血を求める吸血鬼たちが 今か今かと待ち望んでる
























The castle where a vampire is. \‐U




























「ようこそ。吸血鬼たちが眠る屋敷へ――玄奘三蔵様、様」



雰囲気を出しているのか、三蔵達の住む城より遙かに薄気味悪さを放つ屋敷。
不気味すぎる。でもそこがそそる。そんなは恐怖に顔を引き攣らせながらも期待している様だ。
三蔵の腕にしがみつく力がこの上なく痛い。三蔵は違う意味で顔を引き攣らせた。

案内されたのは1つの部屋。其処には今回の参加者であろう『人間』が手渡された拳銃を持って待機していた。
のように恐怖しながらも楽しそうな様子は見ていて呆れて来る。
こんなご時勢によく面白半分で来れるものだ。吸血鬼は今最も恐れられている存在だろうに。
きっと主催者は頭がイカれているのだろうか。そうとしか考えられない。

「なぁに三蔵…もしかして怖いの?」
「沸いてんのか貴様は…怖がってんのはそっちだろうが」
「怖くなんかないもん!…三蔵無言だし、緊張気味ですかな?」
「…張り倒されてぇのか」

自分の事を棚に上げて茶化して来るを一括すると、三蔵は先ほどから漂ってくる妖気に神経を向ける。
(ただのお化け屋敷に何故こんな妖気が…?)
まだ何もわからない。このお化け屋敷の本当の目的が。

暫くするとどこからともなく1人の男が現れた。実際にはちゃんとドアから入って来たのだが気配を感じられなかった。
この吸血鬼の王さえも欺ける様な男が居たとは、おかしい。でもそれはほんの些細なことだったので気付かない。

「お待ちしておりました。コレが銀の装飾銃でございます。弾は全て本物。したがって吸血鬼を殺せる鉛が込められておりますのでご安心を」

きっとこれは演出なのだろう。この男は既に役に入っているようだ。執事の格好をしてオールバック。
手元には貴重に箱に入れられた2丁の銀の装飾銃。紅い布に乗せてあり、見事なまでの細工を施してあった。
ソレを手に取るとズシリと伝わる――本物の感触。普段三蔵が持っている銃とよく似た重量感。
本当にこれは本物の銃と言うことがわかる。ハンドガンのフルオート。弾倉を確認すれば装弾は十分に込められていた。弾は全部で15発。

「お嬢様には小銃をご用意させていただきましたがいかがしますか?」
「いいわ。私も三蔵と同じがいい」
「わかりました」

手とは別に違う箱が小脇に抱えたれていたが無駄に終わったらしい。
傍から見れば年行かぬ少女。けれども装備するのは大の男でも扱いにくい物だと言う。
こんな小娘が扱えるものなのか…?心配ご無用。は『人間の少女』と違って力も半端無いんです。


「お待たせいたしました、選ばれし有能なハンターの皆様方。準備が整いましたのでこちらへどうぞ」


開け放たれる扉。いよいよこの『茶番劇』が始まる様だ。
意外にも少数の参加者。まぁこんな物好きは少ないのが普通だろう。
その物好きにも三蔵が入っているのは…不本意極まりないことである。隣の少女は別として。

「ワクワクするね!三蔵!」
「震えながら言うな」
「…武者震いってやつだよ。きっと」
「自信ねぇのかよ」


「それでは、各自ペアを組むなりお好きにどうぞ。入り口は1組づつバラバラなのでどの扉から行くのか選択できます」


大広間に並ぶ扉が数箇所。各自参加者は好きな扉の前に立つと一斉に入ってゆく。
三蔵とはもちろんペアを組み、最後に余った扉に決め他の者同様扉を開けた。

「どうか皆様がご無事にゴールに辿りつける事を――」

執事の声が、閉まる扉により遮断された。







カツン カツン








「ホント、良くできてるお化け屋敷だねー…」

薄っすらと冷気が漂う廊下。明かりは蝋燭が不揃いに灯してあり怪しさが一層際立つ。
寄り添うように(が一方的にだけど)歩く2人は着実と足をすすめた。

「なんで徒歩なの!?なんでホーンデッ●マンショ●みたいな乗り物じゃないのさ!!」
「リアルバイ●ハザードだから徒歩は当たり前だろうが」
「じゃぁバイオの主人公はこんな気持ちだったんだ…もっと気遣ってプレイしてあげなきゃだね」

身をもって知る…とは、ちょっと違う気がする。

「オイ、そんなゲーム何処に隠し持ってた?」
「悟浄の家にあったから勝手に持ち出してきちゃった」
「お前な…」

いいのかそれで。まぁ今は旅行に行っているから帰ってこないうちに返しておけばいいだろう。

そんなことより。2人は廊下の突き当たりに出くわした。目の前にはいかにも、な古臭い扉が1枚。
掛けられたプレートには『汝、開けるべからず』との事。開けるなと言われてはいそうですか、なんて言うたまではないのは重々承知の上である。
その前にこの扉を開けなければ進まないのだが。



ギィイ…



どこかで聞いたことのある様な恐ろしい音はサビがかっていて殊更にに恐怖を植えつける。
開けたのは三蔵だがその開けた本人よりビビッて居るのは言わずと知れたことであろう。
ビクリと身を竦めるを無理矢理引っ張って突き進んでいく三蔵。まったく世話の焼ける吸血鬼である。
三蔵にしてみれば、雰囲気は居心地の良い――しかし冷気に混じって感じる『気配』は、不愉快極まりない。
何かが、居る。それは確かな事だ。






 始まる物語。吸血鬼の住む屋敷へようこそ――玄奘三蔵”伯爵”様。






――『さぁ 詠え さぁ 踊れ その身体で喜びを 我等は高貴なる吸血鬼』――




「これ、は…!」




聞き覚えのある『歌』。それは幼い自分が聞いた――胸糞悪い『歌』。




「”魔外者”の吸血鬼――しかしその正体は、我々高貴なる吸血鬼の王。上級貴族最古の一族、玄奘三蔵伯爵様。

 そして血の契約を果たした玄奘一族なる王妃様。良くぞ参られた。

 我らは貴殿らを最高にもてなそう。その王族なる血を求めんとする。さぁ、今宵は我等が王となる――」






――『 今宵は我等が王となる 王の血を啜り 甦る 』――






「”王”を殺し、その血を啜るならば。王の座に着くのは我々だ」





――『さぁ 詠え さぁ 踊れ その身体で喜びを 我等は高貴なる吸血鬼』――







「生憎、貴様等にやる”血”なんざねぇよ」






舞踏会場を思わせる広い空間。天井には立派なシャンデリラ。その輝きは華やかにホールを照らし出す。

そして無数の――吸血鬼。どれも中級貴族とお見受けするとしよう。

何かに、否、血に飢えた吸血鬼たち。その目は血走り上品さの欠片もない。

口々に賞賛の意を唱え、今か今かと待ち望むその様は――まるで餌目前にしたケダモノか。はたまた。

皆一様に漆黒のマントを羽織り、口元には険悪なまでの牙。生々しく灯を反射して白く輝く。

その場の空気が胸糞悪い。流れる『歌』が忌々しい。全てが不愉快だ。

狂気を瞳に携え混濁した色。正気の沙汰とは思えないその風貌は見るもの全てを不快にさせる。

自分を写すと思うだけでも、気持ちが悪い。全身を撫ぜ回すような、その視線。


三蔵は不機嫌全開で吸血鬼たちを見返した。ここにいるすべての者たちは、”王の血”が欲しいのだ。
王を殺しその血を啜れば王となる。古くから伝えられてきた、言い伝え。その信憑性は無いに等しいく所詮『ただの言い伝え』だ。
実際に試したものは居らず、遙か昔の時代にその当時の王を憎む反逆者が広めた噂だとか。
元を辿ればなんとやら、だ。そんな噂を鵜呑みにした馬鹿がこうやって群がる。古い言い伝えなど真に受けるだけ損と言うものだ。


「15発じゃ足らないと思うの」

「2人分だから2倍だろうが」

「それにしたって…ねぇ?」


見る限り到底30発では足りないであろう、吸血鬼の数。一体このホールに何人いるのやら。
何処からわいて来るのかまだ増え続けるその数50余り。…絶望的だ。
弾のストックも貰っていないので足りないのは明白。しかし三蔵は愛銃をとりだした。シンプル且つ研ぎ澄まされた、銀色。
その銃は支給された装飾銃より遙かに小さく、それでいて弾数も少ない。
そかし、何故かソレを見ただけでは安心する自分がいることに気がついていた。


「じゃあ、『リアル●イオハザードinバンパイア編お化け屋敷』のゲーム、スタートだね!」


文字通り『リアル』なバイ●ハザード(吸血鬼ver.)の始まりである。

上品なまでの服装をした吸血鬼たちはその身を変化させ、飢えた魔物の如く襲い掛かってきた。
空中から、地上から。所謂四面楚歌状態の2人だが怯むことはない。四方八方囲まれる形になったけれどなんのその。
は前の時同様翼を出しどこからともなく現れた大剣で空中戦に挑む。三蔵は使い慣れた己の銃と支給された銃2丁で対応する。

湧き上がる嬌声。群がる吸血鬼の団体。その光景はまるで地獄絵図か。たった2人相手に多数なんて卑怯にも程があるだろ。
それにこんなに居たら三蔵の血は足りないと思う。それさえも解らないなんて貴族を名乗る資格もない。
三蔵はこの呆れる程の様相に嘆声をもらした。次々と襲い掛かる敵に対応すると共に突破口を開こうか。
こんな大勢相手はさすがに疲れるしなによりめんどくさいのである。

「だぁー!もう、ウザイなっ!あんたらなんかに三蔵の血は、あげないんだからっ!」

悪態を吐きつつ小柄な少女が大剣を振るう様はなんとも不釣合いこの上ない。見た目を置いておいても奇妙だ。
腕前は見事なまでの剣捌き、そして身のこなし方。全てにおいて至高な技。
空中に居た吸血鬼たちは思わず慄いた。はそんな怯む相手に支給された銃を打ち込む。
一体誰から教わったんだ、といいたくなるような戦いぶりに見ていたモノ達は自棄になってツッコんでいく。
こうしてくれた方が戦いやすい。どちらかと言うと近距離戦のには好都合だった。

一方三蔵の方はこれまた見事なまでの戦いぶりを魅せていた。片手に持った装飾銃を打ち込んでいき、もう片方に持つ小銃も使う。
2丁でも寸法狂う事無く眉間にぶち込んで行く様は修羅か羅刹か。もう悪魔と言ってもいいだろう。
いや、魔物には変わり無いのだがそれとはまた違った姿。『悪魔』より性質悪いかもしれない。兎に角凶悪で恐ろしい。
が、しかし。三蔵はあることに気がついた。

「チッ…!この弾は偽者じゃねぇかっ!!」

そう。対吸血鬼用だと言われていた銃弾。しかしソレは全くの別物で、通常の弾丸だったのだ。
見た目はそう変わらないのだが、騙された。まぁお化け屋敷自体仕組まれていた事なので当然といえば当然だ。
しかしやっぱり三蔵はこの事にご立腹の様子。自分の浅はかさと、これを仕組んだモノに対して。
眉間の皺が一層濃くなった。般若の形相よろしく、敵は恐怖に慄く。
弾が偽者だという事は空中で打ち落とされた吸血鬼は復活し今度は三蔵に襲い掛かる。

「ごめん!頑張って!」
「人事だな貴様…あとで覚えていろ」
「いやいやいや不可抗力だって!」

味方まで殺気を向けることないじゃんかー、と言う上から降ってくる声を無視して三蔵はあたりを見渡した。
見る限り半数ほど倒せた様だ。己の銃に切り替えた三蔵はシリンダーから空の薬莢を落とし手早い動作で詰め替えていく。
ソレを見計らって襲い掛かる敵には肘鉄を食らわせおまけに回し蹴り。それでも余り効力は無いのだが。

「邪魔だうっとおしい!」

思ったよりも苦戦を強いられた最中。いくら吸血鬼だからと言って体力は永遠ではない。いづれ底がつく。
敵方も想像以上にヤル2人に慄きはしたが最初と違い動きにキレが無くなった様子に歓喜の声をあげた。のだが。
















『哀れな反逆者たちよ――王に歯向かう愚かさをその身をもって後悔するがいい』


















その声は聞こえない。だが頭に直接叩き込まれたような音にみな、一斉に硬直した。





























この力は王の仕業だね

王はあんなに離れているのに僕等にも感じ取れる

王が怒ってる

王がめんどくさそうだ

王が力を解放するよ

あれ?でもこの大きさは結構小さいね

だって王はめんどくさがりだよ?

小物相手に本気出すわけないね

それもそうだね

ぶち込まれた相手はかわいそうだね

あの技は僕等だって喰らいたくはないよね


『光を持つ吸血鬼』――王は魔を滅する力を持つ


ホント 魔外者以外の何者でもないね

魔物が魔物を倒す力を持つなんて――王らしいよ



王が 力を解放するよ

みんな 逃げちゃった方がいいね




























その声は誰のもの?

これは吸血鬼たちの本能が直接脳に叩き込む声。

よく言う『本能が告げる』とはこの事を言う。

「逃げろ」 「危険だ」 「殺される」

鳴り響く警告音。でも、動けない。


『逃がしはしない』


吸血鬼の王は一言も喋ってはいない。思ってもいない。

だた、反逆者たちは全身で感じる『大きな力』にあがらう事すらできずに立ちすくむ。




その声は一体何処から発せられるもの?


”王は時として全てを浄化する力を持つ”

”『光を持つ吸血鬼』――”


誰かに聞かされたわけではなく、『本能』。その他にない。



逆らっては、イケナイ。









「久し振りの、本領発揮ですか三蔵伯爵サマー」

「無駄な力は使わん。端くれだけでも十分だろ」

「ごもっとも」













一瞬の光が 瞬いた。
















王が力を解放するよ

その壮絶なまでの光景は言わずと知れたモノ



また、多くの邪が消えた




僕等の王

それに背くものは浄化され 無に返る

僕等の王

だれも王には適わない

僕等の王

でも弱点は知ってるよ








それはなんだい?

 それはね、一緒に起きてきた綺麗な――


















――今宵は『月が詠う』




「月の所為か…」




――『月が詠う』時、魔物は妖力を得る




「あーぁ、可愛そうに。もうタイミングが悪いとしか言いようがないよ」




――その力は強大なまでのモノ




「くだらん言い伝えに踊らされてんのが悪いんだろ」



「それもそうだね」



















2人は『月が詠う』今宵 己の城へと帰っていった。

今はもう無人になった屋敷を振り返る事無く、淡々と。























王が帰ってくるよ

じゃあ 何して遊ぼうか

その前に休養が必要なんじゃない?

遠出で疲れてそうだし、僕等は構ってもらえないよ

それは残念











夜が更ける

吸血鬼の王 一眠りして また甦る

朝日が昇る

吸血鬼の娘 光と共に また甦る































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ATOGAKI
あっれー。なんかおかしいぞ。展開がおかしいぞ←。こんなはずでは…と言うのは多々あることなんですが今更ですね。諦めます←
また意味不明な産物が出来上がりました。そして王の力は『魔戒天浄』吸血鬼ver.みたいな笑。
吸血鬼だって大技持ってたっていいじゃない、と思いやっちゃってもらいました。
集団で襲うと大技喰らいますので気をつけて。個人でも銃でぶち抜かれること間違いなしですけど。
前後編の9話。これでおしまい。次ぎはどうしようかな。