人助け。そんなの私達には興味がない事




























The castle where a vampire is. V































八百鼡を助けて数日後。一通の手紙が届いた。
この手紙は届いたと言うより預けられていたのだが、ももしろ君が帰って来たときに発見した。
本来なら1日で帰ってくるはずのももしろ君。でも数日経った今帰ってきたところ。
なんか八百鼡とその主君に歓迎され、ご馳走を出され満喫してきたらしい…。は『私も行けばよかった』と無粋な後悔。
今は人形に戻り休息を取るももしろ君をちょっと恨めしい瞳を向る事で満足。お手軽な吸血鬼である。

「何々?『先日は我が部下が世話になった。礼を言う』……ってそれだけかい!!!」

「何1人で喚いてやがる貴様は」

手紙を叩きつけたと同時に部屋に入ってきた三蔵。遺憾気味のの様子が気になったらしい。
床に落ちていた手紙を拾い上げると何を思ったか眉間に皺が寄る。

「これ、この前の腰抜けが連れて来た女性の主君だって。お礼の手紙なんだけど…」

「『紅孩児』に『八百鼡』…か」

「何?知り合い?」

「あぁ。こいつ等も同属だ。もっと西に行った『吠登城』って所の王子と部下だ」
「まーじでぇ!てっきり八百鼡ちゃんは人間かと思ってた」
「あいつ等は争いを好まないからな。普段は吸血鬼だと隠している」
「それなら…私達の事はバレバレかぁ…」

だから『不覚にも』とか自分を卑下した言い方をしたのか。と合点が行く。
上級貴族のが気付かない程吸血鬼だということを隠していたとなれば、あちらもかなりの上級貴族になる。
別に隠すことではないのではと思ったが今のご時世、同属だとしても争う事もあると悟ったのか。あの八百鼡と言う吸血鬼は。

「文通友達になれそうだ!」
「…何言ってやがんだ貴様は」

あきれる三蔵を横目にこの馬鹿娘は早速行動に移すのは目に見えていて。
ソレを許してしまう三蔵もとことんに甘いのだった。


「あ、コレは悟空からの手紙だ」

ももしろ君がもう一通持っていたことに気付く。
内容は『俺さ、今度吠登城ってとこまで行って飯食って来る!』…との事。

「アイツは吠登城をなんだと思ってやがる」

大方吠登城からの帰り道、ばったり会ったももしろ君に手紙を頼んだのだろう。
と言うかいいのか?それで。

「いいなぁ。私も吠登城行きたい!」
「…文通でもしてろ」

これ以上押しかけたらあっちに迷惑だろうと見越した三蔵はつかさずを止めた。
は今度行こうと諦めるほか無かったのであった。

「ってか、悟空ってあの人たちと友達?」
「らしいな。好戦相手らしいぞ」
「争い嫌いじゃなかったの?」
「戯れ程度だろ。暇つぶしにはもってこいだろうからな」

いいなぁ、なんて呟くを横目に三蔵は部屋を出た。
まだ朝方だ。もう一眠りするに限る。

「三蔵寝すぎて脳みそ溶けちゃうよー?」
「…黙れ」

クスクスと笑うを背に、三蔵は己の寝室へと向かう。
あぁ今夜は誰にも邪魔する事無く眠むりたい、と。悪態をつきながら。







「吠登城の皆さん、あんな大食らいの悟空が行って大変だろうなぁ〜」

想像しただけで笑えてくる。今頃ほとほと困っていることだろう。
それを謝罪して、他に自己紹介も兼ねて手紙を送ろう。
は一枚の便箋を取り出すと早々に書き始めた。ちょっと使い古してあり、でも優美さを損なわない羽根ペンがサラサラと文字を綴る。
楽しみが増えた。それがにとってとても嬉しいことなのであった。

 『 八百鼡さん、それと吠登城のみなさん。お元気ですか?
   このたびは悟空達がお邪魔して大変迷惑をかけたと思います。
   それにももしろ君までお世話になってすみません。
   これから文通友達として私の話し相手になってくださると嬉しいです。
                              
                                  玄奘一族 より』

書き終わるとは白い封筒に入れ、封蝋を施す。
馬の絵がデザインされているのが特徴的でもちろん、ももしろ君をモチーフにしてある。
世界に一つだけしか存在しない三蔵からの贈り物。滅多に使わないコレはの宝物だ。
三蔵も手紙を出すときはこれを使う。今まで数回しか使ってないが。


「『鳥が飛び立つ。鳩が鳴く。馬が嘶き、蹄を響かせ荒野を駆け巡る』…手紙は、鷹さんに任せて完了っと!」

鷹さん――そのまま鷹の事である。どこからともなく飛んで来てはの手紙を持って飛んでいく。

ソレを見送っては道具を仕舞うと、久し振りに自分の寝台に寝転がった。
天蓋付きの寝台は一見お姫様の様であるが、デザインは暫し禍々しかったりする。
街娘のように可愛いものでもないソレはが大変気に入っている物だ。
ならば何故三蔵の所に行くのか。ソレは愚問である。

「別に1人が怖いとかじゃないんだから!」

吸血鬼の癖になど言うが怖いものは怖い。真夜中の廊下など平気で行けるだが寝るときは一人が怖いらしい。
理由は兎も角、三蔵と一緒に寝る口実にも聞こえるソレはの何を意味するのか。

「ももしろ君…昼になったら起こしてね」

人形から嘶きが聞こえた気がした。






























棺桶から何が出てきた?

 吸血鬼が出てきた

その吸血鬼はどんな姿をしていた?

 金色で、太陽みたいだった

吸血鬼なのに太陽?

 そう。光だった

夜行性なのに何故太陽なんだろうね?

 きっと昼行性なんだよ

そうなのかな。じゃあ弱点なんてないんじゃないか?

 弱点は知ってるよ

それはなんだい?

 それはね、一緒に起きてきた綺麗な――










「?」

「んぁ?なぁに三蔵…もう昼?」

「とっくに夕方だ」

「えー!買い物行こうと思ったのに…」

「今からでも間に合うだろ。さっさと準備しろ。置いてくぞ」

「待って!今行くから!!」





















綺麗な綺麗な、愛らしい程美しい、吸血鬼。

生き血を啜って、また甦る



























「三蔵が一緒に買い物言ってくれるなんて珍しいね」

「煙草がきれた」

「吸血鬼の王様は煙草がお好き…まるで人間だね」

「ふん。前も言っただろう。いきとしいけるもの、」

「『やることは同じ』でしょ?」

「・・・さっさと行くぞ」

「お腹すいたから、ついでにご飯食べてこよ?」

「貴様も大概、人間とかわらねぇな」

「だって血なんてまずくて飲めないよ」

「まったく、俺の周りには碌な吸血鬼は居ねぇな」

「じゃあ三蔵は生き血を飲めるの?」

「…血なまぐさくて無理だろ」

「ホラ!三蔵だって同じ『碌な吸血鬼じゃない』じゃん」

「上級貴族は血なんざなくたって生きられるって事だ」

「ごもっともです。三蔵伯爵サマv」






















金糸の吸血鬼、その見目美しい姿は何を喰らう?

命と共に また甦る
























「何…コレ」

「…まだ被害は少ない。大方近隣のやつ等だろう」

「この街は私のお気に入りなんだよ!…許せない。皆殺しだね」

「兎に角、早く片付けるぞ」

「この縄張りに手を出したこと後悔させてやんよ」



街に下りてきたと三蔵。しかし目の前に広がる光景は今まで見たことも無いような――悲惨な状況。
燃え盛る炎、逃げ惑う人々。―息絶えた者。空を飛び回る、吸血鬼。
被害はそんなに広くない、がこのままだと全滅するのは目に見えている。
は姿を隠し、その背に翼を広げた。蝙蝠のようなその翼は大きく広げるとそのまま飛び立つ。
目には憤怒の色を携え手には何処からともなく出された大剣一丁。


「下級貴族風情が、汚らわしい。死を持って償え。糞野郎共!」

「上級貴族の台詞じゃねぇな」

「ぬぁに!三蔵に言われたくないって!」

「うるせぇ」


は翼を出したので正体がばれないように顔を隠す。しかし三蔵は翼を出さないし銃だけなので、すがたを隠さなくても平気だ。
空中と地上から不貞の輩を排除する戦法にでた。同属殺し?そんなの2人にとっては関係ないことで。
人外ならぬ魔外の三蔵と。なにもかも特別な存在なのだ。それに吸血鬼一族を束ねる長ですし。
まぁ、職権乱用とはこの事なのでしょうか。イヤイヤ、三蔵伯爵サマには意味無い言葉ですよ。


「敵部隊は数人と確認。…全滅を確認しました!」

「何処の軍人だ?…随分あっけなかったな」

「私の手にかかればちょちょいのちょいであります!」

「いつまで続けんだ貴様は!」


スパーン


小気味良い音は今までの喧騒が嘘のように静まり返った街中に響く。

手早い2人のお陰で被害もそう大きくは無く、被害人数も極僅かに押さえられた。
しかしまだ人々の混乱は続きそうなので買い物どころではないかもしれない。

「まぁ、被害が無かった方に行けばご飯食べられるかもね!」
「その前に煙草だ」
「了解ー!」

焼け落ちた家の傍を通り、一通り被害状況を確認する2人。―痛々しいものだった。
これも同属である吸血鬼の仕業だと思うとなんだかは悲しくなってくる。
自分達は関係ないが、吸血鬼は人の生き血を啜って生きているのだ。これも自然の摂理と言ってしまえば簡単で。
でも、なんだか後味の悪いことに変わりは無い。人間だって動物を狩って生きている。吸血鬼だって…。

「ま、私の大好きな街を壊そうとしたんだから、これも自然の摂理ってことで」
「何だそれは」
「うーんと、私の周り以外はどうでもいいって事だよ」
「勝手な言い分だな」
「だって、吸血鬼はこの街以外だって襲ってるんだよ?でも、それは私には関係ない事。だけど私の目の届く範囲の場所だけは私は守る」
「いいんじゃねぇのか。それで」
「うん。…一暴れしたらお腹すいちゃった!ご飯にしよう!」
「どこぞの猿だ貴様は」


人助け?そんなの興味が無いこと。でもの知り合いや、この街の人は別なのだ。


「お店やってなかったら八戒のところにでも行こうか…」

「…勝手にしろ」




吸血鬼の味方?人間の味方?

違う違う

私は生まれてからずっと自分の見方味方だよ

あと、三蔵ね!


















魔外者の上級吸血鬼は、人々に混乱か、はたまた救世主と言うべきか

今宵もまた、甦る





















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ATOGAKI
…意味解らん。(お前がな)
色々伏線あるけれど、あんまり関係ないかな。管理人が好き放題書く作品。しかもこの上ない意味不明物。
流れとか関係なく、ホント好き勝手書かせていただいてます。すみません。もう不法地帯もいいところだよ笑
紛い物と、魔外者を掛けてみた。うん。上手くない。笑