生 怖 い よ )遊ぼうね!普通に遊ぼう!海以外で!」


結局幸子に悲しい顔をさせてしまった私は、ちょっと残念な結果だ。

でも幸子はどうせ私の事なんか忘れて元気に遊ぶんだろうよ。そのほうが良いけどね。
























夏休み上旬。幻想的に夕日が照らす綺麗な海を目に焼きつけ、私はコノ後に待ち受ける恐怖を頭から飛ばした。





























夏季<終>

















「帰るぞ」

「はーい」

えりが悪く無いと釘を打っておいて、そして幸子にも飲酒の件を咎めて三蔵とは海を後にした。
もちろん、飲酒を黙って見ていたとえりも後でこってり説教だと言い渡して。
2人の引き攣った顔が見ていて面白かったけれど『貴様もだ』と言う言葉にも2人の仲間入りさ。


「それにしても…父親って」

「貴様が言い出したんじゃねぇか。俺はそれを言ったまでだ」

「あの時は笑いを堪えるのに大変でした」

「そんな場合じゃねぇだろ」

「ですよねー!」


海沿いの道を、三蔵の愛車で疾走する。窓の外を見ればなんてロマンチックなんでしょう。
車内は対極にあるんですけどね。


「先生、いつから来ようと計画立ててたんですか?」

「…終業式の、放課後だ」

「私が帰った後ですか。だから八戒先生とか知っていたんですね。謎が解けましたよ!」

「俺は教えたつもりは無い。何故かアイツは知っていたんだ」

「恐るべし…八戒先生…!」


なんか八戒の話を出したら寒くなってきた2人。これはクーラーの所為ではないだろう。
気にしたら、アレだ。口に出すのもおぞましい。


「ねぇ先生。一緒にれて、よかったですね」


運転中の三蔵に振り返って、はニコリと満面の笑みを浮かべる。
それを横目で見て、三蔵は無意識のうちに微かだが笑った。
それをモロに見てしまったは初めてではないのに、赤面。


からかいたくなった。恥ずかしそうに頬を染める、愛しい恋人を。



「俺の顔に見惚れてんじゃねぇよ」

「そ、そんな事無いですってば!先生こそ手を滑らして運転ミスしないで下さいよ!」

「事故なんざたまにしかしねぇよ」

「今すぐ私を降ろしてください」

「待ってろ。もう直ぐ山の中だ」

「それは流石に御免被りたい!」

「貴様が望んだ事だろうが」

「やっぱこのままで良いです!」

「じゃあ最初から言うな」

「だって先生が、」


前々から思っていた。三蔵の運転は少々荒い。酔わないのが不思議なくらいに。


「これでも抑えてる方だ」

「 こ れ で ですか!?」

「文句言うなら降ろすぞ」

「すみませんでした」


他愛も無い会話。しかしそれがとても、とても。


「パーキング寄ってくださいよ先生」

「なんだ。我慢できねぇのか」

「トイレじゃないです!ちょっとお腹すいちゃって…」

「もう直ぐ着く。待ってろ」

「スピードはそのままでお願いします」

「注文の多い奴だな」


まだ帰省ラッシュが無い高速道路。決して安全運転とは言えない三蔵の運転。
助席に座るは三蔵のハンドル手さばきを盗み見つつ、まさかと思い口を開いた。
この男なら、やりかねない。


「ドラフトしないで下さいよ」

「それはビールだろ。正しくはドリフトだ」

「細かいことは気にせず」

「お望みならやってやるが?」

「殺す気ですか」

「慣れれば平気だ」

「いやいや、そういう問題じゃないですってば!」


本気でカーブを過激に走りそうで怖い。ってかココ高速道路ですってば。
そんなの不安を他所に(ちょっとぐらぐら遊ばれたけど)、車はパーキングで停車した。
人も少なく、大型トラックが目立つ。デコトラなんてもう流行りません。


「先生何食べます?」

「コーヒー」

「それ飲み物です」

「空いてねぇんだよ」

「私はお子様ランチ!」

「あ「嘘ですよ」

「マジだったらドン引きだ」

「オムライスがいいなぁー」

「好きにしろ」

「先生のおごりですよね」

「(なんで俺の周りには集る奴ばっかりなんだ…)手持ちが「嘘ですよ」

「…仕方ねぇから奢ってやるよ」

「え!いいですよ自分で払います!(後が怖い)」

「男なら黙って奢られろ」

「女です」

「チッ…早くしろ」

「わーい!」


三蔵の中では彼女に払わすなんて以ての外だ、と言う信念があるらしい。
貧乏学生に払わすなんざ大人なめんな。と、本人は言うだろうが。





2人が食事中な為、場所は変わって未だに砂浜で戯れる団体。
たちが帰った直後の夕日に照らされ人もまばらでカップルが目立つ浜辺。
何を悲しくて教師と、生徒が。先に帰った2人を抜かして。

「、なんか引率の先生と帰ったみたいになってる」

えりがボソリと呟いた。
傍から見ればなんてカップル!な感じだが、知っている人は知っている。あの2人は教師と生徒の関係だ。

「なーんかさー。合コンの男共なんて〜先生たちに比べればちっちゃくね?」

「やっぱ分ってんじゃ幸子ちゃんわヨ!」

「ってかアレ?あの3人は?」

「おや?いつの間にかいなくなってしまったようです」

邪魔しちゃいましたかねぇ。なんて真っ黒い笑顔で言う八戒はの目線は遠くの夕日。何処吹く風である。
悟浄は悟浄でビキニの上からパーカーを羽織ってしまっている幸子とえりを残念そうに見つめた。
悟空はやはり花より団子。海の家が既に閉まってしまった事を嘆く。

それと、野郎3人はホテルに戻った後である。あのホテルは後払い制なのでこのまま幸子達は逃げる寸法に出たとか。なんとか。

それは兎も角、これからが問題である。教師3人、生徒2人で何をしろと。しかも浜辺は夜になりかけていてやることが無い。
さて。どうしようか。

「じゃあさ、折角きたんだからぁ、近くのカラオケでオールってのはどう!?」

「幸子、それは少々まずいんじゃ…しかもやることが地元と変わらないし」

幸子の突拍子も無い提案にえりは思わず苦笑い。さすがギャル真っ盛り。一般人の斜め上を行く。
しかし乗らない3人ではない。こちらとて、と三蔵がいい思いしているのに取り残されたのだ。
ここはパーっと…!

「これも何かの縁ってやつじゃないですか?」

「そそ。金なら俺たちが出すし?」

「腹減ったし!」

「さっすが先生ぇー!」

「いいんですか…?」

えりの不安を他所に、4人は既にオールモードだった。なんだ、こいつら。

「ところで黒野さん…ちょっとお話が」
「なんですか?八戒先生」
「ふふふ…それはですね……」

なにやら、ソチも悪よのぉ…な会話があったとか。なかったとか。

「お安い御用でごぜぇますよ八戒先生…」

「話が分ってもらえて嬉しいですよ…」













+++















「うっ…なんか寒気が」

「誰かが噂でもしてんじゃねぇのか?」

「何?私の可愛さにですか!」

「それはない」

「ムッキー!」

所は変わって夕飯を終えた2人が乗る車内。
八戒の悪巧み?を知るはずも無いは突如として襲った悪寒に身震い一つ。

「はぁ…もう夜ですねぇ。真っ暗ですよ」

「あと小一時間程で着くはずだ」

「テレビ見れないじゃないですかー!」

「貴様がパーキング寄ろうなんぞ言うからだろ」

「はぁ…途中で帰ってきたなんてお母さんになんていえば…」

「『いい男が居なかったからムカついて帰って来た。ちょーちょべりばー』(棒読み)」

「私はどんだけ男に飢えてるんですか。ってかまた死語を!」

「完璧じゃねぇか」

「先生ってナンセンス…」

「お前に言われたかねぇよ」

「あ、音楽聞きましょうよ!何故か私ってMD常備してるんですよー」

「音楽なんぞうっとおしい」

「ラブソングなんてどうですか?」

「うぜぇ」

「じゃあお経」

「何故もっている?」

「持ってるわけないでしょうが」

「脅かすな」

「ここはロマンチックにクラシックなんでどうですか!」

「眠くなる」

「全く。我侭な人ですね」

「お前が言うな」


先ほどと変わらず空いている高速道路を淡々と進む。景色は同じで。
しかし。はこの雰囲気が気に入っていた。走る音しか聞こえない。
けれどそこに会話を織り交ぜて、幸せを感じることが出来る。
何故。そんな愚問は結構ですよ。


(先生と一緒だからとしか言いようが無い)


見た目は無口と言う印象が強いがそれは違って、話しかけたらちゃんと受け答えしてくれる。
それに三蔵のほうからも話かけてくれてそれがまた、嬉しかった。


(私は、他の生徒とは、違うのかな?そうであって欲しいよ)


図々しい。独占欲が強い。そういわれるかもしれない。
けれど、違うのだ。だって、は。


(恋人同士…で、良いんだよね?先生は宣言してくれたし、でも言葉は聞いてない)


たった一言でいい。でもそれは我侭なのだろうか。


「むー。じゃあ何聞けって言うんですか!」

「逆切れするな。俺は何も聞きたくねぇって言ってんだ」

「あーもぅ!いいですよ!寝ちゃいますからね私!」

「隣で眠られる運転手の身にもなってみろ」

「寂しいんですかー?」


悪戯っぽく笑うはまだ幼さが残っていて、まだ子供なのだと。高校生なのだと、思い知らされる。




(仮にも俺は教師だ)




それでも。





「寂しい…か」

「?」



あの時、電話を掛けたのは寂しさからなのか。そうではない、別の物だったのか。
しいて言うなれば、衝動的、とでも言おう。自分でも分らないうちに芽生えていた、感情。

ただ、会いたかった。最初から、離れたくはなかった。


「ただでさえ近くに居なかったのを我慢していたのに、今度は手の届くところで寝られてみろ」


直ぐにでも会いたい気持ちを抑えるのに、どれだけ苦労したことか。


「先生…」

「だから、寝るんじゃねぇよ」


だけだ。三蔵をこんな気持ちにさせるのは。
たとえ許されない恋だとしても、それでも。


「私は先生を差し置いて寝ませんよ。それにもう、先生から離れません」


離れられるわけが、ない。


「ふん…上等だ。泣いて喚こうが離してやらないから覚悟しておけ」

「先生もね!」

「全く…口の減らねぇ奴だ」

「これが私ですからっ!」

「あぁそうだったなこの馬鹿女」

「私の名前はそんなんじゃありませんよ!」

「なんだったか…」

「性格悪いですよ先生」

「貴様にはこれで十分だろ」

「なんですとー!この鬼教師!!」

「貴様…もういっぺん言ってみろ!」

「何度でも言いますよー!この鬼鬼鬼鬼鬼鬼畜教師ぃぃぃ!!」

「殺されてぇのか貴様は!!むしろ今ココで殺してやる!!!!」

「両手塞がってる癖に何言ってるんですかー!!!!どーせお得意のハリセンも使えな…」



スッパーン…!



「なん…でっ…!」

「貴様と違って器用なんだよ」





甘い雰囲気はどこへやら…。
相も変わらずな2人は、の家に着くまでくだらない言い争いをしていたそうな。





しかし、それも悪くはない。





三蔵とは同じ事を思ったのであった。


























まだまだ夏は




わらない



(恋も夏も車内もいつだって!熱々なんです!!多分)














ATOGAKI
どうしよう伏線回収し切れてないって言うか入れるはずの物を入れ忘れた。やっちまったなぁぁぁぁ!!←

ここで全部終わらすのはいやだ。色々と書きたいことはこれからの話で書いていきたいです。
とりあえず今回の話は、煽っておいてなんですが恋人同士になったよのみ。
愛の言葉?HAHAHA。そう易々とあの鬼教師が言ってくれるとお思いですか!(貴様…!)
歯がゆい感じを残して今回はここで終りでございます。

はい。これにて夏季篇完結でございます。最後までご覧下さった皆様、本当にありがとうございました…!
ではでは。これからも教師三蔵先生とヒロインの葛藤(?)をよろしくお願い致します_orz