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雨の日は、決まって頭が酷く痛んだ。鳴り止まない雨音が耳鳴りのように響き、眩暈がする程鮮明に途切れる事無く延々と。
ここ何日も続く雨は、寝起きをいつも以上に刺激し、何倍も機嫌を悪くする。
寝台に腰掛け、煙草を吸う回数も自然と多くなり、灰皿は既に山盛り。
それでも俺は、吸い続けた。何本かに数本は吸われず灰と化していったものもある。
指が焼けようとも、俺は吸い続けた。まるで何かを埋める様に。灰を黒くするだけと知っていながら、呼吸器官は紫煙を求め活動する。
そうしている内に脳が麻痺したのか、何も感じられなくなっていた。
その所為でが気配を消して寝室に入って来た事に気付けず、反射的に構えてしまった。
無意識に。当たり前の様に。滑稽なほど怯えた表情で。
己の過ちに気付いたのは、構えた手の先に映るが、涙を流してそこに立っていたからだ。
視界から脳に伝わり、認識された頃には手の中の物は滑り落ち、床から鈍い音が聞こえていた。
俺の頭痛は未だ治らない。いっその事、このまま割れてしまえば楽なのに。
雨音と頭痛は戒めるかの様に、治らない。
どんなに強く力を籠めても、脳内を麻痺させようとも、違う痛みを与えても、頭痛から解放される事はなかった。
雨音が止まない限り、延々と痛み続ける。まるで、最近もってしまった感情を追い出すように。
腕の中で泣きじゃくるを、受け入れてはいけないと訴えているみたいに。
どうして俺は、こんなものを拾ってしまったのだろうか。己に苦しみを与えるだけの存在だというのに。
どうして俺は、こんなものを愛してしまったのだろうか。己にそんな資格は無いというのに。
お門違いも甚だしい。俺のような存在が、存在自体が常人に持ちえる感情を。
愛などと。本当は知らない癖に。
思い知らされた頃には時既に遅く。貪るように喰いついた唇を欲のままに求め、無我夢中に足掻き現実から目を背け。
俺はまだ知らない。背後から忍び寄る闇が、息を潜め機会を窺っていることを。
俺は知っていたはずだ。それは蛇のように固陋に撒きつき、全てを喰らい尽くすまで逃さないことを。
本当はいくら足掻いても離れない闇を、自身は嫌と言うほど理解していた。
ライフラインに必死にしがみついていた指が離れるのを最後に、墜ちるのは容易くて。
俺はただ、目の前の現状に酔いしれた。思考回路が麻痺したのを言い訳に、定かではない感情以外を追い出して。
背後で吸いかけの煙草が、音もなく燃え尽きた。
write:20090914
解り辛い・・・