メアリーは言いました。とても小さな声で、私にしか分らないような音量でとても失礼な事をあっさりと。
『A plain-looking woman.』
うふふ。私はですね、英語は苦手ですケド分るんです。聞き取る事は得意なんです。
ただ発音云々が苦手なだけであって書き取りは学年3位なんですよ、ホント。
いつもいつも面接で英検を落とされる私でありますが、本当に書き取りは得意なんです。
大得意なんです!!!!!
大事な事なので何回も言いました。
それはさておき、米俗と言う言葉を知っていますでしょうか、皆様。
日本で言えば俗語みたいな。キモイとかそんなんです。
えぇこれで分ってもらえたでしょう。
彼女、メアリーは・・・私に『ブス』と言って来たのです。即心ブスッ!!(仏ですさん)
初対面でそれはないですよね。私は大いに傷付きました。傷ついちゃいました。
しかも性質が悪い事に小声で、私しか聞こえない音量でそして見下した表情で言ったのです。
誰か気づけと思うのですが彼女は表情を取り繕うのがお上手なようで一瞬でコロリと元通り。
何で私がそんな事言われなきゃならんのですか。誰か教えてください。切実に。
私何もしてないよね!?ねぇ!!そうだと言ってよー!!
私は朝、元気に登校しました。新学期早々嫌な事・・・いや、ソレは全部水に流してさしあげましょう。優しいからね。この上なく心広い子だから。
三蔵に会える事だけが唯一の救いなんじゃないでしょうか。大好きな担任は私にとっての心のオアシスであり、かけがえの無い最愛の人なんです。
だから。私は昨日の出来事を綺麗サッパリ忘れて意気揚々と教室に足を踏み入れましたともえぇ。
清々しい朝の目覚め。遅刻癖も改善されてきた今日この頃春うらら。あぁ校庭に咲き誇る桜がとても綺麗です。え?現実逃避?んなこたぁない。筈。
きーんこーんかーんこーん
「きりーつ。れーい。ちゃくせきー」
「、なんだそのやる気の無い挨拶は」
「いつも気だるそうな先生よりはマシですー」
「・・・反抗期か?」
「絶賛反抗期フェア開催中でーす」
やはり、と言っては難だが朝から不絶頂なは、気だるそうな鬼教師負けず劣らず気の抜けた朝礼の号令をかける。
ぶーたれてる。その言葉が一番しっくりくるその様子に、教壇の前に立つ焔含め一同、天然記念物を見る様な視線を投げて寄こした。
遅刻はしないものの、今度は生活態度に支障か。そう思われた朝のHR。
「ちょっとー。しっかりしてよ」
「うるさーい。は今反抗期なんですー」
「万年反抗期が今更何言ってんのさ」
「ギャハハ!!昨日笑われた事に怒ってんじゃないのー?!!」
「黙れ幸子。貴様にとやかく言う権利は無いわ!!」
「ギャハハー!!こりゃ相当重症だわ!!!」
冷やかし隊長である幸子にも笑われる始末である。一方えりは聊か不安げな表情を浮かべ、の身を案じていた。
全部目に見える物が敵に見える今のは、それさえも押しのけ本日最初の授業の準備へと勤しんだ。
昨日の一件から今までずーっとこの調子だ、は。何故私が、とかぶつくさ言うのが聞こえる。
負のオーラ全開で朝の清々しさはこの教室に微塵の欠片も無い。元凶である自称反抗期なは気にせず、むしろ完全無視で授業に取り掛かった。
「えーでは、さん。ココの所読んでもらえますか?」
「・・・ぎおんそうじゃのかねのこえーしょぎょうむじょうのひびきありー」
「、さん?・・・反抗期・・・ですかね」
古典担当である八戒さえも巻き込むの態度は皆に困惑を齎した。困り果てる八戒は何が原因なのか皆目検討もつかない。
今までこんな事無かったのに。さては三蔵がまた何かやらかしたのか。だとしてもこんなは見たことも無い。
授業が終わったら三蔵に電話で聞いてみようと八戒は考え、そのまま授業を真っ当するのであった。
「うっし!今日も張り切って体育すっぞー!!」
「・・・めんどくせー」
「っ・・・?今、なんつった・・・?」
「だるいー。保健室で休むわ」
「口調まで変わってるよこの子!!」
体育前に張り切った悟空が教室まで乗り込んだは良いものの、帰ってきた返事は気の抜けた、むしろ面倒くさそうな声で。
その声の発信源を辿れば、心なしか顔つきまで変わっただった。悟空もまた、八戒同様困惑に顔を曇らせる事となる。
「18世紀末から19世紀にかけて、『産業革命』の波はイギリスから欧米へと広がって・・・」
「つーかさ。なんで新学期2日目からガッチリ授業あんの?しぬの?」
「・・・?お前熱でもあるのか?」
「は?今春だし。昨日ぴんぴんしてたし。風邪なんかあるわけなくね?」
「。今すぐ進路指導室に・・・」
「わーっと紅孩児先生!!怒らないで!今絶賛反抗期フェア中だから!!ごめんなさい!!!」
「黒野が謝る事ではない。理由は何があろうと、の授業態度はだな、」
「いいから!は私が保健室に連れて行きますから!!授業続けてください!!!」
「・・・やはり熱があるのか。よし、連れて行ってやれ」
「ありがとうございます!!」
「・・・チッ」
普段の生活態度に評定があるは天然である紅孩児に咎められず、えりによって教室から連れ出された。
流石の紅孩児もたじたじである。兎に角、わけは後で聞くとして、紅孩児はそのまま授業を再開させることとなった。
「IT企業は今とことん波に乗っている状態だ。これからパソコンでみんなに実践してもらうぞー」
「機械とかっ!意味わかんねーし!!こんなのぶっ壊してやんよ・・・!!」
「ー!!やめろパソコンは高いんだぞ!洒落になんねぇぞー!!!」
「ってかパソコンとか子供でも出来るし!今更習ったってつかわねぇし!!!」
「どうしたんだ・・・?」
「独角児先生、彼女熱があるので保健室に連れて行きます」
本日午前最後の授業。ちゃんと授業に出席はするは、なんともまぁ迷惑極まりない事なのだろうか。
相も変わらず朝から不機嫌絶好調なは毎回毎回えりに保健室へと連行され、今に至る。
本当に一体如何したと言うのか。毎度毎度保健室と教室の行き来をするえりは漸く尋常ではない事を心底実感した。
「本当、何かあった??だんだん酷くなってきてる気がするんだけど・・・」
「べっつーに。ただの反抗期ですー」
「そろそろいい加減にしないと、担任に呼び出しくらうよ?」
「べっつにー。もうどーでもいいしー」
「(困ったなぁ・・・)」
もうえりもお手上げ状態である。このままだといい加減、先生達の間で不信感が広がり危険な状態になってしまうと危惧するえり。
とりあえず、再三お世話になる事になった保健室へ向かう2人の間には不穏な空気がまとわりついた。
「すみません八百鼡先生・・・また――」
「こんにちは。えりさん、さん」
「あれ、八戒先生どうしたんですか?」
「ちょっと気になっちゃいましてね。授業が無いので待っていたんですよ」
「居んのかよ腹ぐr」
「ー!!!」
保健室には先ほど古典の授業をしていた八戒が呑気にお茶を飲んで寛いでいた。
とてもイケナイ発言をしようとするを必死に宥め、2人は八戒が座る向かいに座る事にする。
そして本題に入ろうとした、その瞬間。
「Hey!チャン元気ナイデスネー?ドウシタンデスカ?」
ベットからメアリーが現れました。メアリーは元気に声を掛けると、を挟んだ隣に腰掛けたのです。
「あら、メアリーちゃんも居たんだ!どうしたの?具合でも悪いの?」
「違イマース!メアリー、『ジサ』?デ、マダ慣レテイナイノデース」
「時差かー。日本語上手だね?」
「アリガトウゴザイマス!」
片言だが確かに日本語が巧いメアリーは昨日の事なんてなんのその。えりと仲良く会話をし始めた。
それに不機嫌さが一層濃くなったは米神に青筋を立て、不気味に、かなり不気味に微笑を浮かべる。
ソレを見て何と無く察する八戒は、苦笑を一つ。今回は場所が悪いのは明白であった。
「あはは・・・さん、もうそろそろ昼休みなので、いつもの場所でお話を聞きましょうか」
「話す事なんてねーし!ほっとけってんだコノヤロー!!」
「どこぞの不良?!、あんた本当に大丈夫?」
「アララチャーン・・・怒ッチャ イヤデース」
「・・・イラッ」
メアリーは実はワザとなんじゃないかと言う位、癪に障る動作をし続けました。本人に悪気は無いのか怪しい所です。
それに激怒したはシカトすると共に、保健室を飛び出し、学校をも飛び出したのです。
追いかける八戒。保健室に取り残され唖然とするえりとメアリー。
事態が把握しきれない様子でえりも後を追おうと思いましたがそれはメアリーによって遮られてしまいました。
「ノンノン、えりチャン。チャン、今不安定デース。コウイウ時ハ、放ッテ置クノガ一番デース」
「でも・・・、」
「チャンハー、八戒先生ガ ナントカシテクレマス。待チマショウ。待ツノモ、彼女ヲ思ウ姿勢デース」
「それもそうだね・・・大丈夫かな・・・」
巧みなメアリーの言葉に誘導されながら、えりは不安を抱えを待つ事にしました。
コレでがまた捻くれるのは目に見えているのですが、今のえりにはソレがわからなかったのです。
「さん!まだ授業中ですよ!!」
「着いてくんなっつってんだよ!!!」
「どっかの悟浄ですか貴方は!!」
「うるせー!俺に構うなあああああ!!!」
「口調まで・・・コレは本当に重症ですね」
「いいから、テメーはすっこんでろ!!着いてくんな!!!!」
「いい加減僕も切れちゃいますよー?」
「切れろ切れろ!!んなの怖くともなんともねぇんだよー!!」
「本当に・・・不良生徒ですね貴方は!」
「だぁーもう!!本当に、ついてこないでくださいってば八戒先生!!!」
「――っ!?」
今まで罵詈雑言の数々を吐いていたが、最後に元に戻り、立ち止まった。
それになんとか合わせ、堪えて立ち止まった八戒は、先ほどと違ったの様子に訝しげに顔を覗き込もうとした。のだが。
「、さん・・・?泣いて、いるんですか・・・?」
「な、泣いてねーし!!」
「ホラ、口調が不良さんに逆戻りしてますよ」
「う、うっせーし!!」
「慣れない口調は大変でしょう?いつもの可愛らしいさんに戻ってください」
「違っ――ううっ・・・八戒、先生ぇ〜ひっく、グスッ」
やれやれ、と今まで散々罵倒されてきたとは言え、に甘い八戒は機嫌を損ねる事無く、むしろを案じ話を聞く事にした。
だがしかし。泣き始めるは、そのまま抱きつく勢いで瞬発力を発揮し八戒に身を任せようとした(?)のだが、八戒の腕に納まる事無く、
今度は隣を横切り走って学校へと向かって行ってしまう。
「あはは・・・やっぱ僕の腕では役不足ですかそうですか」
違う意味で残念そうに微笑む八戒は、を追うため再び走り出した。
それにしても結構体力があるに驚く八戒。さすが現役高校生。侮れない。
「もう嫌だあああああああああああ!!!!」
「だから、どうしたって言うんですー?」
「うるさいうるさーい!!」
「ワケを話さない限り、何にもわかりませんよー」
「わからなくていいよ!!うっせーよ!!」
「どうやらさんは、怒りが頂点に達すると口調が変わるんですね。コレは三蔵も知らない事でしょう」
「変な考察はいらねぇよ!!黙ってろってんだこんちくしょー!!」
「なんだか慣れるとこの口調も可愛く思えてきましたよ、僕」
「黙れ黙れぇ!!私なんか可愛くもなんともないだろうがああああああ!!!」
「そうですか?三蔵を落としたんですから十分に魅力的だと思うんですけどねぇ」
「うぁぁぁああぁぁぁぁあああぁぁん!!!」
「泣きながら罵倒もして・・・しかも走りながらとは・・・さん妙な特技をお持ちで」
同じ道を引き返し、先ほどと同じ様なことを繰り返しながら漸く学校に戻ってこれた八戒は、正門で立ち止まると遠ざかってゆくの背を見送る。
年には適いませんねぇと苦笑する彼は、正門で待ち構えていた同期の人物に振り返った。
「んで、なんか分ったワケ?ちゃんはさ」
そこには赤い髪の英語教師、悟浄が煙草をふかし佇んでいた。
「それが、口は達者になったんですが肝心の事は頑なに喋ろうとしないんですよ・・・」
「あーれま。一体如何しちまったんだろうな。三蔵サマに聞いてもわからねぇって言うし?」
「三蔵でも駄目でしたか・・・まぁ、後は彼女を待つしか他に無いんでしょうね」
「もうすげー噂になってんぜ?あの優等生のちゃんがご乱心だとかなんとか」
悟浄は実際目の辺りにはしていないが、風の噂で駆けつけたらしい。
肩を竦め、お手上げだと言わんばかりに八戒を省みた。
「最悪の事態にならなければそれに越した事は無いんですけどねぇ」
「どーかな。そろそろあの教師も動き出す頃ヨ?まぁこんなに騒ぎになってりゃ、遅すぎって感じだけども」
「きっと三蔵ならなんとかしてくれるでしょう。僕らは僕らでやる事がありますし」
「なんか当てでもあんの?」
「それは・・・ちょっと、確信はできませんが」
八戒の確信と言うのが皆目検討もつかない悟浄はまぁなんとかなるっしょといつもの様に、されど不可解なの行動を重視しているのは気のせいではないだろう。
「ちゃんの王子サマはなーにやってんのかね」
「朝からプチ出張らしいですよ。お昼休みには帰ってくると聞きましたが・・・」
「ソレが原因?」
「いいえ、多分違うと思います」
「じゃあ一体ナニよ?」
「それは・・・場所を変えましょう」
呼吸が整った八戒、それに悟浄はいつもの場所、数学準備室へと向かう。
考えるのはの突然変異。考えても答えが出ないの変貌振りに困惑気味で早々に正門を後にした。
Misfortuneを、おすそわけ
(そんなもんばら撒かんでいい)
ATOGAKI
ご乱心です。ヒロインとうとうご乱心の様子です。ぶっ壊れたー!!笑
さて。今まで語られなかった教師陣の授業風景を書いて見ました。出てきたと思ったらぶち壊しだよ!!笑←
メアリーが出ると英語の教科書になる法則。片言って卑怯だよね!管理人は思わず笑ってしまうんですが。
きっと次回、三蔵先生は出てくるはず。今日は朝からプチ出張だったようです。ちなみにHRの時は焔でした。
サブタイトルの英語の中途半端さは気にしたら負けです←
Misfortune=不幸