十分承知している。でもこんな、方法しか思いつかなかったんだ。アイツがどんなに悲しそうな顔をしても。
俺は俺のやり方でアイツを守ると決めたんだ
夜光狂想曲 No.9
― 行進曲が始まりました ―
「やっちゃった…!!」
窓の外を見てみれば日が傾き辺りは夕焼け色。部屋の片付けを始めて数十分。は爆睡してしまったようだ。時計を見れば家についてから既に5時間ちょっとも経っていた。約束の(恐怖とも言う)時間だ。
どうする。小十郎は部屋まで上がって来ないと思うがやっぱり全然やってないなんて…指きられる?!(その考えを頭から離せ!)
今更やっても遅い。解る。だって今外で車のドアが閉まる音がしたから。はパニクってアタフタしていると、とうとう呼び鈴が鳴った。は大きな決意と共にドアを開けるのであった
で、其処に居た人物とは。
「 Good evening!!ー!」
ホストBASARAのNo.1だった
「ま、政宗さん!如何したんですか?!」
そういった驚きの表情のとは裏腹に政宗の顔はニヤついている…(ちょ、閉まりのないその顔!)
入り口のど真ん中で偉そうに立つその姿はかっこいいのだが。しかし、何故ココに居るのだろうか。今はもうお店を開ける時間なのだ。
「邪魔するぜ〜」
今度はを押しのけてずかずかと入ってゆく政宗には途端に眼が覚めた。ダメだ。中に入っては寝ていたことがバレる…!!
「ちょ、政宗さん!」
追いかけるが既に遅し。政宗は未だにダンボールも、荷物をまとめている準備もしていない部屋の中央に立ち、言い放った
「こんなことだろうと思ったぜ…。。寝てただろ」
「ギクリ。…………………・……ごめんなさい」
ハァ、とため息を一つついた政宗は近くにあったベットの上に腰掛けた。
あぁ。政宗さんが私のベットに…!シーツ洗っておけばよかった。
などと言う不埒な考えを一瞬思い浮かべただがそれ処ではない。政宗がココに来た意図がわらないのに気を抜くことは許されないのだ。さて如何する・・・!
考えても何も浮かばないのだが。
そんなを知ってか知らずか政宗は振り向き、あのニヒルな笑みを浮かべた
ああぁあっぁぁぁあ。
はこれからの出来事を予想すると血の気が引く。と、同時に覚悟を決めた
(痛いだろうな...ってかどの指だろう!あぁなんてことだ!私はとうとう傷物になってしまうのね!)
歯を食いしばるを横目に政宗は、ある意味問題発言をかました
「今日は泊まっていくぜ。You see?」
「I se...じゃなくて!!なんで?!いきなりそんな、あの…!」
やばい。嬉しすぎる。こんないきなりだけど政宗さんが泊まっていくって!聞きました?奥さん!!
指切られるよりありえない発言をかました当の本人はそ知らぬ顔で部屋を見渡している。今夜は心臓が持たないであろう
しかし、困った問題が一つ。そうだ。ベット1つしかない!!
やばくネ?アレ、ヤヴァくね?1人暮らしだから予備の布団さえない状況。政宗はわかっているのだろうか
1人でアタフタしていると急に政宗が腕を引っ張った。訳もわからずはなすがまま
「買い物行くぞ!」
どうやら冷蔵庫の中身まで見たようだ。何一つ女らしくない部屋を見られて、あろうことか苦手な場所、キッチンまで見られたとは。ってかいついなくなった?おかしいな…
玄関まで来た2人は靴を履き外へ出た。もうそろそろ夕日が完全に沈む頃だろう。遠くが仄かに明るく、ここら辺は暗い。街頭が歩くのを補助している
そこまで高くないってか都会にしては安すぎるマンションを出て、駐車場に向かう。そして前方には自分の愛車。ああそうだ。このマンションは駐車場付だから選んだんだ。でも優遇が聞いたココは明後日には出なくてはいけない。さようならマイベストプレイス
ってかなんで私の愛車って言うのが解ったのだろうか。ってか鍵はいつ拝借した?ってかなんで政宗が運転席に乗っているんだろうか
てっきり小十郎が待っているのだと思っていたはクビをかしげるばかりだ。その答えに回答が帰ってきたのは政宗が華麗な運転をし始めて数分経った時だ。片手でハンドルを回す姿ははっきり言ってカッコイイ。いつもが運転する時とまったく違う感じがしてまるで自分の車じゃないかのような錯覚に陥る
くそぅ。うらやましいぞ車!
まぜか車に嫉妬するはさておき、目的の場所についたようだ
目の前に広がるは、偶然みんなと会ったあのデパート。そういえばアレ以来きていない事に気がついた
それほどこの短期間で色々なことが起きたのだ
「よし、何食いたいんだ?」
「え?何か作ってくれるんですか?!」
驚いた。運転することにもだが、いつも小十郎がついている政宗にはどこかの金持ちかそして家事など小十郎に任せっきりで何も出来ないと思っていたから。失礼な話だが。
まさか料理まで出来るとは。どこまで完璧なんだこの男は。はもう尊敬を通り越して崇めたくなった。この完璧すぎる男を。
結婚したら毎日料理してもらいたいなー、などと痛々しい妄想を広げ我に返る。痛すぎるからやめておきなさい
「requestあったら何でも言ってくれ。大体のものは全部作れるからな」
「うわー凄い!じゃぁ、私オムライス食べたいです!」
「oh,は欲がないんだな。そんなんでよろしいですか?お姫様」
「大満足です!」
本当は政宗が作ったものならなんでも良いが、はあえてオムライスにした。なんていったって1番好きな料理を1番大好きな人に作ってもらえるのだから。これ以上の我侭は許されないのだよ!諸君!!
買い物を済ませ、帰ってきた2人は早速料理の準備を始めた。キッチン周りの荷造りは全然やっていないから後は政宗さんに任せればいいよな、と本当にそれで良いのか(料理は本当に苦手なの!)
Leave it to me(任せろ!)と言って腕まくりした政宗はキッチンに入っていく。ドア一枚隔てられた空間がもどかしい。あの大きな背中を見ていたい衝動に刈られるが踏みとどまる。そうだ。私にはやるべき事がある。リビングと寝室の兼用の部屋に机とかの準備をし始めることにした。
(それにしてもあの腕まくりした姿と逞しい腕が…)
時はさかのぼってホストBASARA開店数時間後
今日も客足は劣らず、まるでいつもどおりで何事もなかったの用に時間は流れる
店内は豪勢でまるでお城に来たかのような錯覚を覚える内装だ。それに静かな曲が流れ、雰囲気を倍増させるかのように落ち着いた店内である
その店のホスト達は少しでも女達を喜ばせる為に働く。No.1は不在なのだが...
しかしそれでも客足が衰えないのはサポート面でフォローが行き届いているからなのだろう。
だがそれでもNo.1の不在は結構な影響を及ぼすのだった…
「政宗は?最近サボりがちなんじゃない?」
政宗の常連客は言う
内容は的を獲ていて他の客も耳を傾けた
「もしかして、前の女が原因とか?」
「ありえなーい!どこが良いのよあんな貧乏臭い女!政宗には到底似つかわしくないわ!」
憤怒した様子の女は高々と宣言した。私が1番なのよ、と。それもそのはず、今現在1番貢いでいるのはその女なのだから
今は仕方なく、と言う感じで指名したのが佐助だった。最近よくホストになる佐助は指名客も増えだんだんとトップの座を侵し始めた。彼の実力はホストになることによって発揮だされたと言っても過言ではない
なのに何故今までボーイをしてきたのかと問うと帰ってくる返事はいつも同じだ。『表には出ない主義』だから、と。
そんな彼が何故、今頃になってトップの座を狙うのか。それは彼にしかわからないし、心境を探ることも不可能だった。なんと言っても自分を隠すのが得意な彼は誰にも悟られることもなく、己の変化を誰にも気付かれないように行動していたから
しかし。今まで偽りな笑みを浮かべていた佐助は表情を一変させた。高笑いをしている客は気がつかず、醜い罵倒を続けている
怒りの感情を露にした佐助にいち早く気付いたのは佐助の傍に居た幸村だった。普段おばかな雰囲気をかもし出している幸村は多分遠くに居ても気付いていただろう。伊達にいつも一緒に居たわけではない。親友の変化にも、何に対しても実は結構敏感な幸村はその後の対処法が見つからない。なんていったってこんな佐助は滅多にお目にかかれないのだから
佐助は其処がどこだか気にすることもせずウイスキーのロックが入っているグラスを机に叩き付けた。かなりの値を張るグラスにはひびが入り、其処の空気にもひびが入る。あぁ。かなり怒っているようだ
なんともいえない効果音に驚いた客は一気に静まり返りそして自信満々な表情が青ざめた。
その異様な雰囲気を不審に思った左右別の隣のテーブルについていた元親と元就は察知した。あの佐助がお怒りだという事に
店内に一気に広がる。波のように次々と佐助がいるテーブルに目を向ける。一瞬凍ったような空気に呑まれる店内。ただ1人、事の原因佐助を抜かして
「あんたみたいな女にちゃんを悪く言う資格、ないよ?」
「なっ…!」
佐助は怒りの表情から一変させ凍てつく様な笑顔を高々に笑っていた女に向けた。言葉の通り全てが凍てつく
最初の一言から次々とあふれ出てくる言葉。女はもう既に泣きそうになっている。普段の佐助からは考えられないような人を傷つける言葉は止む事を知らないかのように、もしかしたら止めてはいけないかのように声になって吐き出される。
「大体男にはした金を貢ぐ、薄汚いおんn「佐助ェェ!!」
凍てつき佐助の独走が一瞬にして終わった。それを止めたのは女以上に泣きそうな顔の幸村だった
場はハッとした。誰もが固まって佐助を見ていたせいで時が止まった感覚に陥っていたのだ。
佐助は後悔した。何をしているんだ、自分は。消せない過ちに泣きそうな幸村を見て自分の犯した事がどんなに大変なことなのか同時に理解する
同じテーブルに居た女達は泣きながら帰っていく。多分、一生この店には来ないであろう後姿を見て目の前は真っ暗だ
その様子を見た元親と元就はざわめきだした客に謝罪を述べると、慶二が佐助を奥に連れて行った
涙を浮かべた幸村は胸を締め付けられるような想いで見送る。一体佐助は如何したのだ、と今までの佐助の変化に気がつけなかった自分を腹ただしく思った
奥の控え室に着くと慶二は佐助を椅子に座らせた。喪失感漂う佐助の肩に手を置く。労わる気持ちで置いたわけではない。かといって責めているわけでもない
実は言うとあの客の言っていた事はみな憤りを感じていた。もし佐助がキレなかったら誰かがキレていたことだろう。
しかし大事なお客様をなくしてしまったことには変わりない。佐助にはきっと謹慎処分やら何かが与えられるだろう事は慶二にも佐助の頭の隅でわかっていた
しばらくすると控え室のドアが開いた。中に入ってきたのは意外にも光秀だった。何を言うのか見当もつかない慶二は入って早々「仕事に戻ってくださいね」と言う言葉に従うことにした。
それにしても気になるぞ光秀。一体今の佐助に何を言うのか。控え室を出た廊下を歩いていると前方に幸村が早足で向かってきた。多分佐助の様子を見るためだろう
すれ違い様に幸村の心情を読み取った慶二は、ひとまず安心かねぇ。と呟き仕事に戻った
「いやぁ、アレはかなりスカッとしましたよ…」
「ハハ…あんたに言われるとなんか自分が怖くなってくるよ。ホント…」
「いいではないですか。ウザイ客にはそれ相応の態度を取るのが一般常識ですよ?何事もね」
「あんたに一般常識を言われるとは思わなかったよ。…攻めれば良いじゃないか」
「何を責める事があるんですか?ま、大事な常連客を逃してしまった事はNo.1に怒られるでしょうけどね…フフフ……」
いっそ責められた方がどんなに楽か。光秀に請うても願いが叶うとは限らないが。多分もうそろそろ佐助を叱ってくれる親友が来る頃だろう。
佐助は目を閉じた。その様子を見た光秀はドアの向こうから聞こえる独特の足音を奏でる人物を想像して、彼なりに気を使ったのだろうか、部屋を出て行った
あぁ。これから熱い熱いお説教タイムだ。心してかからないと命が危ない。
これから起こる事に期待半分といった様子の佐助は後から来るラスボスの存在も承知している。
謹慎で済むのか、済まないのか今の佐助にとって別にどうって事無いことだった
「え?」
戻っての部屋。時刻は先ほどから打って変わって朝だ。
夜型の政宗が起きていることは奇跡に近いが、現に今、の目の前に立っていた。もちろん起きている
普通は朝食の時間で一晩ともにした相手だ。結構良いムードで過ごしてもおかしくない。のだが。
の表情は目を見開いて驚愕した様子。決して良い雰囲気ではない。むしろ最悪の雰囲気だと思う
そんなに対して政宗はまるで別人のように無表情ではっきり言って怖い。一体一晩の間に何があったのか
思い返してみても何も浮かばない。大好きなオムライスを食べ終え、談笑し終わって寝る時も特に何もしていない
ましてや政宗のこの態度にさせるようなことは一切ない、と思う。ならば何故なのか。まったく訳のわからないは到底理解できない事を冷静に判断できる事も出来ず、ただ ただ唖然と政宗を見上げるしか出来なかった
今、なんと言った?思考回路が追いつかない頭の中では一言だけ鳴り響いていた。理解したくないけど、何度も何度も駆け巡る言葉には理解せざる得なくなった
あぁ。夢が覚めたのだと、理解した。淡い淡い夢物語。やはり自分は物語のお姫様のようにはなれなかったのだ
「オレには今後一切近寄るな。金も持ってねェ女には興味ねぇ」
そう言い放った彼は背を向け去ってい行った
この物語は一体どこへ向かっているのでしょうか。
終焉への行進曲は始まりを告げ、人々は思い思いに歩き出します。
さて、貴方はどの途を行きますか?
幸福?破滅?それともこのまま流れに身を任せるのか
運命はめぐる それは止まることを知らないかのように
「クハハハ!見てよ!ねぇ見てよ秀吉!!とうとうあいつは自ら破滅したよ!!」
「半兵衛、喜ぶのはよいが少々はしたないぞ」
「いいんだよ別にさ!!喜ぼう?この時を存分に喜ぼうじゃないか秀吉!!ねぇ、謙信君?」
「わたくしは うつくしいものが すきなのです」
「フンッ!君と僕とじゃ価値観の違いとか違いすぎる。君に僕の事を理解できるとは思っていないよ」
「そうですか…ならばあなたも、さびしいおひとなのですね」
「あなたも?他に誰かいるのかい?その『さびしいおひと』って言うのは」
「ふふふ・・・いづれあなたにもわかりますよ」
「まぁ、いいさ。さて、行進も始まったことだし、ようやく僕らの出る番だね」
胸が躍るとは
この事か
(みんな後悔してももう遅いなんて気付いているんだろう?)
続く
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ATOGAKI
佐助をこんな風にしたのは私です!!(おまw)
やっぱり佐助を虐めたいようですここの管理人は。笑
ってか最後のなんかシリアス臭!ごめんなさぁぁぁぁぁっぁぁい!!
コレは結構前から入れるつもりでした。一旦離れさせようか。じゃないと物語が進まないぞ☆病にかかってしまったからにはやるしかないと…!
なーんか、政宗の本心が冒頭に出てバレバレなんですが、こんなベタな展開大好きなのでお付き合い願いたい所存であります!
コレ、今までの中で1番長いです。どうしても入れたかったので。ってか佐助のところは途中からの思い付きです。ってか無心で打ちました。ごめんなさい_orz
それにしても更新がおそくてすいません…汗
がんばるんば