今日、変な物を拾った。
ソイツは誰も居ない真っ暗な路地裏に蹲り、通りがかった際、目が合ったのだ。
髪はボサボサでもずく妖怪か?と思わせる薄汚さ。
何日も風呂に入っていない様で、服はボロボロ。おまけにくせぇと来た。
しかし何故だか気になって拾ってしまった。
そう、ソイツが放った一言で無意識の内に拾ってしまったのだ。
「――おなかすいた」
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簡素な部屋。三蔵はソファと言う名の定位置に座り、眼鏡を掛け新聞の活字を追っていた。
お風呂場からはシャワーの音が引っ切り無しに聞こえてくる。
他人の家だと言うのに遠慮をしらんのか、と悪態吐くが実のところ左程気にしていない。
簡素とはいうものの見るからにして高そうな部屋は、彼の財力を示していた。だから気にしない。
アレから時は過ぎ、女(多分)を部屋に入れ、すぐさま無理矢理風呂に押し込んだ。
兎に角臭い。それが一番の原因だ。女(多分)は腹具合を訴えていたが、完全に無視。
適当にバスタオルと着替えを置き、今に至る。
日課となっている缶ビールを飲みつつ、ふと考えた。
なぜ自分はあんな見るからにストリートチルドレンを家に招き、おまけに風呂、そして飯までもてなしているのか、と。
ただの気まぐれと言えばそれでお終いだが、正直自分でもわからないので考えるのをやめた。
暫くするとシャワーの音は消え、更に暫くすると髪の毛に水を滴らせた拾い物が出てきた。そして一言。
「お風呂、ヤバイ。5ヶ月ぶり。」
流石の三蔵も言葉を失った。風呂に入って居ないのは見れば解るが、まさか5ヶ月も入っていなかったとは。
予想の範疇を超えた拾い物に、拾ってこなければよかったと後悔。だが時既に遅し。
よくよく見ると、拾い物は女で、髪の毛を洗えばそれなりに長く、綺麗なものである。
しかし5ヶ月も放置しっぱなしだった為か、乾かしてみれば艶は失われ痛んでいた。
コレが原石なのか、それともただの石ころなのか――見定めるのも悪くは無い、と酔狂な事を考えた。
「ごはん。おなかすいた。もーげんかい。」
女はお風呂上りのケアを済ますと、三蔵を見上げどっかの馬鹿猿を連想させる言葉を放った。
――やれやれ。どうやら俺は本当に物好きのようだ。
自分で拾ってきた癖して頭を抱える三蔵は、気だるいまま昨日八戒が作り置きしておいてくれた食事を女に与えることにした。
女はとてもおいしそうなご飯を、おいしそうに頬張り食べ終える。
2日分の食事はあっという間に女の胃袋に納まり、結局三蔵の取り分は一口だけだ。
どうしたらこんな風に育つのか。まぁ三蔵は空腹ではなかった為、無遠慮な女に憤りは感じない。
むしろ豪快な食べっぷりに悪い気はしない。なんだかペットが出来たみたいで微笑ましかった。キャラじゃないが。
write:20090910くらいだった気がする。