trigger Act:53
思ったとおり外に出る扉を開いたら敵がコレまでかと言うくらいに待ち構えていた
観音が運転して飛び出るとさすが車好き
ドラテクもはんぱなく上手い
乗っているでさえ魅了されたハンドル捌きだったが何発か銃弾が当たってしまう
それでも数人轢いた車は傷を最小限に出来たのは確かだ
後ろを振り返るとまだ敵はわんさか居て、そして開けた扉は自動的に閉まっていく
本当に徹底した…もう要塞と呼べる建物だ
その桃源郷本社を背に観音の運転する車は夜道を走り抜けていった
「また夜中に不躾ですね」
「ああいう連中は姑息な奴ばかりだからな…本気で潰したくなるぜ」
は観音の言葉に自分の両親の事を思い浮かべた
…自分の両親もこのような事をしていたのだろうか
カモッラと言う組織だったがは何をやっていたかまでは知らない
そんな心情を見抜いた光明は優しい音色で声を掛けた
「ふふふ…貴方のご両親は本当に良い人たちでしたよ?警察の方はよくは思っていらっしゃらなかったでしょうけど巷では有名でした」
「え?」
「まぁ、アレだ。特に悪事は働いてなかったぜ?むしろ町の連中には感謝されていたくらいだ」
昔、先ほど話したように裏家業を営んでいた観音と光明はの両親とも面識が合ってもおかしくはない
実際に何度か世話になったと観音は続けた
それには心から安堵の息をつく
やはり自慢の両親なのだ、と
「さて。確か携帯にはGPS機能が備わっていましたよね」
運転席と助席の間にある液晶
それは三蔵は滅多に使わなかったがは良く遊んでいたことを思い出す
アレはナビとかテレビを見れる奴だ
それに何故GPS機能…?
「そりゃあ当たり前だろ?なんてったって俺の車だ。色々手を施してあるぜ」
「フフフ。実際にやってくれたのは八戒さんじゃないですか」
「…別に俺がつけたとは言ってねェだろ?」
「すみませんねぇ…自慢げに話すんでつい、ね」
人の悪い笑みをこれ見よがしに運転席に座る観音に向ける光明
そんな2人が微笑ましくて
つい笑ってしまったに咎める観音が居たとか
それぞれの携帯にGPS、もちろん車などにも着けられている機能は便利だった
悟浄たちは直ぐに見つかり今、向かっている所だ
焔と少し離れているのが気になるが考える余裕無く目当てのポイントに車を停車させる
悟空は携帯を取り上げられ壊された様で感知できなかったが多分大丈夫だろうと思う
それに悟浄と焔がヘマするとは考えて無い為母親も無事救出できただろう
後ろからの追っ手も今のところ見当たらないので待つことにした
「母さん…大丈夫かな?」
ポツリと、呟きだったかも知れないけれどケンのその声はおぼろげで
微かに聞き取れるか取れないかの声だったけれどの耳にはしっかりと届いた
「大丈夫。悟浄さんと焔にぃは絶対助け出したよ。絶対、ね?」
あまりあの2人の実力は知らないけれど、一目見たときから分っていた
表はちゃらんぽらんかも知れない悟浄…でも中身はとっても情に厚く兄貴肌な彼は優しい
焔も昔が助けれらたと言う事実もあるし、それだけではなくあの瞳が物語っていた
悟空だって、桃源郷の随一のやり手だ
捕まっていようと自力でなんとかできるし、今だって直ぐ傍までいるような気がする
心強く、傍にいると落ち着く『家族』
はそう認識している
運転席と助席の2人も例外ではなく、もちろん今は別の仕事をしている八戒と…三蔵だって
みんなみんなココに集う彼らは強く頼りになるし、優しい
「私達は無事を祈るだけしかできないけれど、帰ってきてよかったと思ってもらえるように笑顔でいようね」
「うん!母さんは無事だって信じるよ!俺には、出来ないことを今精一杯やる」
「自分にしかできない、こと…」
ケンの言葉はに少なからず影響を及ぼした
割れたコップ
それは敵の襲撃で仕方なかったけれど
果たしてこれだけだろうか…?
(三蔵…)
今居ない愛しい存在に不安が募る
(私は、待っていることしか出来ないの?)
祈ることしか、信じることしかできないのだろうか
(今、貴方は無事なの?)
いやな予感がしたのだ
確かにあの時、コップが割れたときに
(どうか、無事でいて)
何も出来ない
今はソレしかない
でも。もし、と思ってしまうはやっぱり不安が拭えなくて
「さん…ぞ、う」
の言葉は静かな車内の中でも誰にも拾われること無く、消えた
+++
「この私が気付いていないとでも?…桃源郷現役社員、玄奘三蔵殿」
カジノに着き別室に招かれて早々の出来事であった
賑やかな、聊か煩すぎる喧騒が遠のき奥へと進んだその部屋
裏取引など行われるであろう薄暗い室内は入ったと同時に空気がガラリと変わるのを感じた
天井に取り付けられたシーリングファンが照明にあたりまるで催眠術を掛けられている様だ
シンと静まり返る室内にはトイと幹部数名
ドアの向こうにも気配がいくつか感じ取れ完全に囲まれてるらしい
「それと付き人…猪八戒殿の噂も聞いている。凄腕の元情報屋だったかな?確か恋人が居たとか…」
「それ以上無駄口を叩くなら殺すぞ」
記憶を手繰り寄せながら話すトイに鋭い眼光が突き刺す
紫暗色の、殺意にも似た視線
驚いたのは八戒で予想だにもしなかった三蔵の発言に苦笑するのがみなくても感じ取れた
本来憤りを覚えるのは僕の方ではないのか、と
今ではさほど気にしていないけれど、この男の口から発せられると不愉快だ
それなのに三蔵は本人より早く口を挟む
何故かと問うても、帰ってくるのは『長話には付き合ってられん』とか言うのだろう
変なところで気を使わせてしまったのだろうか?
否、この三蔵と言う男は少なからず触れてはいけない八戒の奥底に眠る悲しみが分っているのだ
本人は白を切るだろうけれど、でも八戒は自分が今挑発に乗せられずに済んだことを感謝する
しかし三蔵はもう既に怒りの頂点に差し掛かっているのだけれど、ソレを抑えられるのも今冷静でいられる八戒だった
(貴方と言う人は…見た目に寄らず面倒見が良いといいますか)
もう一度苦笑すると金髪の男はコレは予想通り舌打ちを返してくれた
「いつから…なんて愚問ですかね。僕も上手く行きすぎたとは思いますがこう早いとなんだか悔しいですねェ」
「負けず嫌いが」
「貴方には言われたくありませんよ」
お互い様だ
むしろ負けず嫌いと言えば三蔵の方が若干上かもしれない
「…で?態々呼び出したのはソレを言うためか?それともここで始末しようって魂胆でもあるまい?」
「察しが良くて手放すには少々惜しい…。早い話、桃源郷自体も私の参加に入らんかという事だよ」
ニタリと笑う目の前の男は本気の様だ
何もかも三蔵の癪に障る
長話は嫌いだがこうも率直に言われると何とも言えない
有能な、それに人脈も社員も天下一の桃源郷がこのトイ・ファミリーに加担するとなるとどういうことになるのか
考えなくても分かる
都心の中枢、否この世界のマフィア全体を牛耳る事が出来てしまうのだ
桃源郷の力をも勢力に入れこの男は全てを乗っ取るつもりらしい
そういうことなのである
「却下だ」
そんな事させない、させてたまるか
それに全てにおいて胸糞悪い
即答で答えた三蔵は尊大な態度で言い切った
「きっと三蔵の言葉は社長…桃源郷のみんなの意見と同じだと思ってください。もちろん僕もです」
「そういうことだ。諦めろ。マフィア風情が図に乗ってんじゃねぇよ」
こんな大物を目の前に怯む様子もない2人にトイは一気に顔を歪めた
先ほどの自信たっぷりの笑みではなく、憎悪で埋め尽くされた禍々しい程の表情
「お前達はココが私の手の内だと分って言っているのかね?」
「知ったこっちゃねぇよ。そんなもの脅し文句にもなりゃしねぇな」
「見縊ってもらっちゃ困りますよねぇ。伊達に修羅場を生き抜いてきたワケではありませんし」
言葉通り、敵のど真ん中でも怯みはしない
こんな事この短気な男と一緒に仕事をやれば日常茶飯事と言っても過言ではあるまい
もっとスマートに仕事を出来ないのかと言うほど三蔵はことを荒立てるのが得意だ
それをフォローする身にもなって欲しい、と八戒は思うのだけれども自分も人の事を言えないのかもしれない
最終的には全て上手く行くのだから終わりよければ全てよし、と言うことだ
「交渉決裂、と言っていいのかね…?」
「交渉なんぞした覚えはねぇがな」
「では、ココで潰させてもらうとしよう…元エリート軍人と桃源郷全てをね」
その言葉を合図にドアからなだれ込んできた数人の部下達
三蔵と八戒は完全完璧に囲まれた
一斉に向けられる銃口
目の前には勝利目前といった様子のトイ、そして両脇に群がる部下
すばやく背中合わせになる三蔵と八戒はぐるりと視線をめぐらせ逃げ道が完全に塞がれたことを確認すると各々武器を取り出す
そしてこの場にふさわしく無いであろう会話を交わすのだ
「いやぁ…予想していた事ではありますが現実になっちゃうと恐ろしいですねぇ」
「…本当にそう思っているのか?」
「ふふふ…嘘ついてるように見えますか?」
「あぁ。俺には少なくともそう見えるな」
言葉同様臆した様子も無い2人
向けられた銃口の数などどうでもいい
今はただ、胸糞悪い目の前の男を撃ち殺すだけだ
そして三蔵はトイの眉間に照準を合わせた――
こんな数、余裕以外の何者でもねぇ
To be continued.
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ATOGAKI
ちょっと書く間が開きすぎたので状況とか口調とか変わってしまった気がする。うん。すみません
前回の冒頭の会話までの過程を書いてみました。ココで書くつもりはなかったんだけどな!それともっと組み込みたい事柄は沢山あったんだけど長くなったので省略
なんかこの頃?1話1話が長くなってきました。統一性がなくてすみません!区切るところがおかしいんですね!
では。次回はヒロイン側が合流。さて、どう展開しようかな!←