ちょっとタンマ。あーたらホントは付き合ってんだろ?そうじゃないってんならなんだって言うんだ。
俺の目にはラヴラヴカップルにしかみえねーよ。ナニさ。俺たちには内緒ですかそうですか。
え?マジで付き合ってねーの!?
嘘…だよな?この際嘘だと言ってくれ…。あー悪かった!俺がわるーござんした!!
…ほーんとご愁傷様だワ。三蔵サマ。
あはは…。は自分が三蔵の事を好きだと言うのにまだ気がついてない様子ですし、三蔵は…。
そろそろ我慢の限界ですか?え?まだまだ大丈夫?
そうですね。貴方のへの忍耐強さは本当に普段短気な貴方なのかって疑うほどの見事なまでの鉄壁ですからねぇ。
大事にしすぎて雁字搦めになるのは、結構カッコ悪いですからね。気をつけて下さいよ。
別に急かしてるワケでも無いですよ?こういう時は慎重に、ね。
…まぁそろそろも気がつく頃だと思うんで、もう少しの辛抱ですよ。
そろいも揃って余計なことを抜かしやがる。余計な世話だと言うのがわからんのか貴様等は。
言われなくてもは絶対手に入れる。そしてイヤでも気付かせてやる。アイツも馬鹿ではないからな。
…でも本人を目の辺りにするとマジで長期戦になるんじゃねぇかって思えてならんのだが。
彼と彼女の青春ストーリー
夏が過ぎ、秋が来る。そんな新学期に私は高熱を出してしまった…我ながら情け無い。きっとコレ、昨日夏休みの最後だからって馬鹿した私の責任です。
どうかこのお馬鹿な私を殴ってやってください。…嘘嘘。頭痛が酷いので今叩かれたら死ぬ。確実に死にます。
部屋に1人寂しく床に伏せている私。風邪を引いてしまった時は人恋しくなると言うのは嘘ではない。現に今、三蔵が恋しい。早く帰ってきてお粥を作ってください。
夏に引かなかったのがせめてもの救いか、ホラ、夏風邪はなんとやらって言うじゃない。今は9月に入ったから夏じゃないよ。ギリギリセーフって所だね。
三蔵に馬鹿にされる事が無くなったとは言え、新学期早々風邪ッぴきと言うのもなんか馬鹿にされるネタにはもってこいだよね。
うはーそんな事を考えている場合ではない。と言うか頭が考えることを拒否してきた。お父さまは私の為に買い物に行ったっきり帰ってこないところを見ると
そこら辺の主婦と井戸場だ会議をしているに違いない。どこか抜けているお父さまは娘の一大事なんて忘れて呑気に買い物袋片手にお話の真っ最中だろうね。
三蔵は非道なまでに1人悠々と学校に登校しやがりました。絶対みんなに言いふらしてるよ。そんでもって悟浄辺りが大笑いしているに違いない。
悟空は優しいから私の事を心配してくれてるだろう。あ、なんか想像したら元気出てきた。ありがとう悟空。
八戒はあの元気だけがとりえのがまさか風邪なんて…!とか言って褒めてんのか貶てんのかわからない事を言うだろうか。
あぁ。容易にそれぞれ想像できてしまう自分が憎い。イヤ、そのお陰で悟空から勝手に元気を分けてもらったのだけども。
今何時だろう。そろそろ始業式だけの日課の学生さんたちは下校し始めている頃だと思う。
私も清々しく新学期を迎えるはずなんだけど、どうして自分はこんなにおばかなの。嘆いても致し方ないので大人しく寝てることにする。偉い偉い。
でも、喉が渇いてきた。階段下りるのは辛いけどいかせんのどの渇きと言うのは性質が悪い。仕方ない。水を飲みに行って来ようか。
よろよろと布団からはいずり出た私は部屋を出て、階段を下りきったところで意識を手放した。
やっぱ大馬鹿だ、私は。そんな事は今更だってわかってるわよ。
+++
今朝、が熱を出した。きっとコレは昨日の馬鹿騒ぎのせいだ。あの大馬鹿コンビと共に夏休み最後の日だとか言って境内ではしゃいで居た所運悪く池に落ちたんだあの馬鹿娘は。
浴衣姿で花火をしていた俺たちは大慌てで池から引き上げるとアイツは馬鹿面で笑ってやがった。これだから目を離すと碌な事にならんのだと言う馬鹿娘は。
飽きれきった俺は朝に動くな、と釘を刺すことを忘れずに家を出た。内心心配で仕方なかったが、の分の今日提出する課題を持ってみたくも無い面子とご対面だ。
なんで朝から馬鹿共のツラを拝まねばなら無いのか。これは夏休み中でも多々あることだったが、休みの日まで家に来るのは勘弁してくれ。
妙な所で気を使う連中だが、こういう時は邪魔者以外の何者でも無い。もしかして俺の心境を悟りつつも、遊んでいやがるのか。
駄目だ。知ってはいけない事と知りたくも無いのに知ってしまった時の何とも言えない絶望感は同じ物だと思う。八戒の黒い笑顔の裏をしってしまったら、間違いなく後悔する。
そんな事はどうでもいいが、俺は始業式なんてかったるい物には出ない。面倒くせぇじゃねぇか。の事も気がかりなので今日は提出物だして早々に帰ってやる。
先ほどあの3人にまた会ったがの事を話すと案の定、想像した通りの反応が返ってきた。(の想像と一致しました)
ゲラゲラ笑う悟浄にはハリセンを喰らわしてやったが、猿の心配する様子が尋常じゃねェ。コイツは自分より人が傷付くのに我慢ならねェ性格だから当然と言えば当然だ。
こんな馬鹿正直な猿に癒される、とが前に言っていたことを思い出す。アイツにしてみればこの猿は癒しアイテムの一つだということだ。
八戒の脱力させられる褒めてんのか貶しているのかわからない発言はこの際シカトしても構わんだろう。見舞いに来ると言う発言も却下だ。
ようやく3人から解放された俺はいつもより早足で帰路に着いた。いつもは隣にが居てそれとなく歩調を合わせてやるのが当たり前だったと思う。
時には腕を絡めてきたり、俺は人に触られるのが大きらいだがなら反対に落ち着くのだ。それが何故だかわかった時は妙に納得してしまう自分が居て。
繋いだ手も、絡められた腕も、密着した身体も、全て自分の物にしてしまいたい。アイツは俺のものだ。誰にもやらん。
そういう想いはいっちょ前なのだが…行動に起こせない自分が忌々しい。コノ関係が崩れてしまうかもしれないと言うことがこんなにも苦しいだなんて。
自分がこんなにも臆病だったとは。
「チッ…これも全部アイツのせいだ。鈍いのも程がある。気付け馬鹿娘」
そんな悪態をついてもしかたねぇ。いつの間にか着いた寺に通ずる階段を、俺はいつもの倍以上で駆け上った。だから、いつもはアイツが居てどんなに歩調が遅かったか…今更気がついた。
訛っているのか、いやコレは煙草の吸い過ぎかもしれん。少しばかり息の上がった俺は忌々しげに舌打ちをつくことで抑えるがこの苛立ちは隠せまい。
きっとこれもあいつのせいだ。どうして俺がこんなに急がなきゃならんのだ。勝手に池に落ちて勝手に風邪をひきやがったのは何もかも自分勝手なアイツの…イヤ、自分勝手は不適切だな。
ただの馬鹿だ。…ただのな。
ったく。この広い敷地が無性に忌々しい。狭い家なんて真っ平だがこんな広い家も考え物だな。こればかりはいくら悪態をついてもどうしようもないが。
父さんの悪趣味も大概にして欲しい…。玄関前に不気味な置物を置くなと何度言ったらわかるんだあの人は。
そんな誰の作品だか有名なものなのかもわからない置物に呆れながらも俺は引き戸状になっている玄関を開けた。そして目に飛び込んできたものとは――。
「っ!」
俺は頭が真っ白になった。何だ?何が起こっている?ワケもわからず靴を乱暴に脱ぎ捨て無意識にに近寄るった。死んじゃいねぇだろうが、もしかしたら階段から落ちたのかもしれない。
なんてったって階段下で倒れていたのだから。と言うかこんな大熱で、しかもあれほど出歩くなと言った筈なんだが。コイツはやはり目が離せないと、置いて学校へ行ってしまった自分に腹が立った。
兎に角このままではどうしようもないのでを抱きかかえ、部屋に戻る。先ほどの糞長い階段よりはマシだったが、そんな考えも吹っ飛ぶほど気が動転していたらしい。無我夢中で駆け上った。
の部屋は俺の部屋の隣で階段を上り直ぐそばにある。外から見たら大きい家だが2階は2部屋しかない。まぁ、1部屋がでかいと言うことになるのだがトイレくらいあっても良いと思うのはココだけの話だ。
がコノ家に来たとき2階を増築し、この2部屋が出来た。そして父さんがうっかり…。うっかり所の話じゃなねぇよ。
そんな事はさておき、まだ高熱に魘されるを抱いて部屋の扉を蹴破る思いで開けた。幸いにもドアを開けっ放しで出てきたらしい。無用心だといいたいところだがこの際二の次だ。
ベットに横たえると荒い呼吸を繰り返す様がとても痛々しくて、どうして1人にしちまったんだと自分を殴りたくなった。
こんな弱弱しいを見るのは久し振りで、見つけたときは心臓が鷲掴みされた様だった。あまり風邪やら病気にかからないコイツはあろう事か出歩いてそして倒れた。
本当にどうしようもねぇ馬鹿だコイツは。
「さん…ぞう?帰って来たんだね…お帰り」
少しばかり経った頃だろうか。微かに身動ぎしたは目を開け、隣に俺が居ることに安心したように微笑んだ。いつもの笑顔とは比べ物にならない程――頼りねぇ。
だからだろうか…俺は自然と言葉を発していた。ずっと、ずっと言えなかった言葉を
「好きだ………」
今ココで言うつもりもなかった。まだコレは――。もうどうにでもなれ、と。俺はを残して部屋を出た。
なにもかも準備は整っていない
(振られるならそれでもよし。…どうせなら忘れてくれた方が楽だ)
ATOGAKI
うん。言っちまった三蔵サマ。ってかヒロイン放置していくなと言いたい笑。アレ?お父さまは…?←
次回、最終回ではなさそうです。(ぇ