先生、私の為に席替えはしないんですか?

私が目の前から居なくなっているんですよ!!それでもいいんですかああああああ!!!

ふふふ・・・私も落ちぶれたものだ。なんと言っても窓際族だもんね!

ごめんね!こういう席は本来求めるべき人が座る席だよね!ホントだよ!

私だって好きでココに居るわけじゃないから!私の特等席・・・指定席・・・びっぷ席・・・・・・。

遠くから見た担任は、いつもとなんか違って見えた。

別に私が特別眼が悪いとかいう事ではない。それに視力は両目ともA判定ですし。

なんか、こう・・・違うんだよね。遠い。そう、遠いんだ。

担任は問題出して見回りに来るケド、ちがくて。

前までは両方とも座ったままでよかったけれど、今は傍らに担任が立っている。

なんか威圧感。ってか、違う。何もかも景色も雰囲気も空気も全然違うのだと、今このとき初めて知った。

入学当初から最前列のど真ん中だった私は、その席しか知らなくてその席以外座りたくも無かったんだ。

私の席はあそこ。最初から最後まで、あそこだと決まっていたんだ。

なのに、なのに。








――ねぇ、なんで私以外の子が座ってるの?









 返してよ、私の指定席。













































「きっと、さんは何かを気に病んでいたのです。けれどそれが溜まりに溜まって、自分でもわけも分らず暴走した。そう考えられませんか?」

「気に病むっつーか、言われたとかなんかあったんじゃね?こう、イラッと」

「そうですね。でも何か負の感情が蓄積されていたことは確実だと思うんです」

「例えばよ?例えば、『ちゃんはメアリーちゃんに何かされたか、言われた。そんで反抗期が来て、例の事があり溜まっていた感情が爆発』」

「本人に聞いて見なければ確かな事は分りませんが、僕的にはそれが最も正解に近いと思います」

「2人に直接聞くわけにはいかねぇしなー。迷宮入りか?」

「世の中には謎のままの方がいいのもあるって言いますけれど・・・でも何とか解決したい所ですね」

「ってか、俺たちだけじゃね?こんな真剣に悩んでんの。肝心の張本人は元気そうなのによー」

「それでも勘繰ってしまうのは性故、ですかね」

「あーたも笑顔の裏ではナニ思ってるかわかんねーしな」

「そういうことです。自分がそうだと他の人も気になるっていうじゃありませんか」

「俺にはわかんねーなー。でもま、俺たちが考える事は同じだろ?」

「さんが心配、なんですよねぇ」

「そそっ。理由はそれだけで十分っしょ?」

「当たり前田のクラッカーですよ」

「・・・今の子知らない方が多いと思うぜ?流石にソレは」



ずっと考えていた事がある。それは本人を1週間ぶりにみた事により、一層考え込んでしまう程の重症ぶりだ。
きっと彼女は最後まで語らないのだろう。己の内に秘めた感情を。思いを。真実を。
ソレは優しさからなのか、それとも自己防衛の為なのか僕には分らない。が、時々見せるつくり笑顔が不器用過ぎて胸が締め付けられるのだ。
三蔵はこの事に気がついて居るのか。多分わかっているのだろう。じゃあ何故何も言わないのだろうか。ソレが不思議でならない。
彼には彼なりのやり方があるのはわかるけれど、このままで本当に、いいんでしょうか。心配しすぎならそれに越した事はない。
でも、コレが心配だけで終わらなかったら・・・僕は、僕はどうするんでしょうね。あはは。三蔵を一発ぶん殴っても知りませんよ。


「僕、久し振りに燃えてきちゃいましたよ」

「はい?一体ナニに・・・」

「いやぁ、全部を見届けるだけと言うのもいいものですねぇ」

「要するに、後は当人達の問題だから俺等の出る幕はねぇってこって?」

「おや、貴方にしてみれば珍しく頭の回転が速いですね」

「あーたね・・・」


僕らはココでリタイアです。でも、忘れないでいただきたいことが一つ。
僕らは全員でハッピーエンドを迎える事を望んでいます。彼女が幸せになれる様に、そしてみんなが。もちろん僕達も含めて。
願う事しか出来ないのが腑甲斐無い。けれど、少しでもお手伝いできる事があれば、喜んでこの手を差し出します。
まぁ彼女はどっかの誰かさんの腕・・・手以外必要としないみたいですケド。え?まだ根に持ってるのかって?・・・ふふふ。そんなワケないじゃないですか。


「そろそろ猿も授業から帰ってくるこったろ。昼飯にしようぜー」

「僕、今日は購買なので先に行っててください・・・」

「おー、んじゃー席取りは任せとけってー・・・」


・・・

・・















 の考察。

本日の数学の授業。
教卓の前で黒板に背を向ける担任、右肩負傷の為聊か動きがぎこちないが授業に支障は無いと思われた。
が、とある拍子に教科書を床に落としてしまう。ついでに一緒に持っていたチョークもである。
落ちた物は絶対私に拾わせると言う何様俺様三蔵サマな担任は渋々と言った様子で取ろうとした。
それもその筈、私は直ぐ近くに居ないのだから自分で取るしかないのだ。まぁあまり物を落とすとかしない人なので珍しいにも程がある。
しかしかがもうとしたその瞬間、私の指定席でもある席に座っていたメアリーが我先にと咄嗟に拾ってくれた。

――私の役目なのに。

すまん、と教科書とチョークを受け取った担任はそのまま何事も無かったかのように授業再開。
同時にメアリー、視線を後ろにずらし私に挑発まがいなサインを送る。もちろん、それは一瞬の事なので知られる事は無い。
・・・実は言うと私もその中の1人である。違う事に気を取られていた私はメアリーを見ていなく、挑戦的な瞳は担任にしか気付かれて居ない。

――あ、出た。完璧主義。

担任お得意の図形書く作業が始まった。いつもその大きな背を見ていた私は別の角度から見る担任の顔にちょっと笑いを漏らしてしまう。

――めっさ真剣なんですけど・・・!やばい笑える!!

しっかり紫暗の瞳で射抜かれた。おぉ怖い。でも内心カッコイイと見惚れていたなど、口が滑っても言えない私であった。
早い割りに滅茶苦茶完璧に書かれた図形は1ミリたりともずれていなく、そして〆の一言。

「うむ。」

と、本来ならば聞こえる筈である担任の声は聞こえない。でもなんとなく分ってしまった私はこれも愛のパワーと相変わらず自負しております。
離れていても通じ合える心!なんて浮かれている余裕はぶっちゃけ無い。イライラ。イライライラ。
この静寂が更に私を追い立てるかの如く、窮屈で、全てが敵に思えてくる。コレでは反抗期再来も時間の問題だ。


心なしかこの文章もカリカリしてきている気がする。でも気にしたらそこで試合終了ですよ。


 の考察、終り。








「もう・・・耐えられないっ!」
「えり、もう少しだって!あと数分でお昼休みなんだからしっかり!!」


この静寂は、いつもの担任の恐ろしさ故に出来たわけではないのだろう。原因はみなさんもご存知のとおりただ一つ。


「!!もうそんな糞重たい雰囲気かもし出すのやめて!ホントお願いだから!!」

「別ニソンナ事、ナイヨー?」

「口調かぶってるから!動揺してるの曝け出してるだけだから!!」

「ギャハ!もうコレ負け犬じゃね?負け犬決定じゃねー?!ギャハハ!!」

「幸子アンタは黙ってて!!」

「・・・窓際族の何が悪い!!」

「対抗すんな!!論点ずれてるし!!!」


とうとう痺れを切らした友人A、えりは後ろを振り返り斜め上に居るに叫んだ。と言うか、懇願?
はと言うと、思い当たる節・・・と言うか自分でも分っていたのだろう、図星を指されて動揺が丸分りだ。
煽る友人B、幸子。彼女に悪気は無いと言うより彼女は彼女なりの盛り上げ方なのだとおぼえておいて欲しい。

「もーさー!謹慎終えて久し振りの登校初日からその空気は何!?また逆戻りだし!!」

「べ、別に私は・・・そんなつもり毛頭ないし。えりの気のせいだって!」

いや、えりだけじゃないから。クラスメート全員同じ事思ってるから。しかしにはそんなクラスメート達の心境など知る由も無い。
からにして、無意識に纏ってしまう負のオーラ垂れ流しで教室内は悪化するばかりである。
そんな中、今まで黙っていた担任がため息混じりに言葉を発し、3人の会話に無理矢理ではあるが終止符を打った。


「お前らな・・・まだ数分授業は残ってんだろ・・・?」

「先生!もう授業所じゃないですよ!!コレは死活問題なんですよ!!」

「ギャハハ!!こんな状況初めてで如何したらいいかわかんないしー!!」

「・・・ごめんよ」


はポツリと呟いた。その拍子に静まり返る教室。騒いでいた友人たちは一斉に口を噤み、ものすごい速さでを凝視する。
当のと言えば、俯き、心なしかションボリしているのが見て取れた。もしかして傷つけてしまったのだろうか、と危惧する友人らは咄嗟に弁解を口にする。

「・・・私こそ、デリカシーが無かったね。ごめん」

「あーもー!そんなキメェ!マジキショイ!陰湿なアンタに残るのはただのガリ弁だって!!」

「ご、ごめん・・よ・・・グスッ」

終いには泣き始める。彼女は何に対して謝っているのか。この状況と全ての事にというのは歴然なのだが。

「これじゃあ・・・ただの駄々っ子だよね・・・分ってる・・・分ってるんだけど・・・やっぱ納得いかないっつーのおおおおお!!!」

「うおぉぉぉっ!吼え始めた!」
「悲しき慟哭・・・心に沁みるよ、」

「はぁ・・・、号令だ」

タイミングが悪いのか良いのか分らないが、授業終了を知らせるチャイムがの叫びと共に鳴り響き、担任はため息混じりに告げる。

「きりぃぃぃぃつ!礼着席っ!」

「テンポ早っ!」


















チャン、相当ダメージ キテルネ。クスクス・・・モット、モっと苦しめばいいのに。

















「はぁ・・・」


 一時、撤退だ。


三蔵は煙草に火を点し、そのまま深呼吸をする。吐き出された煙が消えるのをなんとなく仰ぎ見て、再び嘆息。
ギシリと音を立てる寂れた椅子は無機質に鳴り響き、静かな室内に木霊した。

今はお昼休みだ。いつもなら煩いのが数名居る筈の数学準備室は眉間に皺を寄せる寡黙の三蔵ただ1人だけ。
彼は午前最後の授業を終えると早々にココへ来た。がぶっ壊れていたがシカトして来てしまったのだ。
何故と問われれば・・・はて、何故だろう。
火がついた煙草は自然と灰をつくり次第にフィルターへと近づいてくる。まだ熱くは無いが、勿体無いとは思う。
三蔵はそんな事を頭の隅で考え、もう一度ため息を吐いた。

発狂の原因が席順であるのは一目瞭然だった。だが、行動に移さない三蔵。
何故かと問われれば・・・やはり分らない。
もしかしたら、席順という些細な問題で2人の関係がバレてしまうのではないかと危惧しているのかもしれない。
だがそれは問題ないのだろう。今までの2年間が2年間だったので今更と言うものだ。
じゃあ何故。


「・・・そんなの、決まっている」


危険要注意人物、メアリーの監視。ソレしか理由がない。
もし、己の眼の届かない所でメアリーがに何かしたら止める事も、未然に防ぐ事も出来ないではないか。
だから身近に置いて行動を監視する。そう、三蔵は考えていた。
のだが。


「余裕ねぇな・・・俺も、大概」


――今更変えるなんざ、できるわけがねぇ。何の為にくじ引きに仕掛けしたと思っているんだ。


せこい手口だが、が万年びっぷ席なのはこの男の策略であった。何故今暴露する。
監視する為と言ったものの、やはり教壇に立った時目の前にが居ないと落ち着かないのは言わずと知れた。
自分でそのままにしておいて何を今更。そういいたくなるもの分るが、三蔵は三蔵なりに考えての行動なのだと。

一番前の真ん中と言うのは教壇から見て視界に入りにくい。窓際と別の意味で絶好の座席と言っても過言ではないだろう。
だがソレがと三蔵になった時点で全く違う、真逆の座席に早変わりするのだ。

が寝ていても気付く三蔵。――三蔵が眠そうだと気付く。
が早弁してても気付く三蔵。――三蔵が誰にも聞こえないような声を発しても気付く。
がらくがきしていても気付く三蔵。――三蔵が具合悪そうだと気付く。
が授業に身が入って居ないのを気付く三蔵。――三蔵が何か考え事をしていたとしても気付く。

全てに『瞬時』と『誰にも気付かれない様に』と言う単語が入るだろう。気付いてしまうのは2人して互いを意識しているのだから当然っちゃあ当然だ。
その為、終始静かなはずの三蔵の授業では必ず1度はと三蔵の騒がしいやり取りが行われる。

仲睦まじいと、当時全ての授業に着いて回っていた焔は毎回数学の授業の時、忌々しげに言っていた。
兄的存在の焔はあのお墓参りの時以来、誰にも口外していない。
授業中やらいつも見ていて憤る事もあるが、2人の様子を見せ付けられれば自然と口を噤んでしまうのである。

「気づかれねぇのもすげぇよな・・・」

自分で言うな、と言いたいところである。

「・・・・・・っ」

不意に煙草を挟む指が敏感に熱を察知し、三蔵は思わず煙草を落としてしまった。
葉は燃え尽き机の上に散乱する灰。長いソレは放置しすぎて掃除する範囲を広げ、短くなりすぎた本体の火は既に消えている。
どうやら考える事に没頭しすぎていた様だ。赤くなった指は痛みの糸を引き、冷やしても暫く痛みが消える事は無い。
小さく舌打ち。何やってやがんだ、俺は。物思いに耽っていたのを目覚めさせられたのか、考えていた事を否定されたのか。
それとも何かの予兆なのか全部定かではないが、兎に角後が残る事は無いだろうが薬でも塗っておこうと三蔵は徐に立ち上がった。

 眼が覚めた。

考えるべき事は、過去ではなく、今だ。今現在起こっている事に全神経を集中させなければ、何処かできっと足を掬われる。
その前に己は何かすべきなのではないのか。しかし、何をどうすれば。色々と思うことがあるのだろう、三蔵は雁字搦めになる前にと思案する。

があんな態度なのは間違いなく外国からの転入生、メアリーが原因なのだろう。と言うか、それいしかない。それ以外ありえない。
それはそうと、何故メアリーが関係するのだろうか。三蔵もまた、他の人と同じ所で悩むのである。

「それに、アイツは――」

メアリーは、ただの転校生ではない。少なくとも三蔵にはそうなのだ。































机の中に、何これ。ゴミ?それと、私のお気に入りのペンが消失。ドアには黒板消し。もちろん私は引っかかった。
次に体操服が無い。と思ったら昇降口、下駄箱の上死角。見つけられた私を誰か褒めてくれ。
某授業。教科書が跡形も無くなくなっているお陰で先生に怒られた。隣の席・・・誰も居ないんですけど(奇数なので1人必然的に隣が居ない)
最後に、靴が無い。私の家、結構貧乏なのでちょっと痛手。捜し歩いたら何これ、花壇の中に埋まってるとか。

そろそろいい加減、堪忍袋の尾が切れそうになっちゃったよ私。
ってか何この一世代昔の古典的嫌がらせは。古いよ、古すぎるよこのイジメ。

ホントに、呆れて物が言えないとはこの事か。ねぇ、メアリーちゃんよ。















痛くも痒くもない

(でも、私の怒りメーターには効果抜群です)
















ATOGAKI
なんか長くなってしまった。いやはや。今回はヒロインの考察と三蔵先生の本音と八戒達の想いと、色々。話数も長けりゃ内容も然り。終りが見えない迷路。うあぁぁあ!笑
もう7話目とか・・・僕にまとめる力と文章力をください。コレ切実。
メアリーが合いも変わらず空気ですが・・・きっとクライマックス近くになると出て来るんではないかと予想。いやはや。次回に続く。