やはりと言うべきか当たらなくてもいい予想が見事的中した私はまだ痛みがひかない頭を抱え悪態をつくのです。
このハゲ野郎、と。
あ、その不敵な笑みは犯則です。いたっ!
彼と彼女の青春ストーリー
午後の陽気に誘われて、儚い純情乙女は天を仰ぎこう言うのです。
「腹減った」
と。そしたらまたハリセンの餌食になったんですが、そんな事でへこたれる私ではアリマセン。ココは一発お腹を鳴らして(不本意ではありますが)目の前の金髪にたかります。
いたっ!またです。この暴力男、これはもしかしてDVなるものではないでしょうか。え?付き合って無いからそれは成立しない?
…そんな馬鹿な!
「貴様は本当に馬鹿だな」
仰るとおりでございます。否定は致しません。
先ほどの戯れ…もとい私の虐殺光景を見ていた金髪野郎は学生、しかも校内と言うのも気にせずおいしそうに煙草を貪るのです。
マルボロの赤ソフト、は今ライターを乗せて彼の隣に腰を下ろしています。コレをグラウンドに向けて投げたら殺されるかな。
赤いパッケージが妙に食欲を促進させることをこの金髪野郎は知っているのでしょうか。いや、知らないだろうな。
そんなこんなで私は隣の棟から走って来たのですが扉の前で待ち構えていた金髪野郎のハリセンを見事に喰らいました。
他の人だったらどうするんだろうなんて考えは即座に却下され、彼はその紫暗の瞳で射抜くのです。私の心情を。
碌な事考えて無いだろう…なんて言いながら今度は腕を引かれ彼の目の前に座らせられて今に至ります。
そしてお腹が鳴りハリセンで一括され今日家に忘れたお弁当を受け取っているしだいでございます。あぁお父さまのお手製はおいしい。
先ほど昼休みの終わる鐘が鳴ったけど気にしないのが乙女です。不良なんて称号は目の前の男含めてあの4人だけで十分。
ごめんなさい許してください。あの人当たりの良い笑顔のあのお方と愛らしい彼は除外です。赤髪と金髪だけで十分ですね。
「お前もその中に入ってることを忘れてんじゃねぇよ」
なんと。なんとなんと!私もあの不良グループの仲間入りしていたんですか!それは初耳です。一大事です!
明日の朝刊の見出し決定ですね!
「今更だな」
…何もいえなくなるのがこんなにも苦しいだなんて。そうです。私は校内1、否全国に知れ渡るんじゃないかと言うほど目の前の男率いる4人と同じなのです。
有名なのです!…ホント不本意ではありますが。この美形が揃って尚且つ頭が良い(いちぶ除く)集団はかなり目立っているんです。
コレは入学当初、イヤイヤ幼稚園くらいから有名な話でもあります。
小さい頃からずっと一緒だった所謂幼馴染な私達は全員が全員素敵な方たちなんです。いろんな意味で。
そんな集団に仲間入りさせられている私はたまったもんじゃないですよ。苦労も人一倍。まぁ私は美人なんで嫉まれることとか数知れず。
命知らずの馬鹿は先ほどのように私に返り討ちにされ、でも懲りずにまた明日呼び出しされるのでしょう。
コレだから世間知らずは困っちゃいますよね。無知と言うのはこんなにも恐ろしいのなのですよ。あっははは。
「ところで、あの馬鹿共は何処行きやがった?もう昼休みも終わっちまったじゃねぇか」
「三蔵後ろ。居るから」
「あぁ?」
怪訝そうに振り返った三蔵は隣の棟の屋上に目を向けた。私が指差した方向へと。
そしたらため息を一つ、かなり深い物だ。まぁため息の一つや二つ私も吐きたくもなりますよ。
だってあの3人(三蔵曰く馬鹿共)の内1人はやっと起き上がった先ほどの先輩達に…まぁ詳しくはいえませんがなにかしらしているのが見えるのですよ。
うわぁ…また気絶しちゃったよ先輩達。主に黒い笑みにやられた人が。
その暗黒の毒牙にやられた全員は明日になるまで起きないでしょう。酷い人はもっとかも…。
そんな事を頭の隅で考えていたら目が合いました。綺麗な緑色の瞳と。
「こっち見た…!」
「無闇に喋るな。アイツは読唇術も長けている」
「え!マジですか!…じゃあ手でも振っておこうかな」
何事も無かったかのように手を振り替えしてくれる緑色の瞳を持つ彼はいつもそうだ。
私を呼び出さして哀れにも返り討ちにされた先輩達にもういっちょ止めを刺しに行って来てくれる。釘を刺す…と言うのかコレは。
そしていつも優しく私に笑顔を返してくれる…それがとても好きです。時々怖いけどいい保父さんと言うのは彼にぴったりなのではないでしょうか。
私にとってはいい兄貴分です。小言はイヤだけど。ってか読唇術って…。やめやめ。深く考えたら負けだ。
「ったく。他の大馬鹿2人は何処だ」
「え?あー下見れば居るよ」
「今度は下か」
隣の棟から八戒が消えると今度は問題児2人の番だ。私の言う様に下を見れば…案の定。
授業中にも関わらずグラウンドで喧嘩をおっぱじめてやがりました。元気でいいねぇ(人の事言えないとか聞こえないんだから!)
きっと最初のうちはクラスで真面目にも体育の授業に出ていた2人は何かの拍子に喧嘩になったと推測されます。コレは外れる確立0%であります!
周りのクラスメイト達はグラウンドの周りをマラソンしていたのだろうか、今は足が止まっておりいつもの事だ、とあきれ果てているのが目に見える。
体育教師もなんだか止めるのが馬鹿らしくなって…と言うか手のつけようが無いとばかりにマラソンを再開させました。見捨てられてるよあの2人。プププ。
まぁこうなったら三蔵がとめなきゃ終わらないのですが今回は…アレ?八戒が昇降口から出てきました。
みんなよかったね。あの見た目人の良い笑顔の彼が止めてくれるそうですよ。
すいません。お騒がせしました。なんていうのが目に見えていて校内に連行された大馬鹿2人。きっとココに来るね。
授業中だというのに出てきた八戒と体育の授業ほっぽいて連れて行かれた悟浄と悟空は何も言われ無いのがこの学校の七不思議の1つ…。
なんてことは言いませんが、優等生でしかも先生の救世主とも言える八戒はお咎めなし。
そして大馬鹿2人は八戒の説教が待ち受けていて先生が言わなくてもむしろ哀れと言わんばかりなので何も言われることは無いのです。
私と三蔵は…まぁ言わずともわかりますと思いますが、主席組みなのでサボっていても気にされることはアリマセン。
三蔵はともかく私は日ごろの行いが良いと言うか、それよりこの美貌ゆえの特権?なんちゃって…
「貴様も見捨てられてる組みだろうが」
「まぁ心外だわ!アンタのその目つきの悪さから恐れられている人よりましだね」
「…言うじゃねぇか。犯すぞコラ」
「キャー!変態が居る!ここに居る!鬼畜生臭野郎に私の貞操がっ」
スパーン!
ま、こういうオチですよ。自分の発言を棚に上げてハリセンですよこの男は!
男共全員が振り返る、そいて高嶺の花の私の貞操が危機に晒されているのはこの男のせいなのに…!
まぁ犯すぞって言われていいかも…なんて考えている私に天罰が下ったと思い込んだほうがいいのかもしれない。
あ、今ニヤケたよこの変態。あ、私もか。
「いやー思わぬ不良児達のお陰で来るのが遅くなってしまいました」
「ナニそれ俺達の事かしらん?」
「こんなエロガッパと一緒にすんなよ!」
ヘビとマングースよろしくな私達の所に先ほどの3人が来ました。ナイスタイミング!
でもその五月蠅さと言ったら短気すぎる金髪野郎の癪に障ったと言うのは言わずと知れた事で。
背後にハリセンを持った男に気付かない大馬鹿2人は次の瞬間残像さえも残さない一撃にコンクリートに沈んだ。あぁ哀れ。
いつもの如く自分だけ逃げた八戒は何食わぬ顔で私の隣に腰を下ろした。お疲れ様です。触らぬ神になんとやら、ですね。
そして満足したのかフンと鼻で笑った三蔵は元居た場所に座る。これもみんないつもどおりの光景だ。
未だ起き上がれない2人は放って置いて私達だけで少しばかり遅いお昼ご飯にいたしましょう!
お弁当の準備は万端です!
(そういえば食べてないのは私だけ…?)
ATOGAKI
学校での設定はコンくらいかな。ちなみに悟空とヒロインは2年A組み、他は3年A組み。高校生です(今更ですが)
居候設定が二の次になっていますが徐々に、ね。