7月中旬

暑さ厳しいおりから私、はとっても過酷な課題を出され四苦八苦しております。

哀れなんてもんじゃアリマセン。だってこれは自業自得のものなんですから。

だから必死に勉強して、遅刻…はいつもの如くしておりますが。

既に日課になっているモーニングコールは毎朝来て、これもいつもの事であります。

我ながらに情けない…しかし名誉挽回は次ぎのテストです。なんだっけ?中間?まぁいっか。

テスト勉強はとてもいいんですが、それを妨害する物があるのは皆様お分かりのとおりでしょうね。

そうです。夏休みです。満点取れないなんて思ってないんですがそれではなく、あの幸子から強引に約束された合コンの事。

それだけが今の私を震い立たせる火薬の役目をしているんですが、しかしそれが反対に邪魔をする根源でもあります。

あぁ、担任との2人っきり授業、なんておいしいシチュエーション!な、乙女心ある…ありませんが、それ以上に何か嫌です。

どっちがいい?なんて聞かれたら正直なところ答えられないのですが、あの鬼と夏休み中ずっと2人きりより、

たった2泊3日の方がいいとは思いません?ね?思うでしょ?だから私はテストをがんばります。

前門の狼、後門の虎とは言ったものです。言うならば前門の幸子、後門の鬼でしょうか。

いやいや、もう四面楚歌みたいな。もう暑さとプレッシャーで何言っているか分りませんよ。



















まぁ、担任と2人きりの方がよかったかも…と思わせる事態はありました。

しかし現時点では合コンの方が良いと、後々後悔する事を察せなかった私はただ無邪気に課題と戯れます。あぁ。哀れ。

















「では後ろから集めて持ってきてくださいね」


室内が開放される瞬間がここにあった。そう、何事かというと本日のテストが終了したのだ。
テスト自体はまだ明日と続くが、今日の分は今の八戒の言葉で終りなのである。
の本番は明日の最後の時間だった。一番最後と言うのがなんとも言えないプレッシャーを増幅させるのである。


「終わった…まだ夏休みは終わってないけど」


それがまた嫌だ。夏休みの終りと言うは数学の点数自体で決まり、実際に夏休み終わってはいない。
如何せんプレッシャーに弱いは他のクラスメートとは違い、抱えるものが大きかった。
今日だけで緊張を緩めてはいられないは、緩みきったクラスメート達を恨めしそうに見るのである。


「さん、明日は頑張ってください。夏休み全て献上なんて嫌ですもんね」

「はい…八戒先生も採点頑張ってくださいね…」

「あはは。さんの立場を考えればコノくらい屁でもないですよv」

「それは嫌味ですか…?」

「そう聞こえたならそうなんじゃないですかね」

「意地悪ですねぇ」

「あはは。心から頑張って欲しいと思っているのは事実ですよ」

「それはありがたき幸せ。もったいないお言葉身に沁みます」

「ふふふ…素直じゃないですね。どっかの誰かさんと同じですよ」

「それ以上はなんかいやな予感がしますから聞きませんよ!」

「最良の選択ですv」



は問題児と言う事で良くも悪くも先生方に目をつけられている。その良くも悪くもの『良』の方が八戒だ。
何かと心配してくれては気遣ってくれる良き先生。よく掴めない、そして侮れない先生でもあるのだが。

今の会話で何処となくゲッソリした様子のは教室を出て行く八戒に挨拶をすると一時の開放感に身を委ねる生徒達を一見して自席を立った。
幸子とはあの後何度か接触を試みたものの、ことごとく言い包められ結局夏休みのお泊り合コンは出席せざるおえないらしい。
心底楽しみにしている幸子を目の当たりにすると言い出せない事が殆どだったのだが、如何せん腑に落ちない。
どうして自分はこんなんなのだろうかと後悔後経たず、である。

とまぁそれは置いておいて、今日はテスト。即ち3時間で終わりなのでもう帰ってもいいのだ。
通常のテストの時ならこんなに早く帰ってもやることが無いだが、今回は違う。
頭はいいのでそんなに勉強をしなくてもいいはずなのだが、念入りに勉強に徹したほうが得策かと思われたからだ。
と言う事で帰りのHRが終わったのでは早々に教室を後にした。


「よーちゃん。学生はいいねぇこんなに早く帰れるなんてよっ」

「悟浄先生…。採点頑張ってくださいね…」


昇降口に向かっていたの前方から英語教師の悟浄が来て話しかけてきた。
は先ほど八戒に言った言葉と同じように悟浄に言った。


「あーあー、そんなに暗い顔しちゃってよ。どうよ、俺から三蔵と変わってやるって言ってやっぞ?」

「別に良いです。満点取れますから」

「即答かよっ!自身満々で結構なこった。期待してるぜ?ま、俺としちゃちゃんと2人っきりで勉強…」

「はいはい。では私はこれで」

「つれないねぇ〜まぁそこがいいん…」

「あ!八戒先生があそこに!」

「マジでか!?俺、アイツに色々言われてんだった!」


悟浄の事は律儀に対応したら駄目だ、と前に体験済みの。それに八戒と悟空と三蔵とetc…に言われたことでもある。
手馴れたように悟浄をかわすと何事も無かったかのように昇降口に向かった。
何を言われてたのか知らないが、と言うか知ったこっちゃない。


「よっ!!お前大変だな。またなんか三蔵に言われたんだろ?」

「悟空先生…採点、は無かったんですよね。どうしたんですか?」


今度は体育(男子)教師の悟空だ。悟空はいつも元気で見ていて癒される存在。
八戒のようになにかと気にかけてくれるし、とってもいい先生である。どっかの誰かさん達と違って裏が無く、素直に接する事が出来るのだ。


「いやさ、なんか元気なさそうだったから声かけたんだけど…急いでた?」

「そんな事無いですよ。さっきどっかの赤ゴキブリにあって逃げてきたんです」

「そっか。じゃあ俺から八戒に言って悟浄をこらしめてもらうからな!安心しろって!」

「心強いですよ。ありがとうございます!」

「あとは三蔵にも言っておいてやっから!アイツにガミガミ言い過ぎだよなー」

「(無理だと思うけどな…)本当にありがたいですよ〜悟空先生」

「任しとけって!じゃ、俺今から他の先生の手伝いしなきゃなんねぇからまた明日な!気をつけて帰れよー!」

「はい。また明日、さようなら〜」


本当にいい先生だ。と、胸がぽかぽかになったは上機嫌で学園を後にした。














「なぁ八戒!また悟浄の奴がにちょっかい出したんだって!」

「またですか…」

「こりねぇエロガッパだな」

「全く…何度言ったらわかるんでしょうかねぇ」

「三蔵がキレたら俺んとこにも被害がくるんだよなー」

「なんで俺が…」

「おや?自覚無しとは困ったものですねぇ」

「あー悟浄が来たぜ!よろしくたのむよ八戒ー」

「やれやれですね」

「……」


職員室の一角。三蔵と悟空は今しがた入ってきた悟浄が八戒に連行されるのを横目に、己の課せられた採点へ意識を集中させた。
この職員室では各々担当している教科のテストの採点を数人の教師が行っており、静かな方である。
休憩する者も居れば真剣に取り組んでいる者、はたまた雑談をしている者と多くの教師が存在していた。
三蔵は数学が明日なので特にやることが無いが、悟空は他の教師から頼まれた採点を行っている。


(なんで、俺がアイツのことで腹を立てねばならんのだ)


禁煙ではない室内で堂々と煙草を吸っていられる三蔵は、なにやら思案に暮れていた。
先ほどの八戒と悟空の言葉の所為だ。意味あり気な発言を残して、何だと言うのだ。
しかし、思い当たる節がある三蔵は特に反論もせず、今に至る。


(バレてようがなかろうが、それについてからかわれる謂れはねぇ)


全く持って遺憾である。と、言う事らしい。
まぁ本人の居ないところで話が盛り上っているのは言うまでも無い。


「なー三蔵。に聞いたんだけどさ、泊まりで合コンすんだろ?危なくね?」

「しらん。アイツが行くって決めたんだから好きにさせればいいだろうが」

「だって合コンだよ?絶対中にはヤバイ奴居るって…三蔵は行った事が無いからわかんねぇんだろうけどさ」

「(貴様はいつの間に…)何がだ」

「だーかーら、ぜってー悟浄みたいな奴が1人は居るって事だよ!」

「っ!…それはやべぇな」

「だろ?しかも、本当は行きたくねぇって相談してきたんだぜ!?すっげーかわいそうだよ…」


やはり悟浄は教育的指導の悪い例のお手本である。三蔵は悟空の最後の言葉で一層不安が沸き起こった。
それと同時に生まれた感情とは、一体。


(この馬鹿猿に相談して俺には何もいわねぇのか)


所謂『嫉妬』と言う感情であった。


「秋菜がさ、悲しそうにするから断れなかったって言ってた。アイツ、そういうとこ良いよな」

「ふん。ただ意気地ねぇだけだろうが」

「そんな冷たいこと言うなって!」

「で、貴様は何を望んでいやがんだ?」



「分ってるじゃん!俺考えたんだけどさ、が満点取れねぇようにすんげーテストを難しくすればいいと思うんだよ!」




んな事出来るか馬鹿猿。































場所は打って変わっての自宅。悟空と別れてから随分と時間が経った夜である。
今しがたお風呂から出てきたはリビングで呑気にテレビを観賞中。
金曜日にやるロードショーで、なにやら好きな映画がやっているらしい。それに釘付けだ。
明日は待ちに待って居ないテスト最終日。これが終われば月曜日に振り替えで友達と遊べる。
休日は混んでいる映画館やらショッピングを楽しめるこれぞ待ちに待った計画らしい。
全て完璧なまでの計画に自画自賛しながら目の前に迫る壁なんぞ忘れて浮かれているであった。


「ー、そろそろ勉強しなさい!お母さん夏休みに毎日お弁当作るなんていやだからね!」

「うーん。もう少ししたら終わるからまってー」

「もう!お母さん知らないんだからね!お客さんがみえてるのに…」

「そりゃないぜママーン。勉強すればいいんでしょすればさー」


「そういいながら一歩も動かない所を見ると、俺との夏休みがそんなに楽しみか」


「んー?夏休みは幸子と約束してるから楽しみじゃないけどー楽しみ…って、えええええええええええええええええええ!?」

「テスト前日にテレビなんぞ…余裕だなコラ」

「なななななな、なんで、」



は映画に夢中で気付かなかった。母親の言葉を遮ってすっ呆けていたは、何も、何も。
そう。後ろには禍々しいオーラを放っている、金髪の。


「先生なんでココに居るのさ!?」

「あらやだ、この子ったら…担任の先生がお見えになったのを気付かないなんて…すみませんねぇ先生」

「いやいやいや、おかしい。明らかにおかしいよね?!ね?どうして教えてくれなかったのママーン!」

「静かにしろ。では、コイツ借りていきます」

「もーとことん扱いてあげてくださいね!」

「こんの人でなしぃぃぃぃぃぃ……!」


の訴え虚しく、突如として現れた(ちゃんと玄関から母親に招かれて入ってきました)担任に連行され、自室に放り込まれたのであった。








パジャマ姿を見られて恥ずかしい?部屋を、曲がりなりにも乙女の部屋を見られて恥ずかしい?あんなマヌケな姿を(以下略)

そんなもんじゃない。そんな事今はどうでもいい。何かって?そりゃぁあーた、アレだよアレ。








「だから、なんで、先生が、ココに、居るんですか!」

「居ちゃ悪ぃのかコラ」

「いえ滅相もございません」

「灰皿」

「少々お待ちください」

「ついでに茶」

「急いでお持ちします」


心の中でどんなに悪態をつけても怖いものは怖いのだ。それが分る瞬間である。


(全く…なんで、私がこんな事を!いきなり来てなんだあの尊大な態度は!分ってたけど!!)


そこがまた、腑に落ちない。憤りで足音が煩くなるがなんのその。些細な事を一々かまっている暇は無いのだ。

いきなり訪問してきた担任。もしかして明日の事で新たにプレッシャーを掛けに来たのだろうか。
いや、しかし待て。あの担任はそんな事で態々来たりしない。それはご存知のとおり、担任は極度のめんどくさがりなのだから。
では何故?は考えれば考える程謎が深まる事態に頭を悩ませた。


「はい。灰皿とお茶をお持ちしました。粗相な事ながらお茶菓子も」

「もっと女らしくできねぇのか貴様は」

「失礼ですね。これの何処が女らしく無いと仰るんですか?」

「でけぇ音立てて歩くんじゃねぇって言ってんだ。底が抜けたらどうする」

「なっ!〜〜!!」


抑えろ。抑えろ。相手は教師だが、その前に鬼だ。凡人が太刀打ちできないのは知っているだろう。
あぁ、妖怪退治できる腕が欲しい。なんなら誰かに依頼してもいいよ。


「口に出てるぞ馬鹿娘」


うるせぇやい!


「あの…ですね。なんでまた今日来たんですか。もしかして明日の事について助言でもくれるんで…」

「んなワケねぇだろ」

「ですよねー!」


だったらなんなんだ!


「貴様…このままだったら本当に夏休み潰れるぞ。それでもいいのか?」


それはいやだ。しかし幸子が。そんな事は置いておいて今は、なんか違う…?


「それは嫌ですケド…満点取れる自身はありますよ…?」

「ほう、そうか。なら泊りがけの合コンに行きてぇのか」

「なんで、それを…!」

「とある奴から聞いただけだ。と言っても向こうが勝手に喋ってきただけだがな」


本当はあの放課後の時聞いてました、なんて死んでも言えないな、と三蔵は内心思った。


「それで、いろんな奴が止めて来いってうるせぇから来てやったまでだ」

「先生…」


本当は悟空に泣き付かれ追い払ってきたのだが最終的に八戒に脅されたなどと、死んでも口に出来ないと思った三蔵である。
感動してるを横目に三蔵は煎れてきて貰ったお茶を啜った。照れ隠しにも見えるその行動はごまかすのにもってこいだ。

しかし、三蔵はただ他の人に言われたからと言う理由ではない事を誰よりも自分が分っていた。
出来る事ならそんな合同コンパ(しかも泊りがけ!)なんぞ行かせたく無い、と。素直に伝えられないもどかしさが胸を締め付ける。


「俺は貴様の意見を聞いてやる。強引に止めても仕方ねぇからな」


――『本当に、素直じゃないですねぇ』
八戒の言葉が脳裏に過ぎったが気にしない。気にできない。
全てはの返答次第なのだから。


「先生…私は、幸子の悲しむ顔が見たくありません。一応友達ですし、断れませんよ」

「今からでも遅くねぇだろ」

「駄目です。これは私が悪いんですから、私の勝手で幸子の楽しみにしているモノを台無しにするのは出来ません」

「…そうか。じゃあ俺は止めねぇよ。勝手にしろ」

「ありがとうございます」




これだから、コイツは面白い。

これでなくては、コイツじゃない。




「でねー、先生!私合コンなんて初めてなんですよ!だから、何着て行っていいのか、何すれば良いのかサッパリさ!」

「………」

「どーしよう!ホント悩むなぁ〜。ね、先生はなんかこういうの経験豊富そうだから何か助言くださいよ!」






…もう、どうにでもなれ













+++
















そして数時間後の帰りの車内。三蔵は気だるいながらも自宅に向かう為、車を走らせていた。
運転中に考えることは、の事。先ほどのが頭から離れない。

(アイツは呑気に浮かれやがって)

俺の気も知らないで。と言うかが知る由も無い事である。
そして三蔵にはもう一つ、脳裏には悟空が言った一言が離れないでいた。


『って可愛いからさ、ぜってーやばいって!』


何がやばいんだ、なんて野暮な事は聞かない。それは三蔵にも分っているからだ。


(確かにアイツは、まぁ…アレだ)


あの後、クローゼットから服を引っ張り出してきてはこれでもない、あぁでもない、先生これなんてどうですか!
なんて真剣に悩み始めた。終いにはレクチャーしてくれとせがまれたのである。
うんざりした三蔵は悟空にでも聞けなんぞ言えるわけも無く、ただ適当に受け答えしてきた。
お陰で帰りがとっても遅くなったのだが、あぁも真剣だと途中で帰れない。

しかも、とても嬉しそうに。

悲しい顔を見たくは無い。
これは、も言っていた事だった。
そうだ。アイツはこんな思いをして、断われなかったのではないのか。

(不細工ではねぇな)

嬉々とした様子は見ていて微笑ましいとまで思わせる何かがあったのは確かだ。


「チッ…めんどくせぇ」










問題の夏休みはまだ、始まらない。





















夏季<

(分っている。だが、一体どうしたいんだ)










ATOGAKI
確かに助言だが何かが違う。

はい。これから<前><中><後>となります。そして終りに…あれ?なんだろう。(オイw)
多分<終>かな。いいよね。答えは聞いてない!←
グダグダだぁぁぁ!

今回は、テスト前。戦の前日です。でも勉強すると言って帰ったヒロインは勉強してません!なんたる事だ!笑…止!
それに振り替え休日に友達と遊ぶ計画をしていたらしいです。管理人もしらなかったよ!←
とまぁ振り替え休日の事は特にこれといった事は無いんですけどね。友達って誰だろう。まぁいっか。←

んで、初登場の悟浄と悟空出てきました。オリキャラより遅いって…!
この2人のお陰で物語が進みました、ありがとう!

そんな感じで、次回もよろしくおねがいします!