私の抱えている問題は大きくは無いと思っていましたがそうでも無いようです。
何コレ、イジメですか。イヤイヤこんな一昔前のイジメなんて聞いた事も無いわよ。
コレはねーよ、と呟きが金髪野郎に聞かれたことが一番の災難だと思ってしまう私は本当に乙女でしょうか。
何度も否定された乙女と言う言葉ですが、今何か言われたら泣いてしまいそうです。
アンタに見放されたら私はどうしろと言うのさ。お願いだから、見捨てないで。
…まぁ、こんな事でへこたれる私では無いですけどね。たかだか醜い♀豚どものお戯れに構っている暇なんてないのよ。
今はただ、この後待ち受けている八戒のお説教が気がかりで…あぁ考えるだけで恐ろしい。
多分どんなイジメだろうと、私にとってはイジメなんて八戒の説教と比べればどうって事無いのです。結論から言うとですね。
そんなワケで、これは良い口実と思い、八戒からの小言攻撃を避けるため、私は♀豚討伐に挑みます。
愚民は愚民同士地べたに這いずり回っていればいいのよ。なーんて言ったらこれまた八戒に怒られました。
おかしいなぁ。被害を被っているのは私なんだから、好きなこと言ってもいいじゃない。ま、言いすぎって事ですかね。
それにしても…私よりかなり酷いこと言っていたのは空耳でもあるまいか。八戒、最強はあーただから安心してください。
彼と彼女の青春ストーリー
どうしてかしら。私の美しい美貌にひれ伏すはずの先輩は尚も攻撃してくるわ。懲りずによくもやりますわね。
知っていますの?ワタクシがこんなお姉さま口調になるとキレる寸前と言うことなのよ?
ま、今とってつけた戯言ではありますが、そんな事考える余裕さえなくなっているのか、この私が。
だって、ねぇ…。あの先輩方達は触れてはいけない逆鱗に触れてしまったのだからこれ上無く痛めつけた方が有効かと。
あぁ、なんて優しいのかしらサマって人は。前の私だったら容赦なく地獄に蹴り落としているところですよ。その前に殺しちゃうかも知れないけど。
今日は、昨日新たに買ってもらったもののお陰で機嫌が良いから完全には許さないけど、手加減はしてさしあげるのよ。
この寛大なサマはどっかの金髪野郎とは違って短気ではないのですわ。これを本人の前で言ったらハリセンの餌食になるのは目に見えているけど今はそう言ってられないのよ。
だから、手加減は無用かしら?え?さっきと言っている事が矛盾している?
何のことかしら。私はただ、殺すことはしない(手加減する)けれどそれ以下の事(まぁ色々と)は手加減しませんと言っているだけですよ?
横暴だ何だと騒ぎ立てたいなら好きにすればいいわ。私に勝てると、言うならばね。
容姿にしても、腕にしても、頭脳にしても。武器でもなんでも持ってらっしゃい。卑怯な手を使っても勝てなかったと言う屈辱を味合わせてあげるだけなのだから。
さぁ、おいでなさい?私は逃げも隠れもいたしません。むしろ返り討ちにしてやる心意気抜群ですわ。
途中で逃げても逃がさない。生きてはいけなくなるまでの絶望を、その身に刻んでやる。
何しろ貴方たちは、私の宝物を壊してくれたのだから、ね…。
「ねぇ三蔵。後始末は任した」
「何言ってやがる?そういう仕事は八戒が適任だろうが」
「後で後悔するのは三蔵なのよ?それでもいいのなら八戒に任せるけど」
「…もしかしなくても例の事か?」
「そうよ。だから、私の事が一番大事な三蔵が最後にやっちゃってくれればいいんですけどー」
「ったく、仕方ねェな。…無茶はするなよ」
「お安いご要望で。私に勝てる♀豚なんてこの世に存在しないわ。何も出来ない♀豚はただの豚よ」
「何処の飛べる豚だ?」
「しいて言うなら三蔵の腕の中に飛び込める乙女?」
「…豚でもなんでもねぇじゃねぇか」
色々と否定しないところが三蔵らしいけど、今はそれどことではないのですよ皆さん。
察しが良い三蔵は不機嫌になる様子を隠そうともしないで、そして私の帰る場所として、後始末…私が帰ってきた時受け止めてくれる為の要員なんです。
だから、八戒が後始末するってことは私が八戒の腕の中に納まる事になるのだけれども。そんな事させてはくれない三蔵にはちゃんと釘打っておく。
私的には八戒の腕に抱かれるのもイヤじゃない…むしろ母親に抱きとめられている感じがして嬉しいんですケド。あ、殴らないで。
ママンが恋しい歳ではないことは理解しているんですが…いかせん八戒を目の前にすると、いつもの兄貴分な感じがママンに見えてきて…。
おっといけないいけない。マジでトリップ寸前だったわ。八戒には忘れられない素敵な恋人が居るんだから無茶なことは言わないのよ。
「じゃあ、行って来る!」
「ハァ…好きにしろ」
ポンと、頭に乗せられた手がわしゃわしゃと髪を乱すのがとても好きだ。この髪の毛のセットもセンスの良い三蔵自身が拵えてくれたものなのだから文句は無い。
嫌いでもなければずっと撫でていて欲しいと思うのは私のわがままかしら。
その手を離す事がどんなに寂しいか。この金髪野郎にはわからないんだろうな。長い髪が邪魔そうだからと言って手早くお団子にしてくれる大きな掌が心地よくて。
今このお団子を取ったら、また結ってくれるだろうか…そんな無粋な考えはしまっておこう。
頭の天辺で纏め上げられたお団子。本当は三蔵、今の流行をチェックしてるんじゃないかって疑うほどに今時な感じに仕上がっている。
何処にあったのか私は持っていなかったヘアーゴムを使って手馴れた仕草で、器用に手串で整えてくれる。その感触がたまらなく心地良い。
きっと帰ってきたらボサボサになっているかも知れないけど、またやってもらえるのなら別にいいやと思ってしまうのもご愛嬌。
そんな私たちの傍らでニヤニヤしてみている悟浄に、景気良く拳を一発腹にぶち込んでいざ戦争じゃァァァ!
準備運動も、全て整ったことだし、行って来ます!きっとあっけなく終わるんだろうケドも。
「ホントにあの怒りは尋常じゃないワナ。ちゃんかなりのご乱心?ご立腹?」
「貴様が最初の餌食になるとは、様ぁねぇな」
「自業自得とも言いますね」
「ばっかでぇ!」
「お前らネ…」
そんな会話を背に、私は屋上を後にした。向かう場所は定番の、あそこだ。忘れて無いよ。うん。
さて、と。奴さんはまだですかね。呼び出しといて遅れるとはどういう了見だコラ。
おっといけないいけない平常心を心がけている身としては今の発言は妥当では無いですね。どっかの鬼畜野郎が写ったのかな。それはイヤだな。
あー。なんか待ってたら怒りが収まってきたかも。お姉さま口調を言う気力さえ無いよ。こうなったら適当に片付けて早く三蔵の所に帰ろう。そうしよう。
うーん、もしかして私、待ちぼうけ?そんな馬鹿な…!手紙には今日、この時間に体育館裏って書いてあるし…。よし。あと5分経っても来なかったら教室に殴りこみだね。
…とか言いつつ、1分もしない内に私は体育館裏を後にした。え?早すぎる?何言ってんの。私はどっかの短気野郎と違うってば。
+++
俺たちはドアの向こうに消えたを見送ると、暇になった為各自教室に戻ることにした。
悟空と悟浄はババ抜き勝負を続けるらしく、動く気配が無い。2人でババ抜きなんざ虚しいにも程がある。
八戒は風紀委員の仕事があるからと言って仕事をしに行ったが…サボる口実に聞こえるのは俺だけではあるまい。
現に悟浄が指摘して絶対零度の微笑みに毒されている。言わんこっちゃねぇな。アイツは度が過ぎる。俺には関係ないが。
階段を下りると八戒とは道が違うので別れたのだが、あの方向は風紀委員室ではない気がしてきた。いかん。気にしたら負けだ。
俺は3階にある教室に行くと授業中にも関わらず平然とした態度で入った。教師が怒らないで頬を染めるのはどうかと思う。これだから女教師はめんどくせぇ。
悟浄君と八戒君は?なんて聞いてくるあたり、真面目に教師やっているワケでもないらしい。男貪りに教師になったのなら今すぐやめちまえ。目障りなだけだ。
そんな良くある、女には嫌われて男に媚びるタイプの女教師の事は視界から外し自席に座った。窓際程良い席は無いと思う。隣は腹黒男と言うのが解せないが。
今居ない奴の事なんて悪態ついても虚しいだけなので俺は1人、音楽を聞いて過ごすことにした。
ったく、誰だお経なんて入れた奴は。あぁ。これはアイツだな。後でとっちめてやる。何がしたいんだアイツは…と。…ちょっと待て。まさか。
〜〜っ!あの野郎…!全部お経にしやがった!しかも父さんの声だと言うことはあの人も共犯者か!?…ホント呆れて物がいえないな。
親子揃って碌な事しやがらねぇ…!やっぱ後でしばくしかあるまい。モチロンにはハリセンと説教だ。それと正座1時間の刑。
お父さんには禁酒禁煙、それに菓子も没収だ。八戒に言っておこう。ったく。勘弁してくれ。
俺の舌打ちが静かな教室に響くと殆どの奴がビクついた。何で貴様等が脅える必要があるんだ。
そして忌々しい事に音楽を聞けなくなった俺はイヤホンを耳から外すと女子共の話し声が自然と耳に入り込んで来た。
耳障りだがいかせん、『』と言う単語が出てきたことにより盗み聞きする形になったのだがこの際どうでもいい。
なんだって?が…待ちぼうけ…。俺まで笑いたくなったのはココだけの秘密だ。
聞くとこによると、を手紙で呼び出して無駄足を踏ませた、と言うことらしい。
…なんて馬鹿な奴だ。モチロンではなく手紙を書いた張本人の事だ。おかしすぎて笑いを通り越すぞ。
アイツが待ちぼうけなんて知ったら…もう知っているのかも知れないが、軽い罪がもっと重くなったと言うことだ。ご愁傷様としかいいようがねぇよ。
きっともう少し経ったらこの静かな教室は大騒ぎになるんだろうよ。俺は戻ってこない方がよかったんじゃないのか?
もしかして八戒はこの事を見越して…ありえる。アイツならありえる話だ。この学校の情報と言う情報をアイツは全て知っている。
何処からそんな…なんて愚問は聞くに堪えないことなので心の隅で削除しておく。
はぁ…手紙を見せただけで誰のものだかわかっちまう八戒は何者だ。いかんいかん。気にしたら終わりだ。人生と命の灯火がな。
さて、は…。あーきっとあの足音はだ。何でわかったかって?フン。それこそ愚問だな。
「たのもー!命知らずの馬鹿のお陰で関係ない貴方たちが被害を被ります。恨むなら其処の♀豚を恨んでね?」
そんな掛け声と共にドアを蹴破って入ってきたは、躊躇する事無くずかずかと足を踏み入れた。
前から入ってくるあたり、アイツらしいと笑っちまう俺はきっともう末期だ。誰のせいだアイツのせいだ。
そのミス桃源高校・はこの世のものとは思えない美脚で…変態じゃねぇ、俺はただ事実をだな…ゴホン。
話は戻るが犯人の女の机を蹴り上げるとその拍子で床に倒れたのをいいことに思い切り踏んづけた。見てるこっちが怯みそうなくらい遠慮なくだ。
カエルを握りつぶした様な奇妙な声をあげる女子生徒はきっと未来永劫立ち直れることはあるまい。こんな醜態を晒しているのだから。
鬼だ。兎に角、アイツは鬼だ。口にするのも恐ろしいことを平気でやってのけてこれがキレた時の本性なのだ。
前は確か中学上がりたての頃だったか。まだガキと対して変わりない上級生の女共に今より更に酷いイジメにあったときの事だ。
本当に女の嫉妬と言うものは恐ろしく、命知らずがわんさか居た当時は全員が限度を知らずそれはもう酷いことをしていた。
定番のイジメは全部こなし、そして1番触れてはいけない逆燐に触れてしまった。いつもなら程よくボコして気にもしなかっただったがあの時は違ったのだ。
俺はその時初めてアイツの奥底を垣間見た気がする。マジギレとは言った物だ。マジなんだ。マジ。本気と書いてマジだ。
なに言ってんだ俺は。でもそんくらいはすさまじかった。あぁ。思い出すだけでも鳥肌が立つ。
なんだってあんなにキレたのか…確かアレは俺がくれてやった髪留めが壊されたとか何とか…。
そうか。今回もそれ関係なんだな。俺はようやく謎が解けた気がした。
アイツは自分のものはお粗末に扱うくせに人から貰ったもの…ましてや親しい俺たちからの贈り物には飽きれるほど大事にするきらいがある。
それだけではなく自分を省みずに、慕ってくれるやつ等は凄い大事にするのだ。上級生から目をつけられているアイツに話しかけて来る奴が居ないことは無い。
むしろ嫌っているのは上級生の一部だけで、他のやつ等はに惹かれているのだ。この勝負は見るに耐えないほど結果が見えている。
「あっれー?もうお終いですか先輩?私はまだまだ物足りないくらいですよー?」
黄色い歓声が聞こえてくる…周りのクラスのやつ等は騒ぎを聞きつけての武勇伝を見に来ているようだ。
まぁ、そんなもの今のには聞こえてないようだが。
教師も真っ青なはいつもの愛くるしい笑顔と違って、腹黒男のものとはまた違う冷酷無慈悲なものだった。
横たわる女には見えていないのが救いだろう。共犯者も道ずれと言うように次々と名前を叫ぶ様はこの上なく無様である。
この後の事は、直接あの犯人の女か野次馬に聞くといい。俺は…言いたくねぇ。
結果からすると、この学校ではにちょっかい出す輩が全ていなくなった、と言うことだけ教えといてやる。
元から多くは無かったが一気に黙らしたと言うべきか。反対にを称える輩が多くなった気がするのは多めに見といてやろう。不本意だが。
蛇足だが、校内中イジメというイジメはこれを境にぱったりと無くなった。以外のイジメに合っていた奴等がな。
それは新聞部による校内新聞のからの一言のお陰だろうな。『イジメかっこわるい!』。…この高校の流行語大賞間違いないらしい。
全くあきれてものがいえねぇな。ったく。もうそろそろ来る頃か?俺もには弱い…なんて認めねェがこの際目を瞑ってやるよ。
後始末は俺の役目なんだろう?面倒くさいことを押し付けやがるなあの馬鹿娘は。
胸貸す準備はとうの昔に出来ている
(飛び込んできたアイツを一生離したくないなんて思っちまった俺はやっぱり末期だ)
ATOGAKI
ヒロイン最強伝説。今回はキレていた為、語りが荒れています。ぶっちゃけ私の文才の無さが生んだ産物ですが←
なんとなく三蔵サマ語りに切り替えたんですが、きっとヒロインのままだったら恐ろしい事しか浮かんでこないので…腕の一本一本を折っていく様などを延々とね…おそろしや!
後始末と言うのはキレた後、ヒロインちゃんは疲れるので抱きとめてくれる人にお願いするのです。
三蔵サマが言った八戒の後始末は言葉どおりのものです。教師の口封じ、脅し、脅迫、云々。ことを荒立てないようにするんですね。…え?違うだろって?気にせずどぞ。
まぁ最後はとっても頼りになる八戒さんお願いします。あっはは。ところでヒロインちゃんの暴走はどんなのだったんでしょうね。皆さん、犯人と野次馬に聞いてくださいね。逃げます。