吸血鬼の少女は夢を見た

本来ならば寝なくてもよい魔外者の少女は恐ろしい夢を見たと言う






















The castle where a vampire is. 11




























「く、来るなぁぁぁぁ!!!」

「っ!」


三蔵は不本意極まりない朝の目覚め方をした。すぐ横の、耳元で大声を聞いたからだ。
流石に寝起きが悪い三蔵も、一気に目が覚めてしまう。兎に角、耳が痛い。

何事かと隣を見てみれば声の発信源、が冷や汗をたらしながら起き上がっていた。
息が荒く、大粒の汗を掻き肩が大きく上下にゆれる。本当にどうしたと言うのか。

「なんだ…朝っぱらからうるせぇ」

「……ビが…」

「ビが?」

「ゾンビが、ゾンビが襲ってくる…!!!!」


スパーン


くだらない。こんなくだらない理由で三蔵は叩き起こされたと思うと苛立ちが湧き上がってきた。

どうやらは夢の中で魘されていたらしい。
その内容は『ゾンビが大量に襲い掛かってきた』との事。…ゾンビぐらいで喚くなと言いたい。
しかしの続く発言で三蔵は鳩が豆鉄砲食らった様な顔つきになった。目が点だ。

「三蔵がね、咬まれて…助けようと思ったんだけど、無理で。…そんで一緒に私に襲い掛かってくるの」

「ったく…。俺がゾンビなんぞにやられるワケねぇだろうが」

泣きそうな顔で途切れ途切れに言葉を紡ぐ。内容はアレだがなんと愛おしい。
が、その後の続きに三蔵はまた、怒りが再発するのである。あぁ、この馬鹿娘はなにをほざくのか。

「だって、三蔵!咬んだそのゾンビさんは見目美しくて、綺麗な女の人でね、三蔵誘惑されっちゃって」

「アホか。沸いてンのか貴様の頭は」

「極上な体つきで、コロっといっちゃったんだよ!三蔵の浮気者ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「いい加減にしろっ!この馬鹿娘ぇ!!!!」


スッパーン…




この会話は数時間前のものだ。そして現在はと言うと。




「綺麗な人見ても、着いて行っちゃ駄目だよ?」

「美しい薔薇には棘があるってくらいだから、連れ込まれた所で実はゾンビで、咬まれちゃったなんて、駄目なんだからね!!」

「見た目綺麗でもゾンビっ」


スパコーン


本日何発目かわからない小気味良いハリセンの音が街内に響いた。いい加減うっとおしいのが三蔵の本音である。
今朝の夢を見てからと言うものの、はここぞとばかりに口うるさい母よろしく同じようなことを何度も何度も…。
ホント、いい加減にして欲しい。

「貴様は…下らんことをいつまでもほざいてんじゃねぇよ…」

「だって三蔵…!私は、三蔵が誰かにとられるって、三蔵は私のっ」

「わかってる…だから、いい加減にしやがれ!!

また、小気味良い音が鳴り響いた。

怒鳴る三蔵も実はわかっていた。の不安も、心境も。
だからと言って優しく宥めるともできまい。そんなのキャラじゃないからだ。
うっとおしくても、その根源がなにであるかと言うのは明白で。だから三蔵もつい愛情の裏返しが過激になるのだが。

そんなにが三蔵を想っているのか。それは見なくてもわかる。
あの日、血の契約を交わさなくてもは三蔵に着いていくだろう。三蔵もまた然り。
だからこそ、その心の蟠りを取り除いてやりたいのである。

不器用な男。彼には無理かもしれない。なんちゃって。


「街中で騒いでは周りの人にご迷惑ですよ。2人とも」

未だに騒いでいたそんな2人の間に第三者があわられた。笑顔が似合う青年、八戒だ。
片手には買い物の紙袋を抱え、いつも微笑が耐えない顔には呆れが浮かんでいた。
やれやれ。肩を竦める仕草が三蔵の癪に障る。もちろんそのことを解ってやっているから性質が悪い。

「一体何を抗論しているんです?」
「三蔵がね、綺麗なお姉さんについていこうとするから、」
「誤解を招くような言い方はやめろ!夢と現実の区別もつけられんのか貴様は」

「夢・・・?」

原因はこの吸血鬼の少女がとある夢を見たことから始まったらしい。その内容を聞くと、一層呆れる八戒であった。

まさかこの三蔵が、を差し置いて他の女性についていくなど…全くもってありえない。
傍から見れば三蔵がにゾッコンなのは明らかで。だから、何をそんなに不安がるのか正直理解できないのだ。
こんなに愛されているのに…。女心とは厄介なものである。まぁ、所詮は夢と言うことだ。

「まぁまぁ。これ以上街中で騒がれては困りますから、教会へ行きましょうか」
「俺の所為じゃないからな」
「何言ってんのさ!元はといえば三蔵が私の夢の中に出てきて浮気するからいけないんじゃん!」
「勝手に夢に出されて文句言われる筋合いなんぞないだろうが!出演料取るぞ!」
「なにをー!」

「2人とも…いい加減にしません、か?」

何より八戒の笑顔が怖かった。






大通りを抜け、小道を進むと其処にはひっそりと立つ教会がある。小さいながらもその存在感は大きい。
周りは花壇やら木々に囲まれとても居心地の良い、その空間は暖かいものだ。
懺悔しにくる人々などは、好んでこの教会に足を運ぶ理由がわかるきがする。

その教会の裏手にある建物内に3人は優雅にお茶を飲んでいた。若干騒がしいのは目を瞑って欲しい。

「その美しいゾンビさんは化けの皮を被った亡者なのだ…!」
「化けの皮を被ってんのは貴様のほうだろ」
「生憎私は生まれてからこの愛らしい美貌の持ち主です!」
「自分で言うなんざ…沸いてるとしか思えんな」

「あはは。三蔵も人の事言えないんじゃないですか?人一人射抜き殺せそうな目とか」
「本当に化けの皮を被ってのんは貴様だ八戒」
「おや?何かいいました?」
「八戒!もっと言ってやって!!」

優雅な一時はいずこへ。来て早々騒ぎ始める2人に八戒は心底連れてきた事を後悔したとか。


誰が見ても解るくらい、互いを想いあう2人。
一方は己の命であり、否命より大切な存在を。
一方は己の光であり、かけがえのない存在を。


この抗論も惚気に聞こえてきた。否、痴話げんか…?


「全く…悪い夢を見るなんて、なにかあったんですか?」

八戒は放っておけばそのまま永遠に続きそうな痴話喧嘩に終止符を打つ。まずは原因究明である。
本来寝なくてもよいは悪夢を見たと言う。それには何は原因があると考えていいだろう。
例えば無意識のうちに危険を察知したとか、なんか。

「え…と、多分、寝る前にやった『バイ●ハザード』が原因ではないかと」

「…ぶっ殺すぞ」

「あはは」

もう怒りを通り越して呆れてくる。散々大騒ぎした原因がゲームなど…悟浄の家に早く返して来なさい。

「だって…元アナウンサーの鈴●さんのプレイ見てたらやりたくなっちゃってさー」

「確かに鈴●さんは凄いですよね」

「お前ら何意気投合してんだよ…」

と言うか本題から反れているのは気のせいではあるまい。

















『あぁ 吸血鬼の王よ――その身をワタクシに』





嫌悪感が湧き上がってくる。あの、夢の中に出てきた、見目美しいゾンビに。



触らないで。



触らないでっ…!



「触ら、ないっ…で」



私のかけがえの無い存在に。私の、大事な大事な、光に。








「俺が血の契約をしたのは、お前だけだ。今までも、これからも」








交わしたいと願うのも、お前だけ――。








「私だって三蔵しか、イラナイ」








あの時、契約を交わした瞬間から、否もっともっと前から求めていたのは貴方だけ。














それは洗脳か、はたまた。

可笑し過ぎるほど互いに執着しあう様は、とても不自然で――自然。















「また、来ますよ」

かすかに感じる気配――妖気だ。腐ったような、とても気味が悪いソレは城から。

「本当にココ最近多いですねぇ。疫病神でもいるんじゃないですか?」
「疫病神は吠登城に居るだろうが」
「それはまた…あちらの皆さんは相当困ってそうですね」
「お陰でこっちは平和だがな」
「平和とは言えないようですケド…」

短くなった煙草を灰皿に押し付け、立ち上がる三蔵。ソレをみて八戒も続く。
はまだ、立ち上がらない。俯いた顔は2人には窺うことができないがなにとなく、わかった。

「ゾンビさんの相手は…私がする!」

ガバリと顔を上げたは強い意志の篭った…いや、憎しみ、嫉妬か。瞳は真っ直ぐに2人を通り越して城の方を射抜く。
まだ夢に出てきたゾンビが出てくるとは限らない。というかその可能性は無に等しいのだがこの少女に言っても無駄であろう。
無駄にやる気満々のに三蔵は呆れ顔。八戒は苦笑を漏らしたのであった。

「あの美人のおねーさんなんかに、負けない!」

どこかすっ呆けているは立ち上がり、城へと駆けて行った。

「まったく…世話の焼ける馬鹿娘がっ」
「微笑ましい限りですよ」

2人も直ぐに後を追う。妖気は、直ぐ其処に。



















ゾンビだ

ゾンビがやってきたよ

気持ち悪い

その腐った匂いをどうにかしてほしいね

僕等は楽しいことは好きだけど

あんな気味の悪いのは勘弁だね


吸血鬼の娘が来たよ

王も来たね

神父も来た


僕等の光

早く そいつらを追い払って




























「っ!気持ち…悪、い」

「匂いがお城に残っちゃいますかね」

「勘弁してくれ…」


大きな門。城に通ずるソレを潜れば濁った空気。そして夥しいほどの数のゾンビ。
身体は腐り落ちて骨やらなんやらが丸見えなゾンビさんたちは、城の住人を見つけると一気に視線を向けてきた。
こんな大量のゾンビに見つめられる3人。腰が引き気味なのは致し方ないだろう。兎に角気持ち悪いの言葉に尽きる。

綺麗に整えられた芝に石畳。その上を腐ったモノたちが歩いた形跡がクッキリと残り、掃除が大変そうだ。
うげぇ、と顔を歪めたはもう逃げ腰。帰りたいのが本音だ。いや、家はココだけど。

「貴様…逃げたら承知しねぇからな」
「無理無理無理!あんなの相手にできないって!!」
「先ほどまでの威勢は何処にいったんでしょうかねぇ」
「ソレとコレは別問題だよ!」

ちゃっかりと何処から出したのか解らない防臭マスク(匂いを完璧遮断!)をつけた八戒はきっと見えない口元に微笑を浮かべているだろう。
と三蔵はモチロンそんな便利なものなど持ち合わせていないため腕で口元を覆っているがやはり完璧とまで行かない。
匂いが、きついのである。隙間から少しでも流れ込んでくる匂いを嗅げば不愉快極まりない。卑怯だ…八戒。

既に戦意喪失気味の2人は置いといて、ゾンビの集団から1人。親玉らしきモノが出てきた。

アレは、あの、ゾンビ。


「もしかして、夢から…でてきちゃった?」

「この場合は正夢、かもしれませんよ?」

「俺はあの女に咬まれるのか。願い下げだな」


周りのゾンビと全く違う、見目美しい、女。否、中身はゾンビだ。その女ゾンビは優雅に前に出てくると、おもむろに頭を下げた。
綺麗な深紅のドレスを纏った姿は何処から見ても人間。でもおかしな点が1つ。体中に包帯が巻かれているのだ。
腐った身体を隠そうとしているのか。しかし所々緩く巻かれた包帯の隙間から見えるは肌色。艶やかな、肌。

「この包帯は飾りです」

ニコリとルージュを塗った唇が弓状に引き伸ばされる。なんとも妖美な、微笑み。
目線は厭らしいほどに熱く三蔵に向けられていた。

「こんばんは。高貴なる吸血鬼の王…ワタクシはご覧の通り、ゾンビ共の親にございます」

いや、見た目じゃわかんないから。なんてツッコみたい衝動に狩られたがココは八戒。笑顔になって押し留める。

「お会いとうございました。三蔵伯爵サマ」

ココで悟浄が居たら鼻の下を伸ばしそうな気がするが彼はいない。いや、居ても困る。色々と。
ソレほどまでに美しい女ゾンビはトロンとした瞳を尚も向け続ける。見るな。不愉快だ。

「誰の了承へてこの城に入ってきた」

「まぁ、それは失礼致しました。お邪魔しています」

「ようこそ…吸血鬼上級位を誇る玄奘さんぞう…って違うぅ!呑気に挨拶はおかしい!」

「習慣付いたものは自然に口に出てしまうものなんですねぇ。いやぁ実に恐ろしい…」

「くっ…私としたことが!」

いつもの決まり文句を途中まで出かかったは苦虫を噛み潰したような…それは置いておこう。

それより今はこの状況をどうにかしなければならない。もし、本当に正夢だとしたら…大変なことになる。
――咬まれてしまうのだ。三蔵が、この女ゾンビに。その後の事は…思い出したら涙が出そう。
三蔵が、ゾンビになってしまう…!

それだけは阻止せねばならない。必死に考えを巡らし、思いつく。否思い出した。
夢の通りなら、この女ゾンビは、真の姿を現したとき…逃げる。
その醜い姿を見せたくはないのだろう。夢の中でゾンビ三蔵を放って置いて尻尾巻いて逃げたのだ。この女ゾンビは。
それからはゾンビ三蔵に追い掛け回され…酷い眼にあった。あんな思いは2度としたくはない。

こんな事言ったら確実にハリセンは喰らうであろう、夢の中の思い出を思い出したは顔面蒼白だ。
…八戒にはなんとなく想像できてしまうから恐ろしい。

「、僕もゾンビ三蔵だけは御免です」
「解るよその気持ち…経験者は語る」

「貴様ら、一体何の話だ」

「「いいえ、なんでもございません」」

両手を挙げた2人には後ろめたいことが沢山あるのである。


「さぁ三蔵伯爵サマ…ワタクシと一緒に、愛し合いましょう?その身をワタクシにささげてはくれませぬか?」

「却下だ」

「そんな事を仰らずに…。お行きなさい!ワタクシの僕たちよ!」

女ゾンビの言葉と共にその辺に群がるゾンビが一斉に襲い掛かってきた。しかもと八戒限定で。
それを見た三蔵は瞬時にの所に駆け寄ろうとした。が、ゾンビ共の所為で近寄れない。…近寄りたくないのが本音だ。


「ぬぁぁぁ!キターーーーー!!!!無理無理無理来ないでェぇっぇぇぇ!!!!!!!!!!!」


の叫び虚しく、ゾンビは次々と襲い掛かってくる。
走ってくる途中で体が腐り落ちているのは見たくない。ってか庭にそんな落し物しないで欲しいところである。

「コレは…本当にリアルバイ●ハザード再びって所ですかねぇ」
「なんで、そんなに、平気な、顔して、んのさ!?」
「いやぁ〜実は僕、こういうの大好きなんですよv襲い掛かるゾンビさん達を1人1人銃で打ち抜いて、時には爆弾使って、なんて面白いじゃありませんか」

本当に八戒の脳内が見てみたい。いや、見たら一生後悔するのは目に見えていた。

「ゾンビより、八戒の方が恐ろしい気がしてきたよ」
「それは褒め言葉と受け取っていいですかねぇ」
「お好きにどーぞ!!」

もうこんな余裕を保っていられない。空中に飛んで戦線離脱である。

「薔薇園の薔薇が枯れちゃいそう…」

空中から見た光景。それはおぞましい程のホラーで軽くトラウマ決定だ。
いくらバイ●ハザードの世界とは言え(違うけど)リアルにはホント勘弁してもらいたい。先日のお化け屋敷の方がまだマシだ。
銃も持っていないので、剣で対応するしかないのだが、できれば剣に腐ったモノを斬るのは御免被りたい。
刀の錆なんて何処ではない。腐る。

「!下だ!」

地上から三蔵の声が聞こえた。

「下?ってほわぁあ!!ゾンビが飛ぶなァァァ!!

が見たものとは、骨でできたと言うか翼が骨になったのを羽ばたかせ、下から迫ってくるゾンビである。
その速度は結構なもので直ぐにとの距離を縮めてきていた。

「来ないでっ…て、うわっ!」

そしてゾンビはの足を掴むと急降下。そのままの勢いで地面に叩きつける気だ。
ヤバイ、そう想った時には既に遅く、目の前には踏み荒らされた芝生。は咄嗟に眼を瞑った。が。

「っ!」

「…この馬鹿娘!世話を焼かせんな」

地面とのご対面な衝撃はなかった。けれどその代わりに暖かな温もり。
抱きかかえられるように再び宙に浮いている身体。眼を開けると三蔵がドアップで写った。

「ナイスキャッチです三蔵!」

そう、三蔵は己の翼を出し瞬時にを受け止めたのだ。映画さながらのアクションは八戒も感心した程。
お姫様抱っこよろしくに抱きかかえられたは思考が着いていけない。あぁ、三蔵サマありがとう。

「油断するな、まだ来るぞ」

「いえっさ!」

名残惜しい三蔵の腕の中からでて再び翼で空中に飛ぶ。今度は油断せず、大剣を何処からともなく出現させた。
こうなったら仕方が無い。大事な大剣、我慢してくれ。

地上では八戒が気孔を使って応戦。三蔵も翼を仕舞い銃で参戦だ。
は空中に躍り出てきた敵を大剣でなぎ払う。銃と気孔の遠距離戦法が羨ましい。

「三蔵伯爵サマ!どうして、その娘を庇うのですか!」

今まで影薄かった女ゾンビが悲痛の叫びをあげた。周りのゾンビは残り僅かにまでなったのであたりを見渡すと直ぐ近くにその姿が見えた。
深紅のドレスを着た、女ゾンビはいとおしむ様な瞳を向け、先ほどの妖美さは微塵も見当たらない。

――女心とは厄介なものである。これは先ほど八戒がを見て思ったことだ。
これは目の前の女ゾンビにも、一応女であるから該当するだろう。
そして女心の最も厄介なもの…それは『嫉妬心』。これが最悪、酷くなったらどうなるのか。
流れ的には。やきもち(軽)→嫉妬(重)→憎悪→殺意。まだまだ言ったらキリが無いので省略させて貰う。
この女ゾンビはきっと、嫉妬→殺意。に飛んだ。には『敵意』むき出しである。これはの方が先である。
 
「本性表す前に、倒さなきゃっ」

焦る。別に真の姿を見せたら逃げるのだから放っておけばいいだろう。しかしの中に湧き上がってきたのは嫌な予感。
怒りで我を忘れた女ゾンビは、逃げる事無く襲い掛かってくる。コレは確信だ。

「メタモルフォーゼ、ですか」

「正体を現しやがった」

女ゾンビの変化に呆気にとられる2人。面倒になった、と眉間に皺を寄せる。
変化の様は見るからに、と言うか見たくも無い。妖美だった身体は剥がれ落ち、そこに現れたものは周りのゾンビ共と一緒で腐っているモノ。

ゾンビだ。今更だがこの女はゾンビである。

化けの皮を剥いだその姿は不気味で、身の毛立つ光景。
空中にいたは夢がフラッシュバックされる。来ないで、近づかないで。三蔵に、私の――









「来な、いでっ!三蔵は、三蔵は…私のモノっ」









『何を言っているの?三蔵サマは、誰のモノでもない。しいて言うなら、ワタクシのモノ――』









夢の中の、現実?コレは、正夢だったと言うのか。

脳内でフラッシュバックされた、会話。今はもう正気さえも失っている女ゾンビが言っているわけではないだろう。

言葉は、夢の中で聞いた台詞。








地上に舞い降りた吸血鬼。両手を広げ、三蔵を守る様に女ゾンビの目の前に出た。


「!」

「三蔵は私が、守るんだか、ら!」

































その吸血鬼の少女は守りたいモノがあった

己のかけがえの無い光の存在を
























「指一本、触れさせはしない!」






















その吸血鬼の少女には守りたいモノがあった

命より大切な、愛しい存在を

































襲い掛かるゾンビ。『嫉妬』から『憎悪』に変わった感情は、女の本能を突き動かす。

『生きとし生けるもの、その真理は変わらない』

『生きとし生けるもの、やることは同じ』

『生きとし生けるもの、始まりがあれば終わりもある』

女心もまた、同じ――


























ズブリ…グチャ

大剣から滑り落ちた、腐った身体。頭を突かれたゾンビは呆気無く地面に崩れ落ちた。

『哀れなモノよ。永遠に眠るがいい――』


「私もこのモノと同じ、だね」


嫉妬に突き動かされた衝動。その結果は変わらず、どちらかが殺らねば殺られていただろう。

果たしてそうだろうか―?


「違うだろ。お前はコイツとは、違う」


が今考えていることは解る。

もし自分がいなければ、そんなくだらない戯言。


「俺はお前が居なかろうが、関係なくゾンビなんぞ願い下げだ」


それ以前にがいないなど、考える事さえ無駄だといわんばかりの三蔵。

その尊大な態度は、の黒い感情を消し去るほど眩しかった。

――私の、光。


「嫉妬に狂う女性は、見ていて痛々しいですね」


「それ程想いが強いんだろう…嫉妬なんざ当たり前の感情だ」


「私も、嫉妬した。たとえ夢の中だとしても我慢できなかった」




こんな醜い自分を、受け入れてくれるのだろうか。




















吸血鬼の少女 今宵もまた眠る

今度は悪夢なんかに魘される事のないように

吸血鬼の王は少女を抱きしめた

安心して眠れ 愛しい存在よ――
























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ATOGAKI
うん!また意味不明の産物ができました!今度はリアルバイ●ハザード本物編です。それにしてもバイオネタ…引っ張るな。笑
今回は『嫉妬』と言う事で、ヒロインと三蔵サマの絆みたいなのを書いて見ました。…こんな展開じゃなかったんだけどね←
そしてまた無駄に長い...これこそ前後編に区切ったほうがよかったんではないかと、後悔しております。読み難くてすみません。
いま、お城を訪ねると腐敗臭が凄いので行かないほうが得策です。掃除、手伝わされますからお気をつけて。
あれ?八戒が空気と化している気がするんですが…よし。逃げよう。