大自然の中は懐かしい感じがした
























   trigger  Act:19 予感

























はとある郊外へ来ていた

都心から離れた自宅とは違いもっと田園や牧場が広がるまさに自然に囲まれたいわゆる田舎だ

薄汚れた都会の空気とは全く違い澄み切っているいる空気には身体を伸ばした


「うは〜。気持ちいいなぁ〜やっぱり都会とは大違いだ」


駅の改札を潜りはそのまま砂利道を踏みしめる

辺りには元気よさげに農業仕事をする者

藁を積んだ牛車に乗る者

穏やかな雰囲気と比例して人当たりの良さそうな住民が思い思いに暮らしていた


「三蔵も連れてきたかったな〜」


何も事件もなさそうな平和なこの村では憲兵も暇そうでそれが返ってなにか好印象を与える

すれ違う人たちはみんな挨拶をしてきて見ず知らずの他人でも素直に受け入れているといったところか

それがまた、の心を温かくした





今回なぜこんな田舎に足を踏み入れたかと言うと一応仕事であった

風邪を引いて動けない会社の同僚エリの代わりにが駆り出されたのだ

別に抱えている仕事も無かったので快く引き受けた

来てよかったとさえ思える程はこの村を気に入ってしまった

実は自分の働く会社がいまだ良くわかっていないは都会の中枢に位置するあの大きな建物を思い浮かべ

失礼な話だが不釣合いだとも思った

しかし書類を見てみると生産業の身辺調査と言うことがわかり

会社に大きく関わる農家の業況を把握して来いと部長にも言われたばかりだ

何となく謎が解けてきた

仕事や事件の事もあり、悠々と羽を伸ばすことにした



それにしても広い

渡された紙には番地が書いてあるのだが、電柱柱と言うものが少なく今何処らへんを歩いているのかさえわからない

は文字通り完全完璧迷子になっていた


「…やっぱり三蔵を連れてくればよかったかも?」


暫し後悔しながらも大自然に囲まれたこの土地を満喫しようとは歩き出すのだった

誰かに道を尋ねるなど考えもしないにツッコむ人も居ない













***













「チッ………」

所変わって同時刻、都心に幾らか離れた所に位置するとある建物の中

そこに不機嫌を隠そうともしない金髪の男が居た

半分吸った煙草を今にも握りつぶそうな勢いのその男は目の前に居る人物に鋭い眼光を向け続けている

名を三蔵

の彼氏と呼べるその人物は苛々しながら紫煙を吐き出した


「そうカッカするなよ。久し振りに来たんだからゆっくりしていけ」

「貴様が呼び出したんだろこの糞ババァ」


目の前に座るのは緩やかなウェーブを結んだ美人、勧音と言うこの建物の主だ

勧音は不機嫌丸出しの三蔵を見るや否やニタリとからかう様な視線を投げかけておりどこか楽しそうだった

それも気に入らない原因の1つだとわかっているのかどうなのか

いや、この人物はわかっていて尚からかうのが好きなのだ

この金髪だとより悪態心を揺さぶられるといったところか

そんな目の前の女性を見てより一層不機嫌さを増す三蔵

この悪循環は終わりそうにない


「まぁまぁ。落ち着いてください三蔵。さんと一緒に行けなかったのがそんなに嫌だったんでしょう?」

「…チッ」

「ほぅ…。この男にもそんな奴ができたのか。紹介してくれてもいいだろ、水せぇな」

「知ってたくせにわざとらしいんだよ貴様は!」


この険悪な雰囲気を壊してくれたのは三蔵の隣に座る笑顔の青年八戒だった

結果的にはより険悪にした気がするのだがさして気にした様子も無い八戒

むしろ勧音と共に楽しんで居る様に見える

性質の悪い2人を前に三蔵は短くなった煙草を灰皿に押し付けた


「で?呼び出した理由はなんだ。聞いてやるからさっさと答えろ」

「急かすなよ。っとまぁ、時間に余裕はねぇだろうから簡潔に説明してやる」


その言葉に疑問を感じたが三蔵は何も言わず素直に話を聞くことした


「では僕が説明しますね」


こういうのは得意な八戒が何処からともなく書類を出すと三蔵の目の前に差し出す

それを受け取ると八戒の言葉と共に読み出した


「依頼があったのは昨日です。この件は前にも幾度か受けていたんですが悪化してしまったようで依頼主さんは慌てていました。
 本日客人も来ると言っていたので被害を被らせないよう気を配ったって感じですかね」


事の発端はいつだろうか

最初以来を受けた内容は借金取りを追っ払ってほしいとの事

この件は悟浄を行かせ一度収まりはしたもののそれから何度かまた借金取りにしつこく言い寄られ

依頼主は困っていたそうな


「けっ。あの馬鹿の尻拭いはゴメンだ」

「そういわずに。裏にも顔が効くあの悟浄でさえも手こずった相手ですからねェ。油断は禁物ですよ三蔵」

「裏に顔が行くのは誰だって同じだろう?」

「ははは。そう言われちゃいますとなんともいえませんねぇ」

「で、コレがどうした。まさか同じように追っ払えってんじゃねぇんだろ?」

「貴方に頼むんですからそれは無いです。貴方はそういうの苦手ですしねェ」

「…うるせぇ」

「まぁ話を戻します。その借金取りの事なんですがなにやらバックについているのがとっても性質が悪いんですよ」


後ろに居るのはこの街を牛耳る程の権力を持つマフィア

都心の中枢まで手が回っており殆どの会社が裏取引やらなんやらに加担している

そのせいで依頼主の所にも被害が来て悩まされている、との事


「今回の依頼主はお前にも関わってくるかもな」

「…どういうことだババァ」

「簡単に言いますと、この前貴方が窓を割った会社が事の発端…とでも言いましょうか」

「脅迫状もそれに関係していると言ってもいいな」


三蔵の脳裏にこの前の事件、が浮かんできた

まさか、


「の会社関係なんだな?」

「そうです。そして依頼主さんはその会社に大きく関わる生産の方でなにやら揉め事が起きているらしいんですよ」


そう聞くや否や三蔵は立ち上がった

はなんと言っていたか

今朝の話を思い出した


『今日ね、会社の関係で生産業を営んでいる農家の人の所に調査しに行くんだー』


眉間の皺を深く刻んだ三蔵の様子に2人はわかっていたようで特に慌てる様でもなく八戒も立ち上がる


「よく聞いてください三蔵。今回その思ったとおりの事になるでしょう。貴方に頼むのは原因のマフィアの討伐もとい駆除です」

「ま、一筋縄ではいかないだろうからお前は女のほうを。こっちはこっちで幾らか手は加えておく」

「…皆殺しにするまでだ」

「物騒ですねェ…。兎に角早くさんの元に行ってあげてください。借金取りさんは待ってはくれないでしょから」


「言われるまでもねェ」


そう言って三蔵は部屋を後にした

思うのはただ恋人の安否だけ

今朝何が何でもついていけばよかったと、悔やんでも悔やみきれない思いを胸にただひたすら走った

















To be continued.















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ATOGAKI
ちょっとごちゃごちゃになってきました。今回の話はヒロインが勤める会社も大きく加わってくる事件です(事件と言うのか?)
そんな感じで田舎を呑気に満喫するヒロインを傍らに裏でなにやら大変な事が…
結構長くなると思われるこの事件。三蔵サママフィアまで潰しちゃいます笑。ホント自由だなこの管理人^^^
それと三蔵達が所属する組織の最高権力者は知っての通り勧善音菩薩様でーす。おわかりになりましたでしょうか。予想通りだったと思いますが笑
そんなわけで、これからもお付き合いください!
photo by 戦場に猫 様(ハンズの小鳥さんに一目ぼれ笑)