むかしむかし、そのまたはるかむかし。
もりのおくの、そのまたおくふかくにいっけんの”おしろ”がありました。
ひとざとからはなれ、だれにもみつけることすらふかのうにちかいその”おしろ”はとてもうすきみわるく、
ひとがすんでいませんでした。
そう。
”ひと”はすんでいないのです。
ひとびとはくちをそろえていいます。
あそこには、”きゅうけつき”がすむのだと――。
The castle where a vampire is. T
世界はまだ、凶悪な吸血鬼に日々脅えて暮らしていた時代。人々は毎夜襲い来る恐怖と戦いながらも必死に暮らしてきた。
ある者は吸血鬼狩を主な仕事にし、それを頼って縋る者、その前に息絶える者。多く存在している。
しかしそんな世の中に1つだけ、平和に過ごす者たちが居た。
その者たちは見た目が大層華やかで一目をひきつけてしまう。
が、滅多に人里に下りないので存在自体あやふやな者と処理されてしまっている。
それが彼等にとって好都合この上ないのだがたまに来る吸血鬼狩さん達を追っ払ったり、脅かしたり。
昔から代々存在する彼等は毎日、見た目によらず面白い生活を送っているのだった――。
そして問題のお城。外見は薄気味悪く、いかにも…な雰囲気をかもし出している。
まるで全ての闇を取り込んだような、そんなお城。
背後には見事なまでの満月。それがココの怪しさを一層ひきだたせていて。
そのお城の薄暗い廊下の一角に場違いの様な1人の少女が居た。
ズル…ズルリ…ッズルル……ベシャッ
「痛っ!」
愛らしいほどの瞳に涙を浮かべ床に転げる少女は漆黒のマントを着込み手には何故か馬のぬいぐるみ。
未だこけた衝撃に耐えているのか起き上がる様子は微塵もない少女。
と、そこに1人の青年が。
「…貴様は何をしている」
尊大な態度で目の前に佇むその青年は手を差し伸べるワケでもなくただ、少女を見下ろしていた。
目を凝らしてみると窓から差し込む月の光に反射してキラキラと眩いほどの金髪。
瞳に紫暗の色を持ち、やはり少女同様漆黒のマントを羽織っていた。
「三蔵…こけちゃった」
「そうか」
「いや、手を貸してくれてもいいんでない!?」
「面倒だ」
「コノッ!人でなし!!」
「俺は人じゃねぇからあたりまえだ」
「いや、そういう問題じゃなくてさぁ!」
見た目24歳の青年。
見た目19歳の少女。
この2人は冒頭から言われている様に、人々から恐れられる存在――吸血鬼である。
その風貌は人間とはかけ離れ、若く美しすぎる程の容姿。そしてお約束、漆黒のマントだ。
実年齢は見た目と×10倍くらいにしてくれればいいだろう。少女の方は見た目より幼く、青年のほうは若干老けて…(殺すぞ)
三蔵と呼ばれた金糸を持つ青年は渋々といった様子で少女―に手を差し伸べる。
その手を取り軽やかに起き上がる少女、は塵一つ無いであろう廊下だが一応マントを掃った。
「ありがとう」
「ったく…それより、貴様は何をしている?」
お礼を言ったに先ほどと同じ質問をする三蔵。若干眉間の皺が増えた気がする。
それを確認しては正直に答えた。
「眠れないから三蔵と一緒に寝ようと思って」
ケロっと言うに三蔵は呆れ果てた。何を言っているんだこの馬鹿娘は…と言う風に。
「今何時だと思っていやがる。いい加減1人で寝ろ」
「何よー!まだ10時じゃない。三蔵は寝るの早すぎ。あ、年だからしょうがないか」
「張り倒されたいのか貴様は」
「幼女虐待ー!」
「殺すぞ」
その年で幼女は無いと思うがこの際シカトしよう。
ちなみに、吸血鬼は夜型だがこの2人は昼型だ。普通の吸血鬼は日光を浴びると灰になると言うがそうでは無いらしい。
全てにおいて”異様”の2人――実際にはあと数人居るが――は、吸血鬼一族の中でも高貴なる存在だ。
純血種。にも関わらず一般人と変わらないのは何故か。まぁコレは物語りなので深くはツッコまないでほしい。
「ねぇ、三蔵?今夜は”月が詠う”よ。だから月見酒でもどう?」
「ふん。悪かねぇな」
「言うと思った!早速準備するからまっててね?」
「あぁ」
――”月が詠う”
コレは満月と言う意味で月が詠う時(所謂満月の時)、魔物は妖力を得て感謝を込めて祭る。そういう言い伝えらしい。
この2人にとってはただのお酒を飲む口実なのだが、こんな綺麗な満月の晩に酒を飲まずとしてどうすると言うのか。
代々受け継がれてきた言い伝えは2人にとって娯楽の一つなのである。
月が詠うよ――生き血を啜って甦ろう
月が詠うよ――我等は高貴なる吸血鬼
月が詠うよ――
「”我々高貴なる吸血鬼に祝福を”――か。吸血鬼の癖に祝福されてどうるのさ」
「吸血鬼だって所詮”この世に存在する者”だ。やることは大概いきとしいけるもの、変わらんだろう」
「きっと今頃あの3人も馬鹿騒ぎしてるのかなぁ」
「それこそいつものことだろ」
月夜の晩。森の奥深くに位置するこの城。その中に1人の少女と1人の青年は今宵もまた、生き続ける。
MENU
ATOGAKI
やってしまいました吸血鬼ネタ。それも常識をものともしない管理人がやらかした、おかしな物語。
色々と設定考えて無いので、ホントほのぼのギャグ物語になるつもりです。文中で説明したとおり、最古を誇る高貴なる吸血鬼、な2人。
今のところ三蔵サマが1番吸血鬼の中で偉いんです。あっは!安直過ぎて笑えねェ!←
吸血鬼VSハンターでもよかったんですが、ほのぼの、ギャグチックと言う事で同属に。恋愛要素薄めかもしれません。あしからず。
初っ端から読みにくくてすみません。あんな感じの物語にしようと企んだんですが玉砕。なんか暗くね?みたいな。笑
ではでは。なんか続き物っぽいんで、よろしくおねがいします。更新は気まぐれで、ローペースに行きますよよよ。
…1つだけ?ちょっと疑問に思った所(笑)
photo by 戦場に猫 様