私、もう予言は致しません。願望も言いません。
まさか言った事が本当になるなんて誰が予想できたことでしょうか。ありえん!全くもってありえない話です。
こんな…こんな屈辱は生まれて初めてですよ。えぇマジでね。私は潔く死んだ方がいいのでしょうか…
あぁ。誰よ。今年の文化祭はメイド喫茶で決まりだ!なんて言った奴は!!
彼と彼女の青春ストーリー・トゥー
始まりは秋空が広がるよき日。いつものように私たちは屋上で日向ぼっこ…などと不埒な行動に移す前の事です。
珍しく授業を抜け出してきた3年生なのに未だ風紀委員長の座に居座る笑顔の男、八戒の一言のせいだった。
彼はまだ利用できると踏んで降臨続けるのですが――きっと教師等を脅しつけたに違いない――などと言ってません。神に誓っても。
「そういえば、2時限目に今年の文化祭の話し合いがあるそうですよ。全校で」
「えーめんどくさいよ。私は寝るの!昨日誰かさんのお陰で寝れなかった…」
「惚気は聞いていません」
「ったく。何で今更話し合いなんぞに出にゃならん」
私の訴えも虚しくスッパリキッパリ切り捨てられ終いには元凶の三蔵にまでスルーされますか。そうですか。
まだ昇降口で靴を履き替えていた私たちは風紀委員室から態々来たのであろう八戒に呼び止められ教室に行くことを余儀なくされたのである。
全く持って不本意極まりないことであります。ゴメンナサイ潔く教室に直行しますからその笑顔はやめてください!
そんなこんなで私は八戒と三蔵と別れまだ部活から戻ってないと思われる悟空と同じ教室に向かうハメになるんです。
くっそぅ。八戒は三蔵と同じ教室だからいいものの、私はまだ三蔵とだな…ごめんなさい後ろからものスッゴイ悪寒がするんですけど気のせいではあるまい。
仕方が無いのでバックレルことも出来ず1人虚しく何故か一時限目からご出席です。フハハ。ちゃんが来てやったんだ。ひれ伏せぃ愚民共。
また悲壮感が募った。
「あ!、珍しいじゃん最初から居るなんてさ!」
「悟空…部活は?」
「ん?もうとっくに終わってるって!」
「そっか。いや〜なんか朝から八戒に捕まっちゃってさ…」
かくかくしかじか。今さっきの事を悟空に話すと哀れむような目を向けてきた。ちくしょう。
憂さ晴らしにその柔らかそうな頬を引っ張っておいたけど悟空は私の癒しアイテムなのでそれ以上の事はやらない。
イラつきは収まらないけど潔く鞄を机の上に置いて悟空の隣の席に座った。ちなみに席は窓側の一番後ろ。隣に悟空で最高のポジションです。
暫くすると鐘がなり担任が教室に入ってきた。出席で私をサボり扱いしたことは見逃してやんよ。
「それにしても…暇だ」
1時限目古典。…眠気誘うお約束である。担当がはっきり言って何言ってんのか分らない。一種の呪文だと私は思ってる。
これだったら三蔵に教えてもらった方がより効果的のような…いや、待て。三蔵の声は心地よすぎて子守唄だ。
そろそろ眠気のピークに達しようとしている私を傍目に隣の悟空は既に夢の世界に旅立っていたりするから腹立たしいぜよ。
くそー。こうなったら私も夢の世界に…。
「じゃあココさん。珍しく居るから指しちゃうよ〜」
ちょ、うぜぇぇぇ!今まさに夢の世界に旅立とうとしてるときになんだってんだこの野郎!
ちょっと茶目ッ気たっぷりな感じの担当に私は殺意が沸いた。あぁ、『指しちゃうよ〜』なんてウザイにも程がありすぎるだろう。
それでもスラスラ答えちゃうから私ってば罪な女よね。
「枕草子です」
「はい。正解〜。さすが主席のさんだね。先生鼻が高いよ」
いや、あんたに教わって無いから。なんて言わない私はとってもお利口なのでした。
それにしてもコノ教師、ちょっとセクハラ混ざってるのは気のせいでしょうか。いやいやそこは気にしたら負けだ。
どんなにみんなから嫌われてようが曲がりなりにも教師なのだ。どんなに加齢臭がきつくても、ね。
だから、そんな嘗め回すように見ないでくださいってば。あ、コレ自信過剰なワケじゃないからね。この男、マジ無理。生理的に受け付けないから。
そんな引き気味な私をただ恐縮しているように見えたのかコレは誇れることだからね、と言ってくる教師が気持ち悪い。先生、あんた存在自体気持ち悪いから消えてくれ。
流石に酷い言いように私は自分自身に苦笑した。全てが三蔵基準になっているのに気がついたからだ。
教え方も、外見も、性格も。喋り方でさえあの人に勝てる人は居ないと言うのに。やっぱあの美声は子守唄だ。あっははは。
八戒に言わせれば『惚気』この上ない事なのだが仕方ないと思う。だって完璧すぎるほどのアイツが悪いんだから。性格はこの際大目に見てあげるけど。
そして1時限目終了の鐘が鳴る。やっと呪文の授業から開放されたのだと、伸びを一つ。…悟空、いい加減に起きてよ。
隣でまだ気持ちよさ気に寝ている悟空を横目にこれでお菓子出したら飛び起きそうだ、と想像しなくても分りきった事を思う私は傍から見て大変気持ち悪いと思う。
だって自分でもわかるくらいニヤケてるんだもの。前の席の男子がちょっと引いてた。泣けた。
このままバックレようかと思ったがあの笑顔の男を思い出してとどまった私を誰か褒めてください。うん。忌々しい。
休憩時間10分を挟みやっと本題の文化祭出し物会議の始まりだ。
これの為にかったるい古典まで出た私はコノ後起こる最低最悪な事態に死ぬほど後悔することとなる。くっそぅ!八戒恨むぜ!
「じゃー今年の文化祭はメイド喫茶で決まりです!」
「いや、私的には冥土喫茶の方が…」
「そんな恐ろしい出し物で来ません。ってか客来ないから。君は精々売り上げに献上してくれ」
担任の無慈悲な言葉で私の提案はあえなく却下された。イヤイヤ、売り上げがそのまま山分けできるからってそりゃないぜ先生!
なんで私はメイドなんですか、そうですか私に冥土に逝けってことですか!…いま上手い事言った(いや、全然おもしろくねーし)(だまらっしゃい悟空!)
もう既に気分は冥土なメイド役の私はクラスの家庭科部の餌食となったのであった。何でこんなにノリノリなんだ…ジリジリと迫り来る女子が怖い。
私は壁に追い詰められあえなく拉致られたのであった…。の運命はいかに!!
あぁこれも運命なのですか
(そうですコレは逃げられない宿命なのであきらめてください)
ATOGAKI
定番…とは言っても既に時代遅れな気がしますがメイド喫茶ネタです。コレ実は誰かさんの陰謀だとは…次回に回します。八戒さん怒らないで!
そんな感じで青春と言うお題にあった文化祭です。ようやく青春って感じがしますね。さてどうなることやら…。←
これで三蔵サマサイドで書いたらどうなるんでしょうか…。凄く前振りが長い割には…な感じですが次回に続く。