その瞳は決意したように煌めいていて…同時に哀しそうだった
trigger Act:42 事を荒立てる
「母さんを返せぇ!!!トイ・ダストォォォォ!!!!」
バンと大きな音を立てて開いた両開きのドア
突然、この部屋に1人の少年が乱入してきたのだ
一同騒然
室内がただよらぬ空気に包まれた
「っその餓鬼を摘み出せ!!」
いち早く正気に戻ったのは受付の男だった
その言葉を合図にサングラスをした全身黒ずくめの男達が少年を押さえ込む
「っ放せ!俺はっトイ・ダストに…!」
大男4人に押さえ込まれても尚暴れる少年
終いには床に頭を押さえ込まれてしまう
「アイツは…」
ジタバタと悶える手足さえも押さえ込まれた少年に三蔵は見覚えがあった
列車で失礼なことを抜かした生意気なガキ
確か母親は…リカと言ったか
前回依頼で行った家の親子だ
何故少年はここにいる?まだ田舎に居るはずだ
何かあったのか…
「八戒。あの餓鬼を引き取れ。アイツは俺の正体を知っているから一言も喋らすな」
「わかりました。詳しいことは後で聞きましょう」
「あぁ」
三蔵が命令すると八戒は少年の元に向かう
人々は好奇の目を向けるが今はそれど頃ではない
このままあの黒ずくめに引き取らせたら少年は、ただでは済まないだろう
最悪の場合がある
こんなマフィアだらけの中でどうされるかなんて目に見えているのだから
「失礼しますよ」
「何すっ…」
大男4人に押さえ込まれた少年を八戒は手刀で気絶させた
周りの者は驚きで目を見開いた
何故、とか色々
「何をなさるんですか!」
受付の男が叫んだ
その男を抑えたのは三蔵で
「このガキは俺が預かる。どうやらトイ様に用があるらしいからな。コイツの始末は俺の役目だ」
「しかしっ」
「文句は、ねぇな?」
紫暗の瞳が男達を貫いた
その鋭い眼光に男達は押し黙りうるさかった室内が一気に沈黙と化す
この金髪の男には逆らってはいけない、と本能が告げたかのように燦々と
有無を言わさぬ三蔵の言いように、周囲は唖然となって出て行く玄奘ファミリーを見つめるしかなかった
マフィアのルーキー玄奘三蔵、恐るべし
閉まるドアを背に玄奘ファミリーは地上に通じる階段を上る
少年は八戒の手に抱きかかえられていた
何故三蔵はこの少年を引き取ったのか、ソレだけが疑問に残る
八戒とは直接会っていないから無理も無い
事情を知っているのは三蔵だけだ
「三蔵、この子は…?」
焔が待つ駐車場に入ると、八戒が言った
も興味津々というように三蔵を見る
そんな疑問を持った4つの瞳に見つめられ三蔵は面倒だが話すことにした
都合の悪いことは抜かして、だが
「前回依頼された依頼主の孫だ」
無駄が一切無い説明に八戒は理解したようだ
は今だ?を頭に浮かべているが
「では、この子が言っていた『母さん』とはあの依頼主の娘さんって事ですよね?」
「そうだ。多分俺たちが帰った後奴等が何かしたんだろう…ダストが言っていた『新しく出来た愛人』とはそいつの母親かもしれん」
「そんなっ…!」
それなら早く対処したほうがいいだろう
なんていったってダストは女癖が悪いと有名なのだから
「この子が起きたら事情を聞きだすしかないですね…」
突然現れた少年
その様子は切羽詰った感じで、今にもあふれ出しそうな涙を堪えていた
一体この少年親子に何があったのか
想像するだけでも気が気じゃない
そんな少年に八戒は腕から伝わる不安を取り去ろうと、自分の腕の力を込めた
To be continued.
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ATOGAKI
少年、名前は確かケン君でしたね(Act:21参照)再登場です。直前まで出すか出さないか迷いましたが物語の進行上出させていただきました
一体親子に何があったんでしょうか。次回はあの姿をくらませていた会社の社長さんも話の中で出てくる予定です。大丈夫か母親!←