私達の出会いのきっかけは、とある路上ライブ
それは今からかれこれ5年程前
まだ名も無い貴方との運命的な出会い
その日、私は大学の先輩と別れた
理由は嫌になったから、と告げられた一方的な別れ
振られてしまったのだ
まだ好きなのに別れを切り出されてしまって私は素直に頷くしかなくて
その人はもう彼女、それは二股と言うやつですっごく傷ついた
二度と恋なんかするもんか
そう誓ったのもこの日
だけどこの誓いも数時間後には頭から消えていた
大学からの帰り道
ふと眼に留まった2人組み
周りにはまだ誰も居なくて、多分私が一番乗りで目の前に座った
スカートが汚れるなんて傷ついた私には頭にもなくて
ただただ、始まるのを待っていた
気まぐれに座った私
目の前には胡坐をかいてアコギを抱えた茶髪少年
もう片方は方膝をついて立てた膝に片手を伸ばして置いた金髪の青年
2人は目を瞑って下を向いていた
なんで座ったかなんて分からない
あの金髪に引かれたのかもしれない
この傷ついた心に少しでも潤いがほしかったのかもしれない
歌が聞きたい
ただそう思っただけ
私が座ると2人は揃って顔を上げた
その瞳は金色と紫
同時に見られた私は少しビックリして今度は私が俯く番だった
少しして金髪の青年に顔を向けた茶色髪の少年はにっこり笑って私に話しかけてきた
「初のライブで初のお客さんゲット!!ねぇねぇ、名前なんてーの?」
急に話掛けられたから一瞬自分だと分からなくて顔を上げる
そんで眼が私に向けられていると言うことは私に話しているわけで
少し躊躇ったが答えた
金髪の青年が「おせぇ」とか言ってたけどこの際シカトだ
「って言うの。貴方達は?初めて見るけど…」
「俺悟空!で、こっちが三蔵な!俺たち今日始めて路上ライブすんだぜー!そしてが初のお客さん!」
悟空は凄くかわいらしい顔で終始笑顔だった
三蔵はと言うと仏頂面で、でも怒ってるわけではないらしい
興味が沸いた
どんな歌を歌ってくれるんだろうとか
もっと仲良くなりたいとか
私が初めてのお客さんになれたことが嬉しかった
「シケタ面してんじゃねぇよ。振られたのか?」
顔に出ていただろうか
仏頂面だった三蔵が唐突にそんな事を言ってきたから驚き半分、恥ずかしさ3分の1
残りはまだ分からない感情
「…うるさいわよ」
思わず言ってしまって後悔
コレでは図星だと言っているようなものだったから
「フッ…図星か」
ムキー!ってなったけどそんな元気も無い私は鋭い紫色を睨み返すだけで精一杯で
「じゃあが元気になるような歌、歌おうぜ!な、良いだろ?三蔵!」
「…勝手にしろ」
さっきまで哀れそうな眼を向けていた悟空だったけど何か言い安が浮かんだと言う表情になり
提案を持ちかけた
それに三蔵は口ほど嫌そうではなく
初めての路上ライブで初めて歌う歌は私の為に歌ってくれた
それだけで元気が出た
歌を聴いたらもっと元気が出た
悟空と三蔵はそのままの体制で、リズムを取り歌い始めた
少し落ち着いた曲調で、楽しいと言うより癒される
何より歌詞もとてもよかった
私の傷ついた心が癒されて行って次第に塞がり、完全に消えて
先ほど振られて落ち込んでいたことが嘘みたいに私は自然と笑顔になった
それをみた悟空はもっと嬉しそうな顔になって、三蔵は口元を微かに緩める
公園の一角に座り込む私達の周りに次第に人も集まってきて
三蔵の良く通る低い素敵な歌声は何処までも響き
元気に弾く悟空のアコギは見てる聞いてるこっちまでも楽しくさせた
そんな2人の様子を私はずっと見ていた
途中で三蔵と眼があってしばらく見詰め合っていたりして、胸が躍る
3曲目のバラードで最後になり、終わったら大きな拍手と歓声でいっぱいになった
気がつくと私の後ろには数十人のお客さんが居て、何故か私も嬉しくなった
アコギのケースにも沢山お金が入っていて
初だというのにかなり人気になったようだ
少し寂しい感じもしたけれど、私はまた来たい、聞きたいとおもった
悟空はかわいらしくお辞儀してありがとうとか言ってたけど
三蔵は相変わらずの仏頂面で座ったそのままの体制で煙草を吸う
そんな姿もまたかっこよくて見惚れた
しばらくすると終わったからだろうか、見ていたお客さんは居なくなり
また最初の3人になった
何故かそのときは帰りたくなくて、このままずっと3人で居たいとおもって
腰を上げることが出来なかったのだ
悟空も座ったまま片付ける様子も無く、それどころか私とおしゃべりして
三蔵なんてそんな私達を見て一服していた
言葉じゃ表現しきれない程の感想と、伝えきれないほどの感謝をうまく述べられなくて
でも分かってくれている2人が居る
それだけで私はまた嬉しくなって時間なんて忘れていた
そして終わってから1時間くらいした時
突然三蔵が立ち上がり、終焉を告げる
ちょっと、嫌かなり寂しかったけどそれでもこの3人で少しでも過ごせたことが嬉しくて
私も素直に帰ることにした
のだが、
「飯でも食いに行くか。かなりの収入があったしな」
「マジで!?よし行こうぜ!!」
急にいつもより数倍輝きだした悟空に苦笑すると私は立ち去ろうとした
けれど片腕をつかまれ歩くのを阻止される
腕を掴んだ張本人はそ知らぬ顔で「行くぞ」と言うとそのまま引っ張って行った
既に片付けも終わっており悟空もそれに続く
私は引っ張られながらもついていった
嬉しくて、ただ嬉しくてにやける顔を抑えられない
もう片腕を何故か悟空が握っていて
きっと傍から見れば奇妙な光景に違いない
3人で歩く途はいつもと違うように見えた
それからと言うものの
毎回私は歌を聞きに目の前に座った
こうして座れるのは、前もって三蔵が予定を教えてくれるからだ
初めて出会って初めての路上ライブで初めて知り合った私達
初めてなのに食事を奢ってもらった私
連絡先を交換しろとせがんだ悟空
満足そうな三蔵
それから私達はいつも一緒に居たのかもしれない
だた毎日が楽しくて、三蔵と恋仲になるのにも時間はかからなくて
いつからかそれが当たり前のように感じて
幸せだった
それから1年くらい路上ライブをしてバンドを組むことになった
新しい仲間も加わり私はマネージャーみたいな付き人みたいになって
悟浄と言うドラマーと八戒と言うギターリストもとても良い人たちで
3人から5人に増えた喜び
1番喜んだのは三蔵かもしれない
前からバンドを組みたがっていたから
その夢が叶って私も悟空も嬉しい
何時までもコレが続けばいい
この最高の一時を貴方と
I give a song to you
(君の歌が私の力になる)
***
バンド戦士三蔵一行夢の過去偏
次は三蔵との恋仲になるまでの詳しいのを…(殴
簡潔にサラッと書きましたが気に入ってくれればコレ幸い。ありがとうございました!