「紅葉狩り・・・どうですか!!」



至極唐突に、目の前の女は言った。

特に驚きもせず俺はいつもの事だと、軽く受け流そうと女を見る。

だが、目を合わせてしまったのが運のつき。

一度深く嘆息し、新聞を折りたたんでもう一度視線を戻す。


 ――どうやら、断れそうにない。


ソレが俺の結論だった。



 「やったー!じゃあ明日ね!絶対だよ!?」



喜色満面の笑みを浮かべた目の前の女、はそのままドアの向こうへ姿を消す。

その背中を見送って俺はもう一度、嘆息。

約束を取り付けられて、さぞ嬉しかろう。

は言葉通り明日の為、寝室に篭ったのである。


それにしても、随分と急だ。

特に記念日と言うわけでもあるまいし、なんだってんだ。

俺は飲みかけのビールを飲み干すと風呂に入り、40分遅れで寝室へ。

ベットの上には、既に熟睡しているが横たわっていた。




「今日はね、今年一番の紅葉日和なんだよ!」



紅葉狩りへと車を走らせながら、助席に座るが嬉々として言う。

俺は漸く、昨日の晩に疑問に思ったことの理由が分った。

だからは急だと知りながら誘ったのだ。

それならもっと早くに言えばいいものを・・・と思ったが、天気予報が原因だと結論にたどり着いた。

毎日放送してる癖に、こういうのはいきなり特集を組んで知らせるのだ。

それに振り回されるに振り回される俺の身にもなれと言いたい所だが、まぁ悪くは無い。



「ねぇ後どのくらいで着くの?まだー?」

「せっかちな奴だな・・・あと数分で着くだろ」

「楽しみだねー!」

「・・・ただの葉っぱじゃねぇか」



何を好き好んで態々車を走らせてまで赤く染まった葉っぱを見に行かねばならんのだ。

そう言ったら情緒が無いと怒られた。

俺は真実を言ったまでなのだが、どうやらにしてみれば面白くないようで。

暫しの抗論と小さく流れる音楽の中、漸く目的地に着いた。



「すごーい!!見て見て三蔵!!」

「るせぇ。見えてんだよ」

「綺麗・・・ねぇ三蔵、来てよかったでしょ?」

「・・・そうだな」



走らせる車の窓からも所々見えてはいたが、こうも間近でしかも道端と違って紅葉メインの場所に立つと、正直壮観だ。

騒ぎ立てるを横目に俺はもみじの葉を茂らせる木を見上げた。

春は桜で夏は青葉、そして秋は・・・紅葉。

柄にも無く、素直に感動してしまった自分に吃驚だ。



「ココって人少ないねー」

「当たり前ぇだ。隠れスポットって奴だからな」

「三蔵・・・良く知ってたねぇ。珍しい・・・」

「置いて帰るぞ」



紅葉と言ったらココだと決めていた。

興味はねぇが昔、誰かが話していたのを覚えていたからだ。

地元人しかしらない最高のスポット。

まさか自分が行く羽目になるとはな。

それもと。



「ありがとう、三蔵」

「何のことだ」

「しらばっくれちゃってもう!」

「・・・ふん」



赤く染まったもみじは落葉になり、地面と辺りを染め上げている。

絨毯とカーテンの様に華やかで、そしてどこか落ち着いた雰囲気をかもし出していた。

その真ん中に立つはまるで、そう、まるで紅葉に守られている様。


 ――何とち狂った事を言ってやがんだ、俺は。


それ程、この紅葉に魅せられちまったんだろうな。



「悪くは、ねぇな」



俺はに近寄り、隣に立った。

紅葉ばっかりに目を向けてねぇで、少しはこっちを向けってんだ。

それと、を守るのは俺だと、認めたくねぇが紅葉なんかに嫉妬した俺は隣でマヌケ面を曝しているを引き寄せた。













紅葉と
情緒


(赤く染まった葉はお前とセットで楽しむもんだ)











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また季節物。紅葉好きです。ってかイベント事は大好きです。笑

是非、紅葉狩りに出かけることをお勧めします。