君は吸血鬼を信じるかい?























The castle where a vampire is. \‐T

































夕暮れ時、所謂『逢魔が時』。日中は燦々と輝く太陽も赤く燃え上がり夜を呼ぶ。
城を正面から見て右側にその赤く燃える様な夕日が見える。
の影を伸ばし、本日最後の太陽のお仕事も終焉を告げた。

1番星が良く見える庭先。そこには吸血鬼の上級位を誇る少女。…見た目だけ。
そんな彼女は薔薇園の手前のベンチに腰掛け、寝ていた。魔者たちが気に掛ける。風邪引くよ、と。
三蔵のお陰で通常は聞こえない魔物たちの『声』。それが今は安眠を促進させていた。

あぁ、平和だと。

そんなを見兼ねてか、窓の外に見えたその存在の元に近寄る、吸血鬼の王。
玄奘三蔵伯爵と呼ばれる彼は片手に毛布を持ってベンチに向かう。マヌケ面して惰眠を貪る彼女が恨めしい。

「こんな所で寝てんじゃねぇよ馬鹿娘」

言葉とは裏腹に優しい瞳を携えて、三蔵は持ってきた毛布にを包み、抱き上げた。
まるで赤子のような少女は吸血鬼ではなく天使のようだと、思ってしまったり。
見目美しい吸血鬼。その一般的に言われる美男美女は己の寝室へと足を運ぶ。
今晩は若干寒くなるらしい。このままだと風邪を引いてしまうかもしれない。その前にちゃんとした寝台に運ばなくては。

風が吹く。冬の冷たさを運んでは2人の体温を奪ってゆく。
吸血鬼だって風邪を引くのだ。三蔵曰く『いきとしいけるもの、やることは同じだ』そうです。
だから風邪を引くのも自然の摂理なんです。魔物、人間関わらず。
まぁ滅多に引かないが。























吸血鬼が風邪を引いちゃうよ

王が暖めてあげて

僕等は何もできないけれど王が居てくれるから安心だね

吸血鬼が風邪を引いちゃうよ

せっかく持ってきた特報も台無しになっちゃうよ

特報ってなぁに?

前に吸血鬼の少女が懸賞に手出して当たったみたいだよ

よかったね

内容は?

それは見てからのお楽しみだよ























「三蔵ー見てみて!懸賞が当たったんだよ!」

「なんか外が騒がしかったのはその所為か。で?何が当たったんだ」

「じゃーん!その名も『リアルバイ●ハザードinバンパイヤ編お化け屋敷』の招待券さ!」

「くだらん物なんかにだしてんじゃねぇよ」

「だって面白そうだったからさー。ね、三蔵は『吸血鬼を信じる?』」

「信じるも何も、自分の存在自体吸血鬼じゃねぇか…沸いてんのか」

「ちっがーう!違うのだよワトソン君!」

「…ホームズになったつもりか」

「はいはい。あのね、この台詞はキャッチコピーみたいなものなのさ!」

「…こんなご時世で怖がるところだろ。ソレ」

「うーん。なんか矛盾してるよね。でもソコがそそるのさ!」

「1人で行け。めんどくせえ」

「そういわずにさぁ〜付き合ってくれたまえよ」

「却下だ」

「三蔵伯爵サマァァァァ!!!!」


城内に響き渡る悲痛なまでのの雄たけび。その声は寝室から聞こえてきた。
耳を塞ぎたくなるようなその大声に、三蔵は渋々承諾するほか無かった。あぁ哀れ。

ゲッソリ顔の三蔵を横目にとても浮かれている。その姿は子供が玩具を与えられた時によく似ていて。
恨めしいが、微笑ましいと思う三蔵。やはりには甘いのだ。この吸血鬼の王サマは。

「で、何処でやるんだ?その『リアルバイ●ハザード』」
「うんとねー数個町を東に行ったところって書いてあるよ」
「あやふやだなオイ。信じられるかっ」
「イヤイヤ、ちゃんと詳細は後日持ってくるって!」
「お前はココの住所を書き込んだのか?」
「違うよー八戒の教会に頼んだの」
「ちゃっかりしてやがる…」

あの運がとても良い八戒。その懸賞も八戒に頼んだのだろう。当たる確立100%じゃねぇか。
それを見越して、と言うか計画犯なは何処までも華やかに、嬉しそうに笑った。
滅多にこの街から出ないにとっては久し振りの遠出だ。かなり楽しみと言ったご様子。
忌々しいことこの上ないのだが、仕方ない。了承してからは後の祭りだ。腹を括るしかあるまい。

後で八戒覚えていろ、と密かな報復を胸に誓う三蔵はため息を一つ。そして寝台を飛び跳ねる馬鹿娘にハリセンを忘れずに。




今宵は『月が起き上がる』。その身を半分以上満たして『詠う』まであとわずか。
どうやら『月が詠う』時までには城に戻れそうに無いらしい。まぁ別にかまわないのだが。

夜の静寂が木霊する城内。廊下がつきの光によって照らし出されるホラーな空間。
その雰囲気はとても気持ちよく、己が吸血鬼だと身に沁みる時でもある。
暗い暗い、城内。いかにも何か出てきますみたいな怪しい印象をかもし出す。
ハッキリ言って落ち着く。静寂の暗闇が、己の存在を隠す暗黒の――。


『蝋燭の火を灯さずとも、この瞳は何もかも暴き出す』


『さぁ 詠え さぁ 踊れ その身体で喜びを 我等は高貴なる吸血鬼――』



幼い時

まだ吸血鬼と言う存在が栄えていた頃

大人たちが口々に紡ぎだす歌

毎夜宴を催し 酒に溺れた社交会

彼らは時として人々を襲いその生き血を啜った

女は若い男を

男は若い女を


その光景がとても滑稽で 吐き気がする


そんな彼も昔は生き血を啜る吸血鬼であった

しかしソレは、あの血の契約の時、口に含んだ己の血の味を知ったとき、何かが変わったのだ

赤い紅い深紅の――血

鉄臭い、それでも甘美なる――血

舌に馴染む甘い甘い
















彼女の血は、どんな味をするのだろうか



















「三蔵?早く寝ようよー」

「っ…あぁ」

「どうしたの?あ、そんな所で寝ちゃ風邪引いちゃうよ!」

「お前じゃあるまいし風邪など引かん」


  ―――― 一体自分は、何を考えていた?


「私だって最近は引いて無いもん!失礼しちゃうね」

「ふん。…さっさと寝るぞ」

「あー置いてかないでよぉ!」

「夜中に喚くな!」
























王が血を求め始めたよ

己の命の血を求めてるよ

おいしそうだね

僕等も飲んでみたいね



 彼女の血は――毒



飲んだら死んじゃうね

大丈夫 王は飲まないよ

その大切な存在を殺すわけにはいかないからね

どっちが死ぬのかわからないね




吸血鬼の王は光を放ち

今宵もまた 甦る




吸血鬼の彼女は光を受け

今宵もまた 甦る


彼女の血は――おいしそうな香りを放ち

飲んだものを死に至らせる


























朝日が昇る、午前とも午後ともつかぬ時間に2人の吸血鬼は起き上がった。
窓を突く嘴の音で覚醒し始める意識。コレはがよく手紙を頼む鷹の仕業。
音に誘われベランダに出ると大きな鷹はその立派な両羽根を広げ一声鳴いた。

「ありがとう鷹さん。…八戒からだね」

鷹は仕事を終えると空高く、飛びだった。姿が小さくなるまで見送るとは手元に渡った封筒を開く。
中からはまた一回り小さな封筒。まるでマトリョウシカだ。これが延々と続くなんて…まさかね。でも八戒ならありうるなんて言ったら悪寒が…!

「何だソレは」
「八戒からの手紙だよー。多分リアルバイオ(以下略)の詳細だと思うんだけど…」

そうして封筒の中身を開けた。大丈夫。マトリョウシカではない。

取り出した紙には思ったとおり、詳細を明記した招待状であった。真っ黒いその紙にはゴシック調のフォントで書かれた『リアル(以下略)』の文字。
それがまた怪しさ満載でそそる…とは言う。いや、くだらな過ぎるぞ。
まだ眠いのか気だるそうな三蔵は渋々ながらもから受け取る。眉間の皺が数倍濃くなったがは気にしない。
上質でできた真っ黒い紙は折りたたんであり、開くとこれまた怪しげな文字がツラツラと綴ってあった。




『貴方はこの”リアルバイ●ハザードinバンパイア編お化け屋敷”の生き血を求める吸血鬼たちに選ばれました』

  胡散臭さが一層増した。

『ワタクシは屋敷の執事をやっております『ラル』と申します。以後お見知りおきを。』

  お前の事などハッキリ言ってどうでもいい。

『さてさて、このお化け屋敷、今回はゾンビではなく舞台は吸血鬼一族の最高位を誇るとある一族の物語』

  ”今回”ってことは前回もあるのか?

『あなた方は吸血鬼狩りと呼ばれる別名”ハンター”になって物語を進行してゆきます。』

  普通にハンターでいいじゃねぇか。

『次々と沸き起こるミステリーそして驚愕のホラー。貴方は無事脱出できるのか。運命はいかに!』

  …うぜぇ。

『事前に銀の装飾を施した拳銃が各1名様につき1丁配布いたします。コレは記念としてお持ち帰りも可です。その前に帰れるかわかりませんけどね。』

  そんなもんいるか!…絶対帰れるって保障は皆無かコラ。一々癪に障る野郎だな。

『では。勇敢なるハンターの皆様のご来場を心よりお待ちしております。 『ラル』より』




読み終わると三蔵は無言のまま、床に放った。隣に居るが喚いていたがこの際シカトだ。
全くくだらない。その一言に限る。
なんで態々遠くまで出向いてこんな茶番劇に付き合わなければならないのか。と三蔵は思った。
でも隣で瞳を輝かせているには適わなくて。結局は行ってしまう自分を思い浮かべ表情を渋らせる三蔵であった。

「もー!大事に扱ってよね!コレ一応招待状なんだから失くしちゃったら入れないじゃん」
「…その手があったか」
「おいコラ」

は無下に投げられた招待状を拾うと元あった封筒に仕舞う。ソレを懐に入れ肌身離さず持ち歩くようだ。
そちらの方が失くす確立は高くなるのだが、三蔵にしてみれば好都合この上ないので黙っておくことにした。意地が悪い。



『※注意事項として、実際に”命”を落とされる危険性がありますのでそのことを踏まえてお越しください』



黒い黒いまるで光など知らないかの様な漆黒のその紙には小さく、最も重要な事が記載されていた。

これは演出か?それとも。

まだ2人は知らない。これから起こる壮絶なまでの事態を――。





















危険だよ

その屋敷は危険だよ

行ったら最後 戻って来れなくなってしまうよ

吸血鬼の王

吸血鬼の娘

それでも行くの?



















開催日に合わせて城を発った三蔵と。魔物たちの声を聞きながら、馬の蹄を響かせ東に向かう。



「笑わせんな。俺を誰だと思っている」



魔物たちの訴え虚しく、それさえ挑発に聞こえてしまう彼には通じない。



「こんな茶番、くだらんにも程がある。死ぬわけないだろ」



それは幸か不幸か。吸血鬼の最高位を誇る伯爵は、目に見えぬ強大な光を放ち魔物たちを黙らせた。



















王がやる気だよ

これなら大丈夫かもしれないね

姫も守られる

これなら平気かもしれないね


でも


もし王を失ったら僕達は

どの光を頼ればいいの――?
























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ATOGAKI
ふざけてるのか。そうなのか。管理人は今日もまた、傍若無人に進んでいきます(それはイカンだろ)
前にも出てきたバイオ(以下略)からネタを見出してみました。inバンパイア編です。本編とは全く無関係なのでそのことを踏まえてお読みください。
区切る気は無かったのですが、流石に長くなると思い\‐Uに続きます。あぁどうなることやら←
今、お城に行っても不在なので意味が無いでしょう。また月が詠い始めてからお越しください。笑←