trigger Act:xx エピローグ そして プロローグ
ほのぼのとした田舎。大自然に囲まれたソコは爽やかな清んだ風が吹き抜ける。
そんな中、平原、牧場が広がる一角にレトロで別荘の様な家が1件。
木造でロッジを思わす造りは田舎特有の雰囲気をかもし出す。
よく日の当たる位置にテラスがあり、其処には仲良さげに戯れる3人の親子が居た。
「ねぇ母さん。明日には都会に戻るんだろ?」
「そうよ。お爺ちゃんとお婆ちゃんも大分落ち着いてきたし、なんてったって明後日には大事な式があるからね」
「アイツも結婚するのか…。いい部下だったんだがな」
「あら。寿退社は喜ばなきゃ駄目よ、貴方」
「父さんの部下だったんだなアイツ!何であの怖い奴と結婚すんだろ。物好きもいたんだなー」
「俺たちのように幸せになってくれる事を願おうか。リカ、ケン」
今は遠くに居る命の恩人、もとい友人を思い浮かべ親子3人は穏やかに微笑んだ。
+++
男は座っていた。地べたに座り込み天を仰ぐ。
瞳はおぼろげで、まるで抜け殻の様にただただ流れ行く雲を見つめていた。
全てを遮断するかのように目に映るものすべてがモノクロで、生きているのかさえ分らない。
ふと、どこかで大きなベルの音が聞こえてきた気がした。
どこかで結婚式でもしているのか、少しばかり騒がしい。
響き渡る鐘の音は今の男を嘲笑うかのように鼓膜を揺らす。
しかし男は興味が無いのか音をシャットダウン。
今、幸せそうな奴等など全てこの世から消えればいい。
歪んだ、歪んだ顔からは先ほどの意気消沈な表情は消え、禍々と笑う。
そうだ。死ねばいいのだ。この世の全ての人類など。
「私、は。あの男がくたばった今、この世界を我が物にしなくてはイケナイのだよ…」
あの偉そうな男は桃源郷によって殺された。
他の者も全滅。全ての者に裏切られ死んでいった哀れな男。
しかし私は生きている。寝返ってチャンスを窺っていた私は、脅える必要など無くなったのだ。
もう邪魔者は居ない。ならば私は今こそやるべきではないのだろうか。
さぁ、私の時代が来る。必ず、来るのだ!
薄汚い格好をした男は立ち上がり、大通りへとフラフラした足取りで進む。
狂気に満ちたその姿は、以前大手会社の社長をしていたなどと思わせぬほど廃れていた。
行く人々が振り返る。こんな好奇な目にさらされても尚、男は歩く。
向かう場所は、まず――。
+++
「いいから急げ!」
「だーちくしょー!こんなときに限って仕事なんてよぉ!!」
「運が無いとしかいいようがありませんね」
3人は急ぎ足で目的の場所へと走っていた。駐車場が無いと聞いたので仕方なく歩とで向かうことになっていたのだ。
あの尊大な態度で 『駐車場?そんなのあるわけねぇだろ』 なんて言われた時は行く意欲が削がれたといっても過言では無いだろう。
相も変わらぬあの男は電話越しに舌打ちまでくれた。招待したのはお前だろ、と言いたい所だ。ホント、行くのやめようかな!
…しかしもう1人の方を思い浮かべると行きたいと言う気持ちの方が遙かに勝る。
あぁ、あの男がアイツと結婚するなど…忌々しい。
そんな思いを胸に、3人は尚も急ぐ。先ほどまで事件が重なりようやく一息ついた所なのだ。
招待状も忘れて居ない。それはちゃんと本部から出るときに確認した。
格好も彼らなりに正装してきている。風呂に入れなかったのが心残りだが、今は間に合うか間に合わないかの瀬戸際だ。
考える余裕なんて無い。始まる時間はとっくに過ぎているのだが兎に角、終わる前にはなんとしてでもたどり着きたかった。
そう混んでいない街中は大した時間ロスも少なく、信号待ちだけが彼らの行く手を阻んだ。
直ぐ其処を行けば会場だ。結婚式特有のベルもかすかに聞こえる。3人は自然に緩む頬を押さえ込み一直線にかけぬけようとした。が。
ふと、目の前の路地からこの街並みに相容れない姿の人物が視界に入ってきた。
全身ボロボロでホームレスか?と思わせる風貌の男は、廃れた格好と違い表情はある意味活き活きとしている。
背を向ける前に見た横顔からは狂気に歪んだ、とても禍々しく背筋を凍らせる勢いの雰囲気。
そこで走っていた男の長年の勘が働いた。アイツは危ない。このまま放って置いたら絶対に危険だ。
刑事の性か、3人はどうやら結婚式には間に合わないらしい。あぁ、事件が忌々しいぞ。
「待て。お前…、職務質問に答えろ」
「な、なんです?私は、ただ、歩いているだけですが」
「いきなりすみません。しかし、貴方を放っておくと危険だと我々は思ったので」
「わりぃなオッサン。テメェからは危ない香りがプンプン臭ってくんだって」
横暴とも取れる職質を投げかける3人に男は咄嗟に取り繕った表情を一変させ、先ほどの歪んだモノに変えた。
当たりだ。そう思ったとき、男はあろう事か3人を押しのけ一目散に逃げた。
4人とも同じ方向に行こうとした、その先には。いかん。あの先は会場だったはず。
今まで走ってきた疲労が重なり、危険な男に追いつけない3人。駄目だ、間に合わない…!
と、其処に。
「邪魔だ。失せろ」
後ろを警戒しながら走っていた男は気がつかなかった。追いかけてくる3人に気を取られていた為、前に居た存在に気がつけなかったのだ。
声が聞こえたと思った刹那。男は首にかなりの衝撃を喰らい、地に伏せる事となる。そして意識はシャットダウン。
「あぁ…すまない。どうやら間に合わなかったようだな」
「折角招待状を頂いたのに、申し訳ありません」
「しかも事件まで持ち込んじまってよー」
目の前には全身白いタキシードに身を包んだ、金髪。隣にはこれまたおそろいの白いドレスに身を包んだ女性。
3人は状況を理解するとともに謝罪した。あぁ、もうアレですか。車に乗るんですか。
「全くだ。祝儀袋だけ置いて帰れ」
「ちょっと三蔵!それは酷いって。お忙しいのに態々すみません3人とも…」
「イヤ、悪いのはこちらの方だ。粗末だが受け取ってくれ」
「このたびはご結婚おめでとうございます。さん。三蔵さん」
「おーぉ。2人とも似合ってるぜ?羨ましいなコンチクショー!」
足元に転がる男なんぞ眼中に入らないのかほのぼのと話始める5人。周りには大勢とは行かないが親しいもの達が揃いに揃っていた。
そう。今日はと三蔵の結婚式だったのだ。だから3人は急いでいた。
途中で怪しい男と遭遇してしまったがどのみち間に合わなかったらしい。それでもこの華やかな2人を一目見れたことでよしとしよう。
純白に身を包んだ2人はとても幸せそうで、反対に羨ましかったりする。
横から悟空と悟浄が騒いでいたが放っておくことにした。あと、泣き喚く焔とか。
観音なんて既に出来上がっているし、光明はいつものように穏やかに微笑む。
あの親子たちも、同僚も、みな正装した姿が珍しい。自分たちも是非参加したかったと悔やんでしまう。
八戒は紅孩児から祝儀袋を受け取り礼をする。身内と知人友人だけの結婚式はさぞ楽しかっただろう。
みんなみんなそろいも揃って浮かれてて、これが彼ららしい。素直にそう感じた3人であった。
「さぁ役者も揃ったことですし、宴会へとなだれ込みますか!」
「結局そうなるのか…」
「いーじゃんいーじゃん?折角の祝い事なワケだしぃ?」
「俺まだ食いたんねー!早く次の会場に行こうぜ!」
「グスッ……ィィ!!ひっく」
「なんらー?焔は酔うと無き上戸になんらなーひっく」
「ホラホラ2人とも。お祝いの席だからって飲みすぎは良くないですよ…ひっく」
「にこんな素敵な旦那様うらやましいー」
「ねぇちゃんは俺の嫁にしてやろうとおもったんだけどな!」
「コラ、ケン…私もちゃんみたいな娘が欲しかったわぁ」
「リカ、お前も相当酔ってるだろ」
「あはは…皆さん気が早いですねぇ。僕も張り切って飲んじゃいますv」
「途中からで申し訳ないがオレ達も参加させてもらおう」
「やはりみなさんらしいですね」
「オイオイ、今日って結婚式じゃなかったのかよ?」
ベルが響き渡る。鳩が一斉に飛び立ち、2人に祝福を齎す。
今日も皆、各々の明日に向かって生きる。
どうか幸福を。バージンロードを歩く花嫁にかごぞあれ。
翌日、全員が二日酔いに悩まされるのは言うまでも無い。
おしまい
ATOGAKI
やっぱ書いちゃった。どうやって言い訳をしようか…。と言う事で『エピローグそしてプロローグ』です。
なんか物足りないなぁ、と思ってエピローグ書こうぜ!ってなったんですが自分プロローグも書いてないじゃないかと気がつきこの様な形をとらせていただきました。
この話は終わった。しかしこれからも行き続けるぜ!と言う意味を込めて…。イヤ、ただ管理人が書きたかっただけry←
最後は彼ららしく、そして綺麗にまとめてみました。HAHAHA。綺麗かどうかは知らんけど。笑
伏線ってか忘れられた存在を出したかったんだ!ちゃんとハッキリ白黒付けたかったんだ!そんな管理人の我侭でした。
ではでは。ホントありがとうございました。これでホント、終わりです。今まで付き合ってくれた皆様。応援してくれた皆様。
ホントにホントーーーーに、ありがとうございました!感謝感激春うらら〜。それでは。
蛇足。最後の台詞の順番。笑
上から 張り切るヒロイン、呆れる三蔵、良からぬたくらみな悟浄、腹減り悟空、泣く焔、泥酔観音、実は酔ってる光明様
同僚のエリ、マセているケン、酔ってるらしいリカ、空気薄い部長、お前も張り切るなw八戒
参加する気満々の紅孩児、関心する八百鼡、ちゃかす独角児。でした!分りづらくてすいまっせーん!←
photo by 戦場に猫 様