trigger Act:51 合流
足音が聞こえてくるドアの向こう
緊張感が部屋を支配する中、悟空は手に握った棒(如意棒だったりする)を構えた
3,2,1…
そして目の前のドアが蹴破られた
バン、と大きな音をたてて開いた扉の向こうはいくつも並んだ牢屋が続く廊下だった
焔は今しがたワラワラと群がる敵を一掃したところだ
警戒しながら銃を構え誰もいないことを確認すると体制を崩す
無人の廊下を見渡してみると一つのドアは蹴破られた形跡があり、その下敷きになって気を失っている看守が居た
後ろからは焔が撃った死体を避けながら飄々と駆けつけてくる足音
背後からドアの向こうを覗き込むようにしている男の赤髪が焔の頭を掠る
「…ココは牢屋らしい。きっとあの蹴破られたドアは悟空だな。アイツしかこんなことしない」
「全くオチビちゃんったらやることがわかりやすいってかなんつーか」
「お前も猿の事言えた義理か?」
「…人と猿を比べんなって」
そういう貴様も河童だろう…なんて金髪の鬼畜さんが居たら言われそうな言葉は発せられなかったが
焔は焔で、無視を決め込んだようだ
その反応もどうよ?な悟浄は肩を竦めて焔に続いて牢屋が並ぶ廊下に足を踏み入れた
一つ前の部屋とは違ってそう広くは無い監獄
警備も手薄で端に先ほどまで食べていたのだろうカップラーメンが置かれた机があるくらいだ
人の気配は無くどこか薄ら寒い空気の中、奥にこれまた悟空に蹴破られたと思われる扉だったものが見える
何も物音がしないところを見ると敵は殲滅できた様だ
それもで警戒を怠る事無く2人は2階に続く階段を上る
「…お前は手前の扉から調べてくれ。俺は奥から行く」
「はいよっと。ココはトイの愛人が居るって言う部屋だろ?だったか美人のねーちゃんがわんさか…」
「無駄口は慎めよ」
悟空が先にたどり着いたであろう2階
本当に何も無く、ただ、延々と廊下が続くだけだった
もしもがあるかもしれないので注意して進むが悟浄の過激な行動のせいでそれも無駄となる…
が、その蹴破る音で焔は颯爽と奥の扉に向かった
人の気配がする
コレは敵意だ
おそらく悟空か誰かだろう、と予想する焔は躊躇う事無くドアを開けた
「うおっ!焔ぁ!?」
「悟空……久し振りなのに随分な挨拶だな」
「いや、ご、ごめん!俺敵だと思って…」
開けた瞬間目の前を横切る棒
焔はそれを難なくかわすと如意棒を手で掴み聊か身長の低い悟空を見下ろし
まさか焔だと思わなかった悟空は攻撃を繰り出してしまったことを慌てて詫びた
「何で焔がココに居るんだ?」
「あそこの女性を取り戻しにな。まぁお前はついでだ」
窓際の椅子に座るリカをチラリと見た
顔つきからしてみるとケンに似ているし、それに何処から仕入れたのか八戒に見せられた写真と一致する
「ひっでーな!俺はついでかよっ」
「こんな所に囚われていたお前が悪い。…失態なんて珍しいじゃないか」
「いや、その…さ。なんか気がつかねぇ内に俺の事感づかれてたみたいで…八戒にメール送った後後ろからガツンって………」
後ろめたいことだったので語尾が少し弱めな悟空に焔は安堵と、ため息をついた
兎に角、悟空もケンの母親も無事のようだし無事任務成功といったところか
後は脱出して桃源郷に帰るだけだ
そう思ったのだが――
突然背後の扉の向こうから聞こえる銃声
コレはマシンガンか何かか、連続して轟く銃声音はすぐさま焔と悟空に緊張を与える
「うお!なんだってんだよ!!オイ焔!コレはワナかもしれないぜっ」
「こっちだ悟浄!早くしろ!」
あけっぱだったので廊下の様子が普通に見れる
近くのドアから出てきた悟浄は壁に背をつけながら焔が居る部屋に駆け込んだ
鍵が壊されたドアを閉めると一旦銃声が止む
そして足音
コレは先ほどと違って完全に敵のものだ
兎に角そこら辺にあった家具をドアの前に移動させて一時凌ぎだ
「っとによー。他の部屋は全部もぬけの殻だったぜ?…んぁ?悟空お前生きてたのか」
「んだと!生きてるに決まってんジャンかっ」
「お?もしかしてそちらの別嬪さんはリカさんかな?」
「そうだ。それよりそんな悠長な会話をしている暇はないぞ」
「わーってるって。じゃぁ俺は囚われのお姫様と一緒に…」
そう長くはもたないであろうドアの事を考えると早めにココを出たほうがいい
部屋には少しばかり大きい窓が1つ、他に逃げ道はなかった
2階だが飛び降りるなんてへでもない3人
誰かがリカを抱いて行けば問題は無い
と言う事で悟浄はすばやい動きでリカを抱き上げた
まったくエロガッパは…と悟空は思ったが今は口げんかをするどころではないとわかっているためあえて目線だけで訴えた
当の本人はニヤける顔を隠しもしないで…つまり下心丸出しの表情でリカの警戒心を煽っていることに気付いて無い
心底ため息をつく焔は悟空にあの馬鹿を見ていろと耳打ちをしておくのだった
「じゃぁおっさきー。ちゃんと捕まっててな?」
「はい。おねがいしま、キャァァァ!!」
ま、アレだ
2階から落ちると言うのは普通の人にしては結構怖いのであって
耳を劈くような悲鳴に悟空までも耳を押さえ、まともに聞いた悟浄は着地に失敗したとか
そして悟浄に続いて悟空も飛び降りた
下で呑気に手を振っている悟空だが少し視線を横にずらせばマヌケにもしりもちをついている赤毛が眼に入る
ホントこいつ等は桃源郷の社員なのだろうか、と疑いたくなるのも頷ける光景だ
曲がりなりにも桃源郷きっての戦闘能力を誇る悟空はいいとして、悟浄は見ている限りつわものとは思えない
コレでも裏世界で名を馳せる男なのだが
それどころではない
後ろにあるドアが銃弾に耐えられなくなり音をたてて崩れ落ちた
手前にあった棚も一緒に倒れ、外から男が入ってくる
焔は逃げるのを止め、目の前の男と対峙する事を決めた
下から悟空が叫んでいるが焔の耳には届かなかった
その男とは…
「お前は確か…逃げた社長じゃなかったか?」
マシンガンを抱え入ってきたその男は、が勤める会社の社長だった
観音の情報によると、トイの金を取って色々しでかし挙句の果てには逃げたと聞いている
その男が何故?
状況を理解できずに居る焔をあざけ笑う様に元・社長は口元を歪めた
狂気に満ちたその顔が、とても胸糞悪い
「悟空!お前達は先に行け!」
「・・・!わかった!早く来いよな!」
「あぁ」
切羽詰った焔の声に何かを感じ取った悟空は悟浄とリカを連れて薄暗い路地に消えた
そして向き合ったまま瞳を交差させる2人
こんな男の1人や2人直ぐに片付けられる焔だが聞き出さなくてはならない事がある
なのであえて残った
持ったままだった己の愛銃を片手に焔は質問を投げかけた
「お前は何故ここにいるんだ?逃げたと聞いたが」
鋭く睨みつけ、返答を促す声は果たしてこの男に届いているのだろうか
そう思わせる元社長は未だ狂気に顔を歪めている
「あぁ…私は逃げた。だが捕まって殺されたくないから寝返ったとも言うべき、かな」
「あくまでも裏切り者のお前にトイが受け入れたと言うのか?」
「受け入れてくれたさ。あの馬鹿はな!私が何を企んでいるのかも知らずにさぁ!」
両手てを広げ自慢げに話す狂気染みた男に冷たい目を向け焔は内心で整理していた
男は殺されなければならないほどの事をした。だがトイは寝返ったコイツを素直に受け入れただと?
そんなはずが無い。多分…トイにも何か裏があるはずだ。それが一体なんのか…まぁ捨て駒程度のものだと思うが
トイは利用する価値のあるモノだったら何でも利用し、使えなくなったらさっさと排除する
そういう男だった
だから取引を持ちかけた会社の状況が悪くなったら徹底的に証拠を隠滅させるため潰しの作業を開始したのだ
大方…まだ残りの会社を何かに使うか、金を搾り取るかだろう
そして社員を出来れば愛人や、路頭に迷った者までも利用しようと、そうかんがえたのかもしれない
結構焔の考えは当たっていた
何処まで薄汚い奴なのか、と胸糞の悪さが一層増した
「そうか。それならお前に用は無い。とっとと消えてもらうぞ」
そう言って焔は標準を元社長に合わせた
だがそれより先に男の方が早く、マシンガンを構えて焔に向けて撃つ
不意打ちを喰らった焔は辛うじて相手の肩を打ち抜くと早々に窓から飛び降りた
枠に片手をかけ前向きにバクテンする要領で男の視界から消えることに成功する
着地しても尚も窓からマシンガンを打ち込んでくる銃弾を交わし、悟空が消えた方へと向かった
追ってこないことを確認すると走る足はそのままで拳銃を仕舞い、桃源郷本社へと続く道を駆け抜けた
「着いたら、観音と話し合わなければならないな」
ワナだとしたら、三蔵のほうも危ないかもしれない
今頃敵に囲まれてるんじゃないか?と焔はなんとなくいい気味だ、と思ったとか
でも次の瞬間悲しむの顔が脳裏を過ぎり、なんともいえない表情に変えた
「が悲しむのは…駄目だ」
知らずうちには三蔵とセット、と思い始めてきた自分の脳内に悪態をつく焔であった
To be continued.
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ATOGAKI
実は、三蔵と焔の口調を変えているんですが...三蔵は口を兎に角悪く、そして焔は若干丁寧に。「そうじゃねぇ」→「そうではない」みたいな
そっけないのは致し方あるまい←。そんなわけで、筆を進めるのに苦労したこの場面。結構あっけなく終わったー!ギャオス
そして異様に長くなったなぁ。詰め込みすぎて何がなんだか…(今更である)うん。次回は焔の予想通り三蔵サマの身に何か…!?