4月。
うららかな季節を向かえ、私はこの学園に入学した。
周りには新入生が真新しい制服を着てどこか緊張した面持ちで校門を潜る。
そんな中、私もみなと同じように学園に足を踏み入れ高校生活の始まりを感じた。
あぁ、高校デビューっていい響きだ…。
そんな事を考えていると隣を歩く叔母に小突かれた。
痛い。ちょっと加減を知らない叔母はニタリと笑うと涙目の私を物ともせず言った。
「高校でビューなんて可愛いねぇ。しかしには無縁の話だぜ」
うるせぇやい。
桜が散る体育館前、私達は一時的に別れ各々行くべき場所に向かった。
私は新入生が集まる1年の教室へ。叔母は体育館にて持ち場に着いた、とでも言っておこう。
緊張と期待を胸に初めて歩く廊下を進み、2階の奥に位置する教室へと足を踏み入れた。
(知らない人しか居ないよ…)
それもその筈、この学園には同じ中学卒の子が1人も居ないからである。
正直心細いケド、ここは私。持ち前のコミニュケーション力をだね…。
(無理だ。…まぁなんとかなるでしょ)
無駄に前向き思考をいいことに私は指定された自席に座った。
1番前のど真ん中。我ながらに運が無い。
(寝れない!イヤイヤイヤ、私は何を考えているんだろうね)
入学早々不埒な考えはやめておこう。どうせなら優等生と言うレッテルを貼られたい今日この頃。
あっははは。中学時代は遅刻魔で、あだ名が社長なんて呼ばれてたからね。勉学だけは真面目にしないと本気でやばいです。
我ながらに情けない話ではある。高校デビュー?なにそれおいしいの?
そもそも高校デビューと言うものは、中学時代までメイクなどに興味が無く地味な雰囲気の子が高校生になったとたん華やかになる…。
だったような気がするんだけどそこら辺は皆さんのご想像にお任せします。はい。
どこか殺伐とした雰囲気の教室は、きっとみんながみんな緊張しているからだろう。
数日もすれば仲良くなった子達が騒ぎ出すに違いない。その中に私が入っているかは別として静かな教室はなんか居心地悪いな。
これもちょっとの辛抱だと思えば良いけど、どうしよう。みんな優等生で真面目クラスだったら私、絶対浮く自身があるよ。
堅苦しいのは嫌な私は賑やかなくらいが丁度いい。中学時代はおちゃらけクラスに居ました。あの頃が懐かしいなぁ。
そんな過去を持ち出す辺りやはり知り合いが居ないのは寂しいのかな。まぁ知り合いなら1人居ますがそれはまた後程。
(1番前の席って、後ろからの視線が集中すると思うんだ。自信過剰とか抜きにしてもだね)
私の不安は杞憂に変わるんだけど、今は未だクラス中が静かで過ごすには変わらない。
そんな初日の入学式前。おろしたての制服は窮屈だ。
これまた真新しい鞄を机の上に置き、席に着いた頃には全員着席していて最後が私と言う初日からなんか恥ずかしい事になった。
気にするな。こんな事良くあるでしょうが。
何事も無かったかの様に振舞う私は傍から見ればどのように写っていたのだろうか。別にどうでも良いけれど。
時刻は入学式の30分前でそろそろ先生が来てもいい頃。ホラ、来たよ。
「おはようございます」
教室に入ってきたのは笑顔が素敵な先生だった。
まだ衣替えの季節では無い為、ワイシャツにノースリーブのセーターといういでたちの眼鏡を掛けた、正直カッコイイ先生。
笑顔に惚れそうだなんて教卓の真正面の私は思ったり。ちょっとこの席が好きになった瞬間でもある。
「僕は猪八戒です。入学式に案内させて頂くのでみなさんよろしくお願いします」
少なからずクラスの女子大半はガッカリしたであろう。嘆きの声が所々から聞こえてくる。
どうやらこの笑顔が素敵な先生…猪八戒先生は担任ではないらしい。非常に残念です。
「ではまず説明しますね…」
笑顔のまま話をする猪八戒先生の説明はとても聞き取りやすく、分り易かった。
この先生が担任ではなかったら一体誰なのだろう。そんな疑問が沸々と沸きあがって来る程、惜しい先生だ。
まぁなーんか、腹黒そう…
「さん?何か質問がありそうですね」
「!いいいい、いえ別に」
「そうですか。何かあったらいつでも言ってくださいね」
「はい…」
笑顔の裏にはなんとやら。先生が担任でなくてよかったと思った瞬間である。
ともあれ教室では恐ろしい体験をした私ですが、時は進み現在体育館の椅子に座っています。
教室のと違い少しばかり柔らかく座り心地の良いパイプ椅子に身を委ね、重いまぶたがうっとおしいという現状であります。
教頭先生の話、長すぎでしょ。早く校長のスピーチが聞きたいわ。だって。
『校長先生の話。校長先生、お願いします』
『おう。新入生ども、程よく勉強して遊べよ。以上』
相も変わらず適当ですね。私の叔母は。
紹介します。私の叔母でこの学園の校長をしております勧善音菩薩サマで(以下略)
言っておきますが私は決してコネで入ったわけじゃないですよ。遅刻日数は最悪だけど頭は優等生なんです!
『ではー次に担任紹介。先生方、各自受け持つクラスの前に移動してください』
言い忘れていましたが、司会進行役はあの笑顔が(以下略)な八戒先生です。
なんで名前呼びかって?それは自己紹介の時『苗字では呼びにくいのでどうぞ名前でお願いします』といわれたからなのですよ。
『新入生の皆さん、これからも勉学に励み楽しい学園生活を送ってくださいね』
おっと。八戒先生に気を取られている間に担任の先生が目の前に…。
ねぇ。金髪って、ありなのかな?
『少々問題ありの先生も中には居ますが頑張ってくださいv』
「チッ…一言余計なんだよ貴様は」
正直、学園生活が不安になってきましたよ私は。
そんなこんなで入学式も無事に終り、私は再び振り分けられたクラスの教室に戻ってまいりました。
あはは。教壇の目の前ってホント最悪だよねー!
「貴様等の担任になった玄奘三蔵だ。面倒な事は省く。あとは好きにしろ」
ホントさー!いいのかなこんなんでっ!校長もそうだけど碌な教師居ないでしょこの学園。
まぁ叔母様が叔母様なだけあって必然的にこうなるんだろうね。進学先間違えたよコレ。
目の前に居る担任の先生がとても恐ろしくて登校拒否になりそうです。これ切実。
外見は先ほどの通り、金髪。そして瞳は紫暗の色をしていらっしゃる。
オーラは何処となく怖くてホントめんどくさそうです。でも声は満点。
きっと怒ったら確実に恐ろしくなりそういだよ。今現在でもそうだけど。
「先生はーなんの教科を担当しているんですかぁー?」
後ろの席から能天気な声が上がった。あーた怖いもの知らずね。
見る限りきっと色目に入るんだろうな、と思われる態度の女子。名を秋菜幸子(しゅうなさちこ)。ギャル真っ盛りである。
朝は大人しそうに見えたその女子は実は1番騒がしそうな子である事が判明。よかった。これで静かな教室になることは免れたのね。
しかし現実とは厳しいものだと実感したのは目の前の不機嫌そうな担任の発した一言のお陰だ。
「るせぇんだよ。そんな大声出すな殺すぞ」
幸子さん。貴方の所為で1番近い位置に座する私はとても恐怖に駆られてしまいましたよ。
目の前だからね。威圧感が直に感じ取られていい迷惑です。既に涙目の私はどうしたらいいのでしょうか。
「俺は数学担当だ」
静かな教室に美声が響く、入学初日の重い重い空気。鬼だ。絶対この人は鬼の化身だ…!
ってかさ、教師が「殺すぞ(声マネ)」なんていいのかな!気にしたら殺されちゃうのかな!!
ってかさ、数学って苦手なんですけど!失敗したり成績悪かったら殺されちゃうのかな!!そんなの嫌だぁぁぁああ!!!!
(この先の高校生活…どうなるんだろ)
きっとクラス全員が心に思ったであろう。
前言撤回。こんな怖い担任だったらさっきの腹黒そうな八戒先生の方がよかったです。色んな意味で怖いけどさ。
キーンコーンカーンコーン
授業の終りを告げるチャイムが鳴った。この居心地の悪い時間は一旦幕を閉じたのである。
と、そこで目が合う担任と私。これはまずい。何がまずいかって?それはだね諸君。
「。号令だ」
ホラやっぱり。
よくよく考えてみると、ちゃんと生徒の顔と名前を覚えている辺り根は真面目なんじゃないかって思うんだ。
そんな初日から間違わずに名前呼ぶって結構な事だし、見た目はめんどくさそうだけどやることはやる。
そんな高校生活最初の担任、玄奘三蔵先生。怖い印象が強すぎて、でもまじまじと見てみるとかっこいいんだなこれが。
正直先行き不安だけれどもなんとかなりそうな感じ。あぁでも怖いものは怖いんです。
だからさ、何かとつけて目が合うと指名してくるのはやめてください。コレ切実!
逃げ道は無い
(逃げ道を探す事自体とっても不思議な気分!)
ATOGAKI
実質上第一話目。まずは入学式からでっす。そんでファーストコンタクト。あっははは。
幸子また出てきましたね。今回は『青春ストーリー』とは違い、同じクラスです。他のヒロインとかの設定は追々紹介していきたいです。
ってか人物設定とかいい加減つくろうよと思った今日この頃。まぁ良いんじゃないかな!だって設定とか作ったらやりにくいじゃないですか。
そんなフリーダム一直線な管理人が送る学園パロ第二段。まだまだ続く。