僕等にとってソレは未来でもなんでもない

今が現実で、生きている事が僕らにとって全てなのだから









   trigger  Act:55














「そういうことか…俺でも知らなかったなんて、胸糞がわるい」


あれから数日が経った。俺は玉面に呼び出しをくらい、不可解な言動を探る為最も信頼の置ける2人と共に調査を開始した。

探るといっても内部の裏の事だ。簡単に知れるはずもなく結構な時間を喰ってしまった。

だが、俺たちの汗と涙の…ではなく、苦労の末漸く突き止めることが出来たのだ。


『玉面と裏組織についての報告書』


八百鼡が一晩でまとめてくれたお陰で1冊の報告書が出来上がる。

内容を知った時、俺の中には、『予想通り』と『不安』が巻き起こった。

アイツが裏で何かしら手を組んで事を運んでいたことは容易に想像できた。

しかし、その後の『計画』を欄を見て唖然としてしまう。なんだ、コレは、一体…?

その非情な内容は己の目を疑うものばかりで手に持った報告書の束をビリビリにしてしまいたい衝動に刈られた。

あぁ、運命とはなんて残酷なものなのだろうか。



『トイ・ファミリー幹部、以下軍1部にカモッラ討伐を任命す』


『軍部4名の小隊を配属。尚、コレは極秘任務とし、小隊が勤める”第2中央部隊”の極1部のみに通達。

 その他中央部隊の隊長、及び上官、二等兵以下には極秘とする。 通達責任者 開発部隊・ニイ博士』



「オイオイ、中央部隊って言えばよ、」

「当時の上官職には確か…」


「――玄奘三蔵が居た筈だ」



”中央部隊第2 副隊長・玄奘三蔵”



「と言うことは、この極秘任務が行われたのは一等兵そこらのやつ等4人だけって事か」

「こういう場合は上官クラスの人間に通達される物ではないのでしょうか?」

「おそらく、ニイ等は裏切り行為がされないであろう人物だけに絞ったと言うことだろう」


当時、エリート軍人と恐れられた玄奘三蔵。しかしソレは腕だけで認められ、その他は反発や言動で上のものからは忌み嫌われていた。

その為、あの極秘任務のときは外されたと言うわけだ。あの部隊は正義感が強すぎた。それだけの事。


「それじゃあ…あの一家惨殺事件は直接関与していないとは言え、あの玄奘さんが」

「そういう事、だろうな」

「そんなっ!」


知らなかった、では済まされないのだろう。当時修羅か羅刹の如く非道な彼の姿は今でも目に焼きついている。

鬼だなんだと恐れられた彼は至極腕が立ち、見方に居ることがとても心強いとさえ思っていたのも事実。

しかし、彼は己の気に食わない任務などはやらず、その部隊の隊長もお人よしなところもあってか上の物に反発を繰り返していた。

中央部隊の中でも第2隊だけは、上に邪険にされた、否、正義感溢れる隊だった。


「第2以外の一等兵4人だけを集めた、極秘任務班。これを知ったら、どうするんだ?アイツは」

「折角、幸せになれたと思ったんですが…残酷すぎます!」


まさか、コレが運命?


「…行くぞ。報告によると今日、玄奘三蔵がマフィアを装い、あのトイと接触するのだからな」


玉面の思惑通りになんぞさせん。この街全体、否、世界までも手に入れると企むと言うのならば。


「俺たちは阻止せねばならん。着いて来い。独角、八百鼡」


「おう!」

「はい!」


脳裏に、胸糞悪いニイと玉面の笑みが過ぎった。












+++










「八戒、今の事は誰にも喋るな」

「しかし、三蔵っ!」

「うるせぇ。テメェは言われた通りにすればいい。余計なことを言ったら、殺す」

「そんな…三蔵は悪くないじゃないですか!ソレなのに何故、」


「知らなかったじゃ済まされねぇんだよ。俺は、俺が居た軍部とこいつ等が裏で繋がってたなんざな」


何かを必死に我慢しているような声は、酷く脅えているようにも聞こえた。

表情はこの暗闇で見えないが、今、その冷淡すぎる顔は、きっと悔しさに満ち溢れているに違いない。八戒はそう確信した。

現在、トイと接触し案内された部屋から随分離れた地下の一室に身を隠している。

なんとかあの状況から抜け出すことに成功した八戒たちは闇雲に走り、敵を一掃しながら物影に隠れ隙を窺っていた。

その前にトイから発せられた、驚愕の真実。


『何故、我々がこんなにも勢力を拡大できたとおもうのだね?

 それは、警察共に軍部の総司令官と繋がっていたからなのだよ。元エリート軍人玄奘副隊長殿?』


それから次々と明かされる真相。醜く歪んだトイは勝利目前といった風に、ツラツラと羅列を並べる。

死ぬ前に土産話として全てを話そう。そういったのだ。この忌々しいトイは。

そんなトイに三蔵は今までにもなく、動揺した。目を見開いた。

八戒も同様に驚きに包まれ暫し動けなくなったほどだ。敵前で戦意喪失してどうするのだ。

そう思い、トイが話し終わったのにも関わらず未だ呆然と立ち尽くす三蔵を無理矢理引っ張り、逃げてきた。

どこかおぼろげな視線は酷く、三蔵の心を表しているようで胸が締め付けられる思いだ。

彼に責任があるとは思えない。しかしソレは彼の性格上、許せないのだろう。

愛しい存在を傷つけたのは、己なのだと――。


「三蔵。はこの真実を知っても、貴方の事を嫌うなんて事はありえません」


実際、三蔵は関与していなかったのだから。それを己の所為だと戒めるのはおかしいのではないのか?

八戒はそう思わずには居られない。


「貴方が己を責めるのは、仕方ないかもしれません。ならば、自分の尻は自分で拭えばいいじゃないですか」


「ふん。言われなくても、そうする」


カチリとライターの火が灯った。その僅かな光の中に見た三蔵の表情はいつも通り、尊大な表情で。

八戒は至極安心した。それが彼なりの虚勢なのだとしても。


「とりあえず、この状況を打破しなくてはどうにもなりませんねぇ」

「チッ…隠れるのは性に合わん。行くぞ」

「もちろんですv」












To be continued.














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ATOGAKI
焔が独自で追っていた(と言う設定がありました笑)ヒロインの家族惨殺事件は、警察のものによる事件だったので突き止められなかったのです。
しかし警察側の紅孩児は、まぁ、早く突き止められたのだという事で…。本当に焔かわいそうだな!←
それと三蔵サマの過去が明らかに。職業だけですが、それとヒロインの過去と繋げるのは聊か抵抗がありました。が、話の進行上と言う事で許してください。_orz
これからどうなることやら…やっと終わりが見えてきました。うん。もう少しだっ…!がんばろうな。自分。笑←