きっかけは何だっただろうか
私は立っている
どこにどう立っているのかと言うと屋上のフェンスの向こうに棒立ちに立っている。
風が中途半端な長さの髪の毛を躍らせ自由気ままに吹いている。
空には形が良いとは言えないなんとも歪な雲が浮かんでいてこれまた気ままに流されている。
最初はいつだったか
昼休み、授業中、放課後。屋上に来てはあの雲のように風のように気ままに生きてみたいと想い始めたのは。
この一歩を踏み出せば私は自由になれるだろうか。浮遊感に犯され恐怖で気絶、失神してしまうのだろうか。
それとも、その状況を楽しみ自由になれると喜んで落下して本当の自由の意味も知らないまま死んで逝くのだろうか。
何も分からないまま、私は今一歩を踏み出そうとしています。でも躊躇しているのも事実。
誰かに止めて欲しいとかではない。むしろ誰にも知られず、次の朝まで見つからずに自由になった余韻を楽しんでいたい。
この青空の下、空と同じように私は自由になりに逝きます。
決めました。あと21秒後に私は一歩を踏み出します。誰に何を言われようとも言われなくても逝きます。
みんなさようなら。お父さんお母さん生んでくれたのに命を無駄にしてしまってごめんなさい。
私は今幸せです。なんていったってあと8秒後には自由になれるのですから。ごちゃごちゃした世界から抜け出せるのです。
とても名誉なことだと私は信じてやまないです。
あぁ、私は、私は――
手を掴まれた
(アレ?私の腕を掴んでいるのは誰?)
***
自由になれ損なった、哀れな自分
自由になれなかった、手を離してよ
相手はご自由に!笑