江戸の町で人気を誇る蕎麦屋の看板娘。着慣れた着物を纏い、今日も元気にご出勤だ。
足取り軽く、行きなれた道を通り直ぐそばの角を曲がれば目的の勤務先につく。
早く行って店主特製のめんつゆで店主自家製の蕎麦を堪能したい。はやる気持ちを自制しつつ、角を曲がり大通りへと出た。
しかし、目的地の店に着くなり目の前の光景に呆然と立ちすくんでしまう事となる。
「な、なん…なの…?」
荒らされた店先。店を開けるのはいつも自分なのだから暖簾はかかって居ない。
だがしかし、普通は閉じられているはずの戸が無残にも破られ、そこから垣間見れる店内が荒らされていた。
何が起こったのか思考がついていけない。理解に苦しむ娘はその場で打ちひしがれた。
金髪侍剣風帖
第二話 謎の男【後篇】
時は早朝。蕎麦屋の店主は自宅と繋がる店の調理場で下ごしらえを開始した。
毎日毎日繁盛する蕎麦屋は準備が大変である。空も明けぬ内から下準備に取り掛からないと後々痛い目に合うのだ。
丹精込めて打ち込む蕎麦。半分以上は力仕事の作業だが、来てくれるお客様に感謝を込めて一個一個作っていく。
今日はどのくらい来るのだろうか。昨日は常連の三蔵がまた来てくれると言ってくれた。
そういう人が多いからこそ、また来ると言ってもらう為自信持って出せる最高の蕎麦を出したい。
そんな思いを胸に辛い事も忘れ、蕎麦作りに打ち込んだ。
「もうじきちゃんも来る頃かね…朝食を用意してあげなきゃな」
は1人暮らしだ。その為にココで働いていて、毎日一生懸命働いてくれる。
そんな彼女の為にまかないをご馳走するのも店主の役目とばかりに腕をふるう。
彼女の美味しいと言ってくれる一言と、笑顔が好きだ。是非とも娘にしたいし、これからも一緒に働いて欲しい。
店主は鼻歌交じりにしか味わえないであろう、店主特製のめんつゆ作りに取りかかった。
と、その時。調理場からでも聞き取れるほどの大きな音が、店主の耳に届いた。
「な、なんだい!?」
慌てて音がした場所に駆けつけると、そこには見知らぬ男が2人、ふんぞり返っていた。
腰に刀をさげて、見るからに悪人面の男2人は店主を見つけると圧力をかける様に睨みつける。
「ここの店主とお見受けする。大人しく今すぐこの店を差し出せ」
「な、なんですか藪から棒に…あっしの店は簡単に渡せませんぜ!」
「逆らうようであれば、殺しても構わぬとお許しが出た。渡せぬと言うならば強制的に渡してもらおう」
店主の発言を取り合わぬ態度の男。一方的な物言いに店主は憤りを露にした。
1代で築きあげてきたこの店をそう簡単に引き渡せるワケがない。
断固として首を立てに振らない店主。それを面倒だと見据える男は強硬手段に出た。
「こんなに親切に忠告しているのに、抵抗すると言うのなら…殺すまでだ。殺れ」
男の一言で後ろに控えていた男がゆっくりと前に出る。店主に見せ付けるように抜刀すると殺気立て構えた。
それを見て一気に恐れた店主は腰を抜かすと床にしりもちをついてしまう。
ジリジリと滲み寄る刀を構えた男。後ずさる店主。男は踏み込むと一気に襲い掛かった。
「うああああああ!!!」
その刹那。店主が死を覚悟し悲鳴を上げたその時、襲い掛かる男の前に一つの影が立ち塞がった。
音もなく現れた影に一瞬怯む男。甲高く刀と刀が交わる音がその場に轟いた。
「何奴!」
「殺しは駄目だぜ、おっさん!」
行く手を阻んだその影は全身を真っ黒な服で覆い、瞬時に忍びだと理解することは容易かった。
男は間合いを取る為飛びのき、突如として現れた忍びを警戒するように見据える。
「どこぞの手先だ、忍び」
「それは企業秘密だよ」
忍刀を片手に店主を守る様に立つ忍びは余裕綽々と言う感じであった。
邪魔された事と言い、その余裕ぶった態度に憤怒する男は雄叫びと共に再び切りかかる。
頭に血が上りキレが悪くなった切っ先程見切るのは容易い事だ。
忍びは軽やかに受け流すとその反動を使い、横一線に刀を振り切った。
「後藤!そやつを相手しないで店主を殺すことだけを考えろ!時間がねぇ!」
「っへい!」
「おっと、そうはさせない!」
「邪魔だ忍びぃぃぃ!!」
「ひぃああああああ!」
忍びの一閃をなんとか交わし、店主の前に躍り出る後藤と呼ばれた男。
すぐさま刀を店主に振りかざすと素早く叩きつける様に刀を振り下ろす。
それを阻止すべく忍びは横から蹴りを一つお見舞いし、後藤はわき腹に痛みを感じながら転がった。
「チッ!中々腕が立つ忍びじゃねぇか…仕方ねぇ。であえであえ!この忍びを排除しろぉ!」
「なっ!こんなに出てくんなよ!卑怯じゃんか!!」
「馬鹿が…たった2人で来ると思ったか、忍び」
後藤の掛け声で蹴破られた戸を踏みにじりながら10人程の忍びが侵入してきた。
瞬く間に取り囲まれた小柄な忍び。背に店主を庇うが四方を固められ、その行為も無駄に終わる。
「仕方ねぇから店主を連れ出せ。その忍びは今すぐ抹殺だ!」
山田の命令を合図に一斉に飛び掛る忍び集団。
小柄な忍びは受け流す事が精一杯であっという間に店主は後藤により拉致られてしまう。
忍び集団に対峙する小柄な忍びは悔しげに臍を咬み、
のうのうと店主を連れ去って行く後藤と山田を横目で傍観することしか出来なかった。
「っちくしょぉぉおお!」
戦闘でありとあらゆる店内の物が散乱し、みるみるうちに清掃された室内は見るも無残な状態となっていった。
確認する暇も無く四方八方から襲い掛かる忍び。半数は床に横たわっていったが、洗礼された忍びは中々に手強い。
苦戦を強いられた小柄な忍びはこれ以上の戦闘はただ徒に店内を破壊するだけだと判断し、命さながら店を飛び出した。
それでも尚追ってくる生き残った忍び。音も無く忍びらは、早朝の町中に姿を消した。
ちゅんちゅん
そして数分後。冒頭にあったように無残な光景を突きつけられたは、ただただ立ちすくむ事しかできなかった。
昨日の事といいそれより大変な事になっている店は、本当に己の目的の場所なのだろうかと疑ってしまう。
それ程見るも無残になった店内の状況。夢であって欲しいと願わずには居られない。
「おやっさん…、そうだおやっさんは!?」
はなんとか己を震い立たせ、店主を思い浮かべると足が縺れそうになりながらもすぐさま駆け出した。
敷居を跨ぐと嫌でも眼に入ってくる店内の様子。散らかった家具を飛び越えながら調理場へと入る。
そこには店主がいつも調理していた痕跡と、作りかけのめんつゆが残されているだけで目当ての人物は忽然と姿を消していた。
「なんなの?何があったっていうのよ!っおやっさん!ねぇ…何処へ行っちゃったの…?」
店内も、店主の自室もくまなく調べまわったが何処にも店主の姿はなかった。
帳場を調べてもお金が盗まれた形跡も無く、物取りの仕業で無いことはわかる。しかし店主が居ない。
それに荒んだ店内の様子。一体何が起こったのかなんてわかる筈もなくは意気消沈するほかなかった。
「…」
何処くらいこうしていただろう。暫くして散乱した店内にへたり込みうずくまるの背後から声がした。
その声の持ち主はに歩み寄ると膝を突き、後ろから抱きしめる。
いきなりの温もりに、はポツリポツリと呟いた。
「三蔵、さん…おやっさんが、おやっさんが居ないんです…私…何がなんだか、わからなくて…!」
「すまなかった…俺の所為だ。俺がもっと考慮してればこんな事態にはならなかったんだがな」
己の力を慢心していた結果が、これか。わかっていたのに、相手を甘く見すぎていたのかもしれない。
抱きしめた体はこれ程になく頼りない。泣いているのか、の肩は小刻みに揺れている。
三蔵は己の不甲斐なさに嘆いた。を悲しませるなんて、悔やんでも悔やみきれない。
「三蔵さんの、所為ではないですよ…悪いのは、店をこんなにした人でしょう?」
こんなにした張本人は忍びです。謝ります。
ではなく、が言いたいことはわかる。しかし、これは三蔵の責任でもあるのだ。
人一倍悲しんでいる筈のにこんな気遣いをさせてしまうなどと、三蔵の心に一層情けなさがが募った。
「ねぇ、なんで、なんでこんな事になったのですか?教えてください…!」
振り返ったは涙を瞳に溜め問いかける。
その頼りない肩を掴み三蔵は安心させるように、力強く答えた。
「店主は俺が責任を持って助ける」
「お願い、します…!おやっさんを、どうか…」
「あぁ」
縋るように三蔵の着物を掴むはとうとう流れる涙をそのままに、懇願した。
原因はわからないけれど、店主が危ないと言う事はわかる。
一介の娘には何も出来ないのが悔しい。ただ、この男に請うことしか出来ないのである。
「店主は…裏で悪行を働く渡囲と言う男の思惑で、連れ去られたと思われる
このように最悪な事態にさせないように俺も忍びをつけたんだが、浅はかだったようだ」
「なんでおやっさんが連れ去られなくてはならなかったんですか?借金抱えているわけでもないのに…」
「渡囲と言う男は、己の利益の為だけにそこらの店を潰しまわっていた。
ここに矛先を向け、この店を潰すか乗っ取るかしようとしたんだろう」
「じゃあ、一方的な理不尽によって…?そんな…」
「今まで野放しのしてきた俺の責任だ。早急に取り押さえる」
三蔵はそうと決まったら速行動。早々に立ち上がるとに背を向けた。
向かうは渡囲の居る屋敷だ。急がなければ店主の命が危ない。
「三蔵さん…」
「心配するな。伊達に役人やってねぇよ」
まぁ失態は犯したが、終わりよければ全てよし。無駄に前向きも問題だが。
次第にただよらぬ様子に疑問を持った人々が集まってきた事だし、しかし1人を残していくのも心細い。
どうするか、と思案する三蔵。とその時。店の入り口に群がる人々をすり抜け1人の男が現れた。
その男の正体を確認すると共に、三蔵は眉間の皺を深くすることとなる。
「おはようございます。何事かと思えば、酷い有様ですねぇ。心情お察しします」
「八戒…貴様か」
笑顔が似合う青年、八戒と呼ばれた男は敷居跨いで店内に足を踏み入れた。
八戒とは、三蔵の部下である。きっと忍びか誰かに聞いてココに来たに違いない。
「悟空が傷を負って僕の所に来ました。さん、こんな状況にしてしまったのは僕等の責任です。すみませんでした…」
「そんな、大丈夫です。このくらい掃除すればなんともありませんよ」
頭を下げる八戒に、悪くは無いと言う様に微笑むはなんて健気なのだろうか。
その笑顔に救われた気がする八戒は眼を丸くし、つられるように安堵の笑顔へと変えた。
「そう言って貰えると、僕も悟空も嬉しいです…が、ちゃんと責任は果たします」
こんな状況にしたのは、ここで戦闘を繰り広げた敵の忍びと不本意であるが悟空…見方の小柄な忍びの所為である。
その張本人は怪我を負っいて治療中な為、八戒が出向いたと言うわけである。
三蔵はその行動の意味を正確に汲み取った。
「そうだな。1人ではこの荒んだ店内を1人で片付けるのは大変だ。八戒、手伝え」
「全身全霊、やらせてもらいます」
「それは助かりますね。お忙しい中ありがとうざいます」
「扱き使ってやれ」
「三蔵はちゃんと無事に店主さんを救ってさしあげてくださいよ」
「言われなくともわかっている」
この男にを任せるのは癪だが三蔵はこれしか最良の処置が無い為、渋々店をでる。
その後ろを八戒が追い、2人は小声で会話し始めた。
「の事はなんとしてでも守れ。こっちにも手を回してくるかもしれんからな。他に護衛はつけてあるか?」
「はい。忍びさんの何人かに協力を要請しました。それに悟浄も後から来るよう釘を打ってきましたから、大丈夫です」
「エロガッパも来んのか…手ぇ出したら殺すと言っておけ」
「三蔵の惚れた人ですからね。僕がちゃんと見張っておきますから安心してくださいv」
「・・・・・・」
聊か引っかかる言葉が出たがそれを華麗にスルーし、不安要素の一つである事を聞くと
それならいいと、三蔵は振り返る事無く早々に店を後にした。
八戒は三蔵の背を見送り、自分に課せられたの護衛もとい、お店の後片付けに戻る。
群がっていた人々になんでもないと告げ、の元についた。
「では、始めましょうか。今日はお店を開けられないと思いますが、おやっさんを出迎える準備をしなくては…」
「そうですね。僕もがんばりますv」
の不安も、全て三蔵達が消してくれた。きっとあのままでは立ち直ることも出来ずに居たであろう。
店主の事は三蔵に任せれば絶対大丈夫だと、何処から沸いてくるのかわからない安心感が心を満たす。
今は、店主が無事に帰ってくる事を信じて店の掃除をする事に集中するであった。
かーぁかーぁ
不吉なカラスの鳴き声を聞きながら、三蔵は走った。向かうは渡囲と、店主を連れ去ったその手下が居るであろう屋敷だ。
悪行を働いても公にならなかった渡囲の存在。役人でも手を焼いたその存在に手を下す時が来たのである。
走りながら今の状況を思案する三蔵は視界の端に黒い人影を確認すると足を止めず注意をそちらに向けた。
「ごめん、三蔵…俺の所為で」
「謝罪はいい。俺の不手際でもあるんだ。兎に角その時の状況を説明しろ馬鹿猿」
「うん、それが…」
黒い影とは傷を治療し終えてすぐさま駆けつけた小柄な忍び、悟空であった。
一言目にはみなが口をそろえて己の所為だと言う。みんな責任を感じているのだ。三蔵とて同じである。
それより、優先すべくは状況の把握と迅速な対応だ。
反省は後にしての、みんなの思いを無駄にしないためにも確実に巨悪の根源を仕留めなければならない。
「最後の最後まで苦戦させられてさ、毒塗りの刀を受けちゃったんだ。応急処置したから大丈夫だったけど」
「そうか。戦えるんだろうな」
「うん、全然大丈夫だって!たとえ傷が開いても俺は戦うよ。尻拭いは自分でできるんだからな!」
「それならいい。雑魚は任せるぞ」
「相変わらず怪我人にも容赦ねぇのなー!」
「自分で大丈夫だって言っただろうが」
走りながら周囲に気を配りつつ、疾走する2人。目的の場所は直ぐそだ。
「お前は先に店主のところへ行け。場所はわかっているな」
「うん。屋敷の見取り図は頭の中に入ってる」
「いいか?出来るだけ早くだ。行け」
屋敷の裏門までたどり着くと三蔵の言葉を合図に、悟空は速やかに姿を消した。
店主はまだ連れ去られて間もない。殺されてなければいいがと、切に願う。
三蔵は悟空が姿を消すのを確認して、己も行動に移った。失敗は許されない。
ことん
「親分、例の店主を連れてまいりました」
「わしは殺せと命令した筈じゃぞ?」
「それが、何者かの使いだと思われる忍びが邪魔に入って…」
「言い訳はよい!…まぁ、みなも退屈しているようだからの。好きにするがいい。最後は殺せよ」
「は。店主は一応牢屋に入れましたので、後はお任せください」
「ふはは!これでわしも頂点に立つことが出来るというものじゃ…酒が進むのぉ」
「お酌させてもらいましょう…我等の繁栄を祝して」
粗末な枯山水を横目に障子が開け放たれた座敷で杯を交わす渡囲と山田。
完全に隙だらけな2人はのうのうと酒を朝から煽る。
先日起きた忍びの殺害事件も、先ほどの出来事など余計な事を忘れ、ただただこれからの幻想を胸躍らせた。
が、その時。見張りの叫び声と共に1人の男が庭先に姿を現した。
「な、何奴!」
一気に慌しくなる屋敷。渡囲と山田はすぐさま立ち上がると庭に続く階段の手前にたった。
2人が駆けつけた庭には尊大に佇む男が1人。金糸の髪を持ち紫暗の瞳を眇め、警戒する目の前の2人を射抜いた。
それに慄く2人はあたふたとしながら、声を荒げるのである。
「なんだ貴様は!名乗れぇ!」
「うるせぇ。殺す」
悪人に礼儀など必要ない…とは思うが、そりゃないぜ三蔵さん!
礼儀のへったくれもない男は剣呑な動きで抜刀すると峰打ちなんざする程甘くはなく、刃を向け構えた。
曲がりなりにも役人なのだが、人相は渡囲と引けを取らないほどの悪人面である。
そんな三蔵の行動に戸惑いつつも、人数的には優勢だと高を括る山田は手下共を呼び出すのであった。
「えぇい、ふとどきものめぇ!皆のもの、であえであえ!その男を叩き斬ってくれようぞ!」
時代劇よろしくなお約束の口上を述べ、何処からともなく大勢の手下共が庭を取り囲んだ。
敵のその中心に位置する三蔵はチラリと見回して数を確認すると盛大に舌打ちをしてくれた。
「雑魚がわらわらと…全員ぶっ殺すっ!」
物騒なその言葉を合図に、一斉に切りかかってくる手下共。その中には後藤の姿もあった。
悟空から報告を受けていた後藤の存在。しかしそんな事は気にも留めず掛け声と共に斬りかかって来る手下ををかわし、なぎ倒していく三蔵。
その姿は修羅か羅刹か…蕎麦屋での様子とは一変したその役人やらしからぬ殺気に恐怖さながら特攻して来る手下達。
もう自暴自棄だ。相手の力量をその身に刻むも無残に倒れていった。
「えぇい何を手こずっておる!さっさと仕留めぬかぁ!!」
声を荒げる渡囲。山田も見ては置けぬとここぞとばかりに応戦する。
「悪ぃ!遅くなった!」
「おせぇ!さっさと雑魚を片付けろ!」
そこに店主を安全な場所に避難させた忍び、悟空も参戦しに加わる。
手下だけとは言わず、敵側の忍びまで出てくるのでそれを悟空に任せ、手下の大半を倒した三蔵は後藤と山田を迎え撃った。
対峙する3人。三蔵のその見事なまでの早業により敵はこれだけだ。渡囲は物陰に1人隠れ野次を飛ばす。
「貴様、中々やりおるな…。何処の差し金だ?」
「ただの役人だ」
「なんだと…?その金髪、玄奘とか言う役所の大目付役か!!」
どうやら悪人には有名らしい三蔵。数々の悪人共を裏で御用してきたのだ。
その噂は瞬く間に広まり、本人は不本意だが有名人になってしまったのである。
「めんどくせぇがそういう事だ」
「なんと…!こちらの存在が既にバレて居たとは…」
まぁ結構、バレバレだったんですけどね。しかし尻尾を掴めず苦労していたのです。
今回は悟空が直々に対峙したりと、証拠は既に揃いに揃ったのだ。心置きなく御用できると言うわけである。
その事実を突きつけられ、苦虫を噛み砕いた様な表情を露にした山田は、忌々しげに三蔵に切りかかった。
「生かしては居れぬ!この場で切り捨ててすんぜようぞ!大目付役だが何だろうと構わん!」
「いい度胸じゃねぇか。精々牢屋で悔い改めろ糞野郎が…!」
を悲しませたことは大罪に値する。それは三蔵の中だけだが、その思いを糧に敵陣に突っ込んできたのだ。
きっちりと、落とし前付けて貰わねば気がすまないと言う様に怒りの全てをぶつける。
斬りかかる山田、その後に続く後藤。
三蔵は山田の攻撃を受け流し、まずは後藤を倒すと、今度は山田の懐に入り、斜めに切り捨てた。
これで残るは後1人、諸悪の根源である渡囲のみである。その渡囲は意気消沈して、悟空によりお縄についていた。
「俺は将軍でも、町奉行でもねぇからな…腹を切れなんぞいわねぇ」
ひっ捕らえられた渡囲は地面に正座させられており、その目の前に三蔵は来て告げた。
その言葉に安堵する渡囲。だがしかし。
「殺しはしねぇ…が、これじゃあ俺の気が治まらん。覚悟は出来てんだろうな」
絶望的とまで言わない発言だが、鬼よろしくな三蔵を真っ向から対峙すると、渡囲はその絶望を味わう破目となった。
死より恐ろしいモノが来る。渡囲は頭の中で理解し、歯を食いしばる前に頬に喰らったかなりの衝撃を確認すると共に意識を手放しのであった。
ホントこの人、役人なのだろうか。いや、曲がりなりにも大目付役と言う大層な地位についているのである。
役人がこんな鬼の様だとは…。あえて何も言うまい。兎に角これで一件落着、三蔵達の御用劇は幕を閉じた。
ちりーん
いつもと変わらぬ町並み。賑わう人々が溢れかえるその一角に巷で大人気の蕎麦屋が一件、いつも通り店を構えていた。
時刻は昼から小一時間ほど経ち、混み時は過ぎ去った頃。そこに1人の常連の男が来店した。
それに元気良く声を掛けるその店の看板娘。それと店主。今しがた入ってきた男は指定の席に座るといつもの様に一言伝えたのである。
「蕎麦」
「はーい、かしこまりましたー!蕎麦一丁お願いしまーす!!」
「へい、蕎麦一丁あがり!」
今日もまた、平和な江戸の町は華やかに、そして賑やかに時を刻んでゆくのであった。
おしまい
ATOGAKI
ヒロイン交代のお知らせ(笑)囚われポジションはまたもや別の人みたいですよ。←
ここまでご覧下さった皆様、大変お疲れ様でした。の趣味で今回は江戸時代を舞台にした短篇、金髪侍剣風帖でした。
三蔵サマ、侍か…?とか言う疑問は寛大なお心で受け流してやってください。←
久し振りの短編と言う事で、お気に召されましたら、拍手とかメッセージをお願い致します。はっはっは。(この野郎www)
1話にまとめるとすんげー内容薄くなりだったので、前後篇構成が丁度いいかと、2話に渡ってお送りいたしました。
江戸時代だから徳川将軍とか無視して(コラw)まぁ微妙に公式な設定を残しつつ、好き勝手縦横無尽に暴れまわってもらいました。笑
ではでは。読んで下さった方に感謝を込め、3万打達成記念!と言う事で、敬礼!ありがとうございましたー!
↓以下無駄話とお粗末な説明です。
『ぶっ殺す!』と言う台詞の後に某暴れ●坊将軍の曲が流れたのは私だけではあるまい。笑
むしろ態々曲を流している私はどんだけしんさんラブなんでしょうかね。(末期ですwwwwww)
実は言うと管理人、大の時代劇好きですv専門チャンネルみまくってるからね。ちなみに暴●ん坊将軍は1番好きかもです。
次ぎは何年か前の3代目かなんだか忘れたけど水●黄門。その他龍馬が●くとか必殺仕事●人とか、(強制終了)
この中には挙げていませんがメジャーからマイナーなものまで幅広いです。
補足:『大目付』とは、五位の役職。老中配下の役職についている旗本や大名の監察し上役の老中も観察対象に入る。将軍に直訴できる権限を持つ。
時代劇好きだけどそんなに詳しくは無いので資料を基にこんな所で良いだろうと適度(?)に配慮した結果です。
ちなみに八戒は同位だけど『勘定奉行』でも若干大目付役より立場が上のような気もするが、まぁ細かいことは気にせず。←
悟空は忍び。主に三蔵、八戒、不本意だが悟浄(酷w)達優先で忍び家業をやっています。ちなみに忍び達の長である。ヒャッハァ!
悟浄はあまり深く考えてなかったので、八戒の同僚と言うことだけは言っておきます。ごめんよー!笑
他にも若様は紅孩児、側近の八百鼡、ほかは…うーん。大老の光明サマとか、将軍っぽい観音さんとか。
もちろん李鈴は紅孩児の妹である。その他め組とか色々。こうしてみると結構設定考えてあるのね。笑
諸悪の根源である『渡囲』と言う男は当て字でスミマセンが、ご覧のとおり、あのトイ・ダストでございます。trigger連載のね。
山田は思い付きです。後藤は…まぁわかる人にはわかるネタです。本当はもっと恐ろしいんですがね。ゴトゥー●様!!!(ぎゃー!)
そんな感じです。最後まで読んでくれてありがとうございました。では。
photo by 空色地図 -sorairo no chizu-様