trigger  Act:50 駆け引き


























都会の中枢とあまり離れていない裏道

そこに大きな賭博場がある

よくもまぁこんなご時勢に警察に見つかる事無くやってこれたもんだ、と三蔵は悪態をつく

きっと警察とも関わりがあると思われるがこの際どうでもいいことにかわり無い

辺りはこのような店が所世話しと並んでおり、全ての店が何か裏がありそうな如何にもな通りだ

賑わう人々の中、八戒が運転する車がその大きな賭博場の前に停車した


車を降りると建物がそのままトイの権力に比例しているかのようだ

煌びやかに、うっとおしい程の看板には『カジノ』と言う文字

あまり2人には縁の無い所である

ココに赤毛の青年が居たら喜びそうな場所だが



扉の前には数メートル手前から赤い豪華な絨毯が敷いてあり

両脇には用心棒なのかただの幹部なのか見分けのつかない黒ずくめの男達が陳列していた

その懐には黒光りするモノを構えているあたり、何かしないか監視している様だ


「お出迎え…って所ですかね」

「ふん。暇人共がぞろぞろとうっとおしい」


八戒が声を潜めて言うが三蔵は何処吹く風

きっと聞こえているだろうその声は周りの雑音と共に黒ずくめの男達の耳に届いた



先陣切って三蔵が入り口へと向かう

その1歩後ろに八戒が付き人、もとい用心棒としての振る舞いをする

忘れてはいけないがコレは仕事なのだ

しかし演技しているのか三蔵は普段どおりに見える

その尊大な態度は変わらず、といったところだ

そんな後姿を見て八戒は人知れず苦笑を漏らした



扉の両脇に待機していたドアマンは2人の姿を確認すると両開きに開くそれを開けた

すると店内から外の雑音とはまた違った賑わう声、音、歓声などが溢れてきた

中は薄暗いのだがどこか煌びやかな印象を受ける

物の1つ1つが綺麗に整えられ全て照明を反射して眩しい

外見と同じく、否それ以上かもと思わせる広い店内

台にはカードゲーム、ルーレット、スロット、等等

何処にであるような一見普通のカジノである

独特な賑わいを見せる中、2人はなんだか浮いているようにも見えるのも仕方ない

照明の輝きよりも煌々と光を反射する金髪に整いすぎたその容姿

騒音にも負けないほどの威圧感云々を放つ三蔵に人々が振り返る程だ

今回は黒いスーツに身を包み格好からはあまり目立たないのだが。

それでも人々の視線は絶え間なく降り注ぎ、誰かの一言で三蔵の正体が明らかになる


『最近出来たばかりのルーキー玄奘ファミリー』だと


中には有名なファミリーも少なくはなく、でもその威厳は全て三蔵に押しつぶされるかの様だ

後ろに着く八戒も人の良い笑顔…なのだがなにとなく抜き身の刀身を思わせるその微笑に

前を歩く三蔵は背後からの別の意味での威圧感に悪寒が走った

たった2人でも周囲を圧倒する存在感

皆は一同揃って『敵わない』と戦意喪失気味である


「ようこそ。私の店はお気に召してもらえたかね?」


周囲が圧倒されている中、その原因の三蔵に声を掛ける人物が1人

ここのカジノの運営者、トイ・ダストだ

表情は自慢げで三蔵の癪に障ることとなるが、ココは抑える


「あぁ。これ程豪勢なカジノは初めてだ」

「それはよかった。さて、別室に案内しよう」


三蔵の返答に更に満足気になったトイは数名の部下を連れ、店内の奥に案内する

3大勢力とも謳われたトイファミリーのボスが直々に案内する中

周りのファミリーたちは噂は本当だったか、と固唾を呑んで視線を送る

このまま行けば3大勢力のどれかが潰されるか、それとも4大勢力となるか

マフィアの中でも驚異である新人玄奘ファミリーは要注意組織として人々に刻まれることになった



















+++



















「あっれー?おっかしいなぁ…なんで部屋は沢山あんのに出口がねぇんだ?」


ただっぴろい廊下で1人、悟空は首をかしげていた

上ってきた階段は1つだ。それなのに出口になるような階段は無い

見渡す限り壁と厳重に締まるドアが数部屋のみ

悟空は立っていても仕方ないと考え、端っこに行けば何かあるかも!と短絡思考で決断した


「お!アレかも」


行き着いたのは1番奥の突き当たりにあったドア

他のドアに比べ一つだけ違う壁に面したそれは野生の感、なのか悟空は躊躇なく蹴破った

厳重に装備された鍵でも悟空にしてみれば掛かっていないのも同然で

結構やばそうな音がしたがこの際シカトだ


「ん?ココ普通の部屋だぞ?」


蹴破られたドアが反動で頼りなさ気な音をたてて閉まるのを背に悟空は部屋を見渡す

客人用なのか心なしか豪華なその部屋には天蓋つきベットやこれまた豪華な家具のみ

直感からすると生活観の欠片も無い風だが窓際に1人の人物を発見する

その姿はどこか虚無感を携えており、生きている感じがしない、と悟空は思った

窓際の人物は大きな音にも反応せず、ただじっと窓の外を眺めていた


「ねぇ、アンタここの人?出口とか知らない?」


その質問に初めて人が居るのに気がついたと言う様に振り返る人物

暗い中目を凝らしてみると女の人だ

明かりは外の僅かな街頭の光だけで見逃すと誰も居ないかのようだった


「私は、ココに連れてこられて…それで」


気の無い声

聞き逃してしまいそうなその消え入りそうな音を耳の良い悟空は難なく捉えた

よく見ると、前に話したことのある声だ

そう、この声はどこかで…


「あ!アンタこの前の、新しいトイの…愛人?」

「え?もしかして、用心棒さん?」

「そうそう!俺、悟空ってんだけどアンタは?」

「私はリカといいます。悟空さんは、どうしてココに?」


さっきから疑問詞ばかりが交わされているが本人達は気付いてない

のだが、お陰でわからなかった事が明らかになる

それに女の人、リカの消え入りそうな雰囲気が若干変わったようにも見える

知らないところで知っている人を見たので落ち着いたのだろうか

それでも警戒心は拭いきれない、だが悟空の純粋な瞳を見ているとなんだか僅かだった警戒心が全て無くなるのがわかった


「リカ、さん。酷いこととか何もされて無い?」

「えぇ…。まだココに来て誰とも会って無いわ」

「そっか。ならよかった…」


間に合った、と悟空は安堵の息をついた

悟空はまだ知らないがリカは桃源郷に眠るケンの母親、この事件の被害者なのだ

なんだか知らないけど結構大手柄な悟空だった


でもココは敵前なのでまったりしている暇は無い

聞くところによるとこの部屋以外にも一部屋に2人ずつ愛人と呼ばれる人たちが居るとの事

まずは全員救出しなければならない

そうと決まったら悟空はこの部屋を出て行こうとした



ドアの向こう側から掛けて来る足音、それにドアを次々と蹴破る音が聞こえてきた

敵か?と悟空はだんだん近づいてくる足音に意識を向ける

もし見つかってもいいように懐から出した3節根を一つの棒状にして構えて迎え撃つことにした




「安心して。俺結構つえーからさ!」




リカの心配も悟空の警戒心も全て杞憂に変わるのだが。




























To be continued.





















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ATOGAKI
うん。BGMは三蔵サマのキャラソンGAMEで。この曲聴いて真っ先に浮かんだのがカジノで勝負する三蔵一向です。笑
マフィアネタを書くならコレだ!とか思ったんですが、生かされずorz
またの機会があったら書きたいな!カジノで負けず嫌い4人が葛藤する(笑)←なシーン^^^
次回は、近づく足音の正体と、三蔵サマサイドをお送りしたいです。(願望か)
場合により紅孩児サイドになっちゃうかも。でも、いいや。←