車を飛ばしてもよかったが目的地に着くまでかなりの大回りになると思い…不本意だが列車に乗り込んだ
trigger Act:21 世界の車窓から金髪が通りますよ
ガタンゴトン、と音と共にゆれる列車内
2人掛けの椅子が向かい合わせになっているボックス席のその一角で三蔵は煙草をふかし流れる風景を眺めていた
心中は穏やかではないが目的の地に進んでいくたび自然が溢れていく景色に自然と心が癒されていくのを感じる
早くの無事な姿を確認したい三蔵は戻りかけた眉間の皺を一層濃くした
『次の駅はーモモシローモモシロに到着しまーす』
鼻つばんだ声と共に流れるアナウンス
目的地はあと3駅といったところか
田舎に向かうたび駅の間隔が広くなりつつある線路はつくにはあと数十分
気が長くない三蔵は時間が時を刻む度苛々し始めるのであった
「わーホント何もないねー」
「コラ、ちゃんと座ってなさい」
「田舎ってつまんないよー」
いかにも都会育ちの子ですと言わんばかりの服装をした子供も着飾った母親に先を促され三蔵が座る斜め前のボックス席に座る
里帰りだろうか、その親子は大きな荷物をもってこの車両に入ってきた
騒がしくなった事に心の中で舌打ちした三蔵は短くなった煙草を灰皿に押し付けその代わりに八戒から渡された資料に目を通す
マフィアと交流を持つ会社
以前八戒も任務のためその会社に潜り込んだがそれといって怪しいところはなかったと証言している
大方この前の事件で警察沙汰になり、危険をいち早く察知したマフィアが手を下そうとしているといったところか
脅迫状の犯人はマフィア関係で恨みを持っていて、あながち無駄な行為ではなかったらしい
そんな事情があったとはいえ御用にしてしまった手前、なんだか哀れにも思えてくる
俺の女に手を出したんだから当然の報いだ、なんて三蔵は鼻で笑った
「っるせぇんだガキ!!静かにしろや!!!」
突然、車両の反対側から騒がしい声が上がった
いきなりの事で青筋を立てた三蔵だがその発信源にもっと眉間の皺を濃くする
全身黒ずくめ
どうやら堅気の人間ではなさそうなその風貌の男に視線を向けるとどうやら先ほど来た親子に対して怒鳴っているようだ
子供は大きな罵声に身をすくめ母親は庇うように腕の中に収めていて
すみません、と謝っていたが黒ずくめの男は怒りが収まらないのか更に続ける
だんだんエスカレートしていく騒がしい周りにやっぱり不機嫌さを増す三蔵
とうとう そう丈夫ではない堪忍袋の尾が切れた
「黙れ。殺すぞ」
不機嫌MAXマフィアよろしくな三蔵に黒ずくめの男と親子は震え上がった
イヤイヤ、親子の方は不本意とはいえ助けたことになるのだがどうしても三蔵の怒りは怖いらしい
一層恐怖が増してしまった
またこの前の事件と同じような雰囲気にしてしまったらしく、三蔵はもう気がうせたと言わんばかりに無関心になった
黒ずくめの方はと言うとボックス席に座るほかの仲間と思わしき黒ずくめ3人と一緒に静かになった
親子はよそよそしく礼を述べると恐怖が抜けきってない顔で何故か三蔵の向かい側に荷物と共に移動してきた
全くもって迷惑極まりない
失礼します、なんて言っているが三蔵に言わせれば失礼なら最初からするなと言いたいところである
「あの、助けてくださりありがとうございます」
「別にウザッタイから言ったまでだ」
「でも…」
「それ以上言ったらお前も黙らすぞ」
三蔵の容赦しない一言に母親も黙り込む
一気に沈黙したボックス席
ココにが居たら話も弾んでいただろうがそんな人付き合いなど持ち合わせていない三蔵
まぁ、別に会話など要らないだろうけど
しかし状況を理解できない子供は沈黙を破った
「お兄さん、マフィア?」
「ちょ、ケン!何言ってるの!!」
子供は怖いもの知らず
今さっき怖い思いをしたはずの子供は懲りずにとんでもないことを言う
先ほどの事といえ、その外見といえ言われるのも無理は無い、が
全くもって遺憾である
「あ?」
無愛想の塊とも言える三蔵は子供にも容赦なかった
その無愛想ゆえの性は鋭い眼光を鈍く光らせ子供に向ける
けれど子供はホント無邪気と言うかなんというか全く臆した様子は無い
更に不躾極まりないことを続ける
隣で慌てている母親がとても可愛そうだ
「だってめっさ怖いもん!絶対普通の人じゃないよー」
「………」
三蔵の沈黙が痛い
母親は既に涙目だ
ちなみに言っとくが子供の発した『マフィア』『普通の人ではない』と言う単語に先ほどの黒ずくめ集団は肩をビクつかせている
話は戻るが絶対零度のボックス席
大人気なく怒るのもどうかと思いとどまる三蔵は(眼は大人気ないけれど)質問をめんどうだが返した
「マフィア風情と一緒にするなクソガキ」
この一言に黒ずくめは憤りを覚えたが踏みとどまる
そしてケンと呼ばれた子供は嬉しそうに眼を輝かせた
「え?じゃあもっと怖い人?悪の組織の親玉とか?!」
いや、悪の組織ってなんだよ、な発言に怒りを通り越して呆れ返る三蔵であった
「私たち、この先のフリア村に向かっているんです」
暫くして母親は聞いても居ない身の事を語りだした
もう好きにしてくれ、と三蔵は話を促すでもなくだんまりを決めこむ
母親は尚も続く
「なんか祖父の話によると最近借金取りがまたしつこくなったと聞いたもので心配して様子を見に来たんです」
『借金取り』という言葉に三蔵と黒ずくめ集団は反応を示した
それに気を良くしたのか母親は寝てしまった子供を撫ぜながら話を続ける
「いつからだ?その借金取りとの関係は」
「さぁ。確か会社から生産の方で依頼を受けてから、だったと思います。酷くなったのは最近だと…」
手元の資料と一致するその答え
嫌な予感が過ぎる
きっとこの親子は己の目的地と一緒だ
たぶん黒ずくめの男たちも
『次の駅はーフリア村ーフリア村に到着しまーす』
この列車に乗って同じ声のアナウンスはこの車両に乗る全員の目的地を知らせた
ただよらぬ雰囲気を残したまま正確に
To be continued.
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ATOGAKI
すみませんサブタイトルと文中にある『モモシロ』と言う駅名はお遊びです。すいまっせーん_orz
おふざけが過ぎました管理人です。熱も下がりつつあって微熱に悩まされています笑
今回は三蔵サマサイドと言う事で世界の車s(ry)勝手に話が進んでいきます。もう誰も止められる人は居ないでしょう←
親子が出演するのは意外でした。そして黒ずくめ集団さん達も。でも結構中身のある内容になると思われ。私の力量では無駄に終わるかも!
そんなわけで大人気ない三蔵サマはしょうもない人ですね!(あんだがしてんだよ)でもカッコイイと思うのは私だけでしょうか!(しねばいいよ)
でぇりゃあ。ギャグテイストになりましたが暫くの間おつきあいください!あざっした!!
photo by clef 様