「あいしてください」
唐突に紡がれた言葉に、俺は目の前の女を凝視した
「あいして――」
女は俺の服の裾を力なく掴み懇願するように見上げる
その表情は酷く悲しそうでいて、瞳には僅かな俺に対しての希望の色が見て取れた
「さん、ぞう」
尚も縋る女は催促するように、ぐいぐいとひっぱてくる
まるで捨て子だ
必死に愛情を求める幼い――
「あい、して」
「俺が、貴様をか」
――俺がこの女を愛すのか
「あいしてっ」
――この女が俺を愛すのか
「愛してやるよ」
愛さなければならない
否
愛したいと、想った
「あいを、くれるの?」
目を見開いた女は困惑が混じり、次第に微笑んだ
「貴様の全てを、愛してやる」
――全てを
「貴様を喰らいつくすまで」
――受け止めて
「貴様が求め続けるのなら」
――縛り付けて
「貴様は委ねればいい」
――愛してやる
どす黒い愛欲が湧き出てくる
これが愛すと言う事ならばそれでいい
俺はこの女を愛し、貪り、締め付け
「あいを、あげます」
全部掻っ攫う
「私の全てのあいを、貴方に」
女は儚げに微笑むと俯く
未だ握り締めたままの手をそのままに、俺は目の前の女を引き寄せた
愛、貪欲に
(こんなくだらない言葉なんぞいらない、ただ全てを奪い取る)