の日記。
10月29日(月)
今日、学校で三蔵にハリセンで4回は叩かれた。いつも思うけどあのハリセンは一体何処から取り出してくるのだろう。
それと昼休み。いつもの場所で昼食をとっていると八戒先生が徐に言った。来週はテストがあるんですよ、と。
それならそうともっと早く言ってくれればいいのに、とゴチたけれどいつもの爽やか笑顔でスルーされた。忌々しい。
と言うか、生徒は誰一人知らないと思う。それでいいのか、桃源高校。そろそろ発表しないとストライキが起こると思うのは私だけ?
そう言えば、三蔵の誕生日は丁度一ヵ月後だ。はて。どうしよう。
(中略)
11月9日(金)
テストも無事に終り、今日は悟浄先生の誕生日だ。ぶっちゃけ何にも用意してない。でも流石に其れは酷いだろうと思った、
心優しきちゃんは渋々・・・意気揚々とプレゼントを渡した。中身はゴキ型ライターと100均(即席だから…)のハンドグリップだ。
安い買い物だったのは確かだけど今の所ばれてないから一安心。ごめんね悟浄先生。でも心は篭ってる・・・かもね。
この日は何故か三蔵のお家で悟浄先生の誕生日パーティーが開かれ部屋の片隅には生徒からのプレゼントが山積みにされていた。
予想通りなんだけど、やっぱり三蔵はカンカンに怒って悟浄先生は若干涙目だった。・・・どんまい。
(中略)
11月16日(金)
今日は友達の誕生日だった。だから綺麗にラッピングしたプレゼントを持っていざ学校に・・・と思ったんだけど
門前に待ち構えていた渡囲先生に敢え無く没収された。酷い。酷すぎる。
なんか今日は大事な日だったらしく、余計な持ち物は没収なんだそうだ。抜き打ちとは聞いていない。
腹が立った私は友達に謝って、放課後には無事渡す事が出来た。渡囲の野郎・・・!覚えてやがれこの高血圧!!
あぁ、一番大事な三蔵の誕生日が刻一刻と近づいてきているよ・・・本当に如何しよう。
(中略)
11月19日(月)
やばいやばいやばいやばいよやばいよ!!あああああああと10日とか!ありえない!!!(顔文字)
今日は八戒先生に「用意できました?」と聞かれ、血の気が引いた。嘘を言っても絶対見抜かれるので正直に打ち明けると
苦笑・・・とも取れる笑顔を向けられた。いや、アレは内心楽しんでいるに違いない。そういう雰囲気は隠さず放出していたから。
どうしよう。本気でヤバイんじゃないのか・・・?しょうがない、次の休みは何か探しに買い物に行こう。
(中略)
11月25日(日)
幸子は来月に迫ったクリスマスに浮かれている様だが、私はそれどころではない。
その前にもっと重要な事があるからだ。みなさんご存知のとおり、”あの日”である。
以前言っていた通り、街に繰り出した私は、まず先に目に入ったのはショーウィンドウに飾ってあった洋服。
いけないいけない。コレは如何見ても女物だ。所謂私がほしい物だ。こんな物を見に来たワケじゃないよね。
今日は三蔵の誘いを泣く泣く断って来たのだから絶対無駄な時間は掛けてはいけない。
幾らか悩み歩き、漸く私はたどり着いた。そう、プレゼントに最適かなぁと思うコレを。
11月26日(月)
なんだって言うんだ。全く。
今日は昨日の事もあり、暫し緊張気味に登校したはいいものの、三蔵の機嫌が頗る悪い。
どうやら昨日、誘いを断った事に臍を曲げているらしい。あぁ何処まで面倒なんだこの男は。子供か。って言える筈もない私は
終始三蔵のご機嫌取りに勤しんだ。こんな事をしている時間はないと言うのに、思わぬ伏兵現る。
暫くして、漸く機嫌が直った三蔵は、何故か私に課題4割増しの刑を下した。ホント、ぶん殴ってやろうかな!
(中略)
11月28日(水)
とうとう、明日だ。戦前の兵士になった気分な私は学校で小さなミスを犯してしまった。
運悪く紅孩児先生の授業に遅刻してしまったのである。理由はただの寝坊だがこっ酷く絞られた私はその後ずっと落ち込んだ。
仕事と私情をキッチリ弁える紅孩児先生は、ものすごく怖い。其れを承知していたにも関わらず遅刻してしまったのは
明日の事が待ち遠しくて、遠足前日の小学生よろしく眠れなかったからだ・・・なんてこと言えないので謝るだけになってしまった。
あぁ、明日か。明日なのか。ヤバイ。ものすごく緊張してきたよ私。どうかちゃんとプレゼントを渡せますように、とお星様に祈っておく。
11月29日木曜日、晴天。
は若干の寝不足を訴えながら青空の下、正門を潜った。今回は誰も立って居ない事に心底安堵の胸をおろす。
昇降口までの距離はそんなに遠くは無いものの、気持ちから来るのか遠く感じてしまう。
今日は放課後、三蔵と落ち合うつもりでいた。しかし、昇降口で靴を履き替える際にふと思い至る。
「アレ?もしかして・・・約束し忘れた?」
なんてこったい。痛恨のミスだ。なんとは、プレゼントを渡す事しか頭にあらず一番肝心な事を忘れていたらしい。
やっちゃったー、と頭を抱えるは、まぁなんとかなるっしょ。と開き直り己の教室へと向かう。
朝のHR。いつもの様に背筋を正した焔を横目に、教卓の椅子に踏ん反り返る三蔵は足を組み出席簿片手に出席を取る。
今日の日付をいつもの様に自分で言ってもなんら変化がない事に疑問に思う。
もしかして忘れているのではないか。最悪の状況が脳裏を過ぎった。
其れを決定付ける出来事が今日の昼休み、とうとうの前に姿を現すこととなる。
「あぁ?今日は残業だ。やる事が残っているからな」
「マジですか・・・え?マジ?」
「だから、本気と書いてマジだって言ってんだろうが」
思わず2度見して同じ事を繰り返してしまったを他所に、三蔵は極々普通に言ってのけた。
どうせ今日は一緒に帰れない?って聞こうとしていたのだろう、と思った三蔵ならではの返答である。
それを聞いて魂の抜け殻状態にまで陥ってしまったはと言うと。
「残業は明日じゃ駄目ですかね」
反射的に、けれど決死の思いで交渉を持ちかけていた。だが問われた三蔵は嘆息すると、呆れた様子で言う。
「お前はな・・・寒いからって送ってもらおうなんざ甘ぇんだよ。こっちの都合も考えろ、この我が侭娘」
コレは流石に酷いのでは・・・?と若干涙目になった。彼は断固としてコノ後の言葉を聞き入れない様だ。
その証拠に話は終りだ、とそっぽを向き煙草に手を伸ばしている。コレでは流石のも言葉を飲み込みざる終えない。
何を言っても無駄だと悟ったは数学準備室を後にする。傍から見ても落胆しきった其の背中は、哀愁漂っていた。
「と、言うワケです。私もう誕生日とかどーでも良くなってきました」
「まぁまぁさん落ち着いて下さい、ね?三蔵も悪気があって言ったわけではないんですから」
「でも、アレは流石に酷すぎる!!私は今まで一度でも送ってもらおうなんて、みえみえの誘いをした事がありますか!?」
「そこら辺は僕にはわかりかねますが・・・さんがそんな子では無いと、僕でも分かります」
「ありがとうございます・・・八戒先生・・・ぐすっ」
5時間目と6時間目の境に設けられた休み時間。八戒の担当である古典を終え、の様子を見かねた八戒が心配して声を掛けたのである。
そして上の会話が交わされ、とうとう泣き出してしまう。この際泣き虫なんて言葉は聞こえない。話の論点がずれているのはご愛嬌だ。
「あーれまぁ〜・・・八戒、ちゃん泣かしちゃって三蔵に怒られるぜ?」
「残念ながら泣かせてしまったのは三蔵本人です」
「あん?」
次の授業、英語担当である悟浄も加わり、本気で対策を練らねばと八戒は困った表情を浮かべるばかりである。
隣には、負のオーラを撒き散らす。こんな顔をさせるあの男に若干の殺意が沸く。
なんとしてでもの思いを尊重してやりたい、と八戒は思うものの、コレと言った方法が思いつかず眉間に手を当てる。
だが、そんな八戒の不安を他所に、職員室では悟空と三蔵の会話が繰り広げられていた。
「なぁ三蔵!今日、誕生日だよな?俺プレゼント用意したんだぜ!今日残業だって言うから、今のうちにあげとくな!」
「・・・あ?」
「もさー、すんげー楽しみにしてたのに三蔵が残業だなんて残念だよなー・・・あーぁ可哀想」
「・・・あぁ?」
「本当は八戒達と一緒に渡そうと思ったんだけどさ、俺もう帰らないといけねぇんだよなぁ。だから、ホラ!」
「お前・・・何言ってんだ?」
「え?・・・だから、今日は三蔵の誕生日だろ?もしかして、忘れてた・・とか・・・?」
にこにこと笑顔を浮かべ(口元引き攣ってますけど)、首をかしげる悟空を見据え、三蔵は今朝いつも通りに口にした日付を呼び起こした。
そして頭の中で何度も繰り返し記憶からすっぽり抜け落ちていた、己の誕生した日を思い出す事に成功したのである。
その瞬間、脳内を駆け巡る光景。会話。の哀愁漂う――背中。
「まさか・・・」
「ハァ・・・俺さ、見ちゃったんだよねー・・・昼休みすんげー悲しそうなの顔をさ。涙浮かべてたんだぜ?声掛けれなかっ」
悟空の言葉を遮り、唐突に立ち上がる三蔵。コレは何かあったな、と察した悟空は早々に職員室を後にする三蔵を呆れた顔で見送った。
のだが、三蔵が職員室のドアを開けようとしたまさに其の時。行く手を遮る(不本意ですが)人物が立ちはだかる事となる。
「おや、三蔵。慌てて何処へ 行 く ん で す か ? 」
にこっ、といつもの様な爽やかな笑みに”何か”を含め目の前に現れた人物、八戒が問いかけてきた。
そして悟空は再度思う。これまた何かあったな、と。
そして間もなくし、教員に用意された机に座る三蔵、其の隣に座る八戒、その後ろに悟空が立っている。
八戒がとりあえず座って話をしましょうと提案を持ちかけたのだ。相変わらずの笑顔のまま八戒はお手柄です悟空、と賞賛の意を述べた。
そんなこんなで早速本題に入ろう。八戒は、居た堪れない様子で目を合わせぬ三蔵を見据え話しを持ちかけた。
「それで、貴方はさんの良心を蔑ろにし、あろう事か傷つける発言をした事に対してどうお考えなんでしょうか?」
まるで犯罪の記者会見を見ているかの様な悟空は、三蔵の煙草を持つ手が僅かに反応するのを見逃さなかった。
忘れていたとは言え、八戒が本人から直接聞いた話を聞く限り、あの発言は酷すぎだと思う。コレでは八戒が怒るのも無理はない。
それにしても、正直(いや、普通に)この八戒の剣幕は、怖い。
「黙っていてはわかりませんよ、三蔵」
「・・・・・・」
「都合が悪い事は黙秘ですか。本当に犯罪者のようですよ」
「・・・るせぇ。だから、今アイツの所に行こうとしてたんじゃねぇか!それを遮ったのは貴様だ、八戒!」
「当たり前じゃないですか。今何時だと思ってるんです?いくら悟浄の授業だとは言え、授業中に押しかけるのは不躾ですよ」
「チッ・・・どうしろって言うんだよ、貴様は」
「そうですね。罰として、授業が終わるまで大人しくしてもらいましょうか。もう半分も無いですし、安いものでしょう」
「・・・・・・チッ」
傍らで見守る悟空は、子供を躾ける親の様な八戒に拍手を送るのであった。
放課後まであと30分程度。如何転ぶかは、三蔵次第である。
きーんこーんかーんこーん。
「きりーつ、れい。さよなら」
「ちょちょちょ、待てってちゃーん?まだ6時間目終わっただけだぜ?」
「じゃあ早退します、さようなら悟浄先生」
「オイオイ、HRだけ残してそりゃないんじゃねーの?とりあえず落ち着けって、なっ?」
悟浄に促され、渋々ながら着席したは目も当てられない程、意気消沈していた。
三蔵の事は八戒が巧くやってると思うとは言え、このままでは本気で帰りかねないの様子に内心冷や汗ダーラダラの悟浄。
なんとか着席させたのは良いものの、この後のアクションが思いつかない。・・・非常にマズイんでねーの?
普通なら号令の後は颯爽と立ち去る悟浄だが、一向に教室を出て行かない様子に皆疑問を浮かべ始めた。
「なんだ貴様、早く出て行け鬱陶しい」
「そりゃなんじゃないの?三蔵サマ・・・俺様傷ついちゃうっ」
「・・・失せろ」
悟浄の努力報われぬまま、諸悪の根源である三蔵に追い出されてしまう悟浄であった。(そりゃないぜ!)
ともあれ、帰りのHRムード一色に染まった三蔵学級は何事も無く終わろうとしている。
しかし三蔵の最後の一言で生徒たちは苦笑と共に、は困惑する事になってしまう。
「最後に、。後で話がある」
其の一言を合図に、帰りのHRはお開きになった。そして1人流れについてゆけないはと言うと。
「・・・何処で?」
説明不足の担任の言葉の意味を汲み取れないで居た。と言うか、コレは酷い。肝心な部分が抜けているのだから如何しようもないのである。
きっと三蔵はいっぱいいっぱいだったのだろう、教室を出て数分後、漸く己の言葉の欠けている部分に気がつくのだが時既に遅し。
「まったく・・・場所を指定してくれなきゃ行くに行けないっつーの!あぁもう馬鹿野郎!!」
まずは職員室。見渡す限りお目当ての人物は姿形も見当たらない。変わりに赤い髪の毛とか笑顔の青年が手を振っていた。
次に数学準備室、そして進路指導室。一応保健室と、思い当たる場所を隈なく探すは段々と苛立ちが募ってゆく。
かれこれ数十分は歩き回っており、残る場所はただひとつに絞られた。階段を上るのがおっくだと避けてきたのがいけなかったのか。
若干古びた扉の前に息を切らし、たどり着いたは呼吸を整え、ノブに手を掛ける。コレで居なかったら本当にぶっ飛ばしてやりたい。
「遅かったじゃねぇか。待ちくたびれ・・・」
「三蔵が言葉足らないのが悪いんでしょうが!!」
フェンスに寄りかかり尊大な態度で煙草をふかす目の前の男に殺意が沸いた。だが、あまりの開き直りっぷりに怒りを通り越して呆れてしまう。
この男はこんちくしょー、と思いつつ三蔵の傍まで歩くと少し間を空けて立ち止まる。そう言えばプレゼントも何も持ってきてない。
「で?ご用件は何でしょうか」
「用があるのはお前だろ」
「先にいう言葉があるんじゃなくて?」
「・・・悪かった」
意外に素直だ。まさかそんなに直ぐ(と言ってもその前に言った余計な言葉は気に食わないけれど)謝罪の言葉が聞けるとは夢にも思うまい。
不意打ちを突かれたは言葉に詰るが、もういいや、とつくづく三蔵には甘いのだと再確認させられた。
「わかってればいいんですー。どうせ自分の誕生日も覚えてなかったんでしょ?」
「・・・何故わかった」
「図星ですか。いや、そんな事だろうとは思ってましたけどね!と言うか、自分の生まれた日ぐらい覚えているものだと・・・」
「ガキじゃあるまいし、誕生日だからって楽しみにする訳ねぇだろ。俺はお前の生まれた日を覚えてりゃそれで良いんだよ」
「・・・良くそんな恥ずかしい事をスラスラ言えますね」
「事実だろうが」
「記念日もよろしく」
「注文の多い馬鹿娘だな」
ったく・・・、と満更でもない様子の三蔵は徐に、ギリギリ手の届く距離に立つに近づき抱き寄せた。
が覚えていてくれた喜びと、その思いを蔑ろにした謝罪の念を込めて優しく、されども強く。
腕の中に納まるはスーツに染み付いた煙草と三蔵の香りに酔いしれつつ、今日この日に言いたかった言葉を漸く口にするのだ。
「誕生日おめでとう、三蔵」
プレゼントは今この場に無いけれど、今はまだこのままで居たいのである。
まるで誕生日を祝って貰ってるのは自分ではないかと錯覚させられるくらい、嬉しさがこみ上げてきた。
そして、の首元に顔をうずめる三蔵が、人知れず微笑んだ。
Happy birthday!
――beloved person.
(この日が何度もめぐってきますように)
ATOGAKI
おっと、書く筈なかった誕生日ネタを書いてしまったぜ!そんくらい愛が大きいのさはっはっはっはー!!←
と、言うワケで三蔵サマ誕生日おめでとうございます。当日にup出来て嬉しいんだぜ!笑
きっと誕生日ネタはこれが最初で最後であろう、そういう事で終わります。結局プレゼントはなんだったのか・・・ご自由に妄想してくださいね!笑
冒頭の日記に日付は適当です。それと友達の誕生日と言うのは管理人の本当にある友達の誕生日であります。蛇足ついでに。
やっぱこのサイトのメイン(当社比)であろう教師三蔵先生(仮)シリーズで書きたかったので満足です!
ではでは、皆さんも三蔵の誕生日を祝うと共に、幸せになれますように!ってお星様にお願いするんだっぜ!
beloved person=最愛の人
書いた日:11月27日・修正した日:11月28日・upした日:11月29日 オール2008年