一難去ってまた一難。そんな言葉は忌々しいほどしっくり来る。あぁ私は昨日何をしたんだっけ?
そうだムカツク♀豚を叩きのめしてそれから…気がついたら部屋の布団の中だった。アレ?なんで三蔵が隣で寝ているの?
ココ、私の部屋よね?そうよね?ちょっと!聞いてるの鬼畜野郎!
彼と彼女の青春ストーリー
「貴様はまず、正座1時間の刑だ。さっさと廊下出ろ馬鹿娘」
なんのこっちゃ。
確かに私は昨日問題を起こして面倒など思うけど三蔵に後始末を頼んだわ。でもね、でもそれはいつもの事で別に起こられることした覚えはございません。
いや待てよ…。
……………………。
…………………………っ!
「いや〜天気がいいですねぇ〜。こんな日は廊下で日向ぼっこ!って事でしょう?三蔵サマ?」
「今の間は何だ今の間は。気付かない振りは通用しねぇぞコラ」
「ごめんなさい。全部お経は度が過ぎました。許してください。ちなみに言うとお父さまも共犯です」
「そんな事は知っている。兎に角貴様は時間延長、3時間だ。覚悟しておけ馬鹿娘!」
昨日の事が嘘の様…と自分でも思う私は今、情け無く土下座をしている。
やっぱりデザート食べられたお返しに三蔵愛用のMPスリーの中身を全てお経にした事が原因だと気付いた頃には時既に遅く、土下座の体制から上半身を起こした私は黙って正座3時間だ。
どっちが悪いって、三蔵が悪い気がするけど…何も言えない自分が悔しい!
これ以上怒らすと手が着けられないと知っている私は素直に従うしかないのだ。
ちなみに縁側から外を見ていたらお父さまがどよ〜んとして境内を歩いていたのは見間違いではあるまい。
きっと三蔵にこっ酷く叱られ、更に禁酒禁煙、お菓子没収の刑に処せられたのであろう。言わずと知れてしまう事実に嘆くしか出来ないのは私もお父さまも同じだ。
さてと。鬼の居ぬ間になんとやら。お互いの存在に気がついたお父さまと私は互いに手を取り合い、私はお父さまに買い置きの煙草と隠してあったお菓子を出して、お父さまは私と共に安全な場所につれて行ってくれた。
まぁ気付かれるのも時間の問題だけど、気にしたら負けだ。
そういう訳で今は比較的安全な場所に非難した私たちは共に分かち合い、喜び合うのだが…数分としない内に鬼に見つかることになる。
鬼ごっこはおしめぇだ…なんて鬼以上に怖い三蔵が背後に現れたときは本気で死ぬんじゃないかって思った。
捕まったら最後な鬼ごっこなんて洒落にならないし、一生体験したくも無い。ホントごめんなさい!
まぁ話は戻るが冒頭で言っていたように起きたら三蔵が隣に寝ていた…と言う摩訶不思議体験をした私はいつも以上に目覚めがよかった。
別に恥ずかしい!とか、如何わしい想像はしなかったけど、いきなりの事だから驚くのもワケ無いと思う。
あろう事か私は彼の腕の中で二度寝してしまったのだからただの兄妹としか感じてないのかもしれない。
アレ?こんな考えになにか引っかかりを覚えるんだけどどういうことかな?…まぁ今はこのままでも十分心地よいのでおやすみなさい。
スパーン!
…でっ!イタイ!痛いよ何が起こったのこんちくしょー!
二度寝を始めてから1時間経った頃だろうか。頭が小気味良い音を立てたハリセンの餌食になった。何をするだー!
きっとこれがオシオキなるものの始まりだとは、この時は思いもしなかった…。二度寝なんかしないで早く布団から出ていれば…!
後悔しても遅いとわかっているので潔く諦めた私だけど、乙女に向かってハリセンぶっ放す男もどうかと思う。いんや。この男にこんな理屈は通用しない。
飛び起きた拍子で仕舞おうとしていたハリセンにぶつかったのはとても恥ずかしかった。思いもよらぬ事だったので吃驚していた三蔵の表情はこの上なくおかしかったけど言わない方が得策だ。
そんなこんなで鬼に見つかり更なる罰則といわんばかりに押し付けられた仕事。それをこなしてきた私は心身ともに疲れ果てていた…は疲れていたのだよ。
どうしてアイツは容赦ないのか。お陰で学校に行けなかったではないか。事の張本人は優雅に学校へ行ったけど鬼の居ぬ間に、なんて同じ事を繰り返さない程に私は成長したらしい。
後が怖いのが本音ですが、今はまだ心の成長として胸に刻むとしよう。虚しいなんていわせませんよー。
時間も去ることながらもうじき鬼が帰ってくる頃。やることをこなした私はビクビクする必要が無いのに何故か後ろめたくなってきた。
あぁ、原因は先ほど三蔵の部屋を掃除していたときに壊してしまった目覚まし時計のせいですね。明日の朝、またハリセンの餌食決定です。
めげないぞ。でも鬼は怖い…三蔵、お願いだから帰ってこないで。
「オイ。仕事は終わってんだろうな?」
「ヒィ!だだだだ、大丈夫でありますよ三蔵サマ!お部屋も綺麗になりました!」
「そうか…。そういえば壊れていたものがあった筈なんだがお前のせいじゃねぇからな。気にするな」
「ホント!?マージーでぇ!?よかったー!落として音が鳴らなくなった時はどうしようかと思ったよあの目覚まし時計」
私は自分の墓穴を掘ったことに気付いていなかった。もちろん鬼の素敵な、素敵過ぎる微笑みなんて見えていなくて。
そうだこの男、気にするななんていうはずが無いのだ。どうして気付かなかった自分…!
「ほう?そうか目覚まし時計を壊したのか。貴様は毎度毎度面倒を増やしてくれるな。どうだ?このまま一生人様に面倒かけないように成仏してみるか?」
「イイエ、ソンナ滅相モゴザイマセン…!人様にご迷惑を掛けるのは心苦しいですが我が身が1番可愛いのですちゃんは!」
「そんな自己中が通ると思うなよ貴様…!」
自分の事は棚に上げていけしゃあしゃあといってのけましたよこの鬼畜生臭坊主、見習い!
ムキー!悪態を心の中でしかいえない私はなんて惨めなの!悔しいですわ!
お父さまも縁側でニコニコと微笑んでいないでたすけてください!え?無理?…こんの白状者ー!
「三蔵の馬鹿ァ!少しくらい多めに見てくれたっていいじゃない。ケチんぼ、ハゲ!」
「誰がハゲだ誰が!貴様は人の物ぶっ壊した癖にケチも何も無いだろう。ちったぁ反省しやがれ、この馬鹿娘ぇ!」
「ひどーい!もう三蔵なんて絶交よ絶交!今後一切私に近寄らないで。2人とも各自自分でご飯食べなさいよ。知らないからー!」
「なっ、オイ!!待ちやがれ…!」
私にだっていい加減堪忍袋の緒が切れることだってあるのよ!戸惑った様子の三蔵を背に私は自室に駆け込んだ。助けてくれなかったお父さまもこの際同罪です!
もうムカツク。自己中は何処の誰よ、アンタじゃないの三蔵の馬鹿野郎。事の発端はそもそも三蔵が原因だと言うのに何コノ仕打ち。
理不尽極まりないんですけどどうしてくれんだこんちくしょー!
怒りが収まらない私は近くにあった枕を隣の三蔵の部屋がある壁に思いっきり投げつけた。凄い音がしたけど気にするものか。
三蔵はいつだってそうだ。自分の思い通りにならないのなら無理矢理にでも言うことを聞かす。それが理に適っていようとも納得いかない私には効果が無くて、反対に反発することしかできなくて。
心配してくれてるのはわかるけど、だからってさ、今までのあの恐怖としか言いようの無い教育はいかなるものか。今回は私の悪ふざけが過ぎたことだろうけれど。
こんな事でこれほど怒られたのは初めてかもしれない。ん?どういうことだ?三蔵は自分のMPスリーの中身を替えられた事を怒っている。でもそんな悪戯はいつもの事で。
でも今までに無いほどに怒られた。罰則なんてあんなに酷いものは無かったと思う。なんてったって、私には甘いからね三蔵は!
それじゃあどうしてかな…。もしかして、もしかすると。
その考えが外れていなければ私はとても馬鹿なことをした事になる。なんてこと言ってしまったんだ私は!
全ては私の為。でもさ、そんな遠回りなことしなくてもよいのではないか。と言うのは黙っておこう。基本不器用なんだアイツは。
…わかってしまった私は不意にこみ上げてくる涙に耐えられなくて、その場で泣き崩れてしまった。いけない。こんなところを見られたら恥ずかしいではないか。部屋の鍵掛け忘れてるよ馬鹿。
久し振りに流した涙は懺悔から出るものなのか、嬉しさから来るものなのかそれとも悲しいのか。きっと全部だろうと知ったときには三蔵の腕の中に居た。
ホラ、やっぱり鍵掛け忘れたのがいけないんだ。1番見られたくない男に見られちゃったじゃないか。
「悪かった」
普段言わない事を言わせてしまっているのが自分だと思うと一層心苦しくなってくる。ごめんね、謝るのは私の方なのに。
今はまだ、この心地よい腕の中で泣く私を受け止めてくれる三蔵から離れたくなくて、三蔵の服を掴む手に力を込めた。
わかってたんだ。ホントはMPスリーなんてどうでも良くて、実はただ、学校に行かせない為の口実だったんなんて、わかってたんだから。
私が教師やら♀豚の親からの攻撃から守る為、三蔵は自分だけ学校に言って自ら犠牲なってまで守ってくれたんだよね?…わかりにくいんだよアンタの優しさは。
嬉しくて、ただ嬉しくて。涙なんてとうの昔に泣き止んでます。私の顔に浮かぶはしまりの無い笑顔だけ。それでも甘えさせてくれる三蔵はやっぱり私には甘すぎるんだよね。
腕の中から巣立つ
準備は出来ています!
(なーんて嘘だけどね。ホントはずっとこのままで居たいだなんて死んでも言ってやら無いんだから)
ATOGAKI
なんというわかりにくい優しさ!でもそんな三蔵サマが大好きです!はい自重!←
ちょっとした痴話喧嘩と、三蔵サマに謝罪を言わせる為に…悪趣味だな管理人。今更ですけどね。
まぁ前回の騒動は今回で無事終わりました。お疲れ様です、特に八戒さん。後書きしか出てこない彼も相当可愛そうです。さすが器用貧乏さん。
ホントごめんなさい_orz