アイツを置いてきた事は必ずしも正解とは限らない、と気付いたのは八戒と悟浄が駆けつけてきた時だった。
の様子を聞いて殴られたような感覚に陥った。あぁなんて馬鹿なことをしたんだ俺は。
俺の不注意でアイツの目の前で抱きつかれるなど、あってはならないことだ。
いくら俺にその気がなくてもアイツにはどう写ったかなんて明白だろうが。俺だってアイツが他の野郎なんかに同じようにされていたら…。
迂闊だった。そんな言い訳通用するわけがねぇ。

しかもそんな絶望的な状況でアイツを置いて逃げるなど。








彼と彼女の青春ストーリー2










午後5時。ようやく忙しかった文化祭が終わった。これからキャンプファイヤーだなんだって周りは騒いでいたけれどどうでもいい。
今はまだそこら辺に息を潜めているあのお嬢様が居るから三蔵も迂闊に外にも出れないだろう。
それなのに私1人出てどうするのさ。…じゃあ三蔵の所にでも行きますか。そうよそうすればいいじゃないか!

早速私は模擬店やらなにやらの後始末を軽くしている生徒たちの間を縫う様に目的の場所へと移動していた。
先ほどとは打って変わって静まり返る校内は少し、寂しい感じもする。祭りの後と言うのは大抵こんなものなんだろうか。
外では大きなキャンプファイヤーが校舎を照らしその光が校内にも降り注ぐ。
あぁ、忌々しい。私もあんな女が居なければあの中で三蔵とラブラブできたのだろうか。そう思うとやっぱちょっと悔しくて。
僻みじゃないよ。羨ましいだけ。あ。同じことかも。
よくも私の三蔵に…なんていつから私はこんなに醜くなった?いや、元からかもしれない。

「ねぇちょっと貴方。顔貸しなさいよ」
「私の顔は取れません」

薄暗いもう誰も居なくなったと思われた校舎内で突然声を掛けられた。
ついついいつものような切り替えしをしてしまったのだけれども、声を掛けてきた相手にはソレが不満だったらしい。
振り返ると其処にはあの忌々しいお嬢様。そして顔は憎悪に歪んでいて折角の可愛い顔が台無しだ、と頭の隅で思ったり。
私に何の用だろうか。いや、分りきっていることか。大方三蔵の事だろう。迷惑極まりないわ。

「貴方のせいね。三蔵様が私に振り向いてくれないのは」
「振り向いてくれないのは貴方に魅力がないだけなのでは?」
「っ!いい加減にしなさいよ!三蔵様の彼女ヅラしちゃって!」

いや、事実彼女なんですけど。なんていったら火に油だろう。もしかして三蔵はソレを言ってないのだろうか。
コノ場合は言ったけどお嬢様には届かなかったのかもしれない。なんか傲慢なお人ですものねこの子。

「ワタクシは秋菜幸子(しゅうなさちこ)。近かくの吠登高校の2年ですわ」
「あ、私はこの桃源高校の2年です。よろしく」

いきなり、自己紹介し始めましたこの子。やっぱお嬢様の考えることはわからないな。
確か吠登高校って言えばミス吠登高校が八百鼡ちゃんだったよね。あ、ちなみに八百鼡ちゃんとはお友達です。ホラ、ミスつながりで。
あそこの紅孩児先生がかっこよくて…じゃなくてだな。私には三蔵と言う彼が。

「貴方が、『』?っ…信じられないわ!」
「え?信じて下さいよ。ここで嘘言って何の特になるっていうのよ?」
「だって、こんな…!貧乏臭い貴方がいとこだなんて信じられませんわ!!」

「いとこ…?」

我が耳を疑った。いやいや、身体検査では異常なかったはず。あ、違う?…わかってるって。
『いとこ』と言う単語に私は忘れかけていたあの手紙を思い出した。じゃああの身内とか言っていたおばあさんの…。
信じられないのは私のほうだ。確か事業が成功してって、金持ちになったって事よね。だからこんな立派なお嬢様…それなら納得いくけれど。でも。
こんな性格悪そうな女の子のいとこですか(気にするところは其処か)

「フン。聞けば三蔵様の所に居候していると言うじゃありませんか。全く汚らわしい。夜な夜な押しかけて…ソレなのに彼女ヅラなんて勘違いも甚だしいわ!」
「…勘違いしているのはどちらですか」
「何よ!居候の分際で三蔵様とイチャコラなんて自分の立場をわきまえなさい!」

もうめちゃくちゃだ。何が言いたいんだこの子は…。なんかどっと疲れが出てきたわ。
そりゃあ夜な夜な…言っておくけれど夜這いはアイツからです。人が居候だから抵抗できないのをいいことに…!なーんて言わないけれど。

でも、さ。居候って事に引き目を感じているのは確かなのだ。
お父さまは本当の娘のように可愛がってくれるけれど、所詮他人の子。私なんかが一緒に暮らしちゃいけないってことは十分承知よ。
だけど。あの暖かい家庭が心地よいのは確かで、手放したくはないって思うのはいけないことなのかな。
今まで気にしてなかったけど、あの手紙が来てなんだか心に引っかかりを覚えたのも事実で。

「出て行きなさいよ。図々しいにも程がありますわ。貴方が居るべきところは其処ではないでしょう?所詮居候なんて煩わしい他無いのよ!」

煩わしい?迷惑?そうだったのだろうか。あの暖かな笑顔は、家庭は全て偽りだったのだろうか。
そんなはずはない。そんなはず――。

「絶対に三蔵様は私に振り向いてくれる。貴方なんかミス桃源高校だかなんだか知らないけれど三蔵様とつりあわないのよ。身の程を知りなさい!」

何も反論できなかった。否、する思考回路がショートしちゃったみたいだ。なんか今までの築いてきたものが足元から崩れ落ちていくようで。


本当に、いつからこんなに弱くなってしまったんだろうか。




 造
 は
     
    

           


                                                          (ねぇ三蔵。私の存在はいらないものだった?)



ATOGAKI
またもやあっけなく崩れましたヒロイン。なんか手紙の存在で今まであったモノが崩壊していって幸子の言葉で完全に壊れちゃったんでしょうね。
それに衝撃的なことがありすぎて…。三蔵サマ傍に居てあげて!弱くなったのは恋愛と言うものを知って。でもそこから生還できるかどうかが本題なんだと思う。
展開早すぎとか聞こえないー!(しんでこい)幸子の言葉はアホっぽいけど結構確信ついてるみたいな。アホの子万歳!←
ってか三蔵様何やってんですか。屋上でのうのうと煙草でも吸ってんじゃないんでしょうかね笑。実はこの2人の会話悟空聞いてたりします。あっはは。