突然、見知らぬ女性から1通の手紙が届いた。その内容はお父さまにも三蔵にさえ言えない内容で。
いきなり衝撃的な事実を叩きつけられ、奈落の底に落とされたような感覚に陥った私はどうしたらよいのか…。
目の前が真っ暗になって私の心に大きな穴が開いたような、そんな感じ。
今更、ホント今更の事実に私はただ困惑するほか無かった。
でも持ち前の能天気さでその手紙の事は記憶の端っこに押しやった。コレは後で考えることにして私は今忙しいのだ。
『こんにちは。突然の手紙に驚いたかもしれないけれど私の家庭にも事情があってね。
こんなに遅くなったけれど迎えにいける手筈が整ったので報告させてもらうわ。
私はあの子等を亡くして、でもその時は貴方1人を雇えるような余裕が無かったの。
今では事業に成功してとても生活が豊かになったわ。貴方を迎えに行っても満足させてあげられるようにまでなったの。
だから、今度迎えに行くからね。貴方もいつまでも居候の身では肩身が狭いと思うから。
こっちではあなたのいとこになるのかしら…貴方の母親の兄妹の娘さんも一緒よ。
寂しい思いもさせないから、是非帰ってきて欲しい。 貴方の祖母より』
今更だ、としか言いようが無いではないか。
彼と彼女の青春ストーリー・ツー
文化祭間近。校内では思い思いに準備を始める中私たちいつもの面子は呑気に屋上で日向ぼっこしていた。
流れ行く雲は自由で、私はあの手紙が届いてからと言うもののどこか抜け落ちた心を抱えながら天を仰ぐ。
あまり深くは考えていなかったがホント自分勝手な手紙に腹が立っていたのだと思う。
「そういえばよ、文化祭っていったらよくカップルが出来るんだよなぁ…」
「まぁ定番といえば定番ですね。こうやって文化祭の準備とかしてるとクラスメイトの意外な一面を見てコロっといっちゃうんだとか」
「くだらん。あの猿を見てみろ。早弁したらさっさと寝ちまったじゃねぇか。恋愛も糞もねぇな」
「そういう三蔵サマはちゃんが居るからいーんだろうが。俺様さびすぃワケよ」
「あはは。自分で言う割には全然モテてませんからね。悟浄は」
「ふん。様ァねぇな」
「んだとコラ!俺だってなーこの全校生徒の全員コロっとだなぁ…」
「生徒全員は無理だな。は俺の女だから諦めろ」
「言われちゃいましたね…おや??」
寂しい悟浄の嘆き声など何も聞いていなかった私は八戒に呼ばれる声でハッとした。
別に思い悩んでいたワケでも無いんだけど、私がいつものノリで会話に入って来ないからそれを不思議に思ったのだろう。
本当に何も無い、と答えると3人は渋々だが納得してくれた。そうだ私は眠いんだ。
「ナニか?三蔵サマに飽きたんなら俺今フリーよん」
「黙れゴキブリ。てめぇはそこら辺の女でも漁ってろ」
「何言ってるんですか三蔵。ゴキブリ見たら大抵の女性は逃げ出しますよ」
「お前ら酷すぎ…」
そんなおちゃらけた会話を頭の端で聞きながらなんか居た堪れないような気がして私は逃げるように屋上を後にした。
次の授業が大好きな保健体育だ、と何処の中坊だよって感じの言葉を残して早足に。後ろめたいが今はまだ話せそうに無い。
でも心配をかけるワケにも行かないから、教室に向かう足をそのままにこの事は周りが落ち着いてからにしようと心に決めたのだった。
今は大事なイベントが待ち受けている。それがどんなに過酷なことでも、だ。メイドなんてやってらんないよ!
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「何か…考え事している様な気がするんです」
「それ俺も思ったワ。めっずらしー事もあんだな」
「どうせ今度の文化祭の事だろう。お前らが気にするようなことでもあるまい」
「そうだといいんですけどねぇ…」
本当は俺だって気になっていたりもする。最近、何か思いつめているような…。
でもそれをあまり表に出さないから性質が悪い。思い悩んでると思った瞬間いつもの表情に戻るのだあいつは。
尻尾もださない奴に何を問いただせると言うのか。…もし何かに悩んでいるのだとしたらそれを支えてやれない自分に腹が立ったのも事実。
まぁ今は自分から言う気が無いのなら待つが…知っての通り俺は気が長くはない。そのうち問い詰めてやる、と心に決めた。
「まぁ言いたければ自分から言うだろ。ヘタに周りが気にすると返って言い難くなる」
「さっすが三蔵サマ。の事はよく分ってらっしゃるー」
「まぁ今は様子見って所ですか。いざとなったら三蔵がなんとかしてくれますよね」
言われなくてもそうするつもりだ、と言ったら2人は意味あり気な視線を寄こすもんだからなんとなく赤いゴキブリを殴っといた。
ついでに馬鹿面さらして寝こけている猿もだが。何が何だか分ってなく飛び起きた猿にはぶっちゃけ八つ当たりだったりする。
まぁ丁度いいのでそのまままだ寝ぼけている頭にハリセンをお見舞いして無理矢理たたき起こしてやるとの監視役に就かせる事にした
この猿は意外なところで何かに感づいたりするから適任だろう。食うことしか脳が無いコイツに仕事をくれてやる。ありがたく思え。
それにしても…一体何の事で悩んでるって言うんだ?あんな周りの声も聞こえないほど考え事してるのはアイツにしては珍しいことだ。
真剣に悩むなんて事は片指で数えられるくらいしか無かったと思うから余計に俺は気にしてしまうのだろうか。
何も言ってこないのに腹が立つが今はまだ、話してくるのを待つことしかできなんだ。
そんな悠長なこと言っているから、これから起こる事に何も出来なくなってしまうだなんてこのときの俺は微塵も思っていなかった。
時は刻一刻と
(なんであの時無理矢理にでも聞いとかなかったのか、後悔しても遅すぎるのは目に見えていて)
ATOGAKI
どうなんだヒロイン。ってなワケでなんかまた一波乱来そうな勢いです。ハッピーエンドだけを目指して管理人は執筆しています。
まぁ中身は結構空っぽなヒロインちゃんは今まであまり深く思い悩んだことが無いんですね。今回も大事な手紙の事とか後回しにしちゃってますからね。
これからはきっとその手紙の存在自体わすれちゃいそうな勢いですよ。どんだけっ!次回に続く。