初めてだった…こんな事

























   trigger  Act:13 たまにはこんなこともあるものだ






















「チッ…」


三蔵は苛立っていた

それはもう鬼よろしくな表情のままイライラと

いつの間にか短くなっていた煙草を灰皿に力任せに捻り潰すとまた1本口に銜え火をつける

カチカチとむなしく響くその音はガス切れを示すもので

また一段と苛立ちが沸き起こった



なぜこのような状況になったかと言うと

事の発端は数時間前に遡る



いつものようにほのぼのと休日を満喫していた三蔵と

その雰囲気は甘く、そして穏やかだったのを覚えている

しかし何かのきっかけで喧嘩してしまった2人

本当に些細な事が始まりだったので覚えていないが大きく発展してしまった喧嘩

きっと隣近所には丸聞こえであろう2人の怒鳴り声は長くは続かずは怒って出て行ってしまったのだ

携帯も財布も忘れて

そんな後姿に眼もくれず三蔵は新聞の活字を追った

が、当然頭に入らずずっと今の状況まで煙草を悪戯にふかしていた、と言うわけである


灰皿は既に山盛り

目の隅に映ったソレにもまた一段と苛立ちを沸きだたせる


最初はどうせ自分の部屋にでも帰ったのだろうと思っていたが一向に隣のドアの音はしない

もしかしたらどこかに行ったのかも知れない

しかし何も持たず出て行ったのに何処に行こうと言うのか

三蔵は考えたら離れない思考にだんだんと焦りを覚え寝室に置かれた携帯に手をかけた



まずは八戒のところ

呼び出し音が嫌にもどかしくて、短気な三蔵を更に煽るかのように音は続く

まただんだんと苛立ちが募るがそんな事言ってられない為耳を傾け続ける

数秒後

プツリと言う音と共に電話の持ち主の声が発せられた


「どううしたんです?珍しいですね。僕の携帯に…」

「、しらねぇか?」


八戒の言葉を遮るように発せられた三蔵の言葉に彼が珍しくも焦っている事を察した八戒

聞こえない程度に苦笑を漏らすと正直に答えた


「いえ、こちらにはきていないですよ?電話も掛かってきてませんし…」

「そうか」


そう言うなり通話が切られた

らしくもないですね、と八戒はツーツーと続く機械音に微笑を零した




ったく。何処に行きやがったアイツは…

電話を直ぐ切った三蔵はそのままベットの上に投げ捨てると居間に戻ってソファに腰を落とす

その様子は火を見るより明らかで

ため息を一旦吐くと早々に立ち上がる三蔵

行くあては無い

何処に行ったかも分からない恋人に想い馳せるとこんなにも不安で仕方ない自分に気がついた

何処に行った。無事なのか?また変な事件に巻き込まれているかも知れない

と脳内に駆け巡る不安を振り払うため頭を振った



ただ数時間別れているだけでこんなにも不安で

こんなにもあの愛おしい存在が欲しくて

気がつけば憤りであふれかえっていた脳内は寂しさと焦りに満ちていた

どこでもいい

探し出して早くこの腕の中に閉じ込めたい

思い立ったら即行動し始める三蔵であった


ガチャ


玄関を開けるとあたりは薄暗い

廊下の電気は燦々と光を発しているがどこか暗い雰囲気に見える

それは多分大家の趣味で出来上がった建物と合っているのも事実

三蔵は薄暗さを隠し切れない廊下に出ると鍵をそのままに駆け出した

と、思ったのだが

なにやら足元に見える物体

ソレが数時間前出て行った恋人だと気付くのに若干思考回路がついていけなくて



「…お前、そんな所でなにしてやがんだ?」

「だって…私鍵も置いてきちゃったし行くあてが無かったんだもん」



のマヌケな一言に一気に脱力した三蔵

膝を抱えるようにドアの隣の壁に寄りかかる存在の前に膝を折るとと目線を合わせた

ぶすくれた表情に不覚にも可愛い…などと思った

そして何も無かった安心感に長い長いため息を吐くのであった


「ったく…馬鹿かお前は…」


そういった三蔵の瞳は優しくて

心から安堵しているようだった


「三蔵の方が…馬鹿だもん」


不意にも涙を流してしまいそうになるこのおてんば娘をどうしようかと、三蔵は悩むのであった


「いいから部屋に戻るぞ」

「…三蔵が謝ったらね」

「……なんで俺が」


どうやら彼女は機嫌が直っていないようだ

立ち上がろうとしない彼女の前に再びしゃがみ込むと三蔵はそのまま頭を撫ぜる

謝罪の念を込めて


「三蔵…なんで直ぐに探しに来てくれなかったの…?本当に…愛想つかされたと思ったじゃんかぁ…」


そういうことか

やっと理解した三蔵は撫ぜていた手を止めてそのまま手をの頬に移すと

今にも泣きそうな顔を上げた

そして

軽く唇を落とすと照れを隠すように耳元に寄り普段の三蔵からは想像つかないような言葉を言った


「悪かった…」


突然飛び込んでくる愛しい存在が、こんなにも愛らしいなんて

もう2人は怒りなど忘れて

このぬくもりを離すまいとお互いの存在を確かめ合った
























To be continued.



















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ATOGAKI
一応第2章突入と言うことで、忘れかけていたラブラブな雰囲気を取り入れてみました
合いも変わらず三蔵サマが偽者ですwwでもいいよね!廊下で抱き合うとか!恥ずかしいなお前等!←
そんなわけで喧嘩の原因は深く考えていなかったのでご想像にお任せします!(無責任な)
ではでは。これからもお付き合いください!ありがとうございました