別にね。ブス!とか言われても平気だよ?
でもさ。いきなりだし・・・傷ついた。
どんなに教師を敵に回そうとも平気だった私は、何故か今回に限って凹みに凹んだのである。
前回は支えてくれる人が居た。凹んでても必ず何処からとも無く現れる救世主が居たんだ。
何で。何で何で今回に限って居ないんだこのハゲ教師ー!!
「誰にも言えないこのもどかしさ!あぁ腹が立つ!!!」
ごめんなさい、教師の皆さん。
は今も尚、絶賛反抗期フェア実施中であります。
今度お饅頭と共に謝りに行きますから、今しばらくお待ちを。
そして。
表では粋がった事を言ってますが、内心ハラハラしてる私は目の前に居る教師を必死に睨みあげました。
怖い怖い怖い。鬼とはまた違った・・・恐怖。
「・・・前回のはワシの不手際だ。それは謝ろう。だがな、だがっ」
私の些細な反抗なんぞ気にも留めない目の前の教師はそれ以上に私を睨みつけ、言うのです。
「今回の、この現状は一体どういうことだ!!!!」
「ひいいいいいい!!」
「。後で職員室に来なさい。じーーっくり話し会おうじゃないか」
「はい」
それもこれも全ての元凶はメアリー!!アイツだ!!!
でも、コレはただの責任転嫁でしかなくて、私の態度はやっぱり許されない事。
反抗期と言うキャッチフレーズはこの厳格と恐れられた渡囲先生には無効だったようだ。
、一生の不覚ぅ!!!
「あーん?だから俺は、反抗期だっつってんだろ!!」
「反抗期ですむ筈がないだろう!!いい加減にしろ!!!!!」
「うっせーよ!!一々怒鳴んな!!」
「お前と言う奴は・・・!!」
「(やっばいめっちゃくちゃ怒ってるよ・・・)んだとコラァ!!!」
お昼休み。
午後の最適な一時を貴方に、なんてフレーズが聞こえてきそうな優雅な職員室。のはずがない。
原因は職員室の来客用ソファに向かい合う2対の瞳、と渡囲の無謀(主に)の攻防戦の所為であった。
響き渡る怒声。それに居心地が悪くなった教師たちは次々と安らぎの地を目指し職員室を後にする。
そんな中、残ったのは言い争う2人と、見守る大好き同盟(いつから)の教師たち。
「・・・熱はまだ直らんのか」
「いや、紅。コレは流石にそんなレベルじゃ無いと思うんだが・・・」
「本当、どうしちゃったのでしょうね。さん」
「反抗期なんてうまい事言うよなーちゃんはヨ」
「俺、に嫌われたかと思ったって!!」
「大丈夫。後でお饅頭と一緒に謝りに来ますよ、さんは」
上から紅孩児、独角児、八百鼡、悟浄、悟空、八戒とお馴染みの面子が雁首をそろえて見守っていた。
ちなみに場所を変えて話そうとしていた八戒と悟浄は、が渡囲に呼び出しを喰らったと聞いてすぐさま駆けつけたのである。
それにしても、と本気で尋常ではないの様子に心底驚きを隠せないといった面々。
ソレもその筈、あろう事かは鉄壁の城と謳われた渡囲に平然と啖呵を切っているのだから。
そんなの心境は兎も角、今この場に不在である担任に変わって渡囲は負けじと説教を繰り返す。筈だった。
「お前はいつからそんな子になったんだ!!お兄ちゃん悲しいぞ!!」
「ちょ、焔先生は下がっていてくれ」
「渡囲先生!ココは俺が兄としてを正しい道に引き戻しますから!そっちこそ黙っていてください!!」
「無茶苦茶だなおい」
「兄貴はひっこんでろよ!!お呼びじゃねぇんだっつの!!!」
「っー!!!兄貴じゃなくお兄ちゃんと呼んでくれえええええ!!」
「論点はそこかヨ!!」
焔が乱入したことにより、カオスになってしまった職員室。収拾がつきません。
暴れまわる焔を悟浄が押さえつけ、一旦その場はお開きになりそうである。
誰か救いの手を、と懇願しても誰も来ないのが現実。職員室は瞬く間に混乱し、無法地帯と化するのだった。
と、そんな時。漸く王子サマのご登場だ。
「なんだ・・・この騒ぎは」
「三蔵!!待ってたんだぜ!!早くを何とかしてくれ!!!」
「あ?」
プチ出張から帰還した三蔵が眉間に皺を寄せ、いつもの様に尊大な態度を崩さず職員室へと入ってきた。
それに涙を浮かべ、悟空が叫ぶ。八戒はやれやれと三蔵をの元へ導き、事態が把握しきれない三蔵はそのまま身を任せるほか無い。
乱闘直前の中心に放り込まれた三蔵はとりあえずの腕を掴んだ。
「離せ糞野郎ー!!」
「・・・・・・あ?」
「触んなって、言って・・・ん・・・・・・・・・・・・・・・ですよ?」
沈黙。
「っえぇええええええええ!?」
三蔵が帰ってきた事に気付かなかったは、掴まれた腕を振りほどこうと振り返ったとき、初めて己の失言を把握した。
目の前には、鬼。まだ怒りのメーターは底辺にあるだろうが、爆発するのはいつになるやら。
瞬く間に職員室はなんで居るの?と言うと、一体何があったんだ?と思う三蔵の、2人して首をかしげる異様な光景へと変貌したのである。
「で?何がどうなってやがんだ」
「えっと・・・それは、ですね。いや、なんだっていいだろ!!って、んだ・・・?」
「慣れねぇ事言ってんじゃねぇよ」
「だって。いや、うん。・・・だって」
「だってもへちまもねぇ。事細かく詳細を吐け」
「うっ・・・」
場所は変わり、出張で疲れていようがこの有様では休んでいられない三蔵は、と共にいつもの場所、数学準備室に場所を移した。
全くわけがわからんと頭を抱える三蔵に、は朝と打って変わって大人しくソファに座っている。
さすが愛のパワー(曰く)。ご乱心だったを己の存在感だけで制圧してみせた。まぁ本人曰く、混乱しているだけだとか。
「今日は、絶賛反抗期フェア開催中なんです!だから放っておいてください!!」
「放っておけるか!聞けば反抗期だぁ?何とち狂った事抜かしてやがんだお前は」
「うるさいうるさーい!」
「うるせぇのはお前だ!!」
「・・・はい」
何でもかんでも頭ごなしに怒鳴りたいわけではない。それはも分っていて、どんなに粋がろうが結局は押し黙る形になる。
とても逃げ出したいは隙を見て逃げようかと思案するが、入り口は八戒ら3人に固められてそう簡単に抜け出せまい。
しかし諦めるわけにはいかないのだ。なんとしてでもこの状況を打破しなくては問屋がおろさないってんだ。と聊か暴走気味に意味不明なことを考えた。
「で、八戒。コイツの行動を洗いざらい吐け」
「そんなに威さなくても喜んでお話しますよ、ふふふ」
「なぁ悟浄。八戒、結構根に持ってるんじゃねーの?追いかけたのあいつしかいねぇし」
「なんか避けられたらしいぜ?そりゃあ流石の八戒も傷付くわナ」
「ごめん、なさい」
「さん、僕は気にしてませんから正直にお話しましょうね」
まるで子をあやす保父さんの様に促す八戒は、やっぱ根に持ってたりして。
それは兎も角、とうとう追い詰められたは正直に話すしか道は無いらしい。
こうなったら適当な事言って逃げよう、そう企むは静かに唇を開いた。
のだが。
「Hey!三蔵センセー?オカエリナサーイ!!」
「なっ!!!」
「え゛っ」
「あらま」
「おやおや」
「引っ付くんじゃねぇ!!」
突如として現れた、メアリー。彼女は、教師軍の警備を突破しドアから入ると勢い良く三蔵先生に抱きつきました。
それに目を見開くを筆頭に、濁点をつけた声を漏らす悟空先生、呆気らかんと言う悟浄先生、最後に八戒先生が苦笑交じりに呟きました。
そして三蔵先生の驚きの声がこの数学準備室に響き渡ったのです。
そんな数学準備室の空気が読めない(読まない)メアリーは嬉々として続けざまに言いました。あろうことか、を煽る様な形で。
「三蔵センセー?メアリー帰リ待ッテタヨ!一緒ニ ランチシヨウヨ!!」
「・・・・・・」
「やっちまったな・・・」
「これはとめた方がいいんじゃないの?」
「まぁ欧米の人はアレが普通だといいますし、それにだって分って・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「「やっぱり」」
「ですね」
固まる。あぁ欧米のしきたりとか分ってるよ。わかってるけども、でもでも。でも。
「――っ反抗期再来だコラァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
八戒は知っていた。保健室での一件でわかってしまった。
を反抗期フェアへと導いた原因が何であるかを、そして何でこんなに乱心するのかを。
八戒は気付いていた。奇声を発しながら走り去ってゆくの瞳に、涙が浮かんでいた事を。
「さん!!」
悟空は語る。慌てて追いかけていった八戒がとても必死で、珍しく全力疾走していったと。
悟浄曰く、メアリーには不気味なほど妖美な微笑が浮かんでいたと。
三蔵は知らない。今の現状も、みんなの様子も。ただ分ることといえば、追いかけたくとも追いかけられない状況に立たされているという事だけ。
「ホントニ、如何シチャッタンダロウネー?チャンハ」
惚けた口調で言うメアリーは、可愛らしく、愛らしく首をかしげが出て行ったドアの方を向いていた顔を三蔵に向け問う。
普通だったらとても和むのだろう、けれど今の現状では無に等しい。
腕を組み壁に寄りかかっていた悟浄は完全ではないが確信する。原因は多分ココだ、と。
「なるほどネ。おい猿、行くぞ」
「え?意味わかんねぇって!」
「いいから!おい三蔵、一言俺からの助言を受け取れ」
「・・・なんだ」
「いっぺん死んで来い」
悟空と悟浄はそのままその場を後にした。残された三蔵は動けず、メアリーは退こうともしない。
全く意味が分らん、と嘆息する三蔵は徐に煙草をふかし始める。
そしてメアリーを無理矢理剥がすと数学準備室を出て、一旦職員室に戻るのだ。
廊下に出て歩いていく三蔵は後ろにメアリー、前にはの奇声で驚き集まる生徒たちを目の当たりにし、呟いた。
――本当に、ワケ分らん。
+++
「全部ぶっ壊してやる!!!!」
「誰か安西先生呼んでくれー!!」
「キャー!が暴れてるー!!」
「おいどうにかしろ!!」
「どうにかしろったって・・・!!アレは無理だよ!!」
「どっからモップなんて持ってきたんだー!!!」
「ココはバスケ部じゃありませーん!!」
「僕は死にましぇーん!!」
「貴方が好きだからー!!!!」
「らんらんるー」
「\(^o^)/」
「ちょ、待てって!!落ち着け!もちつけー!!」
「優等生のレッテルがはがれるー!!」
「あぁ担任はまだか!?鬼しか止められんぞー!!」
「ばっかは鬼退治の桃太郎のほうだって!!」
「駄目だこりゃー!校舎が壊れるぅぅぅぅ!!!」
「いいから誰か連れて来い!生徒の俺たちじゃとても抑え切れん!!」
「ぎゃあああ!!窓割ってる!!これは謹慎ものだじぇー!!」
「今度こそ誰も庇えない状況!ヤバイ!やばすぎるって!!」
「ー何があったか知らないけど元に戻ってえええええ!!!」
阿鼻叫喚。始業式なんて目じゃないくらい、廊下は喧騒に包まれていた。
我を忘れ暴れまわるは何処からとも無くモップを持ち出し、縦横無人に窓ガラスを割って走る。
廊下に居た生徒や、教室内からのぞき見る生徒たちは揃って混乱し、しかしは止まる事を知らないかのようにただ只管暴れまわった。
そして漸く追いついた八戒たちは目の前の惨劇に息を飲む。一体何が彼女を突き動かすのか。理由は知っている。だが。
――こんな、誰も見たくは無い。
「さん!落ち着いてください!!」
「るせぇってんだよおおおお!!俺は全部ぶっ壊さなきゃなんねぇんだぁぁあぁあああ!!!」
「何を言っているんです!!いいから、そのモップを置いてください!!」
1拍遅れたが、止めに入る八戒。賢明にに言葉を投げかけるも、全てスルーされてしまう。
押さえつけようにもモップを振り回すに成すすべなく、窓ガラスは次々と割られていく。
「うげっ!最強すぎる・・・!」
「おいおいおい・・・これは流石にやべーんじゃねぇの?」
「悟空!悟浄!!見ていてないで手伝ってください!!」
「みんな兎に角教師全員呼んで来い!!」
「ー!お兄ちゃんだぞ!?わからんのかー!!」
見るに耐えない現状。地獄と化した廊下は全ての者を巻き込み、次第に範囲を広げていった。
我を忘れ涙ながらに暴れるは、細い体の何処からそんな力があるのかと言うくらい力強く、おぞましい。
窓ガラスを割ると共にその体にも傷が増えていき、既に血だらけだ。けれど痛みなんて感じていないのか手を休める事も怯む事もない。
ゆっくりと、しかし確実に割る枚数は増えその勇士はさながら、剣士か。はたまた「そんな解説いりません!」
髪は振り乱しては居ないが、その身に纏う空気は憎悪と、怒りが入り乱れ更にを絶望の淵へと追い込んでいった。
「もう嫌だ!!こんな学校辞めてやるー!!!!」
最後に大きく振りかぶり、学校で一番大きな窓ガラスにモップを掲げる。
コレが割れたら洒落にならないくらい、大怪我をするだろう。もちろん、周りに居る教師たちも然り。
教師は兎も角、は嫁入り前で大事な体なのだ。女の子なのだ。自業自得もいい所だがやはり皆、思いは一緒だった。
「さん!!!駄目です――!!!」
その時。八戒たちよりも先にに駆け寄る姿があった。金糸の髪を携えたの担任、それと同時に最愛の――
ガッ ツン!!
一瞬、何が起こったかわからなかった。ただ一つわかる事といえば、大きな衝撃音がしたという事だけ。
しかしガラスは割れておらず、代わりに誰かの肩を打ちモップは床に落とされた。
時が止まるとはこの事か。一瞬で静寂に包まれた廊下は、ただ目の前で繰り広げられた現実に呼吸を許さず、騒然とするだけである。
「あっ・・・あぁ・・・・」
「この馬鹿娘が。少しは女らしくしてろ」
崩れ落ちる姿。床には転がるモップと、どちらのかわからない血で染まっていた。
「うぁぁぁああぁぁぁぁあああああああ―――――!!!!!」
――ごめん、なさい。
散乱する記憶の破片
(この手で、この手が、全部、壊した)
ATOGAKI
ヘイ、マスター・・・バーボン一つ。
何故こんな大事にまで発展してしまったのか。そして三蔵先生の最後の一言が気に入らない管理人です。アレでいいのか。うん。いいや←ホラ、口調がやばかったから!
さて。大変な事になってまいりました教師三蔵先生(仮)シリーズ!次回はどんな過激な風を巻き起こしてくれるのでしょうか!!
シリアス展開に突入した本編と打って変わって少しでも後書きで盛り上げようと必死な管理人の姿が今ココに・・・!!笑
ギャグで終わらそうとしたんだけど何を間違ってしまったのやら・・・次回に続く。