目の前には大きなカジノ

入り口からは大勢のマフィアだと思われる人々が逃げていた

きっと既に戦闘は始まっているのだと――は確信した












   trigger  Act:56













「2手に別れるぞ。と猿、河童は三蔵と八戒を探せ。俺たちはここら辺を片付ける」

「を守れよ。猿、河童。にもしもの事があったら…ただじゃ置かん」

「何で俺ら名前で呼ばれないワケ?」

「ひっでーよ!」

「呼びやすいんですよv」

「あはは…早く、2人を探そう!」


観音の提案で2手に別れることになった6人は入り口に入ると同時に駆け出した。

悟空と悟浄はを守るように前に出て敵を蹴散らす。

後ろに残した観音、光明、焔はホールに群がる敵相手に対峙する。

それにしてもカジノの室内はそれはそれは豪華で、先日の交流会を思い出させた。

今はその時と違い、あたりは緊迫した雰囲気に包まれ硝煙と鉄の匂いが充満している。

にとっては始めての戦場と呼べる場所。周りは煌びやかとは言え逆にその不釣合いさがとても怖かった。

目の前を走る2つの背中。その背中に守られていると言うのが心苦しくもあり、安心して着いてゆける。

片手に持ったなれない重さ。その重さが現実を突きつける。震える足を必死に動かし、銃を構えた。


「ちゃーん?そんな物騒なものは仕舞っておこうか」

「でも、」

「いいんだって!は俺が守るからさ。ソレは必要ないって」


余裕綽々の2人が振り返り、に言った言葉に、は肩の力を抜いた。

どんなに決心したと言っても、怖いものは怖いのだ。その証拠に震える腕は正直で。

――人を打たなければいけない。それはとても怖いこと。この重みを背負って彼らは生きているのだとするならば。

は彼らがとても強いのだと、再確認させられたのであった。

そして反対に、己はとても弱い。しかし、そんな弱音は言っていられないのだ。2人の静止を振り切っては銃を構えた。


「殺さない程度に…って言うか、私が打っても当たらない気がします」

「それはそうだけどもヨ?ちゃん、本気?」

「はい」

「ははは!さすが三蔵の彼女だなーは!」

「弱いままじゃ、あの人についていけませんからv」


は標準を敵に合わせた。三蔵がいつか言ってた。頭を狙うんじゃなく、胴体を。そしたら死ぬ確立は低くなり、しかし的は外れ難い。

その言葉を繰り返し脳内リピートして、は引き金を引いた。


「…」

「…」

「な、なんでですか!?」


当たらなかった。掠りもしない。


「…えっと、まぁ…ちゃんには向かなかったと言う事で、な?」

「あ、あは、は。そう落ち込むなって!な?」

「…行きましょうか」


の周辺だけやけに澱んだ空気が包み込む。近くに居た悟空と悟浄もそれに巻き込まれるのであった。











+++









「…ハァ……」

「うぜぇ。どうにかしろ光明」

「無理ですv」


一方、ホール内周辺一掃班。そこには焔の澱んだ空気があたりを包み込んで…兄妹揃ってで落ち込んでいます。場所は違うけど。

澱みきった空気に嫌気が差した観音は音を上げ、光明に助けを求めるもいとも簡単に切り捨てられてしまう。


「が心配だ。早く、行かなければ…!」

「待て。お前はまだ俺達とやることがのこってるだろう」

「しかし!…何故、観音は俺とを別にしたんだ!」

「お前が居ちゃ、が守られて意味が無くなるだろうが」

「それではさんの決意も水の泡になってしまうんですよ?」


溺愛の焔。きっと彼女と一緒にしたら、何もかも無意味になりかねない。

観音だって光明だってが心配なのは同じだ。しかしこれは彼女が望んだこと。

彼女の決意を優先させなければ一生悔いが残るのは目に見えていて。

今にも駆け出しそうな焔を押さえ込み、観音は慈悲と慈愛をこめた瞳で言う。


「可愛い子には旅をさせろってな」

「ふざけるな!コレはお遊びじゃないんだぞ!?もしもに何かあったら、」

「信じることも大切ですよ。焔さん」


まるで神様の様な2人に焔は黙り込むしかなかった。そうだ、は今自分と戦っている。そして、己も。


「三蔵の奴…これで死んでいたら後を追ってやるからな…!」


焔は敵を一掃していった。その破壊的な力で、全身は怒りのオーラに包まれていた。


「嫉妬って奴はこえぇな」

「そうですねぇ」


幾分か楽になった観音と光明は突き進む焔の後をのんびり着いて行く。あぁ、目の前に広がる悪夢のような光景が微笑ましい。

そんな時、後ろの入り口からパトカーのサイレンが鳴り響いた。警察の到着がやけに早い。

一体何事だ、と観音は後ろを振り返る。其処に居たのは。


「何事だ…。破壊する音が聞こえるんだが」

「あぁ、コレは燃える男の雄たけびだ。気にするな」

「お久しぶりです。観音社長様、光明様」

「お久しぶりですねぇ。紅孩児さん、八百鼡さん、独角児さん」

「おーおー派手にやらかしてんじゃねぇか」


真実を突き止めた警察の3人が到着したようだ。早々に室外からも聞こえてくる破壊音が気になって慌てて入って来た。

それで上の会話だ。真相を聞くと一気にあきれ返る3人である。

そんな事より。何故この3人が?と疑問に思う観音。まだあの事を知らないのだから無理も無い。

話は長くなるのだが、と言って紅孩児は話すか話すまいか迷った挙句、真実を話すことにした。

こやつ等なら、あんな事があっても絶対彼を軽蔑することは無いだろうと信じれる自身がある。実際紅孩児達も全く気にしていない。

全部包み隠さず真実を打ち明けた。それで彼らの反応とは。


「まーったく、アイツはだから馬鹿だって言われるんだぜ」

「アノ頃はやんちゃしてましたからねぇ…周りの事なんて見えてなかったんですよ」

「…殺す。が殺らないと言うなら俺が殺してやる」


若干1名から不気味な言葉が飛び出たが気にすることは無い。彼は正気を失っている。…そういうことにしておきたいのが本音だが。


「紅、こいつ等マジで怒らないんだな」

「当たり前だ。コレは彼に非は無いからな」

「それと、信頼しているのでしょう…私たちのように」


それぞれの、思い通りの反応にはあきれるがやはりなんだか安心した3人。

個人の情報を流すのには若干抵抗があったのだろう。しかしソレは杞憂に変わったと言うことだ。


「で、どうすんだ?警察側とこのマフィアが絡んでるってことは、結構お前らの立場も悪くなるんじゃねぇのか?」

「其処は安心してくれ。このマフィアは最近事件を起こしすぎた。そして我々は裏の事情なんて知らんからな」

「しらばっくれるのかよ」

「何のことだ?」

「はっ!いい性格してやがるぜ。安心しろ。職を失ったらこっちで雇ってやるぜ」

「それはありがたいことだな。しかし、俺はこの組織を変えねばならん。まだ居座るつもりだ」

「大層なこって」


この真っ直ぐな瞳を持つ彼は、本当に変えれる。世界は安泰間違いなしだ。


「で?俺らも掴まんのか?」

「こんな大きな騒ぎだ。桃源郷には協力してもらったと言う事で咎めは無いだろう」

「それに、この巨大な組織を一掃出来るので好都合です」


八百鼡は満面の笑みで言った。心から嬉しいといった様子だ。

彼らにはコレは組織を変える一つの壁だ。それを打破できて互いに嬉しいのだろう。


「それではめいいっぱい暴れられるんですねぇv」

「オイオイ光明さんよ?やりすぎはよくねぇって。俺らを殺す気かよ」


光明のいたずらっ子な瞳は本気でやりかねないので独角児が必死に止めるがきっと効果は無いだろう。

それでも許してしまう彼らは本当に、哀れだ。(仕事が、増える…いや、こんな問題なんでも、無い…ぞ)


「それじゃあ、行くぜ、野郎ども」


観音の掛け声?と共に各自やることを果たすため、駆け出した。

観音は達は雑魚の一掃を。紅孩児達は警察を動かす為。

なんだか不安になってきた紅孩児は顔を引き攣らせ、去っていく。

光明はなんだか嬉しそうに終始笑顔で彼らに背を向けた。

その他の人間は紅孩児を哀れに思い、光明に恐れをなしたとか。イヤイヤ、気にしたら負けだ。












































「逃がさんぞ…桃源郷の虫共がっ!」


三蔵を招き入れたあの室内でマフィアのボスは忌々しげに顔を歪ます。

状況は先ほどの優勢など消え去り、今は釈然とした劣勢に陥っている。


 応援はまだか。

  皆、忙しいと断られるばかりです。

 糞っ!裏切ったか、あの小物マフィア共は!

  ボス、察も到着した模様です!

 ふん…あやつ等は私の僕だ。これで勝敗は決まったな。

  それが、オレ達も取り囲まれて、う、うわぁっぁぁぁぁ…


「どうした!?おい、おい返事をしろ!!」


 一体何が起こっている?警察は、我々の見方ではないのか。何故だ。何故、手を組んだ筈の組織が。


『貴様がトイ・ダストだな。この建物は警察が包囲した。大人しく出て来い』


無線から無情に聞こえる声。その無線から発せられた言葉にトイは全身の血の気が引いた。

 我々が捕まる側だと?一体何が起こっている?コレはなんの冗談だ。笑えんぞ。

室内からでも聞こえるサイレンの音。仲間の悲鳴。想像したくもない。裏切られたのだ、トイは。

このダストファミリーの傘下に入ったマフィアにも、数々と互いの利益を分かち合った大組織、警察にも。

 そんな、筈がない!私はあの玄奘三蔵を殺して、目障りな桃源郷を潰して、そしてそして、警察さえも手に入れこの世界を征服する、のだっ!

トイは手の中に握られた無線を投げ捨てた。ソレはドアに当たり大きな音を立てて床に転がる。

ソレさえも気に食わないトイは隣に居た雑魚の部下を殴り倒す。忌々しい。忌々しい忌々しい忌々しい。

 勝利は、目前だったのではないのか…?私がこの世界を手に入れるのは、もう直ぐに、

息を荒げ、浅く呼吸を繰り返す無様なトイは尚も部下を殴る。全てをぶつけるように。部下が息をしなくなっても尚も、殴り、殴り。


「トイ様、祖奴は死んでいます」

「うるさい!何もかも、何もかもココで終わりになどするものか!」

「ですがトイ様…」

「お前も私を裏切ると言うのか!?私はまだやれる!この世界は私のものだ!!!!!!」

「落ち着いてください、トイさm」


最も信頼を置ける部下は、トイに静止の言葉を投げかけるも、それは途中で切れた。

トイは傍に置かれた銃でその部下を撃った。もう、彼の周りには誰も無い。その室内に存在するのは己のみ。

 忌々しい。全てが忌々しい。こんな、私を侮辱する世界など、要らぬ!


「玄奘、三、蔵…殺してくれる…全ては、貴様の所為…、だ」


狂気に満ちた瞳は濁り、狂気の沙汰ではない。もう彼を引き止めるのは、三蔵に対する殺意だけだ。

 アイツが、私の計画を全て邪魔した。そのお陰で私はこんな、こんなこんなこんな惨めな姿を晒さなければならなくなった、のだ。

一丁の拳銃が数発発砲された。壁や床、息絶えた部下2人。銃痕が所々に残る。

耳鳴りがするような室内の中、トイは目を血走り、息も荒くずっしりと重くなった足取りをドアに向けた。


 殺してやる、殺してやる。あの憎き男を、あの憎き男を、この手で…


「殺して、殺して殺して、殺しまくって、殺してやる」


 死んでも、殺して、跡形も無く殺してやるのだ。


「玄奘、三蔵っ…!」


その理不尽な殺意はトイを突き動かすには簡単で。彼は足取り重く、地下へと通ずる階段を下りた。












トイが去った室内。其処には最も信頼された部下がまだ息を絶え絶えに生きていた。

彼は床に隠されたボタンを一思いに、押す。それは一体何のボタン?


















To be continued.




















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ATOGAKI
こえぇ!いつからホラーになったんだ。笑。トイ、ついに壊れた。まぁ、こうでなくっちゃ面白くない、と言う管理人の独壇場です(さぁしんでこい)
ぶっちゃけこんな壊れた物を書くのは非常に楽しいんです。狂ってる様子なんて、想像しただけでも楽しい。…おかしいかな?(うん)
それと三蔵サマは八戒に釘を射したのにも関わらず紅孩児のお陰で露見してしまいました爆笑。まぁあの腹黒サマの事だか言ってしまうのだろうケド。←
それにしても、とっても読みにくくてすいません。いつもの事ですが、書きかたも違くなっちゃいました。間が開きすぎた。あはは。
ヒロインがとっても不器用ですwバンバン敵を倒しちゃうのもどうかと思って其処は、ね。駄目なんだ。
あぁ。なんか部下さんがボタン押しちゃったよ。コレは、うん。また後程。(バレバレの伏線乙w)