私はね、三蔵。貴方の事兄妹としか見ていなかった。でも、それ以上に――。
それを知ったのは随分遅れちゃったけど、今ココではっきりと言うよ。
そう。私は三蔵の事が
彼と彼女の青春ストーリー 最終話
三蔵の腕の中は、暖かい。それは随分と繰り返してきたことだけど今は違う。だって自覚した後はとっても特別なのよ?
それに私の答えは決まっていて。自覚したのは熱に侵されていた中で、貴方の切羽詰ったような言葉だった。
朦朧とした意識の中での答えなんて信憑性に掛けるかもしれないけど、でもコレは確かな私の気持ち。全部全部、私の本当の。
離さないで。目をそらさないで。…見捨てないで。私は三蔵と一緒の気持ちだから。これに嘘偽りは無いんだよ?
「私も、好きだよ。三蔵…」
苦しげな瞳は途端に驚愕に見開かれた。信じられない、と言った所かな?
それはそうだよ。だって私だって信じられないもの。貴方の好きだ、と言う言葉と行動は。
嘘だ、と思ったのも事実。でもそれ以上にその一言にこめられた思いが真実だと言うことは伝わったよ?
だから私も真実の言葉を貴方に送るよ。有りっ丈の思いを込めて、まっすぐ、素直に。
「それは本当、か…?」
「三蔵も案外鈍いのね。私の気持ち、伝わらなかった?」
「んなワケ、ねぇだろうが…っ」
苦しいほどに力がこめられた腕に身を任せ、私も三蔵の背中に腕を回した。
この腕の感触は、いつからだったか。多分1番最初は、私がまだコノ家に来て間も無い頃。初めて三蔵を頼った日。
その時は見るもの全てが怖くて、ただ信頼できていたお父さまの影にしか入れなかった。
でもね、三蔵の優しさを知ったから―その腕の中で泣いたんだよ?本当に安心したことを今でも覚えてる。
年だって1つしか違わないのに三蔵の腕の中は驚くほど大きくて、暖かくて。その優しさに触れてしまったときかもしれない。この想いは。
本当は今でも兄では無いけれど、本当の家族だと思って過ごしてきた。血は繋がり無くても、それでも。
今ではそれが嬉しいだなんて―。
「苦しいよ…三蔵?」
「お前もだろ。お互い様だ」
「そうだね。すっごく嬉しいよ。今とっても幸せなの」
「ふん…これからも、ずっと思わせてやるよ。ずっとな」
「うん!私もそれ以上に思わせてあげるんだから」
「生意気なこといってんじゃねぇよ…ったく。この馬鹿娘」
気の抜けたように、緩まった腕はそのままで私たちは余韻に浸る事無くキスをした。
それは甘く、深く。今までの隙間を埋めるかのようにずっと――。
「おーおー。お暑いことですなぁ」
「見てるこっちが焼けどしちまうって!」
「あははは。僕達、相当なお邪魔虫ですかね?」
甘く、甘く…?
唐突に下から声が聞こえてきたのを合図に私たちは同時に目を向けた。其処に居たのは。――大体想像がつくけれど。
「悟浄に悟空に…八戒!?」
「貴様等…っ!」
「折角のお熱いところを邪魔してすみません。のお見舞いに来たんですが…」
「そうそう。今日邪険にされたのがムカついたもんだから夜中に押しかけ隣の晩御飯!ってやつー?」
「あ、晩御飯俺も食いてぇ!なぁなぁあるか?」
何かが、プチリと…切れた音がした気がする。抱き合っていたのをそのままに私は間近で聞いてしまった。誰でも思うだろう、聞きたくなかったと言うのが本音だ。
渋々といった様子で身体を離すとそのまま三蔵は手摺りが無いベランダから屋根に下りてそして、何処からともなく取り出したハリセンを持って屋根から飛び降りた。
アクション映画さながらのスタントだ。そしてその飛び降りる反動を使ってまずは悟空に、そして悟浄にと空中で見事なまでの一撃を一気にお見舞いしたのである。
三蔵の特技スペシャルver.と言ったところか。いや、何妙に納得してるんだろう自分は。
華麗に着地した三蔵はそのまま大馬鹿2人に怒りが収まらないのか蹴りを1つ。2つ、3つ…。猿と河童の動物虐待…?
でもそんな一連の行動がカッコイイ等と…あの2人には後ろめたいが思ってしまったのは仕方が無い。うん。かっこよかったっ!
「貴様等は…迷惑と言う言葉を知らんのかっ!!」
「いって〜…今までのより最高にいてぇよマジで!」
「それはそうですよ。屋根からの特大プレゼントですから」
「そんなプレゼントいらねぇっての!」
「大丈夫ー?2人とも」
笑ってしまう頬を堪えずに、私と八戒はお腹を抱えて笑ってしまった。一方三蔵はまだまだ怒りが収まらないと言った風に眉間に皺を寄せている。
強烈な攻撃を喰らった2人はまだ砂利の上で悶えていて…やっぱり可笑しかった(そりゃねぇぜ!)(この鬼畜をとめてくれ!)(案外も鬼畜かもしれませんよ?)((お前もだ!八戒!))
先ほどの甘い雰囲気はガラリと変わり、賑やかなものになった。それもそれで楽しいことに変わりないがこのタイミングを見計らったような出来すぎた展開になんだか嫌な予感。
「いやー僕の予想も大当たりでしたし、そろそろの復帰祝いでもしましょうか」
「何を勝手に言っている!大体はまだ病人だぞ!」
「おや?僕はてっきり元気なものだと…外でいちゃついてる事ですし」
「なっ…!」
「大丈夫だよー?私はもう元気だって!」
「そりゃそうだわナ。なんてったって三蔵サマが直接くちで――」
「そうか貴様はそんなに死にたいか。お望みどおり、死ね」
「ギャハハ!悟浄ばっかでーい!」
「まぁまぁ。そろそろいい加減にご近所迷惑ですから中に入りましょう」
「貴様八戒!何勝手なことをっ」
「どうぞいらっしゃいませー」
「っ!」
「と言うことですし、お邪魔しますね」
そういうわけで、私が屋根の上からだけれどもお招きした3人はどこかで買ってきたであろう大量のお酒とおつまみを持って即座に三蔵の部屋に上がった。
未だ三蔵は気に食わない様だったけどそんなものお構いなしな3人は知った他人のなんとやら。早速荷物を広げ、宴の準備です!
さぁ。準備はいいか、野郎ども。
(もちろん宴会の準備は出来ていますよ?)
(俺だってご馳走たらふく食える準備は出来てるぜ!)
(おーよっ。祝い酒なんて久し振りだが準備は万端だっての)
(私は野郎じゃないけど、準備おーけーよ!)
(ふん…俺だってとうの昔に準備はできている)
おわり
ATOGAKI
前半甘く、後半やっぱりギャグになるんですね!管理人はこういうオチが大好きなようです。はい。しんできます←
と言うわけで無事完結することが出来ましたっ!長篇の中では初めてなのではないでしょうか。最優先の連載すっ飛ばしてこちらが先に出来上がってしまったわけでありますが汗
なんだか最終話のくせして異様に短くなってしまいました。すいまっせーん!(殴)
うん。最後のサブタイトル的なものはこの最終話の「準備は〜」の布石…と言うことになるんでしょうか。書き始めた時から考えていたので、なんとも。笑
ってか三蔵サマすんげーなオイ。ってか着地したところは砂利だそうですよー爆笑。実は痛いけどめっさ我慢してるんだよこの人。んなわけあるか。←
まぁ、そんな感じで、ココまで読んでくださった方、ありがとうございました!そしてお疲れ様です。ヒロインの居候話が二の次…これもまた第2章の布石になるのか…!?イヤイヤそんな事は…汗←
うん。これから番外編とかも書いて(ってかコノ時点で1個出来ているんですが)未練がましく続けたいと思っております。皆様も気に入ってくれたらコレ幸い。
マジで2部書くかもしれません。ってか書く気満々だよこの子(笑)ではでは。コノ胸いっぱいの感謝と敬意を込めて。